トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
ーバリーンッ!
「い、今なんと…?」
ロウリア王国首都ジン・ハークの王城。
パタジンより報告を聞かされたロウリア王は、葡萄酒の入ったガラスの杯を取り落として割ってしまった。
「はっ…クワ・トイネ公国征伐の為に出陣した陸軍、海軍共に壊滅した模様です…!加えて、援護に出撃したワイバーン150騎に至っては1騎たりとも帰還しておりませぬ!」
顔がふやけそうな程に冷や汗を浮かべたパタジンが跪きながら再度報告した事でロウリア王もそれが紛れもない事実だと認識したのだろう。
まるで崩れ落ちるようにして玉座より滑り落ちてしまう。
「我々の援助があったにも関わらず、何たる体たらくか」
「あれほどの戦力をむざむざと浪費するなぞ…」
「失敗か…。早く皇国に帰って書類を処分せねば」
ロウリア首脳陣が悲惨な雰囲気に包まれる中、パーパルディア皇国者達は早々にロウリア王国を見限ったらしい。
黒いローブを翻すと、足早に王城を後にした。
「陛下、何故クワ・トイネ如きが我が国の軍を打ち破れたのかは分かりませんが、とにかく現状は侵攻作戦より逆侵攻に備えた防衛準備を整えるべきです。国境に各諸侯より徴収した兵を配置し、このジン・ハークには近衛騎士団を中心とした精鋭部隊を配置しましょう」
「う、うむ…。貴様に任せる…」
いち早く立ち直ったパタジンが素早くクワ・トイネ公国による逆侵攻に備えた戦略を提案する。
クワ・トイネの主戦力は軽装歩兵であり、重装歩兵や騎兵が潤沢なロウリア軍を打ち破れる可能性は低い。
侵攻作戦では地の利を活かした戦法をとられたが故の損害であろうが、防衛作戦ともなれば立場は逆転する。
重装歩兵の圧力は軽装歩兵では打ち破れず、その間に騎兵が敵後方に回り込んで挟み撃ちだって可能だ。
それを踏まえればパタジンの戦略は決して間違いでは…いや、むしろ最適解と言ってもいいだろう。
ただし、
「緊急!緊急!」
玉座の間へと飛び込んで来るのは、各所の砦から届く魔信を受信して取りまとめていた魔信兵だ。
「何事だ!?」
「アルバレス砦より報告!クワ・トイネ公国と不明国の部隊が越境!見た事もない緑色の巨大な角が生えた魔獣の背に乗り、とんでもない速さでジン・ハーク方向へ進撃しているとの事です!」
「ま、魔獣!?それに不明国とは何だ!?」
「それがアルバレス砦との連絡が途絶えたせいで詳細は不明です…」
パタジンと魔信兵が現状把握に四苦八苦する中、ロウリア王は密かに頭を抱えて小さく震え始めた。
「魔獣を従える…まさか…魔帝なのか…?」
クワ・トイネ公国から越境し、ロウリア王国へ足を踏み入れた公国陸軍と陸上自衛隊の連合車両部隊は、燃え盛るロウリア軍の砦を尻目に荒野を駆け抜ける。
「あれが日本の誘導魔光弾…いや、ミサイルの威力か…。我々なら何ヶ月もかけて攻略するロウリアの砦が一瞬であのザマだ…」
公国陸軍所属のメキワは16式機動戦闘車の砲塔に腰掛けて、
越境した連合車両部隊は難攻不落として名高いアルバレス砦を放置する訳にはいかず、先に攻略すべきと桑国が主張したのだが、それを受けた陸自は海自へと支援を要請し、それを快諾した海自は海上で待機していた『とさ』より
その結果、アルバレス砦のロウリア兵は散り散りになって逃げ出し、連合車両部隊は街道沿いにジン・ハークへ向けて
「それにしても…やはりジエイタイのセンシャは凄い迫力だ。ヒトロクシキが子供に見えてしまう」
続いてメキワが目を向けたのは16式と並走する陸自の主力戦車『33式戦車』である。
主砲として44口径130mm滑腔砲を装備した本車は『90式戦車』の後継として開発されており、広大な北海道での運用は勿論、北米や欧州諸国への輸出を意図していたため『10式戦車』よりも大柄な車体が特徴だ。
ーキッ!
「おっと…なんだ?」
「すまん、遠くにロウリア軍の騎馬隊が来ているようだ。ジエイタイが教えてくれた。我々で撃破するから、歩兵諸君は一度降りてくれ」
「敵…。はい、分かりました」
砲塔のハッチから顔を出していた車長がメキワを始めとする歩兵に一旦降りるように指示を出し、全員が降車した事を確認するとハッチを閉めて数十mほど先行する。
「俺たちも警戒しよう。あと大砲の衝撃と音には気を付けろ」
メキワも周囲の仲間へ注意を促しつつ、自身も89式小銃の二脚を展開して伏射体勢で待機する。
そうして89式の安全装置を外した瞬間、16式の砲撃が始まった。
ードンッ!ドンッ!
8輌の16式が105mmライフル砲を撃ち、遥か遠くに見えるロウリア軍へと砲弾を叩き付ける。
音よりも速く飛翔する
「うぉぉぉ…よく見えないがスゴイ事になってるな…。やはりジエイタイの兵器はとんでもない。これなら魔帝にだって勝てるんじゃないか?」
1輌につき3発程度の砲撃であったが、それによって1000騎近く居たロウリア騎馬隊は壊滅。
10騎にも満たない生き残りは一目散にジン・ハークの方向へと逃げ去って行った。
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