トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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今回より日本の列強訪問編です
パ皇戦はもうちょっと先になります


ものすごく野蛮で、ありえないほど前時代的

ロデニウス動乱が終結して2ヶ月程経ったある日の事であった。

 

「総理、大変です」

 

首相官邸の執務室へ、仏頂面の秘書官がノックも無しに入ってきた。

 

「……はぁ〜〜」

 

この秘書官と長い事仕事をしているが、彼がこうやって来た時は大概ロクでもない事態が発生しているのだ。

それをよく知っている成島は深いため息をつき、クッションがへたり始めた椅子に深く座り直した。

 

「君、せめてノックはしたまえよ…」

 

「申し訳ありません。しかし、これは一刻も早くお伝えすべき案件だと思いまして」

 

成島の注意に悪びれもせず、秘書官は彼の前に資料の束を置いた。

『ロデニウス動乱におけるロウリア王国が侵略戦争を決断した原因について』

それが資料のタイトルらしい。

 

「ロウリア王国がクワ・トイネ公国へ明確な領土的野心を抱いて侵攻したロデニウス動乱ですが、桑国(クワ・トイネ公国)及び杭国(クイラ王国)共に、《ロウリア王国は近隣諸国と比べれば大国であるが、此度の動乱で確認された諸戦力は明らかに多すぎる》との見解を示しています」

 

「…つまり、第三国がなんらかの支援を行ったと?」

 

「はい。加えて現ロウリア王国臨時首相であるパタジン氏が我が国(日本)に泣き付いてきました。《このままでは我が国はパーパルディア皇国への返済で破産してしまう。どうか貴国の慈悲を乞いたい》と」

 

「パーパルディア皇国…確か…」

 

「はい、詳しくは資料の25ページをご覧ください」

 

秘書官の言う通り、成島は資料をペラペラと捲って25ページを確認する。

 

「総理は既にご存知でしょうが、今一度おさらいしましょう。この世界…マスコミや国民、ネット界隈では新世界(・・・)と呼称していますので我々もそれに倣います。新世界には"列強国"と呼ばれる5つの大国が存在します」

 

「うむ、地球で言うところのG7…いや、常任理事国のようなものだな」

 

「概ねそのようなものです。先ず列強国の中でも筆頭であり、世界最強(・・・・)と名高い『神聖ミリシアル帝国』」

 

「アメリカのようなものだな」

 

「続いて列強第二位。この世界においては"異端"とされる科学技術による文明を築いた『ムー』」

 

「我々も科学技術立国であるし、是非とも仲良くなりたいものだ」

 

「そして列強第三位。"竜人"なる希少な種族による単一民族国家『エモール王国』」

 

「竜人か…エルフや獣人、ドワーフは分かるが竜人は想像出来ないな…」

 

「一つ飛ばしまして列強第五位。ムーの隣国であり列強の中では最弱とされる『レイフォル』」

 

「なんでも滅びたという噂が流れているらしいな」

 

「最後に、列強第四位。我が国に最も近い列強国にしてロウリア王国に援助したとされる『パーパルディア皇国』です。以上の五カ国が新世界のパワーバランスを担う列強国ですので、我が国はこれらの国家に接触して国際的に認められる必要があるでしょう。しかし…」

 

「先ずはパーパルディア皇国か…。援助していたロウリア王国は我が国が打ち負かしたから、敵対する事になるか?」

 

「いえ、その可能性は低いでしょう。パタジン氏の話によればパ皇(パーパルディア皇国)文明圏外国(発展途上国)を見下しているらしく、泥を塗るような真似をしなければ態々敵対はしないとの事です。しかし、ロウリア王国はロデニウス大陸統一の暁にはパ皇へ多大な謝礼を約束していたそうです」

 

「多大な謝礼?」

 

それを聞いた成島の脳裏を過ったのは、地球における中国(中華人民共和国)の振る舞いであった。

発展途上国に対する多額の融資を行い、返済が滞れば港や土地を奪う野蛮な手法…パ皇もそうかもしれない。

 

「物的資源と人的資源…要するに奴隷(・・)を含めたあらゆるモノです」

 

秘書官の言葉は成島の予想を悪い意味で上回った。

 

「奴隷って…おいおい…。それはいくらなんでも…」

 

「私も総理と同じ意見です。しかし、新世界においては奴隷は当たり前のものであり、奴隷制を廃止している国の方が少ないのです。特に件のパ皇は周辺諸国を侵略し、植民地とするお手本のような帝国主義国であり、奴隷と資源を絶え間なく欲しているとの事です。その上、かの国は酷くプライドが高いらしく…」

 

「ロウリア王国が謝礼を渡さなければ、懲罰と称してロデニウス大陸に来る可能性が高い…と言う事か」

 

「はい、このままではせっかくの平和が台無しです。ですので総理、ロウリア王国の負債を肩代わり(・・・・)しては如何でしょう?」

 

「何っ!?我が国が何故そんな事を!それはロウリア王国が解決すべき問題であり、言ってしまえば自業自得…」

 

成島は信じられないといったように秘書官に反論するが、当の秘書官はしれっとした顔で成島の言葉を遮るようにして言葉を続けた。

 

「総理のお考えもごもっともです。しかし、このままロウリア王国がパ皇の要求に従って無理な資源・奴隷の献上を行えばいつかはそれらが枯渇し、ロウリア王国は再び侵略戦争を企てるかもしれません。それがなくてもロウリア政府主導の窃盗や誘拐が横行し、加えて経済的に困窮したロウリア国民が難民として桑・杭両国に流入する可能性があります。そうなればロデニウス大陸の治安は悪化し、我が国の資源的安全保障が脅かされる事となるでしょう」

 

「うむむ…た、確かに…」

 

「それを防ぐためにロウリア王国へ援助、あるいはパ皇への謝礼を我が国が肩代わりすべきでしょう」

 

「パ皇への謝礼と言っても、どうするんだ?日本人を奴隷として差し出せと?」

 

「まさか、そのような事はしませんよ。そうですね…我が国の建築、農業技術を開示する事を謝礼代わりにするのはどうでしょう?」

 

「帝国主義国がそれで満足出来るかね?」

 

「満足させるのですよ。話によればパ皇の軍事技術は中世から近世程度であり、戦列艦やマスケット銃が主力であるそうです。そんな技術の国からすれば我が国の優れた建築技術や農業技術は喉から手が出る程欲しいでしょう。勿論、軍事技術も要求するかもしれませんが、そうならないようにファーストコンタクト時点で圧倒的戦力差を見せ付け、下手な事を言えないようにするのです」

 

「その上で、先方の顔を立てる為に建築・農業技術の開示か…」

 

腕を組み、逡巡する成島。

たっぷり10分程、額に脂汗を浮かべて思案した彼は躊躇いがちに口を開く。

 

「……私は…」




感想、評価お待ちしてます

魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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