トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
第三文明圏の覇者、五列強の一角であるパーパルディア皇国。
その首都である『皇都エストシラント』に聳える皇宮では、皇宮の主にしてパーパルディア皇国皇帝である『ルディアス・パールネウス3世』が優雅に暮らして…
「ん"ぅぅぅ〜〜…」
いなかった。
彼は今、自身の執務室で眉間に深い皺を刻み、腕を組んで唸っている。
「本当にどうすれば良いのか…分からん…余の至らなさに腹が立つ」
彼を悩ませているのは、一向に近代化の道を歩めない自国に関してであった。
というのもルディアスは皇太子時代、神聖ミリシアル帝国へ数年間留学しており、同国で先進的な政治の在り方を学んでいた。
その際、高名な経済学者の講義にてこのような事を言われたのである。
ー「良いですか、殿下。貴国を否定する訳ではありませんが、奴隷に頼り切った国家運営は非常に危険です。奴隷という安い労働力は健全な経済成長を妨げるばかりか、産業の機械化を消極的にさせます」
当初はその言葉の意味が分からなかったが、今なら痛い程に分かる。
皇国は労働の多くを奴隷に頼り切っており、自身の手では服を繕う事も出来ず、産業にしても高価な機械を導入するよりも安い奴隷を使い潰した方がいいと認識されている始末だ。
こんな状況では上位列強である神聖ミリシアル帝国やムーのような機械化による産業革命は不可能であろう。
しかし、だからと言って奴隷廃止を訴えればルディアス自身に危険が及ぶ。
「く〜っ…先祖は何故パルファレス公爵家を存続させたのか…!連中が居なければ今頃は…」
ルディアスは確かにパーパルディア皇国の皇帝であり最高権力者であるが、絶対的な存在ではない。
隙あらば彼を
その代表格がパーパルディア皇国皇族である『パールネウス大公家』の分家である『パルファレス公爵家』だ。
初代皇帝の弟が開祖であるパルファレス公爵家は皇国の西側、全国土の内三分の一を治めており、その力は歴代皇帝すら無視出来ない程である。
過去には時の皇帝を暗殺し、皇位すら狙う野心も持った公爵家であるが、神聖ミリシアル帝国との政治的繋がりの強さから皇帝ですら容易く手出し出来ずにいる、ルディアスにとっては正に目の上のたんこぶなのだ。
「ルディアス様、一息入れては如何ですかな?あまり根をつめてしまうと思考が堂々巡りになってしまいます」
「あぁ、ルパーサ。そうするか…」
静かに控えていた老人、相談役であるルパーサの言葉を受けてルディアスは椅子から立ち上がると伸びをしながら窓へ近づいた。
「ミリシアル産の紅茶でよろしかったですかな?」
「うむ、頼んだ」
魔法で湯を沸かし、紅茶を淹れる準備を始めたルパーサを横目にルディアスは窓から見えるエストシラントの街並みを見渡す。
朱色の
「陛下、どうぞ」
「うむ」
ルパーサより手渡されたソーサーに乗ったティーカップを受け取ると、憂いを湛えた目で街並みを見下ろしながら紅茶の香りを楽しむ。
「よい茶だ。花のような香りと僅かな土のニオイ…やはり紅茶はミリシアル産に限る」
左手にソーサーを持ち、右手に持ったティーカップを傾けて褐色の水面を唇に触れさせ…
「陛下陛下陛下ー!大変です!」
「……何用か」
穏やかな昼下がりのティータイムは、無礼にもノック無しに騒々しく入って来た第一外務局次官のハンスによって唐突に終わりを迎えた。
「…あっ!も、申し訳ありません!緊急事態が発生したもので…」
「はぁ…よい、貴様がそれほど慌てているという事は余程の事があったのであろう?」
「寛大な御心に感謝申し上げます…。それで本題なのですが…あの…その…」
「何だ、まさか誰かしらが予算の不正流用でもしたか?国家戦略局のように、何処かしらの文明圏外国に援助をでも行ったのか?」
「いえ。しかし…あー…と、ともかくこれで海の方をご覧になって下さい!」
凄まじい勢いで差し出されたムー製の望遠鏡にルディアスは驚くが、戸惑いつつもソーサーを置いて受け取る。
「一体なんなのだ…。全く…エルトは部下にどのような教育を…」
ルパーサよりお叱りを受けているハンスを尻目に、紅茶を啜りながら望遠鏡を覗いて海を見る。
「
少しの間、望遠鏡を振ってハンスが自身に見せようとしている物を探していたルディアスであったが、"それ"を見た瞬間に口から霧状に紅茶を吹き出してしまった。
「な…ななななっ…なんだアレはァーーっ!?」
ルディアスが見たのは、皇国が誇る120門級戦列艦が小型ボートに見えてしまう程に巨大な船…それが20隻程横並びとなり、エストシラントへ向かって来る光景であった。
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