トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
日も沈み、闇夜が皇都を覆い始めた頃、皇宮の大会議室には皇帝であるルディアスを始めとしたパーパルディア皇国の首脳陣が集結していた。
「では皆様お揃いのようですので、緊急帝前会議を開催いたします」
ルパーサが会議の始まりを宣誓し、ルディアスの斜め後ろにある椅子に座る。
一拍おき、皇国軍最高司令官である『アルデ・ナルバス』が挙手し、発言の許可を得ると立ち上がって書類片手に口を開いた。
「先ずこれまでの経緯を確認し、互いの認識の相違が無いように致します。ことの発端は本日昼前、皇国海軍の
「では、私が…」
アルデが外務局幹部が着席しているエリアに目を向けつつ着席する。
それを受けて入れ替わるように立ち上がったのは、文明圏外国との外交を担当する『第三外務局』局長の『カイオス・ザルィード』だ。
「先ず始めに言っておかなければならない事があります。日本は自らを第三文明圏外にある国家であると名乗っていたので我々
カイオスの言葉に会場は騒つく。
しかし、それでもカイオスの見解を否定するような野次は飛ばない。
勿論、それはこの場が帝前会議という国家の命運を左右する場である事もあるが、何よりも参加者は一様に日本の艦隊を遠巻きながらも自身の目で見たからである。
「…続けさせていただきます。加えて日本の軍艦は魔力探知機に反応しなかった事から機械動力…つまり、ムーと同系列の
「それは余も理解している。だが、あれほどの軍艦を建造する事が出来る科学文明国が第三文明圏外にあるとは聞いた事がない。外三は把握していたのか?」
訝しむようなルディアスの問いに、カイオスはより一層背筋を伸ばしながら答える。
「いえ、全く把握しておりませんでした。日本は皇国の東側、文明圏外のロデニウス大陸の北にあると自称しておりますが、外三の記録を全て洗い出してもその辺りには小さな島が点在するというものしかありませんでした。しかし、彼らは…日本は
「国土ごとの転移、か…。私の記憶がただしければ、ムーの神話がそうであったな?」
「陛下の仰る通りです」
目配せしたルディアスに応えるように口を開いたのは、列強国との外交を担当する
「神聖ミリシアル帝国に次ぐ第二列強であるムー…異端の科学文明国であるかの国は1万2千年前、大陸ごとこの世界に転移してきたと自称しており、それは国家公認の歴史書にも記されています」
「ふむ…国土ごとの転移、そして科学文明国…。ムーと日本、偶然とは思えぬ一致がある。日本はムーと深い関係にあるのではないか?」
「現時点では確定出来ませんが、おそらくそうではないと考えられます」
ルディアスの推測に、カイオスが反論する。
「
「私もカイオスの意見には賛成です。日本の艦隊が皇都の沖に姿を現した際、まだ情報が伝達されていなかったので
カイオスとエルトによって否定された日本とムーの関係に、会議の参加者は一様に頭を悩ませる。
上位列強に匹敵するような艦隊に、それらの国々との関係も無い…となれば、転移してきたという日本の言い分を信じるしかない。
「あ…あの…もしかしてあれはハリボテで…」
「あんな巨大なハリボテを作り、海を渡って来れる技術がある時点で相当なものです。何より、臨検した兵によればあの軍艦は金属で出来ており、とてもハリボテとは思えないものであったと証言しています」
誰かの発言を、アルデがキッパリ否定する。
そして、彼の発言はそれだけに留まらない。
「加えて申し上げますが、あの艦隊は快速であるフリゲート艦を易々と追い抜き、一際大きな軍艦…ミリシアルとムーが運用する
「もう良い」
アルデの言葉を遮ったのは、両の目頭を摘むようにして頭を抱えるルディアスだ。
「つまり、日本は我が国を上回る兵器を持っている…その認識で良いな?」
「はっ。おそらくは…」
「して…そのような国が我が国に交渉を申し出たと言っておったな?カイオス、何を交渉するのだ」
「陛下、先日私めが陛下より叱責された件は覚えていますでしょうか?」
「覚えているとも。外三の傘下にある国家戦略局が予算を無断で使用し、文明圏外国に多額の援助を行った件であろう?」
「はい。その件で、国家戦略局が援助したロウリア王国ですが、隣国であるクワ・トイネ公国、クイラ王国の戦争で敗北し、国家戦略局の目的は失敗致しました。ですが、日本が…」
「はぁ…なるほど。クワ・トイネ公国とクイラ王国には日本が味方したのだな?それで、日本はロウリア王国を援助した事について、我が国に何かしらの代償を求めているのだろう?」
「いえ、少々事情が異なりまして…」
自身の予想が外れた事に、ルディアスは片眉をピクッと跳ねさせ、カイオスの言葉を待つ。
「日本は…ロウリア王国が抱える皇国に対する負債を肩代わりすると申し出たのです」
「……は?」
聡明で知られるルディアスもこれは予想外であった。
戦争で負かした国が抱えた負債を肩代わりする…全く意味が分からない。
「私も正直驚きました。しかし、日本は『ロウリア王国が経済的に困窮すればロデニウス大陸の治安が悪化する。それは我が国の安全保障に関わる為、工業製品等を譲渡するのでロウリア王国への資源・奴隷の供出命令は撤回してもらいたい』と申しており…」
「工業製品…具体的には?」
「はっ…えぇ…と…。農機具や肥料、建築用の工具、そして中古の自動車を…」
資料を捲りながら日本からの提案を確認するカイオスだが、ルディアスは目を見開き喜色を顔に滲ませた。
「自動車?自動車とはミリシアルやムーにあるような、あの馬が必要無い馬車の事か」
「はい。日本には何百万台と自動車があるらしく、年間で相当な数の中古が出回るそうです。その内の1万台程度を皇国に譲渡するとの事でして…」
これはチャンスだ。
皇国の産業革命を悲願としていたルディアスにとっては、優れた機械を導入するまたとない好機…しかし、何も考え無しに食い付いてはいけない。
「分かった。しかし、日本が本当にそのような国であるのかを確認する必要がある。よって、日本へ視察団を派遣しようではないか。視察団の人員は余自らが決定する。良いな?」
無論、皇帝に逆らう者がこの場に居る筈もなかった。
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