トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
深夜、ルディアスは魔力灯の光の下で書類と格闘していた。
「むぅ…やはり外務局長を二人も派遣するのは過剰か…?しかし、列強との交渉に慣れているエルトは必須だし、様々な国を見聞しているカイオスの知見も必須だ。……仕方あるまい。多少の反発には目を瞑って、このメンバーで決定しよう」
日本へ派遣する使節団の面子を直々に考案していたルディアスだが、執務室のドアがノックされた。
「ルディアス様、私です。レミールです」
「レミールか。入れ、鍵は開いている」
「では失礼致します」
ルディアスの許可を得て執務室へ足を踏み入れたのは、やや性格がキツそうな印象を除けば絶世の美女と言って差し支えない容姿を持つ『レミール・パルファレス』であった。
「陛下、こんな時間までご公務をなされていたのですか?」
「あぁ、レミールよ。これはどうしても私の手で、確実にやり遂げねばならない事であるからな」
インクで汚れた手にレミールの耽美な手が添えられると、ルディアスは険しい表情を消して微笑みを浮かべた。
それもそのはず、レミールはルディアスの婚約者であるからだ。
「…日本へ送る使節団の内訳ですか?」
「うむ。日本は未知の国だ。文明圏外にありながら上位列強に匹敵する技術力を持つ…何か不測の事態があっても対処出来るような面々でなくてはな」
「それにしてもこのメンバーは過剰ではありませんか?これでは陛下に反抗的な貴族…特に私の叔父上がなんと言うか…」
レミールの表情が曇る。
姓で察せられるが、レミールはルディアスの一族と険悪な関係にあるパルファレス公爵家の当主の姪なのだ。
それを聞くと彼女はルディアスを籠絡する為に送り込まれた敵対者に思えるかもしれないが実際は、形だけの恭順を示す為に押し付けられた
当代パルファレス公爵の弟を父に持つ彼女は正直言ってあまり頭が良く無く、顔以外に良い点は無い公爵家の恥と扱われており、そんな中で父と母が馬車での事故で死亡してしまうと、次は自身の後継を皇都に送りたくない公爵の手によって名ばかりの後継にされ、人質としてルディアスの元へやってきた。
ルディアスも当初はパルファレス公爵家の者である彼女を警戒していたが、自身の弱みを覆す為に奮闘し、ルディアスの支えとなるべく献身しているレミールを見て徐々に認識を改め、今では相思相愛の婚約者なのである。
「レミールよ、そなたが気にする事ではない。このような汚い物事は余に任せ、そなたは我が妻として…そしてゆくゆくは余とそなたの子の良き母となれるように励む務めがあろう?」
「しかし、私も陛下のお役に立ちたいのです。何かこのレミールめに出来る事はございませんか?」
レミールの言葉を聞き、ルディアスは少し考える。
「ふむ…なら、そなたも日本に行ってみぬか?」
「私が…ですか?」
「うむ。今回の使節団には外一局長エルトと外三局長のカイオスが居る。ともなれば日本との交渉に不備が無いかを監査する必要があろう?」
レミールは外務局での不正を取り締まる『外務局監査室』に在籍している。
外務局の局長二名が直接相手国に赴くのであれば、何か不備がないように監査室から人員を同行させるべきであろう。
「私でよいのですか?」
「不満か?」
「い、いえ…私は外務局からは嫌われていますし…」
外務局監査室に配属された当初、レミールは自身に与えられた仕事を全うする事に必死だった為しばしば強権を振るう事もあり、外務局員からは『狂犬』と呼ばれ
「だが、使節団は様々な省庁の人員から成っている。各々を纏める為には、余の婚約者であるそなたが向いている。余が直接行けない以上、これが最善策だ」
「陛下……。分かりました。不肖レミール、使節団としての責務を全ういたします」
所変わって日本、九州北部に位置する福岡県福岡市にある福岡空港。
そこに降り立った日本政府専用機『B-777』から、ボーディング・ブリッジを通ってパーパルディア皇国使節団がターミナル内に姿を現した。
「これが…日本…」
ターミナルビルの大きな窓から見える福岡市街を見て、使節団の一員であるエルトが感嘆の声を上げる。
数えきれない程の高層ビルに、植物の根のように張り巡らされたアスファルト舗装の道路と、そこを走る無数の自動車は、神聖ミリシアル帝国やムーよりも発展した都市である事は疑いようが無い。
「"イシガキ空港"でも立派だったのに、"フクオカ空港"はとんでもない…。アルタラス王国にあるムーの空港何個分だ?」
滑走路や駐機場で待機する旅客機に目を奪われるカイオスは、検疫と自衛隊のオスプレイから政府専用機に乗り換える為に立ち寄った石垣空港を思い出しつつ、巨大な航空機を何機も保有する日本の国力に感心している。
「陛下が日本を気にするのも当然か…。凄まじい国だ…」
「皆様にお褒め頂き光栄です」
全てが初めて見る物ばかりなレミールがキョロキョロと辺りを見回していると、使節団の案内役である日本国外務省の外交官『
「朝田殿、この大都市が地方都市というのは本当なのですか?」
「ええ、我が国の首都である東京はより栄えていますよ。最も最近は行政機能の分散や地方活性化政策によって、以前よりも落ち着いていますが」
「朝田殿!あれは!あれは何という飛行機械ですか!?」
「あれは我が国の哨戒機『P-1』をベースに開発された旅客機『YP-22』ですね。およそ150人の乗客を運べる国内線向けのものですが、最近では国際線向けに胴体と翼を延長したバリエーションも開発されてまして……」
使節団の面々の質問に朝田がタブレット端末片手に答える中、レミールは…
「これは…?」
「あら〜、お客様。もしかして外国の方ですかぁ?もし良かったらこちらの化粧品、試してみませんか?」
「あ、いや…私は仕事で…」
「直ぐに終わりますから〜。あらあら〜♪お客様、とぉ〜ってもお綺麗ですねぇ〜。でもそのファンデーションはお客様には合わないかもしれません。ですので、発色を抑えたナチュラルな色合いの……」
免税店の化粧品売り場で、店員に捕まっていた。
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