トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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良く考えたらハリアーシリーズって相当長生きですよね


日本は静かに笑う

福岡駅より新幹線に乗り、広島駅で降りて観光バスに揺られて呉港へと到着したパ皇使節団一行。

彼らが来日前に日本の軍事施設の見学を希望した為、日本政府は海上自衛隊が保有する基地の中でも最大級である呉基地へ案内したのだが…

 

「おぉ…こ、これは軍艦なのか…?」

「まるでミリシアルの魔導戦艦のようだ…」

「皇国の150門級より遥かに巨大だ…」

 

感嘆の声を漏らす使節団メンバーの視線の先にあるのは、海上自衛隊が誇る第4護衛隊群と第1潜水隊群の姿である。

臨時旗艦(・・・・)である『いずも型護衛艦』の2番艦『かが』を始めとして『ながと型打撃艦』や『あさひ型護衛艦』、小柄な部類である『もがみ型護衛艦』すら皇国海軍最強と名高い『超フィシャヌス級(150門級)戦列艦』の倍以上のサイズであった。

そして何より彼らの目を引くのは、船体の殆どを海に沈めた黒光りする船のようなものだ。

 

「パーパルディア皇国の皆さま、初めまして。この基地の案内を担当する『黒川 寿二(くろかわ ひさじ)』と申します」

 

初めて乗った新幹線すら上回る衝撃で狼狽えている使節団の前に、呉基地所属の自衛官がやって来ると、キビキビとした振る舞いでビシッと敬礼して自己紹介をした。

 

「あ、あぁ…黒川殿。私は皇国軍作戦参謀を務めるマータル・ヨヒムと申す。それで早速質問があるのだが…」

 

「はい、マータル閣下。機密に触れない範囲とはなりますが、何なりとお聞き下さい」

 

「では、あの黒い…船のような物は何ですかな?大部分が沈んでいて…浮桟橋にしてはあの大きな出っ張りが邪魔に思えるのですが」

 

「あれは潜水艦(・・・)という軍艦です」

 

「セン…スイカン…?」

 

軍艦である事は分かったが、潜水艦なる物は聞いた事が無い。

全体的につるんとした質感で、砲も無く、高さもない為移乗攻撃に向きそうも無い。

そんな軍艦に出来る事はなんだろうか?マータルを始めとした使節団の軍関係者が頭を捻るが答えは出ない。

 

「潜水艦というのは自発的に水中に潜る事が出来る(・・・・・・・・・・・・・・)軍艦となります。そうする事で敵からの探知を避け、水中から魚雷…簡単に言えば泳ぐ爆弾を打ち出して敵艦を攻撃する兵器なんです」

 

「す、水中に潜る!?しかも泳ぐ爆弾!?」

 

作戦参謀なだけあり、マータルはすぐさま潜水艦という兵器の脅威に気付いた。

 

(そ、そんな軍艦があっては戦列艦も竜母も意味が無いではないか!魔導砲は水面に着弾した瞬間に炸裂するか急速に威力を失ってしまうし、ワイバーンの火炎弾は消えてしまう!しかも水中から爆弾で攻撃されれば、船底に穴が空いて浸水し、あっという間に沈没してしまうぞ…!)

 

「あ、あの…因みに速力なんかは…」

 

冷や汗を浮かべながらマータルは黒川に問いかける。

確かに潜水艦の脅威は分かったが、もし信じられない程に鈍足であればまだ対処のしようがある…そんな藁に縋るような問いであったが、それは黒川からの回答によりいとも容易く打ち砕かれた。

 

「そうですね…機密となるのであまり詳しくは言えませんが、こちらにある『さつま型潜水艦』は水中で30ノット以上を発揮し、先程お話しした魚雷は200ノット以上の速度で10km以上の射程を持ちます」

 

「さ、30…!?しかも200ノット?10km!?」

 

皇国の魔導戦列艦や竜母は空気圧を操作する魔石『風神の涙』を用いて帆船としては高速な15ノットでの航行が可能だ。

しかし、日本の潜水艦は水の抵抗を大いに受ける水中で倍以上の速度を発揮出来、武装である魚雷に至っては信じられない速度と射程を持っている。

もし、皇国が日本と敵対すれば、皇国海軍は日本の海上自衛隊によって一方的に蹂躙されてしまうだろう。

そんな評価を下したマータルは冷や汗を通り越し、顔を青くして小さく震えながら日本を決して敵に回してはいけないと決意した。

 

「失礼、私からも質問をよろしいですか?」

 

「はい、えぇ…っと…」

 

「私はハルカス・サマレスと申します。皇国において兵器の研究・開発を行っている『先進兵器開発研究所』の研究員です。それで質問ですが、日本の軍艦は砲が1門か2門程度しかありません。これでは火力不足なのでは?」

 

確かに皇国のように100門以上の砲を持つ戦列艦を運用していれば護衛艦…地球由来の軍艦は砲門数がなんとも頼りない物に見えてしまう。

もちろん、ハルカスも兵器を研究する職務にあるため長砲身の後装ライフル砲を回転砲塔に搭載すれば10門程度の砲門数でも100門級戦列艦を圧倒する性能を発揮出来る事を理解しているが、それでも護衛艦の砲門数は少なすぎる。

しかも、最も大きな砲を搭載している『ながと型』でもムーの『ラ・カサミ級戦艦』の主砲よりも小さい。

それ故の質問だったが、彼の疑問は黒川の言葉によって激し過ぎるぐらいに解決した。

 

「それは簡単な話で、我々が生まれ育った異世界(地球)では海戦における砲の価値が著しく下がったからです」

 

「砲の価値が…下がった?」

 

「はい。かつては我が国も46cmもの砲を9門備えた大戦艦を保有しており、他国もやや小さいながらも多数の戦艦を運用していたのですが、先程紹介した魚雷によってその優位は崩されました。海を征した戦艦は潜水艦や航空機から放たれる魚雷や爆弾…時代が進めば対艦誘導弾(対艦ミサイル)によって砲の射程外より攻撃されるようになり、次第に建造・運用コストがかかる戦艦は時代遅れの産物と成り果てたのです。詳しくはこの基地の見学後に見学される『大和ミュージアム』で調べる事が出来ますので、この辺りにしておきましょう。ともかく、砲より遠距離から精密に攻撃出来る兵器の登場により、現代の軍艦は最低限の砲しか装備していないのです」

 

「なっ…ほ、本当に日本は誘導魔光弾を保有しているのか!?」

 

一応、事前に簡単な説明を受けてはいたが、やはり面と向かって説明されると凄まじい衝撃である。

神話に語られる『古の魔法帝国』の力の象徴…世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国すら開発出来ていない誘導弾を主力として運用している日本には、逆立ちしたって勝てないだろう。

それを嫌という程頭に叩き込まれたハルカスは、自身の研究が果たして意味のあるものなのか分からなくなってしまった。

 

「わ、私からも良いだろうか?」

 

「はい、貴女はレミールさん…でよろしかったでしょうか?」

 

「うむ。ここに来るまでの間、バスの運転手が「臨時旗艦になってから少し寂しくなった」と呟いていたが、この軍港に停泊している艦隊の旗艦は他にあるのか?」

 

「はい、ご明察の通りこの基地を母港とする第4護衛群の本来の旗艦は『しょうかく型航空機搭載護衛艦』の1番艦『しょうかく』なのですが、現在『しょうかく』はドック入りして改修作業中です。なので、『しょうかく』と同じく航空機運用能力を持ち、十分な司令部設備のあるこの『かが』を臨時旗艦としているのです。まあ、現代では通信機器の発展によって艦隊を指揮するには本国の陸上基地でも十分ですが、通信障害に備えつつも慣例に従う意味でも艦隊旗艦を設定しています」

 

「なるほど…ところで『しょうかく』とやらは皇国に来た貴国の艦隊にいたあの空母なのか?」

 

「あれは2番艦の『ずいかく』ですね」

 

「ふむ…となると、『かが』とやらは『しょうかく』よりも随分と小さく見えるが?私も皇国に来た貴国の艦隊を見たが、『かが』の隣にある軍艦に比べて『ずいかく』は随分と大きかった。『かが』もかなりの大きさだが、『ずいかく』と比べれば幾分か小さいようだ」

 

「それは『かが』は敵対国の潜水艦に対抗する為に建造されたからですね。本来『かが』を始めとした『ヘリコプター搭載護衛艦』は"ヘリコプター"という垂直離着陸が出来る航空機を用いて、搭載する機器を駆使して潜水艦を探知・攻撃する事が目的です。しかし、『いずも型護衛艦』は『航空機搭載護衛艦(空母)』と比べて幾分か劣りますが戦闘機の運用能力を備えており、有事の際には簡易的な空母として運用なのです」

 

「なるほど…あの甲板上にある2種類の飛行機械が"戦闘機"とやらか」

 

レミールが『かが』の甲板上を指差し、駐機されているハリアーIIとF-35Bを指し示す。

 

「はい。あれはハリアーIIとF-35Bという戦闘機でして、どちらも垂直離着陸が可能な戦闘機です。特にF-35Bは超音速で巡航可能で、高度な誘導兵器の運用能力、そしてレーダーによる探知を無効化するステルス能力を備えた高性能機です」

 

「……レーダーとは何だ?聞いた事はあるが…」

 

「あ、あぁ…レミール様、レーダーというのはムーやミリシアルで開発・運用されている探知機器でして、"電波"という目に見えない物を用いて100km先の敵を探知する事が出来る装置らしいのですが…。申し訳ありません、これ以上の詳細は私にもさっぱりで…。しかし、もし日本の言う事が真実なら、日本の戦闘機は上位列強ですら捉える事が出来ず、一方的に攻撃を仕掛ける事が可能となるでしょう。……もっとも、ステルス能力なるものが無くとも超音速を発揮する速度性能や誘導兵器の運用能力がある時点で勝負にならないと思われます。無論、それは皇国が威信を懸けて開発した『ワイバーンオーバーロード』相手でも同じ事になるでしょう」

 

「左様か…」

 

黒川の説明を受けてマータルに問いかけるレミールだが、返ってきた答えに半ば諦め気味な様子だ。

皇国はムーが開発した飛行機械(戦闘機)『マリン』に対抗すべく魔導技術を駆使してワイバーンの最上位種とも言える『ワイバーンオーバーロード』を開発した。

最高速度430km/h、これまでより高速かつ高温な火炎弾を短いスパンで発射可能であり、体表を覆う鱗も鋼鉄に匹敵する強度を誇る空の覇者(・・・・)と呼ぶに相応しい存在だったが、日本は当たり前のように超音速かつ誘導弾を運用する戦闘機を保有している。

最早、馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

 

「あの、ではハリアーIIとやらはそれらの能力を持っていないのですか?」

 

控えめに手を挙げたマータルの側近が質問する。

黒川によるF-35Bの紹介では、超音速巡航能力、誘導弾運用能力、そしてステルス能力が強調されていたため、もしやハリアーIIにはそれらの能力が無いのか?と考えたためだ。

 

「えぇ、確かにハリアーIIはF-35Bと比べれば能力は数段劣ります。何せ初飛行は50年以上前、原型機の初飛行は70年以上前なので、本機種には持続的な超音速飛行やステルス能力はありません。とくに速度は初飛行当時でも比較的低速な1000km/h程度ですし…」

 

「50年以上前の兵器なのですか!?」

 

「もちろん、50年前の物そのままではありません。新造されたり、最新の機材を搭載して定期的な能力向上(アップデート)がなされていまして、我々が運用する機体は射程100km以上の『27式空対空誘導弾』と呼ばれる敵航空戦力を撃墜する為の誘導弾を装備する事が出来るので、決して単なる旧式ではありませんよ。ただ、やはり改修にも限界が見えてきたので、練習機として運用されている複座型以外は退役し、友好国に売却するという話もあります」

 

「売却…皇国が買うと言ったら売っていただけますか?」

 

マータルの側近が期待を滲ませた表情で問いかける。

確かに日本にとっては旧式かもしれないが、皇国にとっては正に異次元の性能であり、それこそ上位列強の航空戦力すら上回る力がある。

もし、自衛隊から退役するハリアーIIを大量導入出来れば皇国は上位列強の仲間入り…或いはミリシアルすら超越する事が出来るかもしれない。

そんな期待を存分に含んだ問いかけだったのだが…

 

「そうですね…これは私個人の考えなのですが、我が国は他国を侵略して植民地支配を行うような覇権国家に対して兵器を輸出する事は無いでしょう。我が国は今では平和を国是としているので、輸出した兵器が"護るために"ではなく、"破壊するために"使われる事は決して許容出来ません」

 

「そ、そうですか…」

 

明言はされなかったが、黒川の言葉は言ってしまえば「色んな国を侵略する皇国に兵器を売る訳ないだろ」という事だ。

普段の皇国ならそんな事を言われて要求を拒否された時点で戦争を吹っ掛けるだろうが、どう足掻いても日本に勝てない事を理解している使節団は押し黙ってしまった。

 

「では、この後は体験乗艦のお時間です。せっかくなので『かが』に乗艦し、ハリアーIIとF-35Bの離着艦訓練の見学も予定しております。さあ、こちらにどうぞ」

 

皇国使節団の打ちひしがれたような雰囲気を尻目に、黒川は『かが』の舷側から伸びるタラップへ彼らを案内し始めた。

 




感想、評価お待ちしてます

魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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