トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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あまり長々とやっても仕方ないので、パ皇の日本接触編はこの辺りで切り上げます

あとそろそろネタが無くなってきたので、次回からのサブタイトルは映画パロディの他にマンガ、ゲーム、アニメ、楽曲、文学作品のパロディも加えていきます


銃と皇国の旅立ち

使節団が日本視察から帰ってきて1ヶ月後、皇宮の大会議室では使節団メンバーが纏めた報告書を各々読み上げていた。

 

「……である事から日本の技術力は上位列強と同等或いは上回る為、今後は慎重に交渉せねばならないでしょう」

 

「分かった。今後とも日本について分析し、皇国の利益となる点については積極的に取り入れよ」

 

もうこのやり取りは何度も繰り返されていた。

「日本はヤバいから気を付けろ(意訳)」という報告は全員が必ず報告の終わり際に口にしており、それだけ使節団が日本に対して強い衝撃と警戒感を持っている事が見て取れる。

 

「ふぅ…これで全員の報告は聴き終えたな。では次だ」

 

「はっ。では皆様、各々今回の視察において得られた成果を発表して下さい」

 

首筋を揉みながら一息つくルディアスが会議の議題を次に進めろと指示を出し、それを受けたルパーサが議題を告げる。

 

「では私から…」

 

真っ先に手を挙げたマータルが自身の背後に控えさせていた兵士を側に呼び寄せ、持たせていた3つの箱をテーブルに置かせた。

 

「先程の報告でも申しましたが、日本の兵器は凄まじい性能です。彼らの練習機(・・・)は最も性能が低い『T-8』…彼らが"スーパーツカノ"と呼んでいた飛行機械ですら皇国の切り札であるワイバーンオーバーロードを上回る飛行性能を持つばかりか、合計1.5トンにも及ぶ爆弾や誘導弾を搭載する能力がある事からも軍事技術において日本は皇国の遥か先を行っています。そこで、ダメ元で日本に対し、兵器の輸出を打診しましたが…やはり断られてしまいました」

 

マータルの言葉を聞き、報告会の参加者達の反応は概ね二分された。

一方はわざわざ価値観が相容れない他国に兵器を輸出しないだろうと考えていた者達、もう一方は新参者が五大列強を蔑ろにするとはけしからんと考える者達である。

だが、続くマータルの言葉に相反する二者は驚きを露わとした。

 

「ですが、更なる交渉を行なったところ"銃"の輸出ならば前向きに検討するという回答を得る事が出来ました」

 

マータルの目配せに、兵士がテーブルに置いた箱を開ける。

その中にはそれぞれ1丁ずつ、3種の銃らしき物が緩衝材に包まれた状態で収められていた。

それを見た参加者達はまさかと言うような目で見慣れぬ銃らしき物に視線を注ぐが、それに構わずにマータルは一番小さな…それこそ掌に収まりそうな程小さな銃を取り出し、ルディアスに向かって恭しく捧げるように掲げた。

 

「日本が皇国への輸出を認めた銃は3種…まずこちらは『ニューナンブ M60』と呼ばれる短銃(ピストル)です。こんなにも小さいというのに5発の弾丸を連射可能で、威力も対人用としては必要十分といった具合となります。どうぞ、弾は入っていないので安心してお取り下さい」

 

「ほう…これが日本の銃か。小さい割には案外ズッシリとしているが、重くて持てん程ではない。しかし、こんなに小さいと射程はさほど無いだろう」

 

「はっ。その件ですが信じ難い事に本銃は熟練者であれば50m先の目標に命中させる事も出来ると日本側は申しておりました。皇国の歩兵銃(マスケット銃)は教本では50から60mが有効射程とされているので、日本の銃は皇国の銃よりも優れている事は間違いありません」

 

「なんと…」

 

マータルの手からニューナンブを受け取って検分していたルディアスは、その小さな見た目からは想像も出来ない性能に驚愕する。

だが、彼を驚愕させる銃はあと2つもある。

 

「続いてこちら…『M3サブマシンガン』と言う銃となります。日本側は『グリースガン』とも呼称しておりました」

 

「サブマシンガン?」

 

「簡単に言えばミリシアルやムーで運用されている連射式銃、"機関銃"を小さくした物との事です。こちらは本格的な機関銃より射程や威力は劣るそうですが、その分歩兵一人でも簡単に扱えると言う利点があります。そして劣るとされる射程については50から90m、威力も対人用としては十分…しかも1分間に400発程を連射出来るので、本銃1丁で歩兵数十人分の火力を発揮出来てしまうのです」

 

「なんと…!この小脇に抱えられるような銃1丁でか?」

 

「はい。日本で実際に発砲されたところを見ましたが、的が瞬く間に穴だらけになった有様は忘れる事が出きません」

 

「むむっ…。これは恐るべき銃だな」

 

「私も陛下と同意見です。…では次はこちらの銃です」

 

正に鉄の塊といった風貌のグリースガンを箱に戻したマータルが次に取り出したのは、皇国人でも馴染み深い木製の銃床とハンドガードを持つ銃だ。

 

「こちらは『M1カービン』と言う銃でして、我々にも見慣れた姿をしておりますが、性能は段違いです。射程は300m、威力はワイバーンの鱗どころか『地竜リントヴルム』の甲殻を貫徹する程であります」

 

「な、なんだと!こんな小さな…皇国軍主力歩兵銃より一回りも二回りも小さく華奢な銃がより遠くから、地竜を狩れるというのか…!?」

 

目を見開いて狼狽えるルディアスだが、彼の反応も無理は無い。

何故なら皇国は周辺諸国を圧倒する海上・航空戦力を誇っているが、最も得意とするのは火を噴く巨大な亀のような地竜『リントヴルム』を先頭に進撃する陸戦なのだ。

そんな皇国陸軍の主力を射程外から一方的に屠る事が出来る銃…ルディアスは自身の手にある"それ"が何倍にも重く感じた。

 

「わっはっはっ!日本も愚かよなぁ…こんな銃を輸出するなんて、自らの手の内を明かしているようなもの!これらの銃を解析し、量産すれば日本なぞ瞬く間に…」

 

「お言葉ですが、それは不可能ですな」

 

「なんだとぉ!?」

 

日本に対して憤りを覚えていた者達の一人が、日本を蔑む言葉を口にするが、マータルによって一蹴された。

 

「私の報告をお聞きにならなかったのですか?日本には超音速で飛行する飛行機械、鋼鉄の装甲を持ち馬より速く駆ける"戦車"なる戦闘車両、射程100km以上の砲を持つ軍艦…更には当たり前のように誘導弾を運用しています。間違いなく歩兵同士の白兵戦になる前に、皇国軍は壊滅的な被害を受けますよ」

 

「ぐっ…」

 

「それに貴殿は銃を解析しろと言いましたが、これらの銃は本体は勿論、弾薬に至るまで皇国の技術力では再現不可能な程に高度な技術が用いられています。それに加え、これらの銃は日本があった世界では90から70年程前に開発された物であるとの事です。我々に輸出されるのは、倉庫で眠っていた物、或いは特殊な用途の為に細々と生産されている物です。そんな銃を持ち、誘導弾や遥かに優れた技術を用いて作られた銃を装備した日本に勝てますかな?私は正直無理だと判断しております。加えて…」

 

「ぐっ…ぅぅ…」

 

「止めよ。そのような議論は後にせよ」

 

マータルの反論にギリギリぐうの音を出して押し黙る男だが、ルディアスの一声によってマータルの追撃は止まった。

 

「マータルよ、日本には勝てぬのだな?」

 

「100年先、200年先なら分かりませんが、少なくとも我々が生きている内は不可能でしょう」

 

「左様か…だが、だからと言って歩みを止める訳にもいくまい。日本より銃及び建築・農業技術を取り入れる為の特別予算を組む。一先ず、他国への侵攻は取りやめ、皇国内のインフラ再整備と皇国軍改革に尽力するのだ」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

この日、ルディアスの勅令により皇国大改造計画が始動。

これにより、皇国は大きな変革の道を歩み始めたのであった。




感想、評価お待ちしてます

魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編

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