トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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次回からはムー接触編です
多分、待っていた方も多い事でしょう


極右思想の一族

神聖ミリシアル帝国の首都『ルーンポリス』にそびえる『アルビオン城』。

世界最強の国家である同国の中枢たるその城では現在、皇帝を始めとした首脳陣による帝前会議が行われていた。

その会議の議題は無論、突如として現れた超科学文明国『日本国』についてである。

 

「では、陛下。こちらが日本との国交開設を証明する調印書及び、日本との協商条約調印書となります」

 

「うむ」

 

外務大臣である『ぺクラス・ドルマゲード』が恭しく差し出した皮の装丁が施された文書類を受け取り、重々しく頷きながら内容を確認するのは、神聖ミリシアル帝国に君臨する皇帝『ミリシアル8世』だ。

 

「……ふむ、問題はない。しかし、いくつか確認しておきたい。国交開設に伴う各種取り決めに関しては余が日本を列強国相当として取り扱うように、と指示したが故に特に言う事は無いが…協商条約についてだ」

 

ミリシアルは下位列強以下の国々とは異なり、奴隷や植民地等は廃止しており、勿論日本に対しても一方的な搾取を目的とした要求は行っていない。

関税自主権を始めとした取り決めは、正に異世界における先進国としてあるべき姿だ。

しかし、ミリシアル8世が気にしたのはミリシアルと日本の間で結ぼうとしている協商条約…貿易や両国間における人々の移動についての取り決めである。

 

「輸入品に対する関税の税率に、防疫の点から禁輸に指定すべき物品は問題無い、よく出来ておる。しかし、この『技術交流を目的とした両国間の官民挙げての人員交流』、これはどのような意図があるのだ?」

 

「陛下、その件に関しては私が…」

 

ミリシアル8世の問いかけに応えたのは、軍務大臣『シュミールパオ・ラック』だった。

 

「カルトアルパスにて日本が開催した博覧会において日本の高い技術力を我々は否応無しに理解しました。ですが、我々はただ打ちのめされただけではありません。日本は優れた流体力学や加工技術によって高性能な兵器をいくつも開発しており、それは科学によるものながら幾つかの技術は我々(魔法文明)にも応用出来るものがありました」

 

そう言ってシュミールパオは会議室に設置されている大型モニターを操作する。

 

「此方は技術研究開発局がテストベッドとして運用している天の浮舟『エルぺシオ1』ですが、博覧会中に得られた知見を元に各種の改良を行ったところ、速度は最新鋭機である『エルぺシオ3』に匹敵する物となる等、大幅な改善が見られました。また、現在は『ルーンズヴァレッタ魔導学院』にて日本の『J79』なるエンジンを参考にした新型の『魔光呪発式空気圧縮放射エンジン(マジックジェット)』と、『F-86D セイバードッグ』という亜音速後退翼機を参考とした機体を開発中であり、これらは従来の天の浮舟を上回る性能になる可能性が非常に高いとされています」

 

モニターに映し出された航空機を示しながら言葉を続けるシュミールパオ。

 

「ルーンズヴァレッタの研究者達は日本が持つ技術を解析すればより高性能な…超音速機や誘導弾の実用化すら可能であると証言しています。ですので、我が国が魔帝復活に備える為には…」

 

「日本の技術が必要不可欠である。そうであるな?」

 

「はい。しかし、日本もタダで技術を与える愚は犯さないでしょうし、金銭による取引となりますと多額の情報料を要求されかねません。ですが、幸いな事に日本は魔導技術に大きな関心を寄せているようでして、特に魔石の加工技術については国交開設交渉の場で非公式ではありますが、技術移転を打診された程です」

 

「ふむ…日本は魔法が存在しない異世界から転移してきたと自称しておったな。もし、それが事実であれば彼らにとって未知の技術である魔法は魅力的な資産なのだろう。……良い。ではこの技術交流を前提とした人員交流はこのままで進めよ。ただし、くれぐれも開示する技術は精査するように。日本側もそうするであろうからな」

 

「「ははーっ!」」

 

ミリシアル8世の言葉にぺクラスとシュミールパオが平伏するように頭を下げる。

 

日本との付き合い方を考える帝前会議は、日が沈むまで続けられた。

 


 

神聖ミリシアル帝国東部、『ミルキー王国』との国境近くにある序列18位の都市『エパ・レサス』。

地方議会の会議室では、市長である『パーヴェル・レサス伯爵』を始めとした市政を司る地方議員達が集まっていた。

 

「諸君、中央議会は日本との国交を開設したようだ。内容としてはまるで日本を列強国と見ているかのような消極的な各種条約…まったく以て嘆かわしい!ポッと出の新興国、しかも下劣な科学文明国を貴人のように扱うなぞ、神聖帝国の名が泣く!」

 

憤りを隠しもせず、テーブルに拳を叩きつけるパーヴェルに議員達はそうだそうだと同意し、中央政府を痛烈に批判する彼を称賛する。

神聖ミリシアル帝国は魔帝の先制攻撃に備えて各都市が首都として機能出来るように地方自治制度を整備していたのだが、それは近年になって悪い方向に地方自治が進んでしまっている。

特に顕著なのがエパ・レサス地方議会のような魔法文明・ミリシアル至上主義政党…つまりは極右政党の台頭だ。

彼らは「魔帝に対抗出来るのはミリシアルだけであり、他国はミリシアルの為に資源を供出し、有事の際は弾除けになって散るべきである」といった身勝手な思想を持ち、「科学文明なぞ魔法も使えぬ劣等種族の苦肉の策」と断じる、正に厄介な連中なのである。

特にエパ・レサスは中央政府から離れている上に代々統治するレサス伯爵家がそういった極右思想の持ち主である事から、ミリシアルにおける極右の総本山となっているのだ。

 

「しかも日本はフィルアデス大陸の東…つまり、我が国は東は日本、西はムーという野蛮な科学文明国に挟まれてしまったのだ!野蛮で蒙昧な科学文明人はいつ、どのような卑劣な手段で他国を侵略し、魔帝に対抗する我が国を妨害するか分かったものではない!よって私は、日本を滅ぼすべく見込みのある友人(・・)へと援助を行っている!早ければ2年後には日本は滅び、中央政府は蛮国に尻尾を振った己の愚かしさを思い知る事となるだろう!その時こそ弱腰の中央政府を糾弾し、我々が帝国の中枢となる時である!皆の者、神聖帝国が世界帝国となる日は近いぞ!」

 

「レサス伯爵万歳!」

「伯爵!一生着いて行きます!」

「日本もムーもこの世界には要らない!」

 

熱狂と称賛の中、パーヴェルはワイングラスを掲げて悦に浸っていたのだった。




感想、評価お待ちしてます

魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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