トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
神聖ミリシアル帝国での博覧会、並びに国交開設交渉を無事に終えた日本は続いて第二列強にしてこの世界では数少ない科学文明国である『ムー』の商業都市『マイカル』へ艦隊を寄港させ、博覧会を開催していた。
「すごい!すごいすごいすごいぞ!これが日本!これがムーが転移した後の地球の技術か!」
駐パーパルディア皇国大使である『ムーゲ・ニソー』と日本の外交官による接触によってムーと日本は同じ世界からこの世界に転移してきた事、また日本はムーが地球にあった頃の友好国であった『ヤムート』の末裔である可能性が非常に高い事が判明し、同じ科学文明立国である事も相まってムー国民の日本に対する関心は最高潮となっている。
それを示すようにカルトアルパスでの博覧会よりも多くの見物客が押し寄せ、入場制限を設けなければならない程であった。
「これが"戦車"か…。なんて大きさだ。まるで要塞じゃないか!」
開場三日目である本日はムーの政府・軍関係者のみ入場可能となっており、幸運にも入場を許可されたムー軍随一の技術士官としてちょっとした有名人である『マイラス・ルクレール』は高すぎるテンションのまま、陸上自衛隊の装備品を展示したブースの一角に存在感満々で鎮座する『33式戦車』の周りをグルグルと歩き回る。
「44口径長130mm砲を主砲に、主砲脇の7.62mm機関銃、砲塔上面には12.7mmもしくは20mmの遠隔操作式重機関銃。平地であれば時速70kmで走行可能…防御力に関しては詳しく書かれていないけど、きっと自分の主砲に耐えうるぐらいはあるはずだ。すごい…すごいぞ!正に陸上戦艦じゃないか!もしムー陸軍と陸上自衛隊がぶつかったら
自国の軍が負けると言う予想を立てているというのに何処か嬉しそうなマイラスであるが、技術オタクな彼はムーが去った後の地球がこんなにも高い技術に到達している事に喜びを覚えているのだ。
「おっ!こっちは搭載する砲弾かな?なになに…多目的榴弾に、徹甲榴弾…これは…装弾筒付翼安定徹甲弾?……ほー…発射と同時に周囲の筒が外れて、真ん中の細長い矢のような弾体のみが飛翔する仕組みか。なるほど…これなら発射のエネルギーを一点に集中出来ると言う訳か。…1m以上の厚さの均質圧延鋼装甲を貫通可能!?軍艦でも相手にするのか!?」
ムー軍、特に陸軍は他国への侵攻よりも領土防衛を主軸としており、有事の際は塹壕や掩体壕、トーチカを駆使する事によって敵軍を一歩たりとも進めさせないというドクトリンをとっている。
しかし、33式のような戦車があればどうなるか…幅広の履帯は塹壕や障害物を軽々と乗り越え、巨大な砲は掩体壕やトーチカを易々と破壊し、その強固な装甲は機関銃や野砲を弾き返す事であろう。
そうなれば
「うむむむ…見れば見るほど凄まじい兵器だ…!しかし、この兵器は純粋な科学文明の産物。我が国も時間はかかるだろうが、戦車を開発出来るはずだ!」
幸いな事にムーには履帯を備えた農業用トラクターが実用化されており、また高初速砲を製造する技術もある。
いきなり33式レベルとはいかないかもしれないが、それでも戦車を開発する事は不可能ではない筈だ。
そう考えるマイラスは技術士官としての使命に燃えていた。
「こっちは…『10式戦車』というのか。なになに…33式と同時運用されていて、33式は広大な土地における敵の大戦車部隊との決戦に、対して10式は都市部や起伏の多い地域における敵特殊部隊や軽装甲車部隊を排除する為に運用されている…か。なるほど、確かに10式は33式より一回りぐらい小さいな。だけどこっちもかなりの大きさだし、主砲だって120mmだ。それにこっちは縮尺模型だけど、『90式戦車』ってのもある。90式は33式の純粋な前世代型なのか…という事は日本にとっては型落ちの兵器…。うーん…技術屋がこう言っちゃなんだが、日本が90式、欲を言えば10式を売ってくれれば良いんだが…。あと出来れば技術移転も…」
ムーはムー大陸の半分を治める大陸国家であり、強力な陸上戦力…特に戦車のように火力・防御力・機動力を併せ持った兵器は喉から手が出る程に欲しい。
時間をかければ一から開発する事も出来るであろうが、日本と同レベルになるには何十年かかるか分からない。
「我が国と日本は離れているし、まだ100%確定している訳ではないけど、同郷の古馴染みだ。政府が余程下手な真似をしなければ兵器輸出ぐらいは…」
ブツブツとつぶやきながらマイラスが向かったのは、歩兵用装備が展示されているブースであった。
「おっと、大物もいいけどやっぱり陸戦は歩兵が重要だ。ほうほう…これが日本の歩兵銃か。5.56mmの軽量高初速弾を用いる"アサルトライフル"と言う連射銃で、アルミニウム合金と
展示台に置かれている『20式小銃』を前にしてパンフレットと見比べていると、近くに居た広報官から実際に持っても大丈夫だと言われ、興味津々な様子で20式を構えてみるマイラス。
「…軽い。我が国の制式採用歩兵銃は装弾数5発の
展示用に作られた20式の無稼働実銃の可動式ストックやチークピース、セレクターなどを検分するマイラスは、こんなにも精巧な銃を大量配備する日本の技術に驚愕しきりだ。
「え?これは配備が始まったばかりの装備なのですか?…えぇ!?装備体験までよろしいのですか!?」
一頻り20式を検分し終えたマイラスへ、広報官が展示品を指差しながら案内する。
マイラスが案内されたのは、自衛隊が配備しているパワードスーツ『34式強化戦闘服』に『29式12.7mm重機関銃』と『31式狙撃擲弾銃』の無稼働実銃を搭載した物を着用体験出来るエリアだった。
「おっ…おおっ!軽い!体が軽い!まるで何も持っていないような…いや、むしろ見えない力で体の動きを補助されているかのようだ!」
29式と31式、それらの弾薬のダミー合わせて合計重量は50kg以上にもなるが、装着者であるマイラスにはその重さは全く伝わってこない。
こんなにも高性能な補助具が一切の動力を使わずに稼働しているのは驚愕の一言だ。
「これ…欲しいなぁ…。絶対必要になる装備だ。政府には何が何でも日本との友好関係を構築してもらいたいものだ」
やはりムーの発展の為には日本との友好関係が必要である。
それを改めて痛感したマイラスは、34式を纏ったまま飛んだり跳ねたりしていた。
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