トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
マイカルにて様々な展示が行われている頃、市街地より離れた位置にあるムー陸軍マイカル連隊の基地の射撃場では、多数のムー軍人と少数の日本の自衛官が集まっていた。
「えー、ではこれより
用意された木箱の上に乗り、拡声器越しに名乗った雁臼にムー軍人達の視線が向くが、彼らの意識は雁臼の背後に並べられた自衛隊車両に釘付けだ。
「皆さん、私より私の後ろにある物が気になりますよね?……あぁ、大丈夫ですよ。お気持ちは分かりますので。では早速、車両の説明に移りましょうか」
雁臼の言葉に気不味そうにするムー軍人達だが、彼らの内心を察している雁臼は軽やかな足取りで木箱から降りると、整然と横に並べられた車両の右端へと歩み寄った。
「先ずはこちらは『1/2tトラック』という車両です。乗車定員6名、積載量440kgであり輸送用車両の中では最も小型の物ですが、民生品がベースとなっているので乗り心地や燃費が良好なので広く使われています。前線で直接撃ち合うような車両ではありませんが、幌を外せば荷台に機関銃を搭載する事が出来ます。あ、因みに本車は先程言ったように民生品ベースですので、暖房や冷房が備え付けになっているので快適ですよ」
「となると日本車には暖房と冷房が当たり前に装備されているのか…」
「暖房ならまだしも冷房が付いた車なんて、我が国では国王陛下や首相が乗る専用車ぐらいしかないぞ」
「では続いて此方の車両は『高機動車』と言いまして、こちらも幅広く使用されている車両となります。10名の人員、或いは2トンの物資を積載可能となっており、バリエーションとして各種誘導弾、レーダー、大型発電機を搭載した物があり、陸上自衛隊以外にも航空自衛隊の基地警備用として多数が配備されています。今回の展示車両は市街地に浸透した敵部隊との戦闘を考慮し、追加装甲や遠隔操作式機関銃を備えたタイプとなっております」
「日本の誘導弾はこんな車両にも搭載出来るのか…」
「しかし、さっきの1/2tトラックと比べたらかなり大きいぞ。こんな図体で市街地戦闘が可能なのか?」
「それに関しては問題ありませんよ。本車は確かに大柄ですが、4WSというステアリング機構が備わっていまして、曲がる際は前輪だけではなく後輪も若干ながら可動するので意外と小回りが効くのですよ」
「こちらは現在マイカルで行われている博覧会で展示されている33式戦車の車体を流用し開発された重装甲型歩兵戦闘車『33式歩兵戦闘車』となります。隊員内では33IFVと呼ばれていますね」
雁臼が示したのは、33式戦車によく似た姿を持つ装軌式車両であった。
これこそ89式歩兵戦闘車以来の歩兵戦闘車となる『33式歩兵戦闘車』である。
本車は33式戦車の車体を流用して開発されたのだが、33式戦車自体がウクライナ戦争後に日本政府に引き抜かれたロシア人戦車開発者の協力を得た上で、更には乗車保護能力に定評のあるイスラエルの『メルカバ』を参考に開発されたものなのだ。
その為、33式戦車は車体前方に頑強なディーゼルエンジンを搭載、その後ろに4名の乗員を収容する装甲カプセル、その後ろは弾薬庫となっており、爆発物と乗員を完全に隔離する事で高い乗員保護性能を担保しているのだ。
そしてそのような特異な構造を有している事から本車の後方は弾薬を下ろせばそれなりのスペースを確保出来る為、陸自は本車をベースに30mm機関砲を装備した砲塔に挿げ替え、130mm砲弾を収納していた弾薬庫を乗車スペースとする事で主力戦車に匹敵する防御力を持ちつつも、8名のパワードスーツを装備した歩兵を収容出来る重IFVこと33式歩兵戦闘車としたのである。
「すいません、歩兵戦闘車とはなんですか?」
「あぁ、そっか…この世界には歩兵戦闘車は無いのですね。えー、歩兵戦闘車というのは前線まで素早く安全に歩兵を運搬出来る速度と装甲を備えつつも、敵装甲車両との戦闘も行える攻撃力を持った戦闘車両です。場合によっては敵戦車すら撃破可能なので、地球においては重宝されていました」
「なるほど…」
「はい。本車の武装は30mm機関砲なので正面からの撃破は不可能ですが、対戦車誘導弾を搭載可能なので十分戦車に対抗出来る攻撃力は確保されていますよ。では続いて…こちらを紹介致します」
続いて雁臼が示したのは、33IFVよりかなり小さな─半分とまでは言わずとも30〜40%程小さい─装軌式車両であった。
「此方は今年になって部隊配備が始まった最新鋭の戦闘車両『36式無人戦闘車』です」
「無人!?」
誰かの驚愕した声が一気に波及し、ムー軍人達が大きくざわめく。
それが落ち着くのを待ち、雁臼は解説を始めた。
「皆さん、大変驚いているようですが、本車は皆さんの想像通り
雁臼の言葉に十名程が頷く。
「では、こう思ったのではありませんか?…なぜ33式戦車は4名搭乗出来るのに、乗員は車長、砲手、操縦手の3名だけなのだろう、と…」
「あ…」
「た、確かに…」
「そう言えばそう思った…」
33式戦車の乗員区間は通常の自動車のように縦横2列に座席が配置されており4名搭乗可能だが、90式・10式から引き続き自動装填装置を採用しているため装填手が不要である。
それ故になぜわざわざ4人目のスペースを確保しているのか…33式戦車を見学した者達はそれを気にしていたのだ。
「その疑問の答えが
「あ、あの!33式戦車では3名の乗員が必要でしたよね?なのに36式無人戦闘車はたった1名で、しかも遠隔操作が出来るのですか?」
「その件については問題ありません。36式は搭載したレーダーや各種センサーから得られたデータを
「な、なるほど…因みに武装は…?」
「33式戦車と同様の44口径長130mm砲を主兵装とし、12.7mmや7.62mmの機関銃、更には敵歩兵による肉薄攻撃や対戦車兵器を迎撃するためのアクティブディフェンスシステムも搭載しています。人が乗っていない以外は戦車と変わりません。あと余談ですが本車の管制システムは非常にコンパクトですので、先程紹介しました1/2tトラックや高機動車に搭載して運用する事も可能です」
「なんと…」
40代後半と思わしきムー軍人が頭を抱える。
彼はムー西部方面隊の主力部隊が置かれたキールセキ駐屯地の司令官『マクゲイル・セネヴィル』と言い、国境に近いため彼が指揮する部隊はムー陸軍有数の精鋭なのだが、彼の部隊を以てしても陸自の戦闘車両に勝てる気が全くしない。
例え決死の自爆攻撃で1両や2両撃破しても無人車両ならば人的損害を与える事すら出来ないのだから、マクゲイルの苦悩も当然である。
「おっと、少し解説に時間を取りすぎましたね。ではそろそろ搭乗体験会に移りたいと思います。これよりどなたがどの車両に搭乗するかを抽選しますので、番号を呼ばれた方は前へお越しください。えー、では36番の方ー…」
マクゲイルの苦悩を知ってか知らずか、雁臼は箱に入ったクジを引き、書かれた番号を読み上げてゆく。
余談だが、マクゲイルは幸運にも33式歩兵戦闘車に搭乗する事が出来たのだが、日本の戦闘車両を間近に感じて更に打ちひしがれる事となった。
特にプロットなんかは作ってないので矛盾や以前の話との食い違いが発生するかもしれませんが、気にしないで下さい
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