トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
申し訳ありません
──ボォォォォォォ……
遠くで汽笛が鳴り響き、微かに人々の歓声が聴こえる。
二週間にも及ぶ博覧会と外交交渉を終え、無事にムーとの国交開設に至った日本国艦隊が次の目的地であるレイフォルへと出港して行くのを、ムーの人々が見送っているのだ。
「レイフォルはグラ・バルカス帝国なる国によって支配されているが…まあ、
港を遠くに望むムー国防軍マイカル防衛局の建物の会議室の窓に寄り掛かって参謀本部の大佐『ミック・マルダー』が呟く。
「大佐、参加者の方々が揃いました。始めましょう」
「うむ、そうしよう」
秘書からの言葉を受け、ミックは会議室に並べられたテーブルの一角に歩み寄ると、集まった30名程のムー国防軍関係者達を見渡した後に口を開いた。
「では皆さん、これより日本国に対する認識を共有する為の会議を行います。皆さんから何かありますでしょうか?」
「では、私からよろしいでしょうか?」
初めに挙手したのは、ムー陸軍屈指の精鋭である西部方面隊を率いるマクゲイル・セネヴィル大佐だ。
「マクゲイル大佐、どうぞ」
「では…先ずは陸軍である私から見た
「西部方面隊の幹部である貴官がそう評するとは…私もある程度は聞き及んでいますが、その判断に至った理由を説明して頂けますか?」
「はい。そもそもの話として日本には我が国には存在しない強力な兵器が幾つも存在します。先ずは戦車…この兵器は主武装である130mmもの口径を持つ高初速砲と副武装として8mm級及び13mm級の重機関銃を装備し、複合装甲と呼ばれる2000mmもの厚みを持つ鋼鉄板に相当する防御力を持つ装甲に覆われ、その上で無限軌道によってあらゆる地形を走破し、最高で70km/hもの速度で走行する事が出来ます。正に動く要塞…もし、我々が戦車を撃破しようとするならば重砲の直撃か、大量の爆薬を埋めた地点に誘い込むぐらいしか打つ手がありません」
「ふーむ…私も展示されている物を見学しましたが、そんなにも手強い相手なのですか?」
「えぇ、手強いどころの話ではありません。他の方面隊幹部と話合ってシュミレーションをしてみましたが、1台の戦車を撃破する為には鉄筋コンクリート製のトーチカや各種火砲、精鋭の戦闘工兵を一個師団分用意してやっと勝てるかどうか…と言ったところです。しかも日本陸軍は戦車を4台1組として運用し、場合によっては無人戦車をさらに4〜8台追加で運用する想定であるようです。そうなれば単純計算ではありますが、それだけで12個師団に匹敵する戦力となるでしょう」
「12個師団!?」
「陸軍の常設師団は24個…つまり戦車とやらの部隊が陸軍の半数に匹敵する戦力だと言うのか!?」
「わ、我が国も戦車の開発をすべきだ!」
「静粛に!……マクゲイル大佐、他には?」
マクゲイルが提示したシュミレーション結果に参加者から次々と驚きの声が挙がる。
それに対し進行役であるミックは狼狽する参加者らを静かにさせると、マクゲイルへ続きを話すように促す。
「後は砲兵火力も圧倒的です。射程40kmを超え、目標まで誘導される自走能力を持つ重砲や、軽便な車体に搭載されながらも105mmという口径を持つ榴弾砲…さらには航行する艦船を射程外から一方的に攻撃する事が出来る
「なるほど…つまり日本と敵対するのは得策ではないと…」
「先の博覧会も我々にそう思わせる為の策略なのでしょう。そして、我々がそう思った以上、日本の策略はまんまと成功したと…」
「失礼、私からもよろしいか?」
マクゲイルとミックが日本の実力を改めて噛み締めていると、参加者の一人である海軍准将『レイダー・ガーランド』が挙手した。
「レイダー閣下、どうぞ」
「では…マクゲイル大佐からの情報は非常に有意義なものだった。確かに日本陸軍による上陸を許せば我が国は壊滅的な被害を被るだろう。しかし、上陸をする為には我々海軍を突破しなければいけない。如何に優れた陸軍戦力を持っていようが海で隔てられている以上、艦隊決戦に勝利せねば上陸は果たせない」
「ではレイダー閣下は日本の艦隊を…」
「うむ、自信を持って勝てないと言おう」
「えぇ…」
レイダーから飛び出た"勝てない"という発言にミックは困惑の表情を浮かべる。
「まぁまぁ、そんな顔をしないでくれ。私だって得られた日本艦隊の情報を精査し、その上で机上演習の真似事をして色々とシュミレーションしたのだよ?しかしだねぇ…30ノットで走り回り、100kmもの射程を持つ砲、400kmもの射程を持つ対艦誘導弾、無数の対空誘導弾を装備した艦船をどう倒せばよいのだ?しかもそれだけではなく、超音速機を搭載した空母に、水中に潜って魚雷なる兵器で喫水線下を攻撃する"潜水艦"なる艦船…どう足掻いても我々がどうにか出来る相手ではない」
「そ、そうなのですか…」
「あ、あのっ!」
レイダーの言葉を受けて天を仰ぐミックへマイラスが挙手する。
「その潜水艦という艦船ですが、どうにかなるかもしれません」
「君は確か…」
「技術士官のマイラス・ルクレールです。私も自分なりに色々と推測してみたのですが…潜水艦を探知するには
「ほう…」
「先ず潜水艦は自発的に潜水出来る事から、深度が浅ければ目視での発見、浮上していれば近年実用化されたレーダーによる発見が可能でしょうが、水深50m以上に潜られればそれらも不可能になるでしょう。しかし、音は別です。鯨のような一部海棲哺乳類が音波によって遠方の同族とコミュニケーションを行うように、音波は水中では空気中より遠くに届く特性があります。これを利用し、潜水艦が発する音を探知すれば大まかな位置が割り出せる筈です」
「なるほど…水中の音を察知出来るような装置があれば良いのか」
「はい、そう言った装置がいくつかあれば測量の要領でより細かい位置を特定出来るでしょう」
「「「おぉ…」」」
未知の兵器への対抗策を自力で編み出したマイラスへ
「君は音と磁気と言ったな?音は理解出来たが、磁気はどういう事かね?」
「はい、えぇ…っと…これ、借りますね」
レイダーからの問いかけを受け、マイラスは会議室の壁に取り付けられている黒板から磁石を拝借すると自身が身に付けていた安物のネクタイピンにくっつけた。
「日本の技術は優れていますが、基本的な部分は我々も知る技術の延長線上にあると思われます。ですので、おそらく艦船も基本的には金属…鉄で作られている筈です」
「だろうな。乗艦したが少なくとも木材や樹脂ではない」
「はい。コストや強度、加工難易度を考えれば主要な材料は鉄…そして鉄であればこのように…」
そう言ってマイラスはネクタイピンから磁石を外し、ネクタイピンの方を黒板に近付けた。
──カチッ…カチッ…
「ご覧下さい。磁石と暫く接触させただけでただの鉄だったネクタイピンに弱い磁力が発生しています。そしてこれはネクタイピンより大きな艦船にも同じ事が言えるのです」
「……地磁気か」
「はい、レイダー閣下。惑星はそれ自体が巨大な磁石であり、惑星上に存在する物はすべからく地磁気の影響を受けています。それを踏まえれば、建造中や停泊中の艦船も地磁気の影響を受け、少ないながらも磁気を帯びている筈であり、航行すれば地磁気に乱れを発生させると思われます」
「つまり、地磁気の乱れを探知する装置があれば先程の水中の音波を探知する装置と組み合わせて潜水艦を探知出来ると?」
「はい。ですが、これは私の推測でしかありません。もっといい方法があるかもしれませんし、それ以前に潜水艦の音や磁気を探知出来るかも不明ですので…」
「マイラス君」
保険を掛けるように言葉を続けるマイラスへ、レイダーが声をかける。
「君は中々に…いや、とても優秀だ。未知の兵器への対抗策をこうも思い付くとは感服したよ。君のアイデアを海軍本部へと提出したいのだが…提出レポートの作成を手伝ってもらえないだろうか?」
「わ、私で良ければ!」
「あー…レイダー閣下、マイラス技術士官、続きをしたいのだが…」
若き才能に感動するレイダーと、自身を認められた事に浮つくマイラス。
そんな二人を前に、ミックは苦笑いしつつ進行役としての責務を果たそうとしたのだった。
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