トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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細かい事は気にしないのが本作を楽しむコツです


訓練状況異状なし

「いーちにーっ!いっちにっ!そーれっ!」

 

「「「「「いーちにーっ!いっちにっ!そーれっ!」」」」」

 

よく晴れたある日の午後。

クワ・トイネ公国の国境の街である『ギム』の守備隊駐屯地では、公国防衛軍の兵士達が訓練に励んでいた。

 

「よーし、小休止!水分補給を行え!」

 

ダミーの砲弾を担いでジョギングする兵士達を先導していた十士長(上官)がホイッスルを吹き鳴らし、休憩を命ずる。

 

「ふはぁ〜…疲れたぁ…。あんな便利な乗り物があるってのに、こんな走る訓練をさせられるとは思わなかったぜ」

 

「全くだな。しかもこんな錘を担いでなんて…。だけど、ジエイタイ(日本軍)ジエイカン(戦士)達はこれよりデッカいのを担いで俺たちより早く走るらしいぞ?」

 

「うへぇ、バケモノだ」

 

「だけど俺たちが乗る事になる"ヒトロクシキ"よりデカイ"センシャ"に乗るぐらいなんだから、それぐらい出来ないとダメなんだろうな」

 

息を整え、運動場の端にある木陰へと向かいながら談笑する兵士達であるが、彼らの視線の先には"鋼鉄の獣"が眠っていた。

角ばった多面体の箱を大小二段重ねにしたような姿をしており、下側の大きな箱には大直径の黒い4対8個の車輪があり、上側の小さな箱には太く長い鉄の柱のような物が1本、前方に向かって生えている。

これはかつて、海を渡ってやって来る敵国を撃破すべく日本国で開発され、陸上自衛隊によって運用されていた『16式機動戦闘車』である。

舗装路であれば時速100kmで走行出来、装甲車や場合によっては1世代前の戦車すらも撃破可能な105mmライフルを備えた優秀な戦闘車両なのだが、西暦2030年に行われた防衛省主導の陸自大改革計画によって後継車となる『30式モジュール装甲車』が開発・配備され始めた為、退役が進んでいたのだが、まだまだ使えるという事でクワ・トイネ公国とクイラ王国に輸出されたのだ。

 

「こうして見るとヒトロクシキでもとんでもないデカさなのに、"サンサンシキ"はもっとデカイんだよなぁ…。オレもいつかサンサンシキに乗ってみてぇ」

 

「その為にはまずヒトロクシキを完璧に使えるようにならないとな。…そろそろ休憩が終わるぞ。遅れたら全員腕立て伏せだから、早めに行くぞ」

 

「へーい」

 

兵士の一人が腕時計で時間を確認し、休憩時間がもうじき終わる事に気付くと、他の兵士を引き連れて再び運動場へと戻って行った。

 

 


 

「プレジデント・ナルシマ、提案とは一体なんでしょうか?」

 

総理官邸の応接室。

そこでは幾名かのSP(警備)が見守る中、日本国内閣総理大臣である成島と浅黒い肌の外国人が何やら話し合いを行っていた。

 

「急な呼び出しに応じていただき誠に感謝します、アントニオ・アルティーメ大佐」

 

成島の対面に座るのは、キューバ革命空軍第252連隊長であるアントニオ・アルティーメ大佐であった。

何故キューバ軍の佐官級の人物が日本に居るのか…それは、キューバがアメリカとの国交正常化を完璧な形で成し遂げたからである。

細かい経緯や政治的な事は省くが、とにかくアメリカとの敵対関係を解消したキューバはこれまで友好的にしていたロシアと距離を置く事を推し進め、その姿勢は軍事面にも影響を及ぼしていた。

しかし、残念ながらキューバ軍は万年金欠であり、最新鋭戦闘機(F-35)なんかには手を出せない。

だからと言って手持ちは冷戦期のロートル(Mig-21・23・29)ばかり…いくら近くに友好的な世界最強の軍事力(アメリカ軍)が居たとしても、それにべったり頼り切る事はキューバ人のプライドが許さなかった。

しかし、かと言って安く手頃な戦闘機を売ってくれるロシアはもう頼れない…そんなキューバへ手を差し伸べたのが、日本であった。

ロシアの軍用機メーカーを買収し、それらを使ってビジネスをしようとしている日本は販売実績を渇望しており、そんな折に都合よく戦闘機を欲する国が現れたものだから勢いよく飛びついたのだ。

 

日本は自国の技術をアピールする為に先ずはキューバが保有するMig-21bisの大規模改修を安価で提案し、キューバもそれが可能なのかと疑問に思いながらも藁にも縋る思いで合意したのだが、物作りガチ勢(魔改造狂い)な日本はとんでもない改修を実現してしまった。

その改修内容というのが以下の通りである

・レーダーをフェーズドアレイへ変更。

・エンジンをIHIが開発したF110並みの推力を持ちながらもよりスリムかつ低燃費なターボファンエンジンへ換装。

・エンジン、電子機器の小型化によって空いたスペースに燃料及びM61A2バルカン砲を搭載。

・エンジンノズルを三次元可変ベクターノズルにする事で運動性向上。

・ベクターノズルの性能を引き出す為に操縦系統をフライバイワイヤ化。

・向上した運動性に耐えるべく、主翼を複合素材一体成形の物に変更。

・各種西側製ミサイルへの対応。

等々…細かな物を含めればこんなものでは済まないだろう。

ともあれ、骨董品(Mig-21)がここまで変貌した事に驚愕したキューバ政府はすぐさま日本へと部隊を派遣し、日本国内で航空自衛隊と共同で評価試験を行なっていたのだが、そんな中で転移に巻き込まれてしまったのだ。

そんな訳でアルティーメ以下100名近くのキューバ軍人達は祖国に帰る事も叶わずに日本に留まっている。

 

「さて、本題ですがアルティーメ大佐。貴官は現状についてどう考えておいででしょうか?」

 

成島の問いかけに、アルティーメは片眉をピクッと跳ねさせ、少しばかり思案して口を開いた。

 

「正直に言えば不満です。祖国に帰れなくなった事はこの際置いておくとして、現在の我々は貴国に食わせてもらっている状態…誇り高き革命軍が他国の税金を貪って生きているなぞ…!」

 

何とも悔しそうなアルティーメだが、それも無理は無い。

なにせ今キューバ軍人達には緊急対処として日本政府が住居と生活費を与えているのだ。

他国のセーフティネットにタダ乗りして平気な顔をしていられる程、彼らは厚顔無恥ではない。

 

「はい、あなた方が抱えるお気持ちはよく分かります。そこで提案なのですが…"起業"してみませんか?」

 

「起業…?私達に会社を作れと?」

 

「勿論ただの会社ではありません。軍事力を保有し、顧客の要望通りの軍事的サービスを提供する民間軍事会社…いわゆるPMCです。あなた方が設立したPMCは自衛隊や我が国の友好国との訓練で仮想敵役となり、練度向上に協力していただきたいのです。そうすればあなた方の練度向上に繋がりますし、報酬で食っていく事も出来ます。政府としても、経営が安定するまで支援をいたしますよ」

 

「なるほど…アメリカのようなやり口ですな。確かにパイロットの育成には金がかかるし、仮想敵役を出来るだけの凄腕は特に時間もかかる。しかし、現状そうするのがいいのかもしれません。とりあえず部下達に相談してから結論を出す事にします。少し時間を頂けますか?」

 

「はい、勿論です。よいお返事を待っていますよ」

 

会談を終えた二人は固い握手をし、各々の仕事を果たすべく戻って行った。

 

 

1週間後、キューバ軍人によるPMC『252・エア・セキュリティー』が設立され、その日のうちに航空自衛隊と訓練支援に関する契約が結ばれた。




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魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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