トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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今回からグ帝接触編です


この海で、蜂はやらかした

ムー大陸西方海域、文明国『二グラート連合』と列強国だった(・・・)『レイフォル』との領海が接する海域。

やや波の高い海面を切り裂くように航行する黒鉄の艦隊があった。

 

「巡航速力16ノット、機関好調」

 

艦隊の中でも一際目立つ巨艦の艦橋内で操舵輪に手をかける操舵手がいつも通りの口調で事務的に報告する。

 

「うむ、今回の訓練航海(・・・・)も何事もなく終わりそうだな。だが各員、気を抜くなよ」

 

行手を阻むモノなぞ何も無い大海原を眺めながらそう述べたのは巨艦…グラ・バルカス帝国海軍が誇る世界最強最大(・・・・・・)の戦艦である『グレードアトラスター級戦艦』の一番艦『グレードアトラスター』に座乗する東方艦隊司令長官であり"軍神"と名高い『カイザル・ローランド』である。

彼が率いる艦隊は帝国の頂点に君臨する皇族の一人を理不尽に処刑した『パガンダ王国』、そして同国の宗主国であり五大列強の末席たるレイフォルを滅亡させた後は帝国の領土となったレイフォルの首都であった『レイフォリア』を母港にしているのだが、時折こうして周辺諸国を威圧する為にムー大陸沿岸を訓練航海と称して彷徨いているのである。

 

「しかし、いささか心苦しい面もありますな。途中でニグラート連合の帆船が退去を命じて来ましたが、軽巡洋艦が近くを通っただけで転覆しそうになっていました。あんな貧相な船で我々に立ち向かわねばならない彼らの心境を思うと同情してしまいます」

 

長官席で寛ぐカイザルに声をかけたのは、グレードアトラスターの艦長である『ラクスタル・ライグーマ』だ。

 

「気持ちは分かるが、だからと言って同じリングに立って戦ってやる義理は無い。それに、君もこの世界(・・・・)の野蛮さは知っているだろう?」

 

「えぇ、パガンダ王国は"文明国"という立場でありながらハイラス殿下を処刑し、宗主国であり列強国という立場にあったレイフォルは偽りの降伏を行って本艦に攻撃を加えました。あまりにも野蛮で程度の低い者ばかりです」

 

「うむ。だからこそこの世界は我々が…グラ・バルカス帝国の先進的な理念と教育によって統治するべきなのだ」

 

極東の島国(日本国)と同じく異世界より転移してきたグラ・バルカス帝国は、所謂先進国(・・・)と呼ばれる国々から非礼極まる対応を受けており、カイザルが述べたような思想が主流となっているのだ。

 

「艦長、お話中申し訳ありません。対空レーダーに反応が」

 

「うん?ニグラート連合か野生のワイバーンか?」

 

「いえ、それが妙なのです。反応は2つあるのですが、高度5000mを時速約900kmで飛行しています。初めはレーダーの不具合かと思ったのですが…」

 

「時速900km!?バカな…我が国の実験機ですら時速700km程度だぞ!?」

 

「もしかしたら磁気嵐の影響かもしれませんが…」

 

「いや、他の機器には影響が見られない。これは間違いなく未知の飛行物体だ。直掩機を向かわせ、確認させるんだ」

 

「了解」

 

報告に驚くも、ラクスタルは直ぐに冷静さを取り戻し命令を下す。

 

「カイザル長官、万が一に備えて本艦で最も分厚い装甲を備えている司令塔へ移動をお願いします」

 

「いや、反応が2つであるならば仮に敵性飛行物体だとしても大規模な攻撃を想定したものではあるまい。おそらくは偵察であろう。そして何より、時速900kmもの速度を発揮出来る飛行物体の正体が気になる。是非とも自分の目で確かめたい」

 

「…かしこまりました。念の為、何かに掴まっていて下さい」

 

「未確認飛行物体、間もなく視認距離!」

 

カイザルの熱意に根負けしたラクスタルだが、彼らの頭上へ"未知"が飛来するまで猶予は無かった。

 


 

「航空司令部、こちらアルバトロス。大規模な艦隊を視認したが…」

 

《こちら司令部。アルバトロス、どうした。何か問題が発生したか?》

 

「あぁ…司令部、これは凄いぞ。偵察ポッドで撮影した画像を送信する」

 

日本国海上自衛隊所属の航空機搭載護衛艦『たいほう』所属のF/A-18Eを操縦するTACネーム『アルバトロス』は、自身が目にした物を共有すべくコンソールを操作して主翼下に搭載した偵察ポッドで撮影した画像を母艦(たいほう)へ送信する。

 

《こ、これは…》

 

「ビックリしただろう?まさか大和型戦艦(・・・・・)とは…マストの旗を見るに噂に聞くグラ・バルカス帝国の軍艦らしい」

 

哨戒飛行中、レーダーで大規模な未確認艦隊を発見した時にはまさか伝説の巨大戦艦(大和型戦艦)が居るとは夢にも思わなかった。

しかも大和型モドキ(・・・)の周りに展開する軍艦も、海上自衛隊の先輩(大日本帝国海軍)が使っていた軍艦に瓜二つだ。

 

《うぉぉぉぉぉっ!すっげー!大和型に翔鶴型!おっ、あれはまさか長門型!?動いてる旧軍の軍艦だ!》

 

「……コンドル、テンションが上がるのも分かるが落ち着いてくれ。相手は初接触の相手だ。慎重に…」

 

《本物の大和型ー!武蔵は俺の嫁ー!》

 

「…あのバカ!」

 

ミリオタ(軍事マニア)であり、某艦船擬人化ゲームを愛するアルバトロスの相棒(バディ)であるTACネーム『コンドル』が機体を大きくバンクさせ、急降下してゆく。

 

「司令部、コンドルが急降下して未確認艦隊に接近しようとしている。撃墜するか?」

 

《笑えない冗談はやめてくれ。はぁ…まあ、いい。コンドルには後でしっかりと注意する。だがグラ・バルカス帝国の艦隊を至近距離から撮影するチャンスだ。相手に攻撃でもしない限りは大丈夫だ》

 

「了解」

 

自由奔放なバディを見下ろしつつ、レーダーと目視を駆使して周囲を警戒する。

空母が居るのであれば直掩機が迎撃に来ているだろう。

 

「おいおい…こんな所まで旧軍そのままか…」

 

だが、警戒するまでもない。

既にレーダーは4つの機影を捉えており、コンソール上に表示されたカメラ映像はアルバトロスを更に驚嘆させた。

 

零戦(・・)…曾祖父さんが乗ってたヤツだ…」

 

アルバトロスを迎撃する為に上昇して来るのは、旧日本海軍が誇る艦上戦闘機『零式艦上戦闘機』に酷似したレシプロ戦闘機であった。

 

「撃墜は…流石にやめておくか。かと言ってまぐれ当たり(ラッキーパンチ)を喰らうのも怖いから、ちょっと鬼ごっこと洒落込みますかね」

 

首を左右に振って関節をゴキゴキと鳴らしたアルバトロスは、操縦桿を握り直した。




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魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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