トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
「未確認機急降下!繰り返す!未確認機急降下ー!」
急激な機動をし、こちらに向かって急降下して来た未確認機を前に、グレードアトラスター…いや、東方艦隊は蜂の巣を突いたような騒ぎとなっていた。
「総員落ち着け!様子を見るんだ!」
ラクスタルが乗組員へと冷静になるように呼び掛けるが、未確認機が発するキィィィィィンという不気味な高音と、一目見て分かる程の高速によってパニックに陥ってしまっている彼らは、無断で発砲するような事こそ無かったが、明らかに浮き足立っている。
「未確認機、急接近!」
「近付いて来るか…!対空戦闘用意!いいか、用意だけだぞ!命令が下るまで発砲は厳禁とす!」
明らかにワイバーンやムーの
相手がどのような意図で接近してきたか分からない以上、そんな未知の高性能機を万が一撃墜でもすれば未知の国家となし崩し的に開戦してしまいかねない。
そう判断したラクスタルは、こちらからの手出しを厳禁としてあくまでも様子見に徹する事にした。
「未確認機、本艦へ急速接近!ぶ、ぶつかる気か!?」
「落ち着け!未確認機も恐らく人が乗っているはずだ!戦艦に衝突すればあちらが砕け散る事ぐらい分かっているだろう!」
「うわぁぁぁぁ!来るぅぅぅぅぅ!」
ギュンッと鋭く海面ギリギリで切り返した未確認機は、海面に二筋の水飛沫のラインを描きながらグレードアトラスターへと接近してくる。
それを目にしたラクスタルは祈りにも似た言葉を発して、乗組員を落ち着かせようとする。
ーゴォッ!!
「うぉぉぉぉぉっ!?」
未確認機が艦橋の真横を通り過ぎた瞬間、嵐と見紛う程の轟音と暴風が艦橋を襲った。
「な、なんだアレは!デカい…アンタレスより2倍はあったぞ!?」
誰かが驚愕を隠さず叫ぶように述べたが、それはラクスタルにも理解出来た。
というのも演習等で腕自慢のパイロットが同じように艦橋をフライパスする事があるが、それと比べても未確認機はアンタレスの2倍はありそうである。
「艦長、万が一に備えて未確認機を高射装置で捕捉していたのですが…全く捉えられていませんでした。おそらく、未確認機は本艦に搭載されている『エウロパ型高射装置』で捉えられる限界速度…つまり時速700kmを超える速度で飛行していると見られます」
「バカな、エウロパ型高射装置はオーバースペックであり予算の無駄遣いと言われた代物だぞ。それでも捉えられなかったのか?」
高射装置は測距儀やレーダーから得られた情報を元に、目標となる敵航空機の距離・高度・速度を歯車やカムを組み合わせたアナログコンピューターで算出し、対空火器を管制する為のものであり、特にグレードアトラスターに搭載された最新型の『エウロパ型高射装置』は算出速度の向上や捕捉可能な敵機の速度を時速700kmまでとする等、従来の『ガニメデ型高射装置』よりも高性能な物であった。
そんな、一部では
「ラクスタル君、あの未確認機のキャノピーを見たかね?」
「はい、長官。速すぎて一瞬しか見えませんでしたが…人らしき姿がありました。人が乗っているのなら、交渉により戦闘を回避する余地があるやもしれません」
「うむ、君の言う通りだが…はははっ。皮肉なものだ」
「はい?」
「我々は異世界国家を圧倒的軍事力によって威嚇する為にここに居るというのに、逆に我々が未知の勢力によって圧倒的軍事力を見せ付けられている。因果応報とはこの事か…」
自嘲するように嘆息し、おもむろに煙草を取り出すカイザル。
「長官、お言葉ですが戦闘配置中は禁煙です」
「……やれやれ」
バツが悪そうに煙草を仕舞いつつ、空を見上げるカイザル。
艦橋に備え付けられている無線が鳴り響いたのは、それから数分後の事であった。
「なんだアレは…プロペラが無いし、オレの目がおかしくなってなければやたらデカいように見えるんだが…?」
艦隊上空に飛来した未確認機の内、上空に留まっている方を迎撃する為に上昇するアンタレスのコックピットでは、小隊長を務める准尉はゴーグルの下で目を細めた。
母艦からの話では、レーダーに映った反応はアンタレスと同程度かそれ以下の飛行物体であるとの事だったが、照準器のレティクルとの対比を考えると幅はアンタレスよりやや大きく、長さはアンタレスの2倍はある。
「爆撃機…いや、降下した機はかなり機敏に動いていたから戦闘機か?あの図体であんな機敏に、しかもかなりの速度を出せると言うことは、頑強な機体構造と優秀な空力特性、なにより強力な推進力を持っているのだろう」
准尉が駆る戦闘機『アンタレス07式艦上戦闘機』は1300馬力のエンジンと必要十分な防弾装備を備えながらも徹底的に軽量化した機体によって高い運動性能と速力、長大な航続距離を持った前世界『ユグド』における
准尉もそれは熟知しており、それを疑う事は無かったのだが…
「…嫌な予感がする」
高みを悠々と飛行する未確認機からは言葉に出来ない
しかし、だからと言って遠巻きに見ていては帝国軍人の名折れだ。
「総員、未確認機との接触を図る。同高度に到達次第、未確認機を前後左右から挟み込め」
率いる小隊員へ無線を介して指示すると、スロットルを開けて上昇する。
エンジン出力の割に機体が軽いアンタレスは上昇力に優れており、グングンと未確認機との高度差を縮めて行く。
「やはりデカいな。レーダー手め…デタラメを教えやがって。どこの飛行機だ?」
同じ高度まで到達し、接近してみるとその異様な姿に圧倒される。
機首にプロペラは無くまるで騎兵の
彼の常識では考えられない異形の航空機に改めて驚愕しつつも、彼の目は機種と主翼上下面に描かれた"白い縁取りの赤い丸"をしっかりと捕捉した。
「あれが国籍マークか?
グラ・バルカス帝国軍機の国籍マークは"赤い丸に白い十字"であり、赤い丸を基調とする点は未確認機もよく似ている。
「とにかくこちらの母艦に強制着艦…は出来ないか。艦上機であるかも分からないし、何よりあの図体では離着艦出来るとは思えん。というよりアレはどこから飛んできたんだ?ムー大陸に存在する国家にあんな航空機を持つ国家があるとは思えん。まさか、神聖ミリシアル帝国…ではないか。国籍マークが違う」
考察しながら未確認機に近付いて行くが、一向に追い付く気配がない。
これでも最大速力に近い時速540kmを出しているが、それでも追い付くどころか徐々に引き離されているようだ。
「くっ…ダメだ、追い付けん。少なくとも時速700kmかそれ以上は出ているぞ」
実用単発機では世界最速と謳われたアンタレスが振り切られようとしている。
そんな状況に驚愕するばかりだが、ここまで圧倒的だと逆に冷静になってきた。
「ダメだ、未確認機は超高速で飛行しており、我々では追い付けん」
《分かった、無理はするな。何より、その未確認機から通信が入った。どうやら我々とは違う形式の通信を使っている都合で、今まで上手く通信出来なかったらしい》
母艦へ屈辱的とも言える報告をするが、母艦から返ってきたのは准尉を再び驚愕させた。
「通信が?彼らは一体何を…」
《未確認機の所属は、日本国という国の海軍であるらしく、彼らは我が国との国交開設交渉の為にレイフォルへと向かっている途中で、我々と出くわしたらしい。敵対の意思は無いとの事だ》
「日本国…聞いた事が無いな…」
遥か遠くに見える日本国の航空機を見つめる准尉を知ってか知らずか、件の日本国の航空機は身を翻し、垂直に上昇して見せた。
感想、評価お待ちしています
魔王編の後、何を書くか(期限一週間)
-
対パ皇戦編
-
日本と接触した各国の変化編
-
幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編