トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
「……デカイ」
航空機展示会場を一先ず後にしたカイザルは、次に艦船展示会場へとやってきたのだが、やはり圧倒されていた。
海上で出会しここまでエスコートしたが、岸壁から見上げる
「この一番小さな艦は…『あさひ型護衛艦』というのか。全長151m、全幅18.3m、基準排水量5100トン…む?この
思わず首を傾げるカイザル。
帝国海軍の主力駆逐艦は『キャニス・ミナー級』と呼ばれる地球で言う旧日本海軍の駆逐艦『吹雪型』に酷似した物であるが、それと比べれば『あさひ型』は一回りも二回りも大きく、帝国海軍主力軽巡洋艦であり旧日本海軍の『5500トン級軽巡洋艦』に酷似した『キャニス・メジャー級巡洋艦』に近いサイズ感である。
「まあ、それは一旦置くとして…ふむふむ…主砲は対空と対艦両方に使える127mmの単装砲が1基に、高性能20mm機関砲なる物が2門…あとは対空・対艦誘導弾発射器と…むっ、対潜水艦用誘導魚雷発射管!?日本は魚雷にまで誘導能力を持たせているのか!?」
『あさひ型』の前に置かれた解説ボードを食い入るように読みながら驚愕するカイザル。
これまで見てきた日本の軍事技術から魚雷も当然存在するだろうと考えていたカイザルだったが、まさか魚雷にまで誘導能力があるとは思いもしなかった。
「対潜水艦用…つまり、日本があった世界には潜水艦が普及しているという事か…!」
前世界ユグドでは外洋航行可能な潜水艦を開発出来たのは帝国だけであり、この世界では潜水艦の存在が確認されなかった事から軍部は帝国海軍の潜水艦の存在が何よりのアドバンテージだと考え、潜水艦の増産に乗り出していたのだが、潜水艦の存在を認識し、対抗策まで持っている日本が居るとなると話は変わってくる。
「しかもこの艦は対潜水艦戦闘能力を向上させたものであり、誘導魚雷をロケットや艦載機に搭載して数kmから100km以上先の潜水艦を撃破出来る…これでは潜水艦が近付けないではないか…」
無論、帝国は誘導魚雷なぞ保有している訳も無く、潜水艦が魚雷を確実に命中させる為には1km以下にまで接近する必要がある。
そしてそれは相手がこちらに気付いていないという前提での話だ。
相手が対潜水艦戦闘を重視した海上自衛隊護衛艦なら、間違いなく帝国海軍の潜水艦は一方的に沈められてしまうだろう。
「不味いな…これは帝国の海洋戦略を1から見直す事になるやもしれん」
頭を抱えるカイザルが次に向かったのは、黒一色のつるんとした船体を持つ艦…潜水艦の前だった。
そしてそこには先客が居た。
「カイザル、遅かったわね」
「ミレケネス、すまんな。色々と驚く事ばかりで…な?」
カイザルを待っていたのはパンツスーツ姿の妙齢の女性、帝国海軍特務軍司令長官である『ミレケネス・ファーティマ』だ。
「まったく…人が久しぶりの休暇を楽しもうとしている矢先に呼び出して、挙げ句の果てに遅刻とはいい度胸ね?つまらない要件なら殴り飛ばしている所よ」
「はっはっはっ、"女帝閣下"にそう言われては恐ろしくて仕方ありませんな。それで、
「まさか!むしろ私を呼んでなかったら殴り飛ばしてたところよ」
戯けてみせるカイザルへ、ミレケネスは日本の潜水艦を指差しながらそう応えた。
「これが日本の潜水艦…我々の『シータス級』とは似ても似つかないな」
「えぇ、シータス級が
帝国海軍にはシータス級と呼ばれる3機の水上攻撃機を搭載可能な潜水艦が存在するが、確かにそれと比べれば日本潜水艦の凹凸の無い滑らかな姿は洗練されており、水棲哺乳類を連想させる。
「見て、カイザル。大きさはシータス級と似たような物だけど…航続距離と潜航可能時間を見て」
「航続距離と潜航可能時間?そんなもの機密中の機密だろう。大方、非公表とでも…ん?…んん!?」
ボードに書かれた文字を見て、二度見、三度見…四度見までしたカイザルは、ゴシゴシと目を擦ってボードに鼻先が付くほどに顔を近付けた。
「カイザル、そんなに近いと逆に見えないわよ?」
「……ミレケネス、私の目がおかしくなったのか?はたまた私がまだ
「大丈夫よ。それには間違いなく、航続距離と潜航可能時間の欄に
「そ、そんな事がある訳ないだろう…?」
カイザルがそう言うのも無理はない。
潜水艦という物は普段は水上をディーゼルエンジンで航行し、潜航中は水上航行中に充電したバッテリーの電力でモーターを回して航行するものだ。
故に水上航行中は燃料残量が、水中航行中はバッテリー残量が航続距離の限界を決め、特に水中航行中は艦内の酸素残量が底を尽きれば乗組員が窒息するため、バッテリー容量ばかり増やしても潜航可能時間はそうそう伸びない。
「これは私も上手く理解出来なかったのだけど、日本の軍人に聞いてみたら、この潜水艦は『核分裂反応』という原子核が分裂する際に発生する熱エネルギーで蒸気を作ってタービンを回し、それを発電や推進力に使っているそうよ。私が話を聞いた日本の軍人によれば、その核分裂反応とやらは僅か1gの物質で石油1トンと同じエネルギーを発生させられるとか、反応には空気が必要無いから潜航中でもフルパワーを発揮出来るから水中でも30ノット以上出せるとか、電気を使い放題だから海水から淡水や酸素を作り出せて食料が続く限り潜航出来るとか…もうわけが分からないわ。正直言ってこんな潜水艦が海を彷徨いていたらお手上げね」
「たった1gの物質が石油1トンと同等のエネルギーを発生させるだと!?日本はそんな物質を生み出す事が出来るという事は…はっ!ま、まさか!」
「大丈夫よ。日本の軍人が言うには件の核分裂反応を用いた動力、『原子炉』の製造にはかなりのコストが必要だから潜水艦や空母のような戦略価値の高い軍艦にしか搭載出来ないそうよ」
「違う!そうじゃない!」
宥めるように告げるミレケネスに対し、カイザルは青い顔をしながら彼女に耳打ちした。
「いいか?日本の話を信じるなら、核分裂反応出来る物質を100g集めたらどうなる?」
「……単純計算で石油100トンのエネルギーね」
「では帝国海軍の艦上爆撃機が使う250kg爆弾の炸薬量は?」
「確か110kg程度…カイザル、まさか…」
そこまで聞いてミレケネスも察したようだ。
「そうだ。核分裂反応物質を110kgも詰め込めば、10万リットル以上の石油と同等のエネルギーを発生出来る可能性がある。そんなエネルギーが市街地のど真ん中で炸裂しようものなら…」
「間違いなく壊滅的な被害が出るでしょうね。そんな話をするって事は…日本はそんな兵器、謂わば『核分裂反応爆弾』を配備していると?」
「可能性はある。私のような核分裂反応をついさっきまで知らなかった者でも思い付くような物を動力として活用している日本が思い付かない筈もない。配備している、と考えるべきだろうし、誘導兵器の弾頭を核分裂反応爆弾にでもすれば…」
「何百kmも先から超音速で追いかけてくる、都市破壊級の兵器が完成…ね。ゾッとしないわ」
「あくまでも私の想像でしかないが…日本は底知れぬ国だ。そんな国がご丁寧に、こんな博覧会を開催しているのだからしっかりと検分して対抗策を見出さなくてはな」
「ふぅ…これは暫く休暇は取れないわね。仕方ない、貴方に付き合うわ」
「ありがとう、ミレケネス」
《これより、乗艦見学のご案内を行います。整理券をお持ちの方は32番桟橋まで…》
事前に整理券を手に入れていたカイザルとミレケネスは顔を合わせて頷き合うと、日本の軍事技術をより深く知るべくアナウンス通りに桟橋へと向かった。
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