トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
グラ・バルカス帝国領レイフォルのレイフォリアにて行われている日本博覧会だが、他国で開催されたものとは違って軍・政府関係者、そして一部企業の社員にしか立ち入りが許されていない。
これは帝国側からの要請を受けてこのような形式となったのだが、その影響で日本文化を伝えるスペースは大幅に縮小されていた。
そんな他よりも小さな日本文化展示場の一角では、レイフォル植民地政府に出向している帝国外務省東部方面異界担当課長『シエリア・オウドウィン』が一台のノートパソコンと向き合っていた。
「こ、こんにちは…」
《こんにちは!日本文化展示スペースへようこそ!私は対話型
「…!ほ、本当に応えてきた…!?あー…私はグラ・バルカス帝国外務省の東部方面異界担当課長のシエリア・オウドウィンだ」
《シエリアさん、でよろしいですか?お若いのに課長だなんて、すっごく努力されたんですね〜。凄いです!》
「そ、そうだろうか…?私は自分に出来る事をしただけなのだがな…」
モニターに映るアニメ調の美少女からの称賛に嬉しさを隠しきれない様子のシエリア。
彼女が話しているのは、日本の音響機器メーカー『UMIHA』が開発した対話型AI『秋津洲シリーズ』の第一弾にして民間向けコミニュケーションツールである『秋津洲 アイ』だ。
「それより、アイ殿…」
《シエリアさん、"殿"なんて堅苦しい呼び方はやめましょう。アイ、でいいですよ〜》
「む…なら、アイ。疑う訳ではないが、貴女は本当に人が作り出した架空の存在なのか?何処かに吹き替えている者が居るとか…」
《んー…証明する事は難しいですけど、私は正真正銘、人によって作り出された人工知能ですよ。
「そうは思えないな。アイは私とこんなにもスムーズに会話しているし、相手を尊重しようという意思が伝わってくる。はぁ…外務省もアイと同じような者ばかりだと働き易いのだが…」
《あははは…世の中には色んな人が居ますからね…。ところでシエリアさん、最近眠れていますか?どうも顔色が悪いように見えます》
「ん?あぁ…最近は仕事が忙しくてな…。だけど睡眠時間はキチンと確保しているつもりだ」
《もしよろしければ簡単な健康診断を致しませんか?人差し指をそこの機械で挟み込むだけですので》
「外交官は体が資本だからな…。よし、試しにやってみよう。えっ…と…この機械か?」
アイへの警戒心がすっかり無くなったシエリアは、彼女の言う通りに手のひらサイズの機械に人差し指を挟み込む。
すると人差し指を挟み込んだ部分で数度赤い光が瞬き、10秒程でピーッという電子音が鳴って測定が完了した事を通知した。
《はい、これで測定は完了しました。現在、測定結果を分析しています》
「もうか?採血なんかもあると思っていたが…」
《本格的な健康診断ならば採血やレントゲン撮影を行いますけど、さっきの検査は日常的に行うものなので、簡単に素早く出来るようになっているんですよ。…あっ、結果がでましたけど…これは…》
「な、何か悪い所が…?」
電子の存在ながらも顔を曇らせ眉をひそめるアイの表情に怯えるシエリア。
《シエリアさん…あなた…ズバリっ、コーヒーにたっぷり砂糖を入れるのが好きですね!》
「ギクっ!」
《しかも毎日飲んで、一日に5杯以上飲んでますね?》
「うぐっ!」
《さらにさらに、忙しいからって外食や出来合いのお惣菜で済ませて、野菜をあまり食べてませんね?》
「うぐはぁっ!」
《それとあまり大きな声では言えませんが…便秘ですね?》
「も…もう許して…」
測定結果から元に割り出したシエリアのバイタルデータは大正解だったらしい。
《うーん、やっぱり正解でしたか…。高血糖に高血圧、便秘…今は深刻ではありませんが、これはマズイですよ》
「具体的には…?」
《高血糖が進行すると糖尿病になって、毎日のインスリン注射が必要になりますし、重症化すると失明や脚の切断の可能性だってあります。高血圧は心臓病や脳梗塞の原因になりますし、便秘は体に毒素を溜め込むと同意義なので、一度病気をすると様々な合併症を引き起こす可能性があります。長期的に見れば間違いなく命に関わりますし、短期的に見てもお腹の張りやカフェインの過剰摂取が原因で睡眠不足となって仕事に支障が出てしまうでしょう》
「それは困る…努力してここまで登り詰めたというのに、病に伏せてしまっては何の意味も無い」
《ならば先ずは食生活から改善しませんか?コーヒーは一日に2杯まで、砂糖はスプーン1杯まで。食事は野菜を中心に、出来れば皮まで食べるのがいいですよ》
「しかし、恥ずかしながら私は料理が全く出来ないのだ。それに省庁街の近くにある料理店は作り置きが効く肉類の煮物が中心でな…」
《それなら私が収集したデータ群の中から今のシエリアさんに不足している栄養素が摂取出来る料理のレシピをお渡ししますよ。電子データならすぐにお渡し出来ますけど、貴国には再生出来る媒体が無いと思うので、印刷してお渡しします》
「そんな…なんと礼を言えばいいのか…」
《気にしないで下さい。私はこういう事をする為に作られたんです。医療や事務作業、軍事利用では妹達に負けますが、人々の生活を豊かで健康なものにする事が私の仕事なんですから♪》
「頼もしいな。貴女が居れば、日本国民は幸せに生きていけるだろう。むっ、すまない。私はこれから日本の外交官と会談があるのだ。これで失礼する」
《分かりました。では印刷したレシピはどなたかに届けてもらうので、お待ちして下さいね》
「ありがとう。では…」
《はーい、またお話ししましょうねー♪》
こうしてシエリアは博覧会会場を一旦離れ、レイフォル植民地政府の庁舎へと向かったのだった。
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