トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
次回は魔王編に突入する予定です
光化学スモッグで煙り、汚水が垂れ流しにされる海から立ち昇る悪臭が漂うグラ・バルカス帝国の
正に帝国の中枢たる都の中心部に聳えるコンクリート造の要塞が如き"城"の大会議室では、皇帝である『グラ・ルークス』も参加する御前会議が開催されていた。
議題は無論、日本国への対応を如何にするかである。
「…であるわけでして日本は決して油断ならぬ相手、それこそ
そう締め括って上座に置かれた玉座に座るグラ・ルークスに深々と頭を下げ、帝国軍参謀本部の将校が自身の席に戻る。
「超音速戦闘機に重砲並の主砲を持つ戦車、果ては無限の航続距離を持つ潜水艦にそれら全てが誘導弾運用能力を持つ…荒唐無稽だな」
冷ややかな目で報告書に目を通すグラ・ルークスはため息混じりにそう告げた。
「しかしお言葉ですが陛下、これは私もこの目で…」
「冗談だ、余もそこまで愚かではない」
慌てた様子で立ち上がったカイザルの言葉にグラ・ルークスは報告書を一旦閉じ、彼に着席するように手で促しながら言葉を続けた。
「信じ難いが、帝国の忠臣たるそなたらがこのような場で世迷い言を嘯く筈がなかろう。臣下を信じずして何が帝王か」
「陛下…申し訳ありません。一時でも陛下を疑った自身の不明を恥じるばかりです…」
「よい、よいのだカイザル。そのように恐れずに進言する臣下こそが何よりの宝だ。しかし…臣民は余のようにはいかんだろう」
「と申しますと…?」
「ギムレー」
「はっ」
カイザルの疑問に答えるように、グラ・ルークスは『経済統制省』の大臣『ギムレー・ハリバット』へ発言を促した。
「えー、前世界における『ケイン神王国』打倒への最終作戦前、各植民地にあった兵力や入植者を一時的に本土へ帰還させた事は皆様もご存知の事でしょう。そのお陰で転移後も軍事力や人的資源を損なわなかった事は不幸中の幸いでしたが、何の問題も起きていないという訳ではありません」
「と言うと?」
「植民地ヘ入植した者の中には現地を開拓、或いは事業を始めた事で財産を築いた者が少なくありません。彼らは世間では『植民地成金』と呼ばれていますが、彼らと彼らが雇う
「…失業者か」
「はい。植民地での事業継続が不可能となり、解雇された小作人達は失業者となりこのラグナはもちろん、各地方都市でも浮浪者同然となっている始末です」
「つまり…彼らに働き口を与える為にも植民地獲得は必須だと?」
「はい。失業者が増えれば社会情勢が不安定になりますし、治安の悪化も懸念されます。何より重大なのが…植民地成金からの不満です。彼らが今、政府に何と言っているかご存知ですか?」
「申し訳ない。あいにくそのような事柄には疎く…」
「"我々は安定した植民地経営に貢献していたというのに、政府が帰還を強制させたせいで財産の多くを失った。これは紛れもなく政府の責任であり、政府は我々に新たな入植地を与えるべきである"…彼らはそう主張しています。先日も議事堂前で大規模なデモが発生したのですよ」
「なんと…私がレイフォルに居る間にそんな事が…」
「ギムレーの言った通りだ」
ギムレーの言葉に驚愕するカイザルへ、グラ・ルークスが呆れたような態度で述べた。
「確かに此度の転移は予測不可能な事象であり、植民地喪失により発生した損害を被った者は同情すべきだろう。しかし、政府に責任を取れというのはあまりにも筋違いだ。そもそも転移に取り残されていればケイン神王国の軍勢に打ち負かされるのを待つだけだっただろうに…」
「なるほど…つまり、件の植民地成金の不満を解消する為に植民地獲得は必要になると」
「うむ、ギムレーよ。喪失した植民地と同程度の利益を出す為には、この世界のどれほどを征服すれば良いのだったか?」
「はっ。最低でもムー大陸の半分…ですが地形や土壌、埋蔵資源量が不明であるためムー大陸全土を支配下に置くのが賢明でしょう」
「ならば速やかにムーを征服してしまうのがよろしいでしょう。そうすればムー大陸にある他の国々も、世界第二位の大国たるムーを打ち負かした帝国を恐れ、軍門に下るやもしれませぬ」
「カイザルよ。余もそう考えたのだが…ダンダル」
「はっ」
グラ・ルークスから呼びかけられ立ち上がったのは、情報局局長の『ダンダル・バルメバ』だ。
「我々が調べた限りですと、どうやらムーは日本に対して技術支援を求めているようでして、最近では自動車に関する技術移転が正式に決定したようです」
「自動車…!」
ダンダルの言葉を受けてカイザルの脳裏に過ったのは、レイフォリアで試乗した日本車の高性能さだった。
「カイザルよ、心当たりがあるようだな?」
「はい。日本の自動車に触れた事がありますが、たった660ccのエンジンながらも時速100kmで巡航し、300km以上の航続距離、冷暖房完備だというのに庶民の年収の半分で買えるというものでした。正直に申しまして、帝国の自動車より遥かに高性能であり、物によっては軍事転用も可能でしょう」
「カイザル提督の仰る通り、優れた自動車は軍事転用も可能です。しかし、それ以上に厄介なのが基礎工業力の向上と…」
「ならば!早くムーを叩かねば…」
「カイザル」
自動車が基礎工業力に与える影響を悟ったカイザルはムーが高い技術力を手に入れる前に征服すべきだと主張するが、グラ・ルークスがそれを嗜めた。
「そなたの気持ちも分かる。だが、ムーへは日本が技術支援を行うのだ。つまり、ムーに日本人が頻繁に出入りする可能性がある。そんな中でムーに対して攻撃を仕掛ければどうなるか…分からん訳ではなかろう」
「はっ…!」
博覧会で日本は他国への侵攻を行わない専守防衛の国だとは聞いていた。
しかし、同時に邦人の生命や財産が脅かされる状況ともなれば何千何万km離れた相手でも叩く事が出来るだけの装備があるとも聞いている。
そんな
「しかし、カイザルの懸念も理解出来る。ムーが力を付ける前にどうにかして…」
「会議中失礼します…失礼します…」
控えめにドアを開け、背を丸めながら入ってきた情報局の職員がダンダルに耳打ちする。
それを受けダンダルは何度か小さく頷いたのち、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「…ダンダルよ。何があった?」
「はっ。陛下、これは速報であり確度はまだ低い情報ですが…日本はムーに対する兵器輸出に前向きな姿勢を表面したそうです。早ければ今年中にも、航空機、艦船、車両、銃器、誘導弾の輸出を行うらしく…」
その言葉を受け、会議室が騒めく。
「…いかんな。これではムー侵攻を早めれば日本による兵器輸出を早める結果となるかもしれん。カイザルよ、日本の兵器に対抗する策はあるか?」
「申し訳ありません。まだ理解が及ばぬ点が多く、全く策を編み出せていません」
「左様か…ならばカイザル。そなたは日本に渡り、日本の軍事力、兵器、戦術を徹底的に洗い出し、対抗策を模索せよ。その為には予算・人員に糸目はつけぬ。参謀本部もそれで良いな?」
「はっ!」
「かしこまりました。不肖の身ですが、全霊を以て任務を遂行いたします」
「軍神の閃き、期待しているぞ」
このあと暫くしたのち、会議は終了した。
そしてカイザルは直ぐ様人員を選出し、レイフォル植民地政府を介して国交を結んだ日本へと渡航する為の手続きを行ったのであった。
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