トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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知識は色々と付け焼き刃です


ギム・レッド・ライン

クワ・トイネ公国とロウリア王国の国境の街『ギム』。

そこは両国による衝突が差し迫っているという事もあり、普段よりもピリピリとした雰囲気が漂っていた。

 

「モイジ団長、ジエイタイの方々が到着されました!」

 

「おう、通せ」

 

ギムの守備を任されている国境防衛団の団長であるモイジの元へ一人の兵士が報告し、彼はその言葉に短く応えた。

 

「失礼します。陸上自衛隊西部方面隊即応機動連隊副連隊長の淡島 誠(あわしま まこと)二佐です」

 

「初めまして、アワシマ殿。改めまして、国境防衛団長のモイジと申します。とりあえず立話もなんですからこちらへ…」

 

「では失礼して…」

 

自己紹介を交わし、団長室に置かれた大きなテーブルを挟んで座る淡島とモイジ。

 

「では早速ですが淡島殿、私の部下より既に説明されているかもしれませんがもう一度私が現状を説明します」

 

「お願いします。齟齬があったらいけませんので」

 

「では…」

 

テーブルに羊皮紙を広げ、描かれたギム周辺の地形を指さすモイジ。

 

「我々の偵察兵によるとロウリア王国軍は約3万の兵力を率いて越境、現在はこのギムより1.5km西にある『ハルムルガの丘』の裏側、そこから更に1km程先に野営地を築いています」

 

「なるほど…より正確な地形や敵陣地の情報が必要ですね。少々お待ちを」

 

古びた羊皮紙の地図を見ていた淡島は何かを思い付いた様子で無線機を取り出すと、何処かと交信し始める。

 

「……お、来た来た。モイジ団長、此方が最新の敵軍の布陣状況です」

 

淡島は戦闘服の胸元に取り付けられている個人携行用情報端末(タブレット端末)を取り外すと、羊皮紙の上に置いて、画面に動画を映し出した。

 

「これは…確かジエイタイが使っている"どろーん"なる飛行機械、によるものでしたか?」

 

「はい、これは陸上自衛隊にて運用されている『31式偵察無人航空機(31式ドローン)』が撮影した映像です。リアルタイムの映像ですので、気になった箇所を好きに注視出来ますよ。何か気になる所は?」

 

淡島が要請したのは、今回ギムに派遣された部隊の内、ドローンを専門に扱う小隊へのドローンによる偵察であった。

その小隊が運用する31式偵察無人航空機、通称31式ドローンは通常の固定翼機をそのまま小さくしたような姿をしており、発進時は紙飛行機のように人力で飛ばせる程に軽いが、西暦2028年に開発された全固体電池をバッテリーに用いている他、機体フレームの一部を全固体電池とする事で従来の同程度のドローンを遥かに上回る滞空時間を有している。

陸上自衛隊では本機を大量導入しており、特科(砲兵)の弾着観測は勿論、機甲科(戦車隊)普通科(歩兵)の索敵にも用いられており、今回の運用は正に模範的な運用である。

 

「んー…淡島殿、あの天幕(テント)の前に居る者を」

 

「この男ですか?」

 

「おぉっ!ここまで拡大出来るとは…失礼。この男はホークですね。ホーク騎士団と呼ばれるロウリア軍の最精鋭部隊を率いる男なのですが…妙ですね。この男の近くには赤目のジョーヴという者が付き従っている筈です」

 

「そのジョーヴとやらが何か?」

 

「奴は極めて危険な男であり、ごろつきばかりを集めた第15騎馬隊を率いています。連中に狙われたら最後、男は縄で括られて馬で引き回され、女子供は犯されてしまいます」

 

「それは危険ですね…。そんな奴が居ないとなると…」

 

「別働隊として動いているか、もしくは何処かで死んだか…出来れば後者だとありがたいのですが」

 

「希望的観測は危険です。現在マイハークへ向かっている海上自衛隊の第二航空護衛艦隊に連絡して、艦載機(ハリアーII)でギム周辺をパトロールしてもらうように要請します」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ、友好国(友人)の為ですから。ところでモイジ殿、そこにある89式は…」

 

淡島は先ほどから気になっていた、木製ガンラックに納められた89式小銃に目を向ける。

それはかなり使い込んだのか表面処理が摩耗して銀色に輝いており、ストックには白い油性ペンで"北742"と書かれている。

 

「貴国から頂いた"ハチキューシキ"ですが…何か?」

 

「いえ、私が新人教育の時に使っていた物です。懐かしいなぁ…まさかこんな所で同じ個体に出会うとは」

 

「それは運命的ですな。どうです、持ってみますか?」

 

「良いのですか?ではお言葉に甘えて…」

 

モイジから差し出された89式小銃を撫でる淡島。

 

「あぁ…懐かしい…。おっ、このレシーバーの傷は銃剣で引っ掻いた時のだ。あの時はしこたま怒られたなぁ…」

 

 


 

夜もふけた頃、ロウリア軍の野営地では指揮官クラスの者が焚き火を囲んでいた。

 

「明日、ギムを落とすぞ」

 

クワ・トイネ公国を侵略するために編成された東方征伐軍の司令官パンドール将軍が高級品であるガラスの杯に注がれた酒の水面を揺らしながら告げた。

 

「3万もの兵力に加え、150騎にも及ぶワイバーン…これを止められる者なぞこのロデニウス大陸には存在せん。小手先の策なぞ不要、真正面から蹂躙してくれるわ」

 

にやり、と不敵な笑みを浮かべたパンドールは杯を煽って酒を一気に飲み干した。

 

「将軍、ギムを落とした際に手に入る戦利品については如何なさいますか?」

 

「アデムよ、貴様に一任する」

 

「はっ!」

 

副将アデムの問いかけにパンドールは鷹揚に応え、連れて来たお気に入りの娼婦に酒を注がせた。

 

「皆の者!明日、我々はロウリア王国によるロデニウス大陸統一の嚆矢となるのだ!我々の名が大ロウリアの歴史書に刻まれる記念すべき日となるであろう!わーはっはっはっはっ!」

 

「きゃんっ!もう…将軍ったらぁ…」

 

酒が回ったのか杯を天高く掲げるパンドールは娼婦を抱き寄せて豊満な胸元を鷲掴みにすると、恥じらいながらも満更でもなさそうな彼女を引き連れて上機嫌のまま、将軍専用の天幕へと消えた。

 

「おい、明日ギムを落としたら100人ぐらいは生かしておけ。好きにしても構わんが、歩いて近くの街に行けるぐらいにはしておくのだ」

 

「はい、何故そんな事を?」

 

パンドールの天幕から聴こえる女の嬌声を鬱陶しそうに聴き流しつつも、アデムは部下へと命令する。

 

「ギムでの出来事を伝えさせるんだ。そうして恐怖を伝播させ、亜人や連中に協力する者の心を折ってやろう」

 

怪訝そうな部下に対し、アデムはサディスティックな笑みを浮かべてそう応えた。

 

それから数時間後、ロウリア軍は夜明けと共に朝食を済ませると野営地より出陣。

ワイバーンと騎兵を先頭にギムへの本格侵攻を開始した。




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魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
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