トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
《では長谷川さん、今回成立した日本・ムー間の防衛装備品協定ですが注目すべき点を教えていただけませんか?》
《はい、今回の協定は転移前に行われた対ウクライナ・対台湾への防衛装備品協定に近いものがありますね。簡単に言えば日本がムーに融資し、融資された資金でムーが日本製の装備品を買うという事です》
《それではムーに数千億円もの負債を抱えさせてしまうのではありませんか?》
《確かにそうなりますが、ただ単に負債を抱えるのとは天と地の差があります。今回の協定による融資は無利子であり返済期限は無期限…つまりは何百年経とうが利子が膨らむ事なく、返済に何千年かかろうと構わないという言ってしまえば最悪返さなくてもよいというものです。もっとも、ムーはこの世界における大国なので面子のために返済を放棄するという事は無いでしょう》
《なるほど…では日本側のメリットは?》
《日本としては第二位の大国であるムーに防衛装備品が採用されたという実績を引っ提げ、販路を広げる思惑があるのでしょう。ただ政府としても輸出相手国を精査するでしょうし、爆発的に売れるという事はないでしょうが》
《ありがとうございます。では次に…》
それを食い入るように鑑賞しているのは、ムーの技術士官マイラスと彼の幼馴染であり士官学校の同窓生である『ラッサン・デヴリン』だ。
「なるほど…そういうカラクリだったのか」
「まあ、そんな仕組みになってなきゃ政府も軍もあんな大量の兵器輸入なんてしないさ」
腕を組み、感心したように頷くマイラスとラッサンであったが、モニターの映像が切り替わり機内アナウンスが響いた。
《皆様、お疲れ様でした。当機は間もなく硫黄島分屯基地へと着陸致します。立たれている方はお席にお戻りの上、シートベルトの着用をお願いいたします。繰り返します…》
「お、もう着いたのか。『入間基地』から1000km以上も離れてるのに、2時間もしないで到着したぞ」
「日本ってのは鉄道も飛行機も速いな。ラ・カオスで遥々やってきた俺達がバカバカしく思えてきたよ」
そんな事を話しているとKC-1が着陸し、機体にタラップが横付けされた。
「上から見てもそうだったが、地上から見ても小さな島だな。こんな島に基地があるなんて…攻め込まれたら3日で陥落するぞ」
「いや、ラッサン。そうでもないみたいだ。日本があった世界では90年ぐらい前に全世界を巻き込んだ大戦争があったって日本本土の博物館て見ただろ?その戦争の激戦地の一つがこの島らしいんだけど…日本は2万人の歩兵戦力で、10万人以上の歩兵や数十隻の軍艦による攻撃に3ヶ月耐えたらしい。しかも攻めてきた相手に3万人もの損害を与えたって話だ」
「嘘だろ?そんな戦力差があったら半日で陥落するだろ…」
「でもこれは日本、そして日本と戦った相手両方の記録を比較して算出したものらしいから、かなり正確らしい。…あ、あれが慰霊碑みたいだ。せっかくだから祈っていこう」
「そうだな。えー…もらった水で悪いけど…」
指定された場所に向かう道すがら、慰霊碑を見つけたマイラスとラッサンは機内で貰ったまま手付かずだったペットボトル入りのミネラルウォーターを供えると、片膝をつくムー式の祈りを捧げた。
「ありがとうございます。英霊の皆様もきっと喜ばれていますよ」
「あなたは…?」
「はじめまして。私は防衛装備庁の『
「はい。遅れてしまい申し訳ありません。マイラスの奴が悪い風邪を引いて…」
「ラッサン!」
「お気になさらず。マイラスさんは優秀な方だと聞いていますので、そのような方に我々の装備品を見て頂くのはこちらとしても楽しみですよ」
浅野の引率を受け、マイラスとラッサンはとある格納庫へと足を踏み入れた。
「おぉ…これが…」
「日本の…戦闘機!」
格納庫に鎮座していたのは、T-5練習機を実戦仕様にしたFAT-5軽戦闘攻撃機と、同機の前にずらっと並べられた各種兵装であった。
「まずこちらはFAT-5です。最高速度は時速1000km、実用上昇高度は13000m、兵装搭載量は4.5トン、戦闘行動半径は対艦ミサイルと対空ミサイルを2発ずつ搭載して400kmとなっています」
「事前に貰っていた資料で確認したが…すごい性能だな」
「ラッサン、たしかにすごい性能だがこれはあくまでも練習機転用だぞ。日本の主力はもっとすごい性能だ」
「マイラスさんの仰る通りですが、この世界の航空戦力の中では間違いなくトップクラスですよ」
浅野の言う通りワイバーンが主力であり、
もっとも、日本を除けばだが…
「そう言えば今回の協定では誘導弾の輸出も行われるようですが…」
「それはこちらですね。『80式空対艦誘導弾改』…我々は『輸出型対艦ミサイル』と呼んでいます」
「輸出型…つまり劣化版ですか?」
「正直に言えばそうですが、その分価格や整備性は頑張りましたよ」
そう言って浅野は4枚の翼が生えた葉巻型の対艦ミサイルをペチペチと叩いて解説を始めた。
「この対艦ミサイルの原型は初の国産対艦ミサイル『80式空対艦誘導弾』をベースにしておりまして、固体燃料ロケットで推進します。速度は時速1100km、射程は40〜50km程で赤外線により誘導されます」
「マイラス、赤外線って何?」
「赤外線ってのは目に見えない光だよ。熱源なんかから発散されているから、あの誘導弾は熱源に向かって飛んでいくみたいだ」
「ほー…」
小声でマイラスとラッサンがやりとりする中、浅野は言葉を続ける。
「本ミサイルはFAT-5のような航空機は勿論、上昇用ブースターを取り付ける事で艦艇や陸上から発射出来るように設計されています。今回の輸出品目にある艦艇や車両へも搭載されていますよ」
「ファミリー化構想、でしたか。陸海空あらゆる場で運用出来るように兵装の部品各所を換装出来るようにしたとか…」
「はい、マイラスさんの仰る通りです。最新鋭の対艦ミサイルも全ては80式のバージョンアップと言えるものなのです。そのおかげでこうして敢えて性能を抑えた物を容易に製造出来たのですよ」
「性能を抑えたにしても我々にとっては凄まじい性能だ。これは戦術の概念が覆るぞ」
マイラスとラッサンがそれぞれ驚きの声を上げるが、浅野による解説はまだまだ続く。
「では次は空対空ミサイルですが…」
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