トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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次回からはグ帝編です


さまよう艦

「いやー、すごかったなラッサン!」

 

「そうだな、マイラス!あれは戦術の概念を覆すぞ!」

 

港へと向かうSUVの車内でマイラスとラッサンはムーへの輸出が予定されている兵器について語り合っていた。

 

「90式空対空誘導弾…あれはとんでもない兵器だったな。今までは結構接近して機銃を使わなきゃいけなかったのに、あれを使えば数km先から百発百中の攻撃を繰り出せるんだから」

 

「しかもあの誘導弾も車両や艦艇に搭載出来るバリエーションがあるそうじゃないか。そうすれば地上部隊や艦隊が空からの攻撃に強くなるな」

 

「地上部隊と言えばあれもだな。16式機動戦闘車と74式戦車…えー…」

 

「FH70榴弾砲だろ?155mmもあって、射程が20km以上もあるなんてまるで艦砲だな」

 

「俺としては16式と74式の組み合わせが革命的だと思うな。どちらも105mmの高初速砲を持っているが、装甲は薄いが高速で走れる16式を沿岸部に、速度は劣るが分厚い装甲を持った74式を内陸部の陸上国境線付近に配置すれば侵攻してくる敵に対して強固かつ柔軟な防衛戦術をとれる。74式は比較的状態のいい中古品をかき集めたから大した数は無いらしいが…出来れば戦車を大量導入、欲を言えば国産化したいな」

 

二人がそんな言葉を交わしていると、SUVが港の一角に停車し、案内役の浅野が後部座席のドアを開けた。

 

「到着致しました」

 

「ありがとうございます」

 

「小さな島だけど立派な港だなぁ」

 

元々硫黄島には地方の小さな漁港程度の港というか波止場しか無かったが、転移後にロデニウス大陸を往復する船舶にトラブルが発生した際の待避港として整備された為、今では20万トン級のタンカーの寄港が可能となっている。

そして今回はそこにムーへ輸出される2種の軍艦が停泊していた。

 

「こちらが貴国へ輸出される艦艇…『輸出型コルベット』と『輸出型小型潜水艦』です」

 

「…それが正式名称なんですか?」

 

「実はこの2種は転移前の友好国であったウクライナと台湾へ輸出される予定だったのです。なので命名は現地に任せるはずだったのですが…」

 

「転移でそれが出来なくなった、と?」

 

「はい。ですがせっかくなら有効活用しようという事になりまして、この世界での友好国に輸出する事にしたのですよ」

 

「なるほど。そのウクライナと台湾とやらにとっては災難だったようですが、我々としてはありがたい話です。どんな兵器か教えていただけますか?」

 

「はい、もちろんです。先ずは輸出型コルベットから解説しましょう」

 

そう言って浅野は停泊している小型艦を指差した。

 

「なんだか…不思議な形をしていますね」

 

「なんだろう…すっげぇ違和感があるな…」

 

「ラッサンさんの違和感はおそらくこの艦が"双胴型船体"を採用しているからでしょう」

 

「双胴型船体…?」

 

マイラスが疑問符を浮かべると、浅野はタブレット端末を取り出して輸出型コルベットの三面図を表示した。

 

「双胴型船体とはこのように2つの船体を甲板で繋げたような設計の事を指します。こうする事で水の抵抗を抑えて高速・低燃費を実現しつつも、安定性を高める事が出来るのです」

 

「へー、ミリシアルの空母みたいなもんか。武装はどうなんです?」

 

「武装としましては対艦ミサイル発射機が8基、24連装短距離対空ミサイル発射機(日本版SeaRAM)が4基、20mm高性能機関砲(ファランクス)と76mm速射砲が1基ずつ、3連装対潜魚雷管が2基となっています」

 

「すごいな。これ1隻だけで凡ゆる戦闘がこなせるじゃないか」

 

「海軍のお偉方は卒倒するだろうな。大枚叩いて建造した戦艦より高性能な艦がこんなに簡単に手に入るなんて」

 

「では次はこちら、輸出型小型潜水艦です」

 

浅野が次に指したのは、乾舷が低いつるんとした外見の艦であった。

 

「潜水艦…自発的に海に潜って攻撃する兵器、か…」

 

「海に潜られたんじゃ見つけられないし、発見出来ても攻撃出来ない。対潜水艦用兵器が無いなら一方的に嬲り殺しだ」

 

この世界には潜水艦という兵器が存在せず、故に対潜兵器も存在しない。

そんな中では例え排水量1500トン程度の小型潜水艦であっても大きな脅威になり得る。

 

「私達が居た世界…貴国が居た世界の遥か未来ではある意味で潜水艦が戦艦の代わりになっているのです。如何に強大な艦隊でも、その海域に潜水艦が居るというだけで慎重な行動を強要されますからね」

 

「確かにそうですね。大型艦すら一撃で沈め得る魚雷を抱え、海中に潜んでいるのですから船乗りとしては恐ろしい兵器なんでしょう」

 

「うーん…この新しい兵器を活用する為の戦術かぁ…。難しいな…やっぱり日本から書籍を取り寄せないとな」

 

「ですが…これらの艦には欠点もあります」

 

「ほう…?」

 

気不味そうな浅野の言葉にマイラスの目が輝く。

根っからの技術屋…というより技術オタクな彼としては、高い技術力の結晶である艦の欠点に興味を惹かれるのだろう。

 

「見ても分かりますように、これらの艦は小さいので外洋での運用や長期間の運用には向かないのです。元々がウクライナ(内海での運用を前提とした海軍)台湾(近海での防衛を前提とした海軍)での運用を目的としているので、大陸間の航海となると厳しいものがあります」

 

「なるほど…そこは大きさなりの能力という事か…」

 

「まあ、ムーは外征をしなくなって久しいし、これからもそんなつもりは無いだろう。近海防衛が主体だから、それでも大丈夫か」

 

「ラッサンさんの仰る通り、近海防衛なら頼もしい力になるでしょうし…これはまだ未定なのですが、今後貴国との関係次第ではより大きな艦艇を輸出するという話もあります」

 

「ならば我が国はより貴国と親密になるべく努力しないといけませんね」

 

「それもだが、日本とは絶対に戦争したくないな…」

 

浅野とマイラス、ラッサンはそんな言葉を交わしながらより詳しく見るために潜水艦の中に入って行った。




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