トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
ナグアノの報告を受け、居ても立ってもいられなくなったカイザルとミレケネス、参謀達は入手した日本の戦闘機が保管されている『先進技術実験室』の研究所へと駆け付けた。
「カンダル!」
「ナグアノ…って、おいおい。大物を連れてきたな…」
「カイザル閣下、ミレケネス閣下。こちらは私の友人で先進技術実験室の第1級技士の『カンダル・ランプ』です」
「カンダル君だね。早速だが、日本の戦闘機を見せてくれ」
「かしこまりました、カイザル閣下。ではこちらに…」
急かすようなカイザルの言葉を受けて、カンダルは研究所の一角に建つ格納庫の外階段へ案内した。
「しかし、日本の戦闘機が手に入るなんて…どんな手を使ったのかしら?」
「それは情報局に聞いて頂けますか?」
「分かったわ。で、どうなの?」
「あー…それは全くの偶然なんですよ。私達も
金属製の階段を上りながら話していると、格納庫内部の上層に設けられたキャットウォークへと繋がる扉へとたどり着いた。
「では、ご覧下さい。これが日本の超音速戦闘機です!」
カンダルがテンション高めに告げ、扉を開け放つ。
「これは…!」
「あれが…日本の戦闘機!?」
キャットウォークから見下ろす日本の戦闘機は帝国の如何なる戦闘機ともかけ離れた姿をしていた。
ペンを思わせる円筒形で先が尖った胴体に、揚力を期待出来そうにない小さな主翼。
尾部には垂直尾翼があるが、その垂直尾翼の上の方に水平尾翼が付いており、推進力となるプロペラは無い。
カイザルもミレケネスも参謀達も「これが本当に空を飛ぶのか?」と疑わしい表情を浮かべていたが、日本のものらしい書籍を広げて解説をするカンダルの言葉を聞いて、その考えを改めた。
「この機体についてですが…名称は『F-104J 栄光』、全長16.7m、全高4.1m、翼幅6.7m、空虚重量は約6トンで最大離陸重量は13トン以上になります。また最高速度は時速2450km、実用上昇限度は1万5千m以上、最大航続距離は2000km以上…書籍によりますと、日本では40年近く前に退役した機体のようです」
「そ、そんな高性能機が40年前の物だと!?」
カンダルの言葉を受け、参謀の一人が…いや、カイザルもミレケネスも他の参謀も驚愕する。
何せあらゆるスペックが帝国の主力であるアンタレスを大きく引き離しており、勝てる点は航続距離ぐらいしかない。
正に異次元の性能だが、日本にとっては40年前に退役済の機体という事実が驚愕を加速させる。
「えぇ、日本としては流出しても何ともない技術なのでしょう。しかし、我々にとっては貴重な超音速機の機体とエンジンのサンプルです。早急に解析し、技術を我が物として発展させる事が出来れば、日本の戦闘機に対抗する事も不可能ではない筈です」
自身満々に述べるカンダルに、カイザルは頷いた。
「分かった。君がそう言うのなら期待しよう。もっと近くで見ても?」
「はい、構いませんよ。何かご質問があれば呼んで下さい」
カンダルの許可を得たカイザル達はキャットウォークから降り、F-104Jの側に歩み寄る。
「随分とくたびれているな…やはり正規の手段で入手した物ではないのだろう?」
「はい、カイザル閣下。現在情報局は日本の基礎工業力を探る為にムー国内の企業を買収し、それを経由して様々な日本製品を取り寄せているのですが、その中に金属スクラップもあるのです」
「金属スクラップ…そうね。冶金技術を探るにはいい手だわ」
「ミレケネス閣下が仰る通り、情報局としてもそれを期待していたのです。ですが…日本から届いた鉄・アルミ混合スクラップが入っているという輸送コンテナを開けた瞬間、腰が抜けましたよ。分解されていたとはいえ、戦闘機が丸々1機入ってたんですから」
帝国が
というのも元々F-104Jは退役後に一部が米国に返還され、台湾に再輸出されたのだが、台湾でも退役するとスクラップとなって再び米国へと渡り、米国内の航空機マニアの手によって再生されて飛行可能状態となった個体があった。
しかし、所有者が手放し売りに出されていたところに日本国内のマニアがスクラップという名目で輸入したのだが、船便で到着したところで転移現象、そして購入者の急逝が重なってしまい、所有者不明のまま長らく港に放置されていたのだ。
その後は行政代執行により撤去され、所有者不明ではあるものの他の書類は揃っていたためロクに中身をチェックされる事もなく、流れ流れてムーにある帝国が買収した貿易会社に買われ、帝国が手に入れるに至ったのである。
「なんたる幸運か。都合が良すぎて何らかの罠を疑ってしまうな」
「でも好機である事に違いはないわ。いくら古くても速度なら日本の最新鋭機に匹敵する…もし、
「幸い、この機体に関する書籍もいくつかありますし、日本国内にはより詳しい資料が存在するかもしれません。情報局としても先進技術実験室と協力して、日本の戦闘機をコピー出来るように全力を尽くします」
如何に40年前に退役済の機体とは言え、日本の
多少の性能差ならば数やパイロットの技量で補えるはず…そう考えると、先程までの絶望感は霧散していた。
「よし、私が直接陛下に掛け合って予算の増額を上奏しよう。財布を緩めない財政省の連中も陛下からの勅命であれば無視出来んだろう」
「カイザル閣下はグラ・ルークス陛下と親しいのですか?」
「ナグアノ君。カイザルってば士官学校時代に入学したばかりの陛下を知らずに海に放り投げたのよ。ベッドメイクがなってないって言ってね」
「ミレケネス!」
「私もその場に居合わせたから、先帝陛下と先代侍従長から事情聴取を受けてね…それ以来、カイザルとは腐れ縁なのよ」
「カイザル閣下…なーにしてるんですか…」
ある意味で日本の戦闘機よりも衝撃的な事を知ったナグアノは、肩を落として脱力した。
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