トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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皆さん、この先の展開を予測するのがお好きですね
せっかく予測するなら公営ギャンブルでもしたらいいと思います


優しい日本の接し方

「…という訳でして、異世界国家との貿易は好調です。とりわけ原料を輸入し、製品に加工して輸出する我が国(日本)の貿易スタイルのお陰で異世界国家が莫大な貿易赤字を抱える事態とはなりませんでしたので、各国共に対日感情は上々との事です。また、異世界国家への投資や技術支援も好調でして、中でもロデニウス大陸3ヶ国(クワ・トイネ、クイラ、ロウリア)は各企業の進出や電子機器の輸出が行われており、急激な経済成長を遂げています。最近の調査では、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった家電はもちろん、自動車や携帯電話(ガラケー、スマホ)の普及が目覚ましく、各家庭に1台はあるとの事です。続きまして…総理、何か?」

 

淡々と報告していた秘書だったが、成島総理の眉間のシワが深くなっている事に気付き、言葉を一旦切って問いかけた。

 

「うむ、各省庁や民間企業、マスコミからの反応でそれは理解しているよ。特に我が国の経済成長は凄まじい…見たまえ、今朝の『経済産業新聞』の一面だ。"経済成長率トップ!高度経済成長期とバブルが同時に"…との事だ」

 

成島がデスクに広げた新聞にある通り、日本は未曾有の経済成長の最中である。

先程秘書も言っていたが、異世界国家の豊富で手付かずな資源を輸入し、国内で加工して製品として輸出する日本の貿易スタイルは日本に莫大な利益を齎しつつも資源輸出国にも利益を齎し、資源輸出国は得た利益によって日本製品を買う、そうして製品が売れた利益で日本は更に資源を買うという理想的な相互貿易黒字状態となっており、特に異世界において日本と初めて関わったロデニウス大陸の国々は1990年代末の日本と同程度の技術・経済レベルまで引き上げられていた。

また、日本は資源を持たぬ国も見捨てる事はなく、例えば最貧国として悪い意味で有名な『フェン王国』にはやや離れた海域に豊かな漁場があるという事で、遠洋漁業の技術支援や水産加工場の誘致を支援する事で経済成長を促しており、そんな事もあって周辺諸国(第三文明圏外)において名実ともに日本は盟主と認識され始めているのだ。

 

「そうですね。民間では人手不足が危ぶまれ、新卒採用競争はスゴイらしいですよ。特に製造業では中途採用であっても採用試験に来るための旅費や宿泊費の全額負担はもちろん、場合によっては入社を決めてくれれば月給の半年分を入社ボーナスとして支給するという企業も出ています」

 

「改めて聞くととんでも無いが…私が心配しているのはそこではない。果たして異世界国家へ技術支援を続けても良いのか?という事だ」

 

「と言いますと?」

 

「うむ。我が国は地球においても世界トップクラスの技術立国だった。世界初の商用核融合発電に、全固体電池の実用化…正に世界に革命を齎す発明をいくつも世に出してきた。言わば技術とは我が国の優位であり生命線だ。だが、異世界国家への技術支援はその優位を揺らがせかねないのではないか?」

 

成島の懸念ももっともなものだ。

地球においても日本は発展途上国に技術支援を行ってきたが、その結果より安い製品を作られてシェアを奪われたり、技術を盗まれるという事が何度もあった。

異世界でもそうなってしまえば経済成長がストップしてしまいかねない…そう考えた故の言葉であった。

 

「ですが、異世界国家もある程度の技術を持っていなければ貿易が成り立ちません。中世の人間にスマホを渡しても使いこなせませんし、原始人に車の運転なんて出来ないでしょう?ある程度の技術流出は甘んじて受け入れ、その上で優位を保つべく努力すべきです。もちろん、核心技術は徹底して死守しますよ」

 

日本は製品だけではなく、製造設備や工作機械の輸出も行ってはいるが、輸出を認めていない物もある。

その代表例がマザーマシン…工作機械を作る為の工作機械だ。

確かに日本の工作機械は世界トップクラスの性能を持ち、異世界国家からしてみれば喉から手が出る程に欲しい物だが、工作機械は手に入れて終わりではない。

使っていくうちに発生する摩耗を補修する為の定期的なメンテナンスや部品交換が必要になるが、そのメンテナンス機材や交換部品を作る為のマザーマシンは日本にしか無い。

もちろん、異世界国家にもマザーマシンに相当する物はあるのだが、世界最高の技術を持つ神聖ミリシアル帝国のマザーマシンでさえ、日本の古びた工作機械には遥かに及ばない。

例え日本の工作機械を手に入れても、日本にしかないマザーマシンが無ければ性能を保つ事が出来ないのだ。

そういった意味では、マザーマシンのような核心技術を死守すれば日本の優位は揺るがないと言えるだろう。

 

「うむ…まあ経産省も似たような事を言っていたしな。それに日本製品が売れるのは万々歳だ。内閣支持率も上がるしな」

 

秘書からの言葉をすんなり受け入れると、先程までの懸念は忘れたようにふんぞり返る成島。

心配性だが、心配事が無くなると一転して突き進む彼らしい態度だ。

 

「それに周辺諸国の対日感情は最高ですよ。邦人旅行客なんて王族のような歓待を受けているらしいです」

 

「まあ、パーパルディアがあるからな。そういう意味ではあの国があって良かったよ」

 

第三文明圏内外はパーパルディア皇国の影響力が強く、言わば皇国の顔色を伺って外交をしなければならなかった。

貿易に関してもそうだ。

皇国と貿易しようものなら輸出品は買い叩かれ、輸入品は質の悪い物をぼったくり価格で買わされる…それに抗議すれば貿易停止ならまだいい方で、運が悪ければ難癖をつけられた挙げ句戦争をふっかけられ、そのまま国土は植民地、国民は奴隷である。

そんな中、適切な価格で資源を買って、適切な価格で製品を売ってくれるばかりか投資や技術支援で経済・文明レベルを引き上げてくれる温厚な日本は正に地獄に仏なのである。

しかも軍事力でも皇国を圧倒しているとあれば、皇国との関係を切り捨て、日本につく国が出るのも当然な話だ。

現に今まで皇国との繋がりが強かった『トーパ王国』と『アルタラス王国』は皇国との貿易関係を停止し、日本企業や自衛隊海外拠点の誘致を行って、皇国との断交まで秒読み状態にある。

 

「……っ!?総理!」

 

秘書が持っていたタブレット端末と、成島がポケットに入れているスマホに通知が届く。

音からしてニュースアプリの速報だろう。

 

「速報か?転移してから小さな火山性地震しか起きてないから大地震ではなさそうだが…」

 

タブレット端末を確認して驚愕する秘書に目配せしつつ、ポケットからスマホを取り出して通知欄をスワイプする。

 

《速報 パーパルディア皇国にて大規模軍事衝突。内戦か?》

 

「……は?」

 

僅か幅2cm程の通知バーに表示された短い見出しは、成島の浮かれた気分を一気に冷めさせたのであった。

 

 




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