トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
皇宮の廊下を早足で歩くルディアスと閣僚達。
彼らは急いではいるが、慌てた様子を見せる事無く大会議室へと向かっていた。
「陛下、ご報告が!」
「よい、時間が惜しい。申せ」
「はっ!各所から寄せられた情報から、此度の謀反の主犯はパルファレス公爵家で間違い…」
官僚の報告を遮るように皇宮全体が小さく揺れる。
ワイバーンの火炎弾如きではこうはならない。
おそらくは魔導砲、しかも携帯式ではない本格的な牽引式魔導砲からの砲撃が皇宮近くに着弾したのだろう。
「うわぁぁぁ!?」
「落ち着け!この宮殿は大改修で重魔導砲の至近弾にも耐えうる強度を得ている。パレードの名目で持ち込める魔導砲では直撃でも大きな損害は受けぬ」
「陛下!遅れてしまい申し訳ありません!」
「アルデか。よい、馳せ参じたのであれば多少の遅れは構わぬ」
「ありがとうございます。現在、皇都防衛隊がメイガ陸将指揮の下で対処しております」
「他の部隊は?」
「パレード参加の準備をしておりましたベルトラン陸将麾下の揚陸師団も現在、実戦用装備への切り替えを行っており、完了次第鎮圧に参加するとの事です」
「一先ずはベルトランへは待機を命ぜよ。皇都に戦力が集中してしまえば混乱が無闇に広がってしまい、二次被害のおそれがある。海軍はどうした?」
「先程バルス海将より、海軍司令部へ到着したとの連絡と退役将校の臨時登用を求める旨の通達が…」
「構わぬ。いざとなれば在留外国人を…列強国と日本国の民を脱出させねばならん。海軍はいつでも出航出来るように準備をさせよ」
「しかし、退役将校とやらがパルファレス公爵と内通している可能性があります」
「それを見抜けぬ程バルスは愚かではない」
「はっ!」
そんな風に歩きながらの対策会議ではあったが、大会議室に到着した事で仕切り直しとなった。
「いくらか居らぬが、時間が惜しい。遅れた者には手近な者が情報共有するように。では先ず、現状はどうなっている」
「では私が」
ルディアスから促され、第一外務局長であるエルトが立ち上がった。
「事の発端は地方貴族によるパレードの最中、パルファレス公爵軍の兵士が警備にあたっていた近衛騎士団へ発砲した事であります。当初は予期せぬ暴発事故、あるいは個人的な怨恨によるものだと思われましたが、他の公爵軍兵士も立て続けに発砲、更には地竜が警備詰所へと火炎放射し、計画的な武装蜂起…つまりクーデターであると確信しました」
「歴史的に皇家とは一触即発の関係だったとはいえ…よもや創世祭に事を起こすとはな。公爵軍の兵力は?」
「はっ!現時点ではパレード参加の歩兵1500名、地竜30頭、ワイバーンロード30騎…それに加え、エルダスア伯爵、ターファン侯爵といった有力諸侯及び小貴族が公爵軍に合流し、現時点では少なく見積もっても歩兵戦力1万近くが…」
「1万か…皇都防衛隊では荷が重いかもしれない。陛下、やはりベルトランの部隊を参戦させるべきです」
エルトの言葉を受けてアルデはそう提案するが、ルディアスは首を横に振った。
「いや、ここは市民の避難を優先させるべきだ。皇都で大規模な戦闘が勃発すれば大勢の市民が犠牲となる。そうなればクーデター軍側に大義名分を与える事になりかねん」
「承知しました。では皇都防衛隊は遅滞戦法によるクーデター軍の足止めを、稼いだ時間を利用して揚陸師団による市民の避難誘導を行います」
「よろしい。そこの魔信を使うがよい。ミリシアルから輸入した最新型だ」
「ありがとうございます」
ルディアスからの許可を得て会議室に置かれた魔信の前に座ったアルデは、部下に用意させた皇都の地図と睨み合いつつ、各所に展開した部隊へと指示を出す。
元は魔信士官だったとだけあり、その所作には全く澱みが無い。
「鎮圧はアルデに任せよう。他に何か報告は?」
「私からよろしいでしょうか?」
「カイオスか。よい、申せ」
「はっ。これはまだ速報…つまり確度が低い情報なのですが、クーデター軍は
その言葉を聞いた瞬間、会議室にざわめきが広がった。
連発銃、つまり弾倉を備え僅かな操作だけで次々と弾丸を発射する事が出来る銃は皇国では研究開発中の代物であり、現在においても試作品が10丁程度しか存在しない。
そんな最新兵器を如何に大貴族とは言えど一貴族が揃えられる訳がない。
「エルト!」
「可能性としましてはミリシアルとムーです。しかし、ムーは他国への兵器輸出は行っておりません。ですがミリシアルは近年、中央政府と地方領主との乖離が進んでいると言われています」
「ミリシアルに…いや、地方領主の独断であれば中央政府は把握していないだろうし、痕跡を残す程マヌケではないだろう。それに、下手にミリシアルの責任を追求している最中にミリシアル国民に被害が出れば、皇国による陰謀を疑われるかもしれない。現状はミリシアルへの責任追及は後回しだ」
個人間の責任追及であれば状況証拠だけでもゴリ押せるかもしれないが国家間…それも目上の国家に対してはそうもいかない。
決定的な物的証拠と、責任者による証言も必要だ。
「だが如何に優れた銃を持とうが敵は少数だ。数なら皇軍が遥かに上…多少の犠牲は出るだろうが、間違いなく鎮圧可能だ!」
確かに今回のクーデターは衝撃的な出来事だったが、それ以上続くとは思えない。
一気呵成に皇宮を制圧し、ルディアスを確保すればクーデター軍の目論見は達成出来たであろうが、こうしてルディアス達が対策会議を開けているだけの余裕がある時点でクーデターはほぼ失敗したと言っていいだろう。
あとは時間と皇軍が解決してくれる。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
揺れる床、砕け散るガラス、倒れる調度品、至る所で上がる悲鳴…ただ事ではない。
「どうした!?」
「へ、陛下!」
誰かに様子を見に行かせようとしたルディアスだったが、アルデからの言葉によってそれが無用だと悟る事になった。
「皇都の沖合に…
次は早く更新出来るようにしたいですね