トチ狂った日本国召喚   作:北限の猿

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本作の日本、中々に強かです


バレットネード

ードンッ!ドンッ!ドンッ!

 

「何だ!何が起きている!?」

 

意気揚々と出陣したロウリア軍は大混乱であった。

頭上で轟音が響くたびに何十何百と兵が倒れ、軍勢が削られる様は雑草が大鎌に刈り取られるようである。

 

「うぅ〜っ!痛い…痛い!誰か医者を!」

 

「伯爵!気を確かに!…あぁ、ダメだ!血が…血が止まらない!」

 

轟音と共に降り注ぐ"破壊"から逃れるように地面に這いつくばるパンドールの耳に届く絶望的な言葉。

その方向を見れば、倒れ伏したジェーンフィルア伯爵へ側近のワッシューナが回復魔法を施していたがジェーンフィルアの背中には数センチ程の小さな鉄の矢(フレシェット弾)が無数に突き刺さっており、そこから夥しい量の血が流れ出していた。

 

(あれではもう助かるまい…)

 

蒼白なジェーンフィルアから視線を離すパンドールだが、絶望はまだ終わらない。

 

ードォォォォォン!

 

「なっ、何だ!?」

 

後方から鳴り響く一際大きな轟音。

それに驚き、振り返ったパンドールの目に映ったのは、原形を留めない程に破壊された野営地であった。

帆布と木材で作られた天幕が建ち並ぶ野営地は奇襲を受けた場合を考えて馬車や荷車で防壁を築いていたが、天から降り注ぐ破壊(120mm高性能榴弾)には全くの無力だ。

クワ・トイネ側の別働隊に備えていた3千の兵も、兵達の息抜きの為に連れてきた娼婦達も見るも無惨な骸と成り果てている。

 

「クソッ!クワ・トイネの亜人ごときがなぜこんな力を持っているのだ!おい、魔信兵は居るか!?」

 

「こちらに!」

 

「本陣にワイバーンの支援を要請しろ!此方に回せる分を、ありったけだ!」

 

「はっ!」

 

とにかく状況を打開するには戦場の支配者と謳われる飛竜(ワイバーン)の導力火炎弾により、この猛烈な爆裂魔法らしきものを放っていると思われる魔導士を打ち倒すしかない。

そう考えたパンドールは手近にいた魔信兵(通信士)を呼び寄せると、ロウリア側の国境の街に展開している侵攻軍本陣へワイバーンの支援を要請した。

 

「総員、これより我が方のワイバーンが来る!しかし、この場に留まったままでは敵の爆裂魔法により一網打尽だ!よって、我々はこれより丘を越えてギムへと突撃する!あれだけの威力は確かに脅威だが、故に敵味方が近ければおいそれと使えまい!なるべく散り、全力でギムへと走れ!」

 

その上でパンドールは全軍突撃を命令した。

確かに彼の言う通り、このまま固まって留まったままだと何も出来ずに死ぬだけ…なら前に進み、敵味方入り乱れた混戦に持ち込んだ方が勝ち目がある。

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 

パンドールの号令と共に生き残ったロウリア兵約1万が倒れ伏した戦友を置き去りにして走り出す。

上り坂であるため思うように足が動かないが、走らなければ死が待っている。

 

「うぉぉぉぉぉっ!よし、頂上に……」

 

兵が次々と稜線を越え、下り坂に差し掛かる。

こうなれば坂を利用して加速し、ギムまで突っ走るだけだ。

しかし、一歩を踏み出そうとした兵の一人が力なく崩れ落ち、ゴロゴロと下り坂を転がって行った。

勢い余って転倒した…という訳ではない。

というのも、ロウリア兵達は再び破壊と死の嵐の真っ只中へ飛び込んでしまったのだ。

 

「うがっ…」

「ぅっ…」

「あぁぁっ!腕…俺の腕がぁぁぁ!」

 

ヒュンッヒュンッと矢よりも速く小さな何か(弾丸)がロウリア兵へと襲い掛かり、彼らの肉を裂き骨を砕き、四肢をもぎ取り命を奪う。

反射的にその場へ蹲る者も居るが、死への時間を僅かに引き伸ばすだけで直ぐに血の花を咲かせて息絶えた。

 

「な、何だ!?どうなっている!いったい何が……」

 

必死に状況判断しようとするパンドールであったが、それは遂に叶わなかった。

飛来した黄色く輝く光弾を胸元に食らった彼は、そのまま命の源(心臓)が熟した果実のように破裂し、その命を散らした。

 


 

「敵指揮官らしき目標に命中」

 

「胸に50口径弾(12.7mm弾)が当たったんだ。間違いなく死んだな」

 

ギムを取り囲む城壁上に展開した陸上自衛隊普通科隊員達が肩に担いだ巨大な銃を、丘を越えて来るロウリア兵へ向かって発砲する。

陸上自衛隊の普通科向け銃火器と言えば『20式5.56mm小銃』であるが、彼らが扱う銃火器はそのサイズも構え方も20式とは全く違うものであった。

全長は人の背丈程もあり、そんな"砲"と言っても差し支えない銃のストックを肩に担ぐようにして構えている。

『29式12.7mm重機関銃』、それがその銃の名前であった。

ロシアで開発されたKord重機関銃を参考に開発された本銃はウクライナ戦争以降、各国で大々的に運用されているドローンへの対抗手段と位置付けられており、歩兵携行型対空ミサイルより安価で、尚且つ対空機関砲より軽便な対空火器として運用されている。

とは言うものの、三脚に据え付ける重機関銃(M2ブローニング)で扱うような12.7×99mm弾を歩兵が携行する銃火器で、しかも連射するともなれば対空射撃なぞ無理な話だろう。

しかし、陸上自衛隊はそれを解決する為の秘策があった。

 

それこそが隊員達が身に付けている『34式強化戦闘服』、つまりはパワードスーツだ。

元々陸上自衛隊では特科(砲兵)向けに『25式補助装具』という簡易的なパワードスーツを運用しており29式採用後は普通科でも本銃を運用する為に仮採用していたが、25式は砲弾や装薬の運搬を補助する物であり、最前線で走り回る普通科には適さない物であった。

そこで満を持して開発されたのが34式である。

ベースは25式と同じく電力を必要としない空気圧を用いる人工筋肉によるパワーアシストを主軸とし、全固体電池バッテリーやバッテリー化フレームの採用によって得られた豊富な電力によって弾道計算コンピューターや戦術データリンクシステムを稼働させる事で、今まで敗れ被れでしか無かった歩兵による対空射撃を一世代前の対空機関砲並みの精度まで高める事が可能となった。

しかも、普通科の対空射撃手段はそれだけではない。

 

「…おい、ロウリア側からワイバーンが来ているみたいだ。クワ・トイネ側はワイバーンを飛ばしてないから、間違いなく敵だと」

 

「了解。ならコイツの出番かね」

 

そう言うと先程まで射撃していた29式を肩部マウントから外した隊員は、29式より一回り大きくもややスマートな印象を受ける銃を足元に置いてあったケースから取り出し、肩部マウントに接続する。

 

「31式狙撃擲弾銃、認識完了。弾種、対空炸裂弾」

 

「固定、確認よしっ!射撃、いつでもどうぞ!」

 

「射撃、開始!」

 

ーダァァァンッ!ダァァァンッ!

 

飛来するワイバーンへ向かって12.7mm弾より巨大な弾丸…いや、砲弾と言うべき弾体が飛翔する。

それは50騎以上は居るワイバーンの編隊の目の前で炸裂し、無数の破片を撒き散らして2騎のワイバーンを撃ち落とした。

『31式狙撃擲弾銃』、40mm高初速擲弾を発射するいわば狙撃グレネードランチャーとでも言うべき代物だが、そのルーツは中国にある。

というのもウクライナ戦争中、日本政府は偶然にも中国国営企業がロシアへミサイル関連部品を密輸している証拠を握り、それをダシに領土問題に対しての譲歩や軍事技術の公開を脅迫(要請)していたのだ。

その結果、日本政府は中国から手に入れた『11式狙撃グレードランチャー』をベースに対上陸用舟艇・水陸両用装甲車両・ドローン用の歩兵携行火器として再設計し、現在は半ば34式専用装備として運用している。

 

「おー…これはすごいな…。空自も海自も出番がねぇや」

 

「ワイバーンもこんなもんか…。まあ、近付かれたらヤバいから、油断せずに行こう」

 

軽い感じで言葉を交わす隊員だが、その間にも対空型30式装甲車も加わった対空射撃により、ロウリア側のワイバーンは1騎残らず叩き落とされた。

 




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魔王編の後、何を書くか(期限一週間)

  • 対パ皇戦編
  • 日本と接触した各国の変化編
  • 幻の中央歴1640年先進11ヵ国会議編
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