トチ狂った日本国召喚 作:北限の猿
クワ・トイネ公国最大の港町にして経済都市であるマイハーク。
その港と街並みを見下ろすように小高い丘の上に建てられたクワ・トイネ公国海軍の総司令部の一室では、第二艦隊提督のパンカーレと彼の側近であるブルーアイがテーブルを挟んで話し合っていた。
「ふむ…ロウリア海軍は4000隻以上、対する我々は50隻か…。これでは練度どころの話ではない。圧倒的な数ですり潰されるだけだ」
「しかし、日本が援軍を出してくれます」
「とは言っても10隻だろう?いくら彼らの軍艦が優れてはいても…」
「パンカーレ提督、お言葉ですが日本の力は我々の比ではありません。提督もご覧になりましたでしょう?日本が我が国との国交締結の際、外交団を乗せてきた巨大な客船と護衛の軍艦を」
「確かに…ブルーアイ、君の言う通りだな。歳をとると新しい物を知り、受け入れる事が難しくなる。という訳でブルーアイ、君を日本の軍艦に観戦武官として派遣したい。君は若く優秀だ。将来の公国海軍を率いる為、日本軍の力を間近で見聞し、役立てて欲しい」
「承知しました、提督。若輩者ですがこのブルーアイ、全力で観戦武官としての勤めを果たします」
パンカーレとの固い握手を交わした後、ブルーアイは迎えに来た海上自衛隊の『SH-60L』に搭乗してマイハーク沖で待機する『第二航空護衛艦隊』へと向かった。
機体上面に装備されたガスタービンが高速回転する事による甲高い音と、直径16m以上のローターが空気を叩く轟音が響く中、ブルーアイは眼下に広がる海に展開する艦隊に目を奪われていた。
「わぁ…ぁ…」
言葉を失うとは正にこの事だろう。
「ブルーアイさん、此方が我ら海上自衛隊が誇る航空護衛艦隊の一つ、第二航空護衛艦隊です。一部補助艦艇は本土にて待機していますが、それでも圧巻でしょう?」
目を丸くするブルーアイへ、ノイズキャンセリング付きヘッドセット越しに問いかけるのは彼の案内役である『
「え、えぇ…。もうなんと言ったらよいか…あれらはどんな船なのか教えて頂けますか?」
「はい、もちろん構いませんよ。では…あの艦隊の左右に配置された艦から紹介致します。あちらは『あさひ型護衛艦』の『あさひ』『まきぐも』『あきぐも』『あさかぜ』です。これらは艦隊の"何でも屋"と位置付けられており、対艦攻撃は勿論、対空、対潜攻撃等によって艦隊を敵の攻撃から護衛します」
「対潜…たしか日本には"センスイカン"なる海に潜る船があるんでしたよね?それに対抗する能力…という認識で?」
「はい、正にその通りです。次は艦隊後方の2隻ですが、此方は『まや型護衛艦』の『はぐろ』『あそ』と言って此方は"イージス艦"と呼ばれる強力な対空戦闘能力を持つ艦となっております」
「イージス艦、とは?」
「我々の世界ではあなた方で言うところの"
「ロウリアのワイバーンに勝てますか?」
「余裕です。『まや型』1隻…いえ、『あさひ型』1隻でも十分ですよ」
流石のブルーアイも荒牧の言葉は信じ難いものだったが、彼の自信満々な言葉と態度は反論する余地すら無い。
「は、はぁ…。で…では、艦隊の前方に居る一際大きな船は…?」
「あれは『ながと型打撃艦』の『ながと』『とさ』です。海上自衛隊の大型艦としては初めて"護衛艦"以外の艦種名を与えられた艦なのですよ。あの艦は大口径の砲と対地・対艦ミサイルによる攻撃を重視しており、我が国に多数存在する島嶼部の防衛・奪還任務を期待されています。ちなみにこちらはイージス艦でもありますので、対空戦闘も水準以上です」
荒牧が紹介した艦隊の前方に展開している艦、それは『あさひ型』や『まや型』とは全く違う姿をしていた。
まるで切れ味の良い刃物で切り落としたかのように直線的なシルエットを持ち、全体的にのっぺりとした印象を受ける。
実を言えばこの『ながと型打撃艦』、アメリカ海軍が開発していた『ズムウォルト級ミサイル巡洋艦』の準同型艦なのだ。
日々増大する中国海軍の戦力に危機感を覚え、国内に点在する島嶼部の防衛及び奪還作戦は従来の護衛艦では力不足であると試算した防衛省は当時開発中だった米海軍の『ズムウォルト級ミサイル駆逐艦』に資金・技術協力を申し出、開発難航によって資金難に喘いでいた米海軍はこれを承諾して本級は日米共同開発となった。
その際、当初主砲は『AGS 62口径155mm単装砲』2門であったが日本側の強い要望で『AGS 60口径203mm単装砲』2門となり、それに伴って艦体も一回りサイズアップした結果、満載排水量1万8千トン、全長201m、全幅26.5mと在りし日の"戦艦"に匹敵するような巨艦となったのだ。
その結果、米国側は『タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦』以来の巡洋艦となり、日本側は"護衛艦"の呪縛から解き放たれた"打撃艦"なる新たな艦種が生まれたのである。
「ロウリア海軍は我々が把握しているだけでも4000隻以上の数がありますが…」
「問題はありません。『ながと型』が2隻も居ればあっという間に海の藻屑です」
「な、なるほど…では艦隊中央は?」
「艦隊の中央後方の艦は『おおすみ型揚陸輸送艦』の『おおすみ』です。転移前の同盟国であったアメリカ合衆国海兵隊が保有している『ワスプ級強襲揚陸艦』を参考に建造されていまして、『VA-8B改 ハリアーII』という"垂直離着陸機"や上陸用舟艇の運用能力を持ち、沿岸部へ陸戦部隊を迅速に展開可能です。そして『おおすみ』前方の艦は『しょうかく型航空護衛艦』の2番艦『ずいかく』です。本艦は『F/A-18E スーパーホーネット』という超音速戦闘機を運用し、艦隊防空や制空、対地・対艦攻撃において非常に高い戦闘力を誇ります」
「超音速…話には聞いていましたが、未だに信じられません…。私はあの『ずいかく』に?」
「いえ、『ずいかく』は後方に展開しますのでブルーアイさんは前線で実際に砲火を交える『とさ』に乗艦して頂きます」
そう言っている内にSH-60Lは徐々に高度を落とし、『とさ』のヘリ甲板へと着艦した。
「ようこそ、
「か…艦長だったのですか…?」
このままでは心臓が幾つあっても足りない。
そんな事を思いつつ、自衛官達の敬礼に出迎えられたブルーアイは荒牧のエスコートに従い、『とさ』の艦内へと入って行った。
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