翔るは緋、“硬”るも銅 ~散弾銃で殴るんじゃない~   作:阿久間嬉嬉

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ラブコメは殆ど書けないのと性格が違うのでここのキンジは容赦ないです。
だからか原作キンジがどれだけジェントルマンだったのか、どれだけモテる奴だったのかを書いてる内に何度も理解させられてます……。


空の監獄・破

 ロリータな改造制服とふわっとツインアップが特徴の理子。

 クラスのアイドルとして人気の探偵科ナンバーワンおバカな理子。

 ゲーム談議が大好きでギャルゲーが好みな理子。

 いつもノリノリで騒ぎだしてはぴょこぴょこ踊っている理子。

 盗聴や盗撮にコスプレという趣味が高じすぎて現代の情報怪盗と化している理子。

 

 

 

 ……そんないつも(偽り)の顔を、特殊メイクのマスクと一緒に、「仮面」だったかの如く脱ぎ捨てて。

 

 

 

Bon Soir(こんばんは)?」

 

 青いカクテル片手にアリアとキンジへ、愛らしい見た目とはミスマッチなまでに妖艶な仕草で、そんな言葉を投げる。

 

 この異常事態に推理が苦手なアリアは言うに及ばず愕然としており、キンジも片眼を見開き片眼を鋭くする独特な表情で、彼等へぱちりとウィンクしてきた理子を見つめている。

 

 詰まる所、理子もこのアリアの乗る飛行機を追っていたのだ。

 キンジと台場で別れてから、彼が公共機関を使うか全力疾走でしかたどり着けないのを利用して自家用車で先回りし、同じく武偵徽章で乗り込みアテンダントに化けて……再びキンジと接触したのだろう。

 

 何も言えずにいる二人へくすくすと笑い返しながら理子は再び自分から話しかけた。

 

「知ってる? アタマ(知力)カラダ(体力)で戦う才能ってけっこー遺伝するんだよ。だからお前達みたいな遺伝系の天才ってわりかし武偵高にもいる。けど、お前の一族は中でもより特別だ……」

 

 そこで理子は視線を明確にアリアへと向け。

 

「なあ―――“オルメス(・・・・)”」

「……っ!!」

 

 ある単語を聞いた直後、アリアは丸で電流が流れたかのように硬直し、目つきを一層険しくする。恐らく彼女のミドルネーム『H』家と関係がある事なのだろうが、推測しようにもまず頭文字が合わない。

 勿論、キンジもオルメスが何のことかさっぱりらしく表情を変えない。

 

「あんた、一体何者……!?」

 

 旋律と共に吐き出したアリアの質問に理子は稲光により影の濃くなった顔をニヤリとゆがめ、答え合わせとばかりに自ら正解を口にした。

 

「大怪盗の子孫さ」

「……?」

「峰理子は本当の名前じゃない。あたしの真の名前は……理子・峰・リュパン四世(・・・・・・)

「なん、ですって……!?」

「リュパン…」

 

 ここは流石にキンジも分かったらしくそう呟く。

 否、分かったも何もその“リュパン”という名は、彼も学んだ探偵科(インケスタ)の教科書にすら載っている、著名な人物のモノなのだ。知らない方がおかしいと言えよう。

 

 何故ならばリュパン――正しくはアルセーヌ・リュパンとは。

 彼等が生まれるよりも昔、おおよそ百年ほど前にフランスを騒がせた、世紀の大怪盗なのだから。

 そして彼女は四世。つまり理子は彼の曾孫ということになるのだ。

 

 これを理子がいつもの調子で口にしていたのならみんなはいはいと流して終わりだった。

 されどハイジャックと変装解除(こんな状況下)で言われたのならもう納得せざるを得ない。

 

 予想外に次ぐ予想外からアリアたちが呆然としていると……何故か理子はまたもやくすくすと、しかし何処か乾いた声で笑い出だす。

 

「でも家の人間は理子の名を呼んでくれなかった。お母さまがつけてくれたこのキュートな名前を、一回も呼ばなかったんだよ。それ所か変な呼び方までしてくるんだ」

「変?」

「“四世”さ。四世、四世殿、四世さまーってね。みんなみーんなそう呼ぶ、理子様だなんて、呼びもしない。使用人どもまで……ひっどいよねぇ?」

「……それがどうしたってのよ、四世のいったい何が悪いのよ(・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 嘲りつつもどこか同意を求める様にそう言った理子に対し、アリアは心底分からないと言った感じではっきりとそう返す。

 

 刹那――理子はいきなり、驚くぐらい唐突に目をむいた。

 

悪いに決まってんだろ!!アタシは数字か!? ただのDNAでしかないのか!? 違う!! あたしは理子だ、数字じゃない! あたしは峰理子なんだよ!! どいつもこいつもよぉ!?」

 

 まるでここには居ない誰かへ鬱屈と恩讐をぶつけるかのような、尋常ではないキレ方。だからかアリアは無意識のうちに一歩、後ろへ引いてしまっていた。

 だが誰にぶつけているのかも、どこへ投げているのかも分からない、いっそ届けとばかりに吐き出し続ける理子の怒りを、深刻な面持ちで聞く事もやめない。

 

「曾お爺さまを超えない限りあたしは一生リュパンの曾孫でしかない―――だからイ・ウーに入って“この力”を得たんだ……“この力”であたしは今夜、峰理子になるんだっ!!」

 

 そこで言葉を斬ってアリアを睨みつける理子。と……先から表情が一向に変化していないキンジが横から疑問を挟んだ。

 

「待て。オルメスやイ・ウーよりもまず聞きたい。理子、《武偵殺し》はお前で間違いないのか?」

「《武偵殺し》ぃ? ああ、あんなの……準備運動(プロローグ)を兼ねたお遊びよ。――本命はオルメス四世(アリア)、お前だ」

 

 正しく猛獣のそれに等しい眼光を向けた理子の目に、いつものおバカでどこかふわふわした雰囲気は、もうどこにも存在していない。

 演じていたのだろう……キュートでおバカでマイペースな探偵科の理子、という存在を。

 

「100年前の初代リュパンとオルメスの戦いは引き分けだった。つまりお前さえ倒せばあたしは曾お爺さまを超えたと証明できる……だからキンジ、お前も役割を果たせよ?」

 

 もう隠さない気らしい獣の目が、今度はキンジへ向けられる。

 

「オルメスの一族にはパートナーが必要なんだ……現に曾お爺さまと戦ったオルメスにも優秀なパートナーが居た。条件を合せるためにはこっちも会う奴をくっ付けなきゃならない……それがキンジ、お前だよ」

「…………」

「だからわっかりやすぅーく電波を出してあげたのさ、キンジのチャリに爆弾をくっ付けてな」

「電波を追ってた事、知ってたのね…?」

「あれだけ情報科(コネクト)に何度も堂々と出入りして、同じ事ばっかり聴いてればそりゃ分かるよぉ?」

 

 挑発するかのように語眉と語尾を上げて喋る理子だが、今度はいきなり落ち込んだように、しかしどこか嬉しそうに話し出す。

 

「ただキンジがパンピーパンピーって乗り気じゃないから、こりゃいかんなぁってバスジャックで協力させたの……そしたらお見事! 束の間でもパートナーの出来上がりってわけ!」

「時計をぶっ壊して、オレを外に弾き出したのはその為か」

「ふっふっふ、大当たり。…キーくん? 武偵は何時如何なる理由があろうと他人に物を預けちゃ駄目ですよー?」

 

 要はアリアの情報をキンジが得ようとした際に時計が壊れた、いや壊したのも……それを直して返そうとしたのも、それら全てが仕込みの為のわざと(・・・)だったのだ。

 キンジの体格ではまず間違いなく、タイミングがずれた最後バスになんて乗れない。それがいつも以上に満員状態であったなら、尚更の話である。

 

「シージャックの話も計算の内か」

「そっ。まあキーくんの勘の良さが何時発揮されるかが全く分かんないから、けっこーな賭けだったけどねー……理子がやったキンジのお兄さんの話はさ」

「え……?」

 

 浦賀沖のシージャック事件が《武偵殺し》の仕業かもしれない――これしか聞いていなかったアリアは、思わずキンジを二度見した。

 特に、熱くなっている様子はない。

 だが顔は……片目を開いて片眼を鋭くしたままやっぱり変わって無かったが、それ故に割り切っているのか抑え込んでいるのか、判別がつかない。

 

「キーくんに良いこと教えてあげよっか? キーくんのお兄さんはね……今、理子の恋人なの」

「へえ」

「ちぇーっ、やっぱ妙に反応悪いなぁ。じゃあじゃあ……こういうのは、どう?」

「キンジ、絶対怒っちゃ駄目よ! 理子はあんたを挑発しようとしてる!」

 

 外面から内面の想像が全くつかない故にアリアはそう声をかけるしかなく、次いで放たれた情報にも思考が追いつけない。

 

「驚異的な身体能力と偶に見せる鋭い勘、それこそアリアに合うぐらいとびきりのやつをキーくんは持ってる。だからパートナーにいけると思った。でも最初は悩んだんだよ? なにせ……超が付く程ズレてる(・・・・)所為でHSS(ヒステリア)は発動させらんないみたいだからね」

「その力を知っているのか」

「くふふ、だから言ったじゃん? 理子の恋人だってさ」

「ヒステリア…?」

「そうか」

「うーわこれでも微動だにしないんだぁ……面倒臭ぇなお前」

 

 それでも効果はあったのだろう。

 肩をすくめた理子へキンジはとうとう表情を何時ものものへ戻し、トカレフの模造品を抜こうとしたのか腰へ手を伸ばし、前傾姿勢を取る。

 

 しかし……ここでタイミング悪く旅客機が大きく揺れ動いた。

 

「うわっ!?」

「……」

「お~ららっと♬」

 

 同時にキンジの銃はホルダーごと壊されてしまい、元銃の鉄片が彼の背後へと転がっていく。

 

 壊した張本人だろう理子はというと、小ぶりな拳銃(ワルサーP99)を手にちっちっ…と指を振っている。

 

「ダメだよキンジ。たしかに今のお前でもあたしと戦闘に持ち込める、でもそれじゃ絶対ダメダメ。そもそもオルメスの相棒は戦うんじゃない……キーくんが大好きなパンピーの視点からヒントを与えて能力を引き出す、そういう活躍をしなくちゃ」

 

 陶酔しているかのような瞳でそう高説を口にした、まさに瞬間―――アリアがとうとう動いた。

 

「キンジ、サポート!!」

 

 二丁拳銃状態で迷いなく突撃しているのは、自身の得物(ガバメント)と理子の得物を見て行けると判断したからであろう。

 

 防弾制服を着ている以上銃弾は刺突武器ではなく打撃武器になる為、一番ものをいうのは装弾数だ。

 そして理子のワルサーは計16発、アリアのガバメントも予め入れた一発を合わせて両手で計16発。UZIでも隠し持たれていない限りはほぼ互角。

 

 ならばあとは身体捌きのみが頼りになる、そうアリアは確信して足を早め。

 

 ……されどもその判断は余りに早計であった。

 

「アリア? まさかそれ、自分だけだと思ってる?」

 

 なぜならば、カクテルグラスを投げ捨てた理子のスカートの中から、もう一丁のワルサーが現れたのだ。

 だがもう止まれない。

 視線が交差し、テールが舞い、バリバリバリッ! と音を挙げて始まるアル=カタ戦。

 

 至近距離から互いを撃とうと銃を突きつけ、それを払いのけて銃口をあげ、それを蹴り飛ばして撃とうとする、一進一退の攻防でせめぎ合う二人。

 

 アリアは武偵法を守らねばならないため頭など狙えない、なので不利なのだが理子もそれに合わせて狙っておらず、結果拳銃による近接戦闘は熾烈を極めていた。

 

「このっ!!」

 

 射線から咄嗟に屈んで外れつつも斜め下からアリアが撃ち。

 

「あははははっ!!」

 

 回り込みながらかわして反撃の一射を理子が撃ち。

 

 それをも避けながら伸ばされたアリアの手を、理子が横にずらし、銃口が光り。理子が接近すれば、あえて離れずにフリーな方の腕で無茶な体勢をしいて、仕切り直しを押し付ける。

 

「う……あああっ!!」

「もっともっとぉ!!」

 

 互いの銃弾は互いに体をミリも捉えずその全てが壁に、床に、椅子に、天井に吸い込まれ、弾痕を見る間に刻んでいく。

 

 だからこそ決め手を打つのは、弾が切れた時。

 

「やっ!」

「お?」

 

 得物で分が悪い故に最初からそのつもりだったのだろう……自身のガバメントがカチンと音を立ててから、間髪おかずアリアは理子の両手を両脇で抱え込んだ。

 

 格闘戦ではアリアの方に分があったらしく、一瞬の隙と虚を突かれた理子は見事にからめとられてしまい正面のアリアも、いつの間にか背後に回っていたキンジも撃てなくなる。

 

「キンジ!!」

 

 あとはキンジが理子を取り抑えるのみ。

 

「奇遇だよねアリア」

 

 ――だというのに理子の声からも表情からも、一切余裕は消えておらず。

 

「高名な家系に、キュートな姿、理子とアリアは色々似てる……双剣双銃(カドラ)の二つ名まで、全く同じ」

 

 反対にアリアが、その光景に余裕を消さざるを得なくなる。

 

「でもお前は“この力”を全く使えていない……!」

 

 それは正に悪夢の具現。

 理子のツインアップの内、片方のテールが不気味にうごめいたか(・・・・・・・・・・)と思うと、隠していたナイフを握ってアリアへ振りかざして来たのだ。

 

 ……あの日、理子がキンジにアリアの情報を伝えた日。

 双剣双銃の名を理子がおかしいと笑った際、キンジは「四本同時に使えればいいのか?」と言った感じのことを、彼女へ告げて独特だと言われている。

 

 しかしその独特な回答は、理子の隠していたバケモノの力を、奇しくも言い当てていたのだ……!

 

「な……! くっ!!」

 

 一撃目は何とかかわすアリアだが、しかしその視界にはもう片方のテールに握られたナイフが……もう目と鼻の先まで迫っているのが見え。

 

「あ、うっ!」

 

 ザシュッと切られた側頭部から、少量の血と桃色の髪が飛び散り、次撃の髪による打撃(・・・・・・)で軽々吹っ飛ばされてしまい、バーカウンターへと激突。

 

 打ち所が悪かったのか、手足そのものに損傷はなくとも内部に影響があったか、ふらふらと立ち上がるアリアに理子は狂気をたっぷり含んだ笑みを浮かべる。

 

「108年の歳月はこうも子孫に差を作っちゃうもんなんだね……こいつ、自分の力すら使えてない! 勝てるよ、今日、理子は理子になれるんだ!!」

 

 

 そしてそのまま高笑い―――しようとして。

 

 

「……そう思ってたのにさ。よくも邪魔してくれたな、キンジ?」

 

 “テールを引いて”軌道を強引に変え、“テールをぶん殴って”妨害に対抗した、後ろに佇むキンジの姿をギロリと捉え、にらみつけた。

 

 どうやらアリアの傷が深くないのはキンジのお陰らしく、上の通り対抗できるぐらいには心に余裕を持っているようだがしかし、二丁二刀に高かろうがただの身体能力程度では付いていけようはずもない。

 

 それを分っているのか居ないのか、キンジは理子をまたもや片眼を見開き、片眼を鋭くしたあの表情で見つめる。

 

「《武偵殺し》は本当にお前で間違いないんだな」

「は?」

 

 ……そしてどういう訳か、先の会話をやり直すかのごとくそんな事を口にして。

 

「兄貴のことは真実、それは分った。だが《武偵殺し》はどうなんだ。直近の二つと以前の二つは本当に同じなのか。兄貴に接触しようと乗じたんじゃなく」

「そんな事を聞くためにわざわざ邪魔したのか? ……トンチンカンかてめえ!? そう言っただろうが!!」

 

 勘が鈍い時はとことん鈍い、もとい拘るキンジに絶頂の時を邪魔された理子は当然のごとく激怒。対するキンジは納得したとばかりに頷いている。

 ……全く空気を読んでいない。

 アリアが健在であればツッコミの一つでも飛ばしただろう、それぐらい浮足立った状態でいるのだ。

 

「分かった、ありがとう」

「そ。じゃあ返礼ついでにお前も殺してあげる」

 

―――このクソ馬鹿野郎が――

 

 そんな感情を隠しもせず、理子はワルサーの引き金を引くと同時に、先端でナイフを握ったテールをキンジ目掛けて伸ばし、振るう。

 

 何処に逃げてもどれかを喰らう。

 後に避けても追い詰められる。

 横に逃げれば、アリアに当たる。

 

 逃げ道を塞ぐ四手同時攻撃。

 

 目の当たりにしたキンジは動く事もせず、ただ、真っすぐと理子を見つめるだけ。

 

 そのまま両目ともに見開いて―――。

 

 

 

 

 

その全てをどこからともなく表れた散弾銃が砕き割った。

 

「えっ――」

 

 ただ単純に、百九十度を凄まじい速度で薙いだだけで銃弾もナイフも鉄くずに還したかと思うと、キンジはそのまま散弾銃で正面を一突き。

 

「――ぬおあっ!!」

 

 ……しただけなのに、理子の顔面へ赤銅色の何かが迫り、必死にのけぞって避ける。

 

 そして避けたと同時に金属音が聞こえ、空気を伝わる衝撃が走り……がっつりと背中を殴り飛ばす、散弾銃の銃口部分

 

 視界の端から下に見えるは、何時の間に居たか銃を握って、振り抜くように腕広げるキンジ。

 

「がぶぁっ!!?」

 

 思い切り天井に激突し、目を白黒させる理子。

 そんな彼女へキンジはその赤銅一色の散弾銃を……近未来的で太い銃身、銃口四つ、なのに持ち手はマスケット銃のそれに近い、異様なショットガンを突きつけて。

 

「よく分かったんだわ」

「あ、え、は? …おま……えっ?」

―――だからお前をぶん殴る

 

 理不尽の幕開けを宣言した。

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