機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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何故、泣いているんですか?

 神兵様……じゃなく、ナータさんが、目の前を歩いています。

 

 艶のある黒くて長い髪は私より綺麗で、話しかけるのも躊躇してしまいます。そんな相手なのに、シェリーさんは物怖じすることなく質問攻め。

 

 私はもっと心を強くして、積極性を付けなければいけないのかも。せっかく生き延びたんですから、頑張らないとですね。

 

「――で、さ。私たちの体について、もう少し詳しく教えてくれない?」

 

 床に転がっている瓦礫に飛び乗りながら、シェリーさんがナータさんに聞いています。私も気になっているので、二人から離されないよう半壊した通路を小走りで進み、盗み聞きを継続ですね。

 

「マスターが言ったように、体の90%は機械ゴーレムになっています」

「機械ゴーレムって何? 神兵や神様と何が違うの?」

 

 ジャザリーさんには同じだと教えてもらいましたが、まだ信じ切れてません。ナータさんがどう答えるか気になります。

 

「貴方が言う神兵たちと、ほとんど同じですよ」

 

 ああ、やっぱりそうなんですね。お父さんやお母さんを助けてくれなかった神兵様に、私はなってしまったようです。嬉しい気持ちなんてありません。体に対して嫌悪感を覚えるぐらいには、負の感情がわき上がっています。

 

 なんででしょうね。

 普通は、神様に近づけて喜ぶべきなのに。

 

「ナータは人じゃないよね? 同類になったってこと?」

「少しだけ違います。あなたたちは生身の体が10%ほど残っていますが、私は0.001%です。機械化率としては私の方が高く、生物という枠から大きく外れていますね」

「私ってバカだからさ、もっと簡単に説明してくれない?」

 

 ナータさんは立ち止まって、シェリーさんをじっと見つめました。瞳が点滅しているようにも感じます。何か考えているのかなぁ。

 

「私の方が、あなたたちより神に近い、という意味です」

 

 機械化率。聞いたことのない言葉でしたが、数字が低いほど人間ではなくなっていると思えば、納得感がありました。ナータさんは私たちと比べて感情が乏しいですし、やっぱり神兵様に似ていますから。

 

 私やシェリーさんのように、無理やり変えられた存在とはちょっと違うのでしょう。

 

「だから私とニクシーは神兵様に近いって言ったんだね。確か神様より格が低いらしいし、納得かな?」

「はぁ……。貴方たちは、もう少し自分の体を知った方が良さそうですね」

 

 呆れたような声を出したナータさんは、歩き出してしまいました。もうシェリーさんの質問には答えてくれません。

 

 半壊した通路を進んでドアを開けると、部屋に入っていきます。

 

 私とシェリーさんも後に続き、入り口で立ち止まってしまいました。

 

「怖い……」

 

 思わず言葉が漏れてしまい、足が震えていてます。

 だって体がぶら下がっているんですから。棚には謎の箱や液体に浮かぶ何かがあって、神様が禁忌と定めていた研究室、なんて言葉が思い浮かぶほど不気味です。

 

「私は何を見せられている!?」

 

 シェリーさんは私にそっと触ってきました。手が震えていて、同じように恐怖を感じているみたいです。よかった。私の感覚がおかしいわけじゃなかった。

 

「わかりやすいように説明すると、貴方たちが言う神の体、ですね」

「「!?」」

 

 驚いて声が出ません。

 

 まさかここで、神様が作れるんですか!?

 

 謎ばかり深まるジャザリーさんは、神を超える存在。

 私なんかが、口をきいてはいけないお方なんですね……。

 

 感情が高まって涙がボロボロと流れ落ちて、止まりません。

 

「何故、泣いているんですか?」

「都市から追い出され、神様に見捨てられたと思っていたんです……でも、神様よりスゴイ人に助けてもらえました……」

 

 お父さんやお母さんを救ってくれなかったことを恨んだから、神様に捨てられたと思っていました。

 

 都市の外に出たときの悲しみと絶望感は、今でも覚えています。キメラに襲われても動けないほど、何も考えられない状態でした。

 

「私は、この恩をどうやって返せば良いのでしょうか」

 

 神様に捨てられた私には何の価値もありません。子供なので技術や知識だってシェリーさんには劣るし、返せるものはなにもない。

 

 ナータさんが私に近づいて、顔を触りました。

 

「マスターの為に生きなさい。それが恩返しとなるでしょう」

 

 お母さんみたいに、優しく、安心する笑顔でした。

 

「そんなことで良いんですか?」

「はい。マスターの命令を聞いていれば、良いんです」

 

 私から目を離したナータさんはシェリーさんを見ました。

 何も言いません。じっと言葉を待っています。

 

「私だって、恩知らずじゃない。ニクシーと一緒に、ジャザリーを支えるよ」

 

 少し照れながらもシェリーさんが言いました。同じ気持ちで嬉しいです。大切なジャザリーさんと一緒に日々を過ごしましょうね。

 

「貴方たちの覚悟を受け取りました。それでは、神兵や神と名乗っている存在が、どれだけ愚かなのか、これから説明しましょう」

 

 さっきまでの話で、頭がパンクしそうなのに。まだあるんですか!?

 

 しかも神様が愚かなんて言い切っている。私なんかが理解できるかわからないけど、知りたいという欲求が止まらない。

 

 人間を支配、管理している神様、ジャザリー様のスゴイ知識、世界の秘密を知ることができる。なんて言ったら大げさでしょうか。

 

 シェリーさんに笑われてしまうかもしれませんが、今の私は本気でそう思っていました。

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