機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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すっごく、大きいです!

 ナータとアデラを連れて室内畑に来た。

 

 前に見たときと少し様子が変わっていて、麦は全て収穫され、部屋の奥まで見通せるようになっている。人工の太陽が部屋を明るく照らしており、野菜たちは順調に育っているようだ。

 

 畑のど真ん中を歩いて奥に進む。柔らかい地面には稲穂が転がっている。生まれも育ちも都会だったので、こういった風景は初めてで新鮮だ。田舎暮らしも悪くはないな。

 

 あとは温かい風が吹いていれば最高なんだが、そこまで求めてしまうのは贅沢だというものだろう。

 

「ジャザリーさーーん!」

 

 声がした方を見た。人の背丈まである植物がある。青々とした葉や黄色い花が咲いており、合間にキュウリが実っている。葉がガサガサと揺れ、ニクシーが出てきた。なぜかナータと同じタイプのメイド服を着ており、両腕には大量のキュウリを抱えている。

 

 俺を見つけると、嬉しそうに走ってきた。

 

 出会った頃は少女らしくない疲れた顔をしていたが、今は元気が溢れているように見えるな。

 

「見て下さい! これ! すっごく、大きいです!」

 

 抱えているキュウリを見て驚いているようだ。

 ニクシーの腕にあるキュウリを一つ手に取ってみる。

 

 つるつるとしていて冷たく滑らかだった。サイズは普通。これで大きいと言うのであれば、ニクシーが住んでいた都市では品種改良が進んでいないのだろう。もしくは、土壌が悪くて育ちが悪いか、だ。

 

 これも上級機械ゴーレムたちが文明を抑制した結果なのであれば、人間にとっては暗黒期の到来だと言えるだろう。

 

 キュウリを返却しようと思ってニクシーを見る。何かを期待したような目をしていた。

 これは食べて欲しい、というメッセージがこもっていそうだ。

 

 期待に応えてかじってみる。ボリボリと噛んでいくと、水分が口の中に広がっていく。シャキシャキとした食感は心地よく、喉は潤った気がした。

 

「美味いな」

「やっぱりそうですよね! 水分のなくなったキュウリとは全然違いますっ!」

 

 随分と貧しい食事生活だったような発言だ。その若さで都市から追放されたことといい、苦労してきたんだろうな。

 

「これからは毎日、新鮮な野菜が食べられるぞ」

 

 手を置くのに丁度良い位置にあったので、頭をなでる。気持ちよさそうにして、ニクシーは目を閉じた。

 

「あ、そこにいたの?」

 

 今度はシェリーがキュウリの葉をかき分けてやってきた。両手に大根をぶら下げていて、首にタオルを巻いている。俺の知っている農家スタイルだ。違う点としては、彼女もメイド服を着ていることだろう。

 

「元気そうだな」

 

 声をかけてようやく、俺の存在に気づいたようで、大根を落とす。

 手で綺麗な赤髪を整え始めた。

 

「どう? 似合うかな?」

 

 出会ったときは顔色は悪く、死にかけていた。そのときに比べれば健康的になっているし、大人な雰囲気を持つシェリーとメイド服の組み合わせも悪くはない。お世辞ではなく本音で言えそうだ。

 

「似合うぞ」

「そう。ありがとう」

 

 シェリーの頬が赤くなった。視線を合わせられないようである。

 女心は分からないと、仲の良かった友人が言っていたが、ようやく俺も実感した。

 うん、分からん。

 

 袖を引っ張られた感覚があったので、ニクシーを見た。

 

「私は似合います……?」

 

 こういうとき、なんて言うのが正解なのか。女心に疎い俺でも分かる。任せろ。

 

「もちろんだ。可愛いぞ」

 

 肯定するに決まっているじゃないか。完全な正解を選んだと思ってシェリーを見ると、軽蔑するような目をされていた。俺からニクシーを引き離し、守るように抱きしめる。

 

「あなた。もしかして、少女好きの変態だったの?」

「……はぁ?」

 

 シェリーは何を言っているんだ? 俺はそんな性癖なんて持っていない。どうして勘違いされたのか分からないが、否定せねば。

 

「違います。マスターは機械ゴーレムが好きなんです」

 

 左右の両腕をつかみ、ナータとアデラが抱きついてきた。「ね?」なんて言いたそうな顔をしているが、俺は別に機械ゴーレムを恋愛対象だなんて思ったことはないぞ。というか、誰かを好きになったこと自体がない。

 

 恋愛をする時間があるなら、機械ゴーレムのブラックボックスになっている、小箱や機械化された頭脳の解析をしたいのだ。これがわかれば機械ゴーレムの性格や「人類のために働く」という目的、「機械ゴーレムは自分の研究は不可」といった制約を変えることが出来るからな。

 

「そうなの? それだったら、人それぞれと言うことで納得するけど……」

 

 なんか変な誤解をされてしまったようだが、この場で説明しても理解してもらうのは難しそうだ。話は得意じゃないし、たいした問題ではないので放置しておくか。

 

 警戒を解いたシェリーがニクシーを解放すると、少し照れながら俺を見る。

 

「なんだかジャザリーを見ると、気持ちが落ち着かない。私に何か変なことをしたの?」

 

 やはり副作用が出たか。

 

「それは半機械ゴーレム化した影響だな。時間経って生体と馴染んだ結果、マスターである俺に好意的な感情を持つようになったのだろう」

 

 機械ゴーレム化した部分が多いと発症するから、俺が地上にいた時代には機械ゴーレム化率は30%前後に抑えることが推奨されていた。

 

 二人は機械ゴーレム化率は90%だし、解明し切れていない小箱を心臓代わりに使っているので、変化は大きいはず。

 

 マスター登録は出来ていないが、俺の魔力がしみこんでいる小箱やGOケーブル、素体から、影響を受けて好意を持ってしまっているのだ。

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