機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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キメラハンターです

「……一つだけいいですか?」

「もちろんだ。言ってみろ」

 

 ニクシーに欲しいものがあったのか。普段から従順だったこともあり、気づかなかったな。

 

「もし、できればなんですが……お父さんとお母さんの写真を取りに行きたいです」

 

 本人と会いたいではなく写真という所から、ニクシーの境遇を察した。それと同時に、なぜ追放されたかまで予想がつく。可愛らしい見た目からは想像できないが、過酷な人生を歩んできたのだろう。

 

 可哀想だとは感じないが、何かしてやりたいと思うぐらいの情は移っている。

 このぐらいなら、聞いてやっても良いだろう。

 

「残っているのか?」

「家はなくなってしまいましたが、写真だけは庭に隠していました。まだあると思います」

「そうすると、商業の神が区投資している都市に行かなければならないな」

 

 顎に手を当てて少し検討してみる。

 

 上級機械ゴーレムが都市を管理しているのであれば、侵入者の対策はしっかりとしているだろう。外壁を乗り越えようとしたら、警報装置が鳴る、監視用のカメラに記録される、ぐらいはあるだろうな。

 

 人類の文明を抑制している都合上、都市の中に高度な機械はないだろうから、侵入が一番苦労しそうだ。

 

 俺たちが生き続ける限り、上級機械ゴーレムに気づかれる可能性は残っている。先に仕掛けて情報を手に入れるのもありだな。

 

 使えそうな侵入プランさえ思いつけば、ニクシーの願いは叶えられそうである。

 

「あの、やっぱりダメですよね。ごめんなさい!」

「まだ諦めるな。検討するから質問に答えろ」

 

 期待を込めた目でニクシーが見てきた。

 

 あまりにもリスクが高いと判断したら、断るつもりだったんだが。ちょっと言い出しにく空気になったな。これだから他人とのコミュニケーションは難しい。苦手だ。

 

「都市に出入りする人間はいるか?」

「います」

 

 もし逆の答えだったら、計画は即座に中止しなければいけなかったので助かる。

 

「キメラハンターです。彼らは毎日、外に出て食用の肉や薬に使う薬草を、取ってくるお仕事をしています」

「武器は何を使っている?」

「一番多いのは槍でその次に剣や弓です。あとは……力のない子供ならナイフですね」

 

 文明を抑制しているからか、武器は進歩していないどころか、退化してるようだ。俺が地上にいた時代には魔力を飛ばす武器などあったが、そういったものは禁止とされたのだろう。知識すら残っていないだろうな。

 

「魔法は使うのか?」

「そんなこと、人にはできません。使えるのは神兵……じゃなくて機械ゴーレムだけです」

 

 なに、当たり前のことを言っているんですか? なんて態度だ。

 

 道具だけでなく魔法の知識まで失われているとは。原始的な魔法なら偶発的に覚えることもあるはずなのだが、ニクシーの反応からして、そのような出来事もないのだろう。

 

 理由はすぐに思い浮かんだ。首輪の存在だ。

 

 あれが、魔法を発動させないようにしている可能性は高い。

 

「キメラハンター以外に出入りする職業を教えてくれ」

「私が知っているのは商人です」

「他の都市との交易か」

 

 都市内だけで完結してしまうと経済が停滞してしまう。成長していない、未来を感じられない、そんな状況を受けいられるほど人間は強くないので、上級機械ゴーレムたちは交易を許可したのだろう。

 

「はい。神様に認められた許可書を持っている人だけが、他の都市と行き来できるんです」

 

 管理が大好きな上級機械ゴーレムなら当然の対応だな。違和感はない。

 

「護衛はラインセンス必要なのか?」

「わかりません……」

 

 キメラが徘徊するような場所を歩くんだから、キメラハンターが護衛していると思ったのだが、ニクシーの知識だけで裏付けは取れなかった。大人のシェリーなら何か知っているかもしれない。

 

「シェリーさん、マスターがお呼びです」

 

 俺が命令をするまでもなく、ナータが天井に備え付けられた通信機能を使った。

 

 しばらく待つと、ドタドタと走る音が聞こえてシェリーが入ってくる。

 

 メイド服のスカートをパンパンと叩いてから、髪を整え、俺の前に立つ。

 

 そういうのは俺が見てない場所でやるべきなんじゃないか。どこかズレた女である。

 

「ご用ですか?」

「交易している商人の護衛について聞きたい」

「アイツらのことですか」

 

 鼻にシワを寄せて嫌悪感をあらわにした。珍しい反応だ。

 

「知っていることを話してくれ」

 

 はぁと、小さくため息を吐いたシェリーが話し出す。

 

「アイツらを一言で言うと人格破綻したキメラハンターの集まり、だね」

「大切な商品を守る仕事だぞ? 普通、まともなヤツらを雇うんじゃないのか?」

 

 キメラが襲ってくるかもしれない危険な外を、人格が破綻した人間と一緒に行動したいと思わない。なぜ、あえて信用できないヤツらを雇うんだ。

 

「都市から都市に移動するなんて危険な仕事、誰もやりたがらないからねぇ。孤児として育てられた子供の中でも、ネジがぶっ飛んだ人が就く仕事になっているんだよ」

 

 神に管理されるのが当たり前で、親の仕事を受け継ぐシステムがあるんだ。普通はキメラハンターとして長く生きていけるよう、比較的まともな仕事を選ぶよな。

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