機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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人が来るまで隠れようか

 ナータとダリアを連れて、地上ではキメラの森と呼ばれている場所を歩いている。

 

 上級機械ゴーレムを裏切ったというのに後ろめたさはなく、マスター登録も終わって機嫌の良いダリアが先頭を進む。

 

 今回の獲物はキメラハンターだ。都市に潜入するため首輪を奪い、管理機能を無効化して俺に付ける予定である。

 

「キメラハンターは一級を頂点にして五段階に分かれていて、成績が良ければ上にあがる仕組みなんだ」

 

 社会の仕組みを教えてくれているのはダリアだ。元神兵だったこともあって、人間より詳しい。

 

 一や二級になるようなヤツらは、首輪を付けていても魔力による身体強化ができる特別体質らしく、神兵とも互角に戦える実力があるらしい。こいつらは要注意人物で、逆に三級以下は警戒する必要がないほどの脅威度というのが、機械ゴーレム側の意見らしい。

 

 阻害機能ですら克服する人類のたくましさと、技術の限界を感じる話である。

 

 いつの日か、人類は機械ゴーレムの管理から抜け出せるかもしれんな。

 

「で、三級以下の人が集まるのは、この辺」

 

 立ち止まったダリアが振り向いた。

 

「薬草の群生地で、主に四級のキメラハンターが頻繁に来るんだ」

「よく知っているな」

「そうなるように作ったからね」

 

 人類の行動を管理するために、薬草の群生地まで用意するか。自分たちが見つけたと思ったものが他人から用意された物だと知ったとき、人は何を感じるんだろう。

 

 ラッキーだと思うのか、それとも落胆するのか。俺は自分で見つけ気づけたことに価値を感じるので、後者になる。

 

「さ、人が来るまで隠れようか」

 

 俺たちは草むらに入るとしゃがみ込み、薬草の群生地を眺める。

 

 しばらくすると話し声が聞こえ、キメラハンターと思われる五人がやってきた。年齢は十五歳程度に見えて若い。男が四人で女が一人……ッ!?

 

 見間違えかと思って目をこするが、頭に付いている猫耳や尻から生えている尻尾は消えてくれない。

 

 どういうことだ? 眠っている間に突然変異が生まれて獣人が誕生……いや、違う。今まで手に入れた情報から推測すれば、すぐに答えは出た。

 

 機械ゴーレムは、人間と動物のキメラを作りやがったな。

 

 人間の改造は禁止されていなかったが、まさかという思いが強い。

 

 ナータも気づいたようで、俺をじっと見ている。俺が何に驚いたのか察したようだ。

 

「何か気になることが?」

 

 状況をわかってないのはダリアだけだ。きょとんとした顔をしている。

 

「獣人を見たことがなかったから驚いただけだ」

「昔はいませんでしたからね」

 

 俺とナータの言葉を聞いてダリアは納得した顔をした。それと同時に、ご機嫌を伺うように上目づかいをしてくる。

 

「もしかしてマスターは怒っているのかな?」

 

 同族を改造して新しい人種を生み出したことに、驚きはあっても憤りのような感情はない。過去に人間は動植物にたいして品種改良を行ったんだから、ついにその番がきただけである。

 

 やられたらやりかえされる。当たり前のことが行われただけであるのだ。

 

「別に。ただ獣人と人間の違いは気になるが」

 

 目の前にいる女は猫の要素を持っているが、元の動物の性格がどこまで影響しているのか、色々と知りたいことはある。

 

 一人捕まえて調査して見たい欲求はあるものの、今はそれほど強くないので後回しでいい。それよりもさっさと首輪を手に入れて都市を観光したいのだ。

 

「目撃者がいると厄介だ。単独、もしくは二人になるまで待ち続けよう」

 

 機会を待つため、無駄な会話は打ち切って静かに見守ることにした。

 

 等級が低いこともあってキメラハンターは、俺たちの存在に気づかない。

 

 薬草を採取しては帰っていく。キメラに襲われるチームもあったが、その場にいるヤツらが協力して撃退する場面もあった。意外にも協調性が高いのだ。

 

 親、子供と代々職業を引き継ぎ、また他の都市に移住できないからこそ、一人勝ちしようなんて発想が生まれないのだろう。

 

 人類が協力し合っている姿を見ると、上級機械ゴーレムが管理する世界になってよかったかもしれんと思ってしまう。俺が眠る前は憎しみあって、戦争が起こっていたからな。

 

 いくらまっても、ちょうどいい人数がやってこない。ついに周囲が暗くなり始めた。

 

「この時間から薬草を採取する人はいません。帰りましょうか」

 

 周囲が暗いと、キメラからの襲撃に気づけない場合も増えてくる。キメラハンターであっても外出は控えるだろうから、ダリアの発言はごもっともである。

 

「そうだな」

 

 腰を浮かしかけてから止まった。ランタンの光が見えたからだ。

 

 慌てて座って様子をうかがう。

 

「もう帰りたい……」

 

 泣きながら十歳前後に見える少女が薬草の群生地に来た。一人しかない。装備は腰にぶら下がっている大型のナイフのみで、脅威度は低い。逃げ出したとしても簡単に追いつけるだろう。

 

「捕まえますか?」

「いや、様子を見る」

 

 別の方向から草をかき分けるような音が聞こえたので、すぐには動かない。

 何が出てくるのか待っていると、すぐに姿を現した。

 

「ちょっと若いが、良さそうな女がいるじゃないか」

 

 斧をぶら下げたキメラハンターの男が、下品な声で笑っていた。

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