機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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薬草を採りに来たんですか?

「あ、あなたは、誰ですッ!?」

 

 少女は震える手でナイフを抜きながら聞いた。

 

 その姿が男の嗜虐心を刺激したようで、持っている斧の刃を触りながら嗤っている。

 

「お前と同じキメラハンターだ」

「薬草を採りに来たんですか?」

「違うなぁ。獲物は……人だ」

「え、なんで……」

 

 共同体としての意識が強くなったはずなのに、この男は他人を害しようとしている。管理の首輪があるから奴隷として売り飛ばすなんてできないだろうし、目的が知りたい。しばらく様子を見よう。

 

「神様は決められた仕事さえしていれば文句は言わねえ。例えお前を捕まえて、囮役に使ったとしてもな」

 

 どんな形でも良いので、キメラハンターとして活動するのであれば咎めはしないと。商業の神は働けば何でも良いという考えのようだ。

 

 社会全体が回るのであれば、弱者がどうなろうが知ったことではないか。

 

 ダリアとナータは、じっと俺を見て判断を待っている。

 

 薬草の群生地にはキメラハンターの二人しかいない。まとめて殺してしまえば、首輪が二つも手に入るチャンスだ。

 

「や、やだ。あっちいって! 来ないで!」

 

 ナイフを前に突き出しながら、少女は一歩後ろに下がった。

 

 走って逃げないのは、追いつかれるとわかっているから。何をしても捕まってしまうイメージがあるから、相手が引くことを願って、現状維持を選んでいるのだろう。

 

「うるせぇ。さっさとこっちこい。キメラのエサにする前に、少し遊んでやるからよ」

 

 男は斧を見せびらかせながら歩く。

 

 少女はまた一歩下がったが、躓いてしまう。ナイフを手放してしまうと、ペタリと座り込んでしまった。もう逃げられない。

 

「顔をよく見せろ」

 

 少女は腕を掴まれ、男に体を持ち上げられた。

 顔を掴まれると舐めるように観察される。

 

「意外と整っているじゃないか。アジトで飼うのもありだな」

 

 ぺろっと少女の頬を舐めた男は、腰に付けた袋からロープを二本取り出す。

 

「動いたら殺す」

 

 少女の手足を縛った。

 さらに布を取り出すと目をかくし、口を塞ぐ。

 

「このまま都市に戻るつもりか? 門番につかまるぞ」

「いえ、無視しますね」

 

 俺の呟きを否定したのはダリアだ。神兵だったこともあり事情に詳しいのだろう。詳しく話せと無言で命令する。

 

「門番は犯罪者を捕まえるのではなく、不法侵入者や脱走者を捕まえるのが仕事です。業務外ですね」

「だから犯罪者を見逃すと?」

「神の法を犯してないのであれば街に入る権利はありますから。あとは衛兵がどう判断するかですが、捕まったとしても牢獄に数日入るぐらいでしょう」

 

 まさに神と名乗るのに相応しい管理の仕方だ。

 

 自分の決めた規律さえ守られていれば気にしないのだから。

 

 衛兵相手なら賄賂を渡して見逃してもらえるかもしれないし、抜け道はいくつかありそうだ。

 

「そろそろ動こう」

 

 少女は肩に担がれ、運ばれていく。都市の方に進んでいる。

 

「男の方は確実に殺せ。拘束されている少女は放置でいい」

「かしこまりました」

 

 ナータが飛び出し、数瞬遅れてダリアが続く。

 ガサガサと草をかき分ける音が出てしまったので、男は気づいて振り返った。

 

「誰だ!?」

 

 機械ゴーレムは命令に対して忠実に動くだけ。当然、答えることはない。

 

 無言でナータが跳躍すると体を回転させながら蹴りを放つ。男は肩に乗せた少女を投げ捨て、腕で受け止めようとした。

 

「ぐがッ」

 

 管理の首輪によって魔力を使えない人間が、機械ゴーレムの攻撃を受け止められるはずがない。腕の骨を砕き、それでも勢いは止まらず、頭を直撃した。

 

 男は薬草の上を転がっていく。立ち上がる前に、近づいたダリアが足を振り上げる。

 

 ぱしゃりと水が弾けるような音が聞こえた。

 ダリアの足に踏みつけられた男の頭が弾けたのだ。

 

 ダリア、そして薬草の群生地は真っ赤になる。

 

「もっとスマートにヤれ。首輪が汚れてしまった」

 

 草むらから出るとダリアに文句を言う。

 

 申し訳なさそうな顔をしているが、俺が付ける予定の首輪を汚したのだ。簡単には許さない。

 

「綺麗にしてこい」

「わかりました」

 

 しょんぼりと肩を落としたダリアは、男から管理の首輪を取ると、走ってシェルターに戻っていった。

 

 血が乾く前に水で汚れを落とすつもりなのだろう。しっかりと働いてくれよ。

 

「こちらは、どうします?」

 

 残ったナータが指さしたのは、拘束されている少女だ。投げ捨てられた衝撃で意識を失ったようで、身動きしていない。

 

「生きているのか?」

「はい。しばらくすれば目を覚ますかと」

 

 運のいい女だ。スペアを入手する為に殺すかと思ったが、ニクシーの顔が思い浮かんでしまい考えを改める。

 

 不遇な少女を殺してたと知られたら、悲しまれるかもしれないと思ったからだ。幼い体でキメラハンターをしている不遇な環境や、不運なところが、どこかニクシーに似ていると感じてしまうし、逆に保護してあげたいとまで思ってしまう。

 

 余計なことは考えるな。

 

 今は俺の安全を確保し、感情を手に入れた機械ゴーレムたちの研究が優先するべきである。他人を保護するなんて余裕はないのだ。

 

「腕と足の縄だけほどいておけ」

 

 命令を素早く実行するナータを見ながら、俺は男の死体からキメラハンターの証明書を探すことにした。

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