機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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フォレストゴリラだ……

「獲物を狩るついでに助けただけだ。気にするな」

 

 軽く手を上げてからトゲトラの死体に近づく。

 

 毛皮や肉は燃えてしまっているが、骨は残っている。軽いが、かなり丈夫にできているようで、防具や建設用の道具に使うらしい。キメラハンターであれば集めてからギルドで売るらしく、それっぽい振る舞いをしたのだ。

 

「ゴンダレヌはこれからどうするつもりだ?」

「骨を都市に持ち帰る」

「そうだよね。わかった。ありがとう」

 

 返事を聞いたラビアンは俺から離れていった。

 

 作業しつつ様子をうかがうと、別の馬車から出てきた仲間と話しているようだ。商人の総数は四。全員若い。ラビアン以外は男だ。

 

 ベテランになれば危険な行商なんてしないのだろう。

 

 トゲトラの骨を集め終わったので、今度はキメラハンターが落とした武器を探す。ボスが使っていた槍や斥候の女が持っていたナイフなどがあった。

 

 どれも普通の金属で作られた武器だ。興味を引くようなと特殊な効果はなさそうで、こんなものを使ってキメラと戦わなければいけない状況に、少しだけ同情心が湧く。

 

 文化を抑制するとしても、もう少しやり方は考えろよ。

 

 これじゃ人は使い捨ての道具と変わらない扱いだぞ。

 

「少し話せないか?」

 

 心中で上級機械ゴーレムに文句を言っていたら、ラビアンに声をかけられた。

 気持ちを切り替えながら振り向く。

 

「時間はある。別にかまわんぞ」

「助かるよ。付いてきてくれ」

 

 疲れた顔をしたラビアンが、商人仲間のいる場所まで移動した。

 

 四人全員の視線が俺に集まる。期待しているような目をしていて、計画が順調に進んでいると実感した。

 

「一人でスパイクタイガーを倒せるほどの、凄腕キメラハンターに依頼をしたい」

 

 この言葉を言わせるために、助けた後も、あえて距離を置いていたのだ。

 

 俺は偶然居合わせたキメラハンターで、仕方なく商人の護衛を引き受ける、といった流れが作れそうだな。都市に入る際、門番にも説明しやすくなるだろう。

 

「内容は?」

「商業の神が治める都市までの護衛だ。報酬は金貨一枚でどうだ?」

 

 そういえば金の価値を聞いてなかったな。

 

 金貨一枚で割に合う仕事なのかすら、判断ができない。商人が褒めるほどのキメラハンターが安売りしたとなれば、不審がられるかもしれないので、とりあえず値段をつり上げてみるか。

 

「少し安くないか?」

「相場の三倍でも受けてくれないのか……」

 

 ラビアンは落胆したようで肩を落とした。

 

 相場の三倍という言葉が確かであれば、値段をつり上げたら交渉は決裂するかもしれない。ここまで上手く話が進んでいるのだから、次の機会を待つなんてことはしたくないぞ。

 

「頼む、受けてくれないか!?」

「これ以上は出せないんだ!」

 

 男の商人が懇願してきた。キメラの森に放置されたら間違いなく死ぬだろうから、まさに命懸けの交渉ってヤツだな。

 

 相手が焦っていると気づき、逆に俺は冷静になれた。商人の生死を握っているのはこちらなのだから、死んだ方がマシだと思ってしまうような提案さえしなければ良いのだ。

 

「だったら、お前達だけでキメラの森を進めば良い」

 

 文句を言っていた男だちは黙ってしまった。

 報酬と命、その二つを天秤にかけているのだろう。

 

『キメラを送りましょうか?』

 

 離れた場所で様子を見ているナータが提案した。

 耳に付けた魔道具から声が出ているので、俺以外は聞こえない。

 

 声を出して返事するわけにはいかないから、首を縦に振って肯定した。

 

「これ以上の報酬を出すと利益が減ってしまう」

「だが死んだら全てが終わりだぞ?」

「護衛のキメラハンターを選んだのは、ラビアンだ。この女に責任を取らせれば良いのでは?」

「確かに! 名案だ」

 

 商隊のリーダーと名乗ったラビアンを生け贄に捧げ、自分たちは利益を確保しようと団結したようだ。

 

 男たちがラビアンに近寄る。

 

 これから醜い話し合いが始まりそうだったのだが、ゴリラの雄叫びによって中断された。

 

「ウホホッ!!」

 

 四本腕のゴリラが一匹、木から落ちてきた。うつ伏せに倒れている。

 

「フォレストゴリラだ……」

 

 そんな名前だったんだな。ネーミングセンスが悪い。後で俺が新しく命名してやろうかな。

 

「助けてくれ!」

 

 男達が俺に集まると、ローブを引っ張られた。

 涙目になって懇願している。

 

 先ほどまで仲間を斬り捨てようとしていたのに、調子が良いことをいいやがって。他人を貶め、頼ることしかしないヤツは嫌いだ。

 

「金は?」

「コイツが払う!」

 

 男の一人がラビアンを指さした。

 顔を見ると首を縦に振っている。

 

「だったら、俺が守るのはラビアンだけだな」

「どうして!?」

「金を払った者だけ守るのは、当たり前だろ?」

 

 嗤ってから男どもの手を払いのける。フォレストゴリラは俺を危険だと思っているのか、様子をうかがっている。

 

 逃げ道にはナータやアデラ、ダリアがいるので、動けないのだろう。

 

「ラビアンは守ってやる。安心しろ」

「ありがたいんだけど、本当に見捨てるの?」

「金さえ払うなら守るが、そうじゃなければ自分で何とかしてもらう。それに。男どもが死んだら、お前の利益は増えるのだ。文句はないだろ?」

 

 性格破綻したキメラハンターらしい振る舞いはできているだろう。

 

 危機的な状況に陥ったとき、今の人たちはどのような判断をするのか、楽しみである。

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