機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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ゴンダレヌさん! おわりましたー!

「ウホホッ!!」

 

 四本の腕を器用に動かし、フォレストゴリラが胸を叩いた。スパイクタイガーより知能は低いようで、ナータの存在を忘れて目の前のエサに食いつこうとしている。

 

 近くに生えている小さめの木に近づくと抱き付き、引っこ抜く。ブンブンと軽く振ってから俺たちの方を見て、嗤った。

 

「ひぃッ!」

 

 威嚇に怯えた商人の一人が腰を抜かした。足を必死に動かして後ずさっているが、あまり進んでいない。土を蹴っているだけである。

 

「俺は金を払うぞ!!」

「お、俺もだ!!」

 

 無事だった二人の商人が駆け寄ってきた。

 

「金貨二枚出せるなら守ってやる」

 

 手を出して、この場で払えと催促する。

 

 商人は俺の目と手を交互に見てから、クソッと言って、腰にぶら下げた布袋から金貨を取り出し、置いた。

 

 女の顔が彫られた金貨が四枚ある。

 

 手をそのままにしてラビアンを見た。

 

「お前はどうする?」

「もちろん、払うさっ!」

 

 金貨が六枚に増えた。価値はわからんが、商人の反応からして仕事するには充分な金額だろう。

 

「ぶぎゃっ」

 

 金を受け取っている間に、腰を抜かしていた商人が叩き潰された。フォレストゴリラが持つ木に、べったりと血が付いている。

 

 ポタポタと血を垂らしながら俺たちに近づいてきた。

 

 勝てると慢心していて油断しているようだ。愚かな野生生物である。魔力が使える人間の恐ろしさを教えてやろう。

 

 転がっていた石を拾うと、魔力で身体能力を強化する。

 

「その不快な笑顔をやめろ」

 

 石を全力で投げつけた。盾に使った木を貫通して、フォレストゴリラの頭に穴が空く。

 

 手から力が抜けて持っていた木が落ち、仰向けに倒れた。即死だ。

 

 俺が特殊なのではなく、魔力を扱えればこの程度は誰でもできるだろう。それこそ一部の人間は、機械ゴーレムとだって対等以上に戦える。

 

 だからこそ人類の反乱を恐れて、機械ゴーレムどもは管理の首輪に魔力封印の機能を入れたんだろう。

 

「すごい……少なくとも二級以上はあるぞ」

「ゴンダレヌがいれば、キメラに怯えなくて済む!」

 

 仲間の死よりも俺への期待感が高い。さっきはラビアンに責任を押しつけようとしていたんだし、お互いは親しくないのかもな。都市を渡り歩いている性質上、無理してまで協力し合う必要もないだろうしな。キメラハンターより個人主義的な側面は強いのだろう。

 

「俺はスパイクタイガーの骨だけあれば充分だ。素材が欲しいなら、好きにして良いぞ」

「本当に良いのか?」

 

 ラビアンが疑わしそうな目で見てきた。

 そりゃそうか。さっきまで金貨をせびってくるような守銭奴だったんだから。警戒をしても不思議ではない。

 

「その代わり、骨を馬車に乗せてくれ。持ち歩きたくないんだよ」

「わかった。その条件で取引しよう」

 

 会話が終わるとラビアンは手を前に出した。

 

 何をしてきたのか一瞬悩んでしまったが、すぐに握手を求めていると気づく。契約書の代わりにやるんだろう。

 

 遠慮なくラビアンの手を握る。少しひんやりとしていて心地よい。意外なことに肌は荒れてないようで、ツルツルとしている。

 

 そういえば生身の体に触れるのは、目覚めてからは初めてかもしれないな。

 

「骨はそこに置いて、周囲の警戒をしてくれないか?」

「わかった。後は任せよう」

 

 商人たちはフォレストゴリラの解体と、スパイクタイガーの骨を馬車にしまい始めた。

 

 誰も俺のことを見なくなったので、手を上げて振り、ナータ達に合図を送る。

 

 計画通りに進んでいるから、この場から離れて良いと伝えたのだ。

 

 三体は都市に向かって移動したはず。ちゃんと侵入できたのであれば、どこかで合流できることだろう。

 

 血の臭いを嗅ぎつけて新しいスパイクタイガーが一匹やってきたので、剣を振るって首を落とす。素材はくれてやると言ったら、商人たちは喜んでいた。

 

 解体している声を盗み聞きすると、素材だけで護衛代以上の売上になるようだ。

 

 ふむ、物の価値がよくわからんな。

 

 こんなことならシェリーかニクシーを連れてくるべきだったかもしれん。

 

「ゴンダレヌさん! おわりましたー!」

 

 ラビアンが大声で手を振っていた。残りは御者席に乗っていて、移動の準備は終わっている。

 

 商人に付いていけば何とかなると思っていて、実は商業の神が納めている都市の場所がわからない。先導することはできないので、先頭の馬車に近づくと御者に飛び乗る。

 

「座らせてもらうぞ」

 

 顔を引きつらせながらラビアンは頷いた。

 

「道はわかるか?」

「もちろん。混沌の神が治める都市と、何度も往復したからね」

 

 丁度良い機会だ。しばらくは暇だろうし、他の上級機械ゴーレムがどのように都市を治めているのか聞いてみよう。

 

「俺は他の都市のことを知らないんだ。商業の神との違いを教えてくれ」

 

 返事をする代わりにラビアンは、親指と人差し人差し指でわっかを作った。

 

 情報量をよこせと言いたいのだろう。商魂たくましいというか、なんというか……。

 

「スパイクタイガーの骨を一本でどうだ?」

「良いのかい?」

「持ち運ぶのが面倒だからな」

 

 情報に対しての対価が大きすぎるのか、ラビアンは納得していない顔をしている。

 

 演技をするためにスパイクタイガーの骨を拾ったが、本当は不要なんだよな……。俺に取ってみればゴミに近い素材だ。捨てるのも面倒だし、都市に入ったらラビアンに押しつけるか。

 

「まぁ、上級キメラハンターは変わり者が多いと言うし、気にしたら負けか」

 

 黙っていて良かった。どうやら自己解決してくれたようだ。

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