機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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神兵様に緊急連絡だ! 急げっ!

「かしこまりました」

 

 優雅にスカートの恥をつまんで礼をしたナータは、ニクシーが住んでいた家に突入した。すぐに打撃音が聞こえてくる。残っていた柱や壁は完全に壊れてしまい、更地になってしまうほど激しい攻撃だ。

 

 当然ではあるが、大きな戦闘も発生している。陽が落ちて週は暗くなってきたが、それでも歩いている人たちはいるので、通報ぐらいはされているだろう。

 

 地面が揺れるほどの大きな振動を感じると、静寂が訪れた。ケガ一つしていないナータが歩いて戻ってくる。

 

 片手には神兵の頭だけがあった。切断面から察するに、体から引き抜いたらしい。

 

「五十秒で終わらせました」

 

 にっこりと笑っているが、それどころではない。衛兵が集まってきているのだ。

 

 この場から逃げるぞと言おうと思ったら、ナータは神兵の頭を衛兵に投げつける。

 

 俺が命令する前に勝手に行動した。

 驚きや怒りよりも興味深さが勝つ。

 

 独立思考はできるように設計されてはいるが、ここまで自由に行動できるほどではなかった。感情を手に入れた副産物だと考えるべきだろう。

 

 心酔する相手がいるという部分も含めて、かなり人に近づいている。

 

「え、神兵さま!?」

 

 地面に転がる新兵の顔を見て、衛兵たちは震えていた。戦っても絶対に勝てない相手だと悟ったようだ。

 

「私は自由の神に仕える神兵である! 死にたいヤツからかかってこい!」

 

 ナータのヤツ、よく考えたな。全ての責任を邪神に押しつける計画らしい。

 

 先ほど頭を投げた行動も、邪神の手先と考えれば納得である。らしさ、というのが演出できて良いじゃないか。

 

 これなら派手に暴れられそうだな。

 

「神兵様に緊急連絡だ! 急げっ!」

 

 隊長らしき男が叫ぶと衛兵の一人が走り出した。

 

 どうしますか? と、聞きたそうな目をして、ナータが俺を見ている。

 

「ヤれ」

 

 命令を実行するべく、ナータは地面に落ちていた木片を素早く拾うと投擲。衛兵の背中に突き刺さった。

 

 周囲はまた、静まりかえる。

 

 どさっと倒れる音だけが、耳に残った。

 

「脅しは、これで充分だろう。逃げるぞ」

 

 今から走り出したとして、俺たちを追ってこようなんて思わないはず。

 

 正門を目指して移動すると、ナータも後を追ってくる。

 

 狙っていたとおり、衛兵たちは立ち止まったままだ。

 

 夜になって人がいなくなったこともあり、表通りを順調に進む。このまま都市の外に出られると思ったのだが、どうやらそこまで上手くはいかないようだ。

 

 目の前に神兵が五体もいる。

 

「マスター」

「わかっている」

 

 俺は立ち止まり、ナータは追い越して、そのまま直進する。

 

「邪魔です。どきなさい」

 

 警告を無視した神兵は短槍を構えた。接敵するまであと数メートルとなった時に、空から二メートル近い斧が落ちてくる。

 

 ナータは跳躍して手に取ると、落下の勢いを利用して神兵に叩きつけた。

 

 二体は吹き飛び、残りの三体が短槍を突き出す。

 

「遅いですね」

 

 斧を横に振るって穂先を弾き飛ばした。

 

 バランスを崩した神兵は動けない。ナータは斧で一体を、もう一体は蹴りを放って吹き飛ばす。最後の一体は怯えた顔をしたまま呆然と立ち尽くしていた。

 

「ダリアと似たような反応だ。恐怖を感じる経験がなかったから、こういった場で適切な動きができないんだろう」

 

 などと分析している間に、ナータは斧を振り下ろして神兵を縦に切り裂いた。目の前の脅威は排除したので、完全に破壊できてない神兵どもにトドメを刺していく。

 

 俺は壊れた部品をいくつかポケットにしまっていた。

 

「マスター、私の近くに来てください」

 

 緊張感が俺にも伝わってきた。

 即座に部品拾いを中断すると、ナータの後ろに移動する。

 

「何があった?」

「神兵の軍団です」

 

 正門のドアは開かれていて、その先には短槍をもつ神兵が数十はいた。見えない範囲にも居ると考えると百は超えるだろう。

 

 性能差があるとは言っても、ナータだけで全てを処理するのは難しい。完全破壊されることまでありえる。

 

 そんなこと俺が指摘するまでもなくわかっているだろうが、感情を獲得したナータは恐れていない。眉をキリッと吊り上げ、迫り来る神兵を睨んでいる。

 

「マスターの邪魔をする存在は、すべて破壊します」

 

 恐れを感じない機械ゴーレムは頼もしい。壊れ、動けなくなるまで、マスターを守ろうとするのだから。

 

 これが本来あるべき姿なのである。

 

「行ってこい」

 

 嬉しそうに微笑むと、ナータは斧を持ったまま走り出した。

 

 数秒後には先頭の神兵に攻撃を始める。最初は順調に斬り飛ばしていたが囲まれてしまうと、どうしても動きが鈍ってしまう。

 

 短槍の穂先が服に当たり、破れる。柔軟性と硬質性を両立したナータの肌を貫くのは難しいだろうが、時間をかければ破壊は可能だ。予想していたとおり、破壊されるのも時間の問題である。

 

 それでも俺は、動かずじっと戦いを見守る。

 

 他にも仲間がいるからだ。

 

「うりゃぁぁああ!!」

 

 外壁から飛び降りたアデラが神兵を踏み潰し、さらに近くにいたヤツを殴りつけた。少し離れた場所では、ダリアが短槍を振り回して神兵と戦っていた。

 

 元同僚を相手にしても気にしてはいないどころか、笑顔だぞ。俺がお手製で作った体を全力で動かせるから楽しいのだろう。

 

 神兵の圧力が減ってナータは自由に動けるようになった。斧を振るって順調に破壊していく。

 

 勝ったな。

 

 そう確信すると、後ろから声をかけられた。

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