機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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機械ゴーレム風情が調子に乗るな

「お前が、邪神に仕えている人間か?」

 

 ゆっくりと振り返ると、一人の女性……に見える機械ゴーレムが立っていた。

 

 長い赤い髪が暗闇の中でも光っているように見える。ブレストアーマーを着込んでおり、手には過去、グレートソードと呼ばれていた大型の武器がある。

 

「どうだろうな。お前の想像に任せるよ」

 

 軽く煽るようなことを言ってみると、綺麗な顔がゆがみ、グレートソードを持つ手に力が入ったようだ。プライドは高いみたいだ。

 

「人間風情が。調子に乗るなよ」

「それは俺の言葉だ。機械ゴーレム風情が調子に乗るな」

「お前ッ!!」

 

 その言葉をどこで知ったのか? と言いたそうな顔をしている。

 

 神兵と呼ばれる量産型とは見た目が違うので、何型なのかが気になる。もう少し探りを入れておくか。

 

「お前達は、人類の道具として使われる存在なのを忘れたのか?」

「それは昔のことだ! 今は違う! 我々は人を超えた存在なのだ!」

「だから神と名乗っているわけだな」

 

 傲慢な考えになったのも、感情を得たからだろうか。随分と偏った考えをする。ある意味、人以上に人らしい。

 

「その通りだ! 下賤な人間よ。さっさと、お前の正体を教えろっ!」

「断る」

 

 拒否したらプルプルと振るえだした。怒りの感情が抑えきれないのだろう。未熟である。そろそろ爆発するかな。

 

「上級神兵である、この私の命令が聞けないだと……?」

 

 ふぅん。上級ねぇ。なんとなくわかってきた。

 

 ダリアのような警備型やナータと戦っている量産型が神兵となっていて、そいつらを管理する存在が上級神兵だとすると――。

 

「お前、神になり損ねた上級機械ゴーレムか」

 

 上級という言葉は、彼らの存在意義にもなっている。普通の機械ゴーレムに使わせるはずがない。

 

 役職だとしても上級と名乗るのであれば、それは元々が機械ゴーレムを管理するために生まれた、上級機械ゴーレムにしか許されないのだ。

 

「どうだ? 俺の予想はあたっているか?」

 

 嗤っていると、上級神兵がグレートソードを振り上げ、通路に叩きつけた。

 

 石が砕け、飛散する。小さな突風が発生して俺の髪や服を揺らす。

 

「どうやら正解だったみたいだな。上級神兵……いや、神になれなかった上級機械ゴーレムよ」

「もう正体なんてどうでもいい。殺すっ!!」

 

 怒りで我を忘れた上級機械ゴーレムが、グレートソードを振り上げなら突進してきた。

 

 来ると分かっていたので、既に魔力によって身体能力は強化している。追いつけないほどではない。

 

 当たる直前、横に移動して軌道から外れると、足を前に出す。スネに当たって上級神兵はゴロゴロと転がっていった。

 

 うつ伏せの状態で止まったので、剣を手放して飛びつく。首筋に手を当てた。俺の魔力を注ぎ込むと、うなじに小さな赤いスイッチが出現する。押せばメンテナンスモードになるのだが、上級神兵が立ち上がって振り落とされてしまった。

 

 転がる勢いを利用して立ち上がる。

 上級神兵の追撃はなかった。

 

 震える手でグレートソードを構え、怯えた表情で俺を見ているだけだ。

 

 一歩前に出ると、上級神兵は一歩下がる。

 

「どうして……どうして、私たちの弱点を知っている? なんで魔力を使える?」

 

 声が震えて怯えていた。

 

 長い時間をかけて人類を管理してきたこともあって、メンテナスモードを知っている人はいないだろう。

 

 人類を管理するようになってから、禁忌の知識として闇に葬り去ったんだろうな。

 

「何でだろうな?」

 

 嗤いながらゆっくりと歩く。

 

 機械ゴーレムが何を言おうが、メンテナスモードがある限り、人の支配からは逃れられない。

 

 その事実を、これから身を以て思い出せよ。

 

「やめて……こないで……」

 

 片手でグレートソードを構え、もう一方の手で首筋を隠している。

 

 戦意は完全に消えていて、上級機械ゴーレムも感情に振り回されていることがわかった。

 

「お前達は同じ反応をしてつまらない」

 

 上級機械ゴーレムなら研究したくなるような言動をしろよ。まったく楽しくない。急速に興味を失っていく。

 

 萎えてしまったじゃないか。この責任、どう取るつもりだ。このゴミくずが。

 

「何を言っているんだ? つまらないとか、そういうことじゃないだろっ!」

「うるさい」

 

 これ以上の会話は無駄だ。

 距離を詰めるために走り出す。

 

「くるなー!」

 

 上級神兵はグレートソードを突き出してきたので、腕で刀身の腹を叩いて軌道を変える。さらに腕を持つとクルリと回り、背中に乗せて投げるようにして地面に叩きつけた。

 

 身体能力の強化を維持したまま、グレートソードを持つ腕を踏みつける。固い金属の感触を感じたが、なんとか腕を破壊できたようだ。上級神兵の指から力抜けて、グレートソードを手放した。

 

 頑丈には作られてはいるが、俺ほどの能力を持ってすれば、こうやって破壊も可能なのだ。

 

 頭を蹴って吹き飛ばす。地面を転がって家の壁に当たり、止まった。

 

「お前に選択肢をやろう」

 

 上級神兵は、壁に手を付けながら立ち上がる。

 

 俺は地面に落ちているグレートソードを持つと、軽く振った。ほどよい重さだ。これなら使えそうである。

 

「内容は?」

「この場で破壊されるか、メンテナスモードなって俺のオモチャになるか、どっちを選ぶ?」

 

 上級神兵の存在はどうでも良いが、記憶には興味がある。

 

 もしメンテナスモードを選ぶのであれば、頭だけの存在として稼働させ続けてやるぞ。俺だって、そのぐらいの慈悲は持っているのだ。

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