機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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ウホッ! ウホッ!!

 お父さんとお母さんが死んで収入がなくなって、家を追い出されてしまった。仕事を探しても11歳の未成年じゃ、非合法のものばかり。手を出すか悩んだけど……結局は、道を踏み外すことはできず、逃げ出してしまった。

 

 働かず、仕事もしない人間が生きて良いほど、神様たちは優しくない。税金を納められなくなった私は、老人やもうすぐ死んでしまう病人と一緒に、外壁の外に捨てられてしまう。商業の神様が治める都市から追放されてしまったのだ。

 

「どうしよう」

 

 身につけているのは服と靴だけ。首輪も外されちゃった。他には何もないのに、どうやって生きていけば良いんだろう。

 その場で立ち尽くしていると、悲鳴が聞こえた。

 

「うぁぁぁぁ!!!!!」

 

 顔色の悪いおじいさんが、頭が三つある犬に食べられていた。あれは町で聞いたキメラっていう危険生物だ!

 

 今は一匹だけど、遠くに二足歩行する狼の群れが見えるので、このままだと食べられちゃいそう。

 

 でも、どうすればいいかわからず、体が動かない。

 

「逃げるよ」

 

 赤髪の綺麗なお姉さんが手を引いてくれた。何も考えられない私は、一緒に走りだす。同じように近くにいた人たちも走り出したけど、向かう先はバラバラ。二足歩行する狼の群れは、私たちとは別の集団を追いかけに行ってしまった。

 

 キメラに出会うことなく、なんとか森の中まで逃げられた。姿を隠せる場所も多いし、少しは生き延びれるかも。

 

 なんて、のんきなことを考えていたのが悪かったのか、前を歩いていたお姉さんが倒れちゃった。

 

「大丈夫ですかっ」

 

 慌てて地面に膝を付けて、お姉さんを抱きしめる。体が凄く熱かった。転倒したときに頭をぶつけたみたいで、血が流れている。

 

 どうしよう。私には怪我や病気を治す知識や技術なんてないし、人を探さないと!

 

「近くに人がいるかもしれません。助けを求めてきます」

 

 一緒に逃げた人たちに生き残りが、お医者様がいるかもしれない。

 そんな都合の良いことなんて、起こらないって分かっているけど、今度は私がお姉さんを助ける番だから。

 がんばらないと。

 

 そんな決意をした途端、今度は四本腕のゴリラに見つかってしまう。町の外は危ないと聞いていたけど、こんなに多くのキメラがいるだなんて思わなかった。

 

「こっちよ!!」

 

 声を上げてから、四本腕のゴリラの注目を集めてから走り出した。

 狙っていたとおり私を追いかけている。

 これでお姉さんは無事のはず。あとはなんとかして逃げ切れば……。

 

「っ!?」

 

 足が木の根に引っかかって転んでしまう。顔に泥が付いて擦り傷がいくつもできたけど、まだ動ける。立ち上がって足を出すと、痛みによって止まってしまった。足を引きずりながら逃げる。

 

「ウホッ! ウホッ!!」

 

 四本腕のゴリラが、胸を叩いて叫んでいた。

 

 何で喜んでいるのか全く分からないけど、本気で追いかけてこないなら生き残れるかも。

 そんな希望を持って、私は足を引きずりながら進み……すぐに力尽きて地面に座り込んだ。ずっとご飯を食べてなかったから、力が出ない。それに体の節々が痛く、熱も出てきた。動きたいのに動けない。

 

「お父さん、お母さん」

 

 三人で暮らしていたときも裕福とはいえなかったけど、暖かい布団やご飯はあった。キメラに襲われることもなかった。幸せだったな。そんな記憶ばかりが頭を駆け巡る。

 

 四本腕のゴリラが仲間を集めながら近づいてくる。

 優しいお姉さんも助けられそうにないし、私の人生って、何だったんだろうな。

 

「ウホッ!!」

 

 腕を掴まれて、宙にぶら下げられてしまった。口を大きく開いて生きたまま食べようとする。祈る神を失ってしまった私は、恐怖に耐えられなくて目をつぶる。

 

 ぎゅっと強くかんで待っていると、暖かい液体が頭にかかった。痛みなんてないのに血が流れてしまったのかな。どうしても我慢できなくて、恐る恐る目を開いてみる。

 

「!!!!」

 

 私をつかんでいた四本腕のゴリラの頭が消えて、首から血の噴水を出していた。掴まれていた指の力が抜けて、私は地面に落ちる。集まっていた他の四本腕のゴリラたちも次々と頭が吹き飛んで、倒れていく。

 

 何が起こったんだろう?

 なんて疑問が浮かびながら、体が痛くて動けない私は、血なまぐさくなった森でぼーっとしながらこの場を眺めている。

 

 数十の四本腕のゴリラが倒れ、私の目の前にメイド服を着た綺麗な女性が現れた。

 

 いつの間にいたんだろう。

 

「生きてますか?」

「は、はい。ありがとうございます」

 

 思わずお礼を言ったら持ち上げられ、肩に担がれてしまう。

 

「ま、まってください!」

 

 すぐに移動しそうな雰囲気があったので大声で叫んでしまった。

 怒られるかもしれないって不安になったけど、黙ってはいられない。泣きながらも声を出す。

 

「他にもう一人いるんですっ。その人も助けてもらえませんか!」

 

 メイドさんの動きがピタリと止まった。

 どうするか考えているのかな。助けるって決めてくれると嬉しいんだけど……。

 

「マスターからの許可は得ました。もう一人はどこにいますか?」

「え、あ、あっちのほうです!」

 

 話し方が昔一度だけ見た神兵様と同じだった。人を超えた力を持っているし、もしかしたら都市からの追放は間違いで、神兵様が助けてくれたのかもしれない。

 

 死なないですむ。生き残れるかもしれない。そんな僅かな希望が私にとって救いとなった。

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