機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す   作:わんた

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念のため二人を調べろ

 ナータの戦いっぷりを見ていたのだが、キメラの脅威はたいしたことないな。あれなら百単位で攻めてきても余裕で撃退できる。

 

 俺一人でも対処できるだろう。ったく、ナータは慎重すぎる所が良くないな。

 

『マスター、近くにもう一人いるそうです。どうしますか?』

 

 スピーカーからナータの声が聞こえた。外から通信してきたようだ。

 

『情報は多い方が良い。助けられるなら、助けろ』

『かしこまりました』

 

 ぶつっと通話が切れた。映像にはナータや助けた女の姿はない。カメラの範囲外に移動したのだろう。

 

* * *

 

 地上が汚染されて外に出れないことを想定して、シェルターには様々な施設を作っておいた。俺が寝ていた部屋の他に、リビング、寝室、大浴場、トイレ、室内畑、作業部屋、倉庫、治療所までそろっている。

 

 また照明やその他の魔道具は、超小型魔力生成機によって動作している。

 自給自足可能な設備が整っているので、適切なメンテナンスさえすれば1000年は生活が続けられるだろう。

 

 何が言いたいかというと、シェルターの住民が数人増えた程度では、問題にならないということだ。

 

「帰還いたしました」

 

 リビングのソファで待っていたら、ナータが戻ってきた。両脇には二人の女を抱えている。一人は映像に映っていた女で、思っていたよりも幼い。少女と表現しても良さそうだ。力が抜けて腕や足はだらりとしているものの、意識はある。怯えた目で俺を見ていた。

 

 もう一方の女は意識を失っているらしく、顔を下げたまま動いてはいない。

 

「ごくろう」

 

 ナータはぽいと、少女を投げ捨てた。

 立ち上がれないようで倒れたまま俺の顔を見ている。

 

「名前は?」

「……ニクシーです」

 

 妖精の名前を使っても違和感がないほど、美しい顔をしている。名付けた親は良いセンスをしていたな。

 

「俺はジャザリーだ。そこにいる、万能機械ゴーレムのマスターである」

「万能機械ゴーレム? 神兵様ではないので?」

 

 ニクシーは何を言っているんだ?

 意味が分からないのでナータを見た。

 

「上位機械ゴーレムを神、その他の機械ゴーレムを神兵と呼んでいるようです」

「機械ゴーレムが、神だと? ははは! 寝ている間に、ナータは冗談が言えるようになったんだな!!」

 

 腹を抱えて笑ってしまった。

 だって、人間のために作られた道具が、神を名乗っているんだぞ?

 

 生物を監視、管理して肉体をいじくり回すまでは納得できるが、人間のように神だと名乗るのはさすがにあり得ない。

 

「じゃあ、神が複数いて、お互いの主義主張や愛憎によって争いあっているのか?」

 

 人間を効率よく管理しようと思ったら、上級機械ゴーレムが敵対して争うなんてことはしない。俺の発言は否定されるものだと思っていたのだが――。

 

「その通りです。私が機能停止する前まで上級機械ゴーレム同士が争いあっていました」

 

 なんと肯定されてしまった。本当に争い合っているらしい。

 長期間稼働してしまったために、壊れてしまったのか?

 

「……それは、笑えない冗談だぞ」

「事実でございます。私が地上に出れなくなったのも、神兵と呼ばれる戦闘機械ゴーレムが地上で激しい戦いを繰り広げていたからです」

 

 ナータは嘘を言っていない。

 本当に、人間を管理するという目的で一致した上級機械ゴーレムが、仲間割れしたようである。

 理由はなんだ?

 思い浮かばん。

 

「あのっ!!」

 

 会話にニクシーが割り込んできた。

 怯えながらも覚悟を決めた顔をしている。

 

「ジャザリー様は神様ではないのですか?」

「違うな。お前と同じ人間だ」

「そ、そんなぁ……もう、誰もお姉さんを助けられないの!?」

 

 お姉さんとは、ナータが抱えている女のことだろう。ニクシーの反応から死にかけているのかもしれん。

 おしゃべりする前に確認するべきか。

 

「念のため二人を調べろ」

「かしこまりました」

 

 命令を受けたナータは気を失っている女を床に置くと、二人の体を触りだした。手には体内をスキャンする機能があるので、触診しているのだ。目でも体内の状態は確認できるので、病気や怪我があれば見落としはないはず。

 

 無言でナータはナイフを取り出し、二人の指先を軽く刺した。

 

「いたっ」

 

 ニクシーは痛がっているが、命令を遂行しているナータは気にすることはない。血を採取するとペロリと舐めた。数秒ほどで、血液検査は終わるはずだ。

 

「解析結果が出ました」

「結論だけ話せ」

「二人とも首から毒を打たれたようで、体が腐りかけています。全身のほとんどを機械ゴーレム化する必要があるかと」

「素体はあまっている。半機械ゴーレム化してやれ。お前ならできるだろ?」

「もちろんでございます」

 

 俺が眠る前の時代には、体を機械ゴーレム製に変えている人間がいた。その技術を再現するだけなので、ナータにもできる。

 

 倉庫には何十人分もの機械ゴーレムの素材が転がっているので、素材が不足することはない。女の体力がもてば必ず成功するだろう。

 

「まってください……」

「どうした?」

「機械ゴーレムとは……神兵様のことですか……」

「そうだが。何か問題でも?」

「神兵様のパーツを体に入れることは、禁忌とされています……罰せられてしまうので……止めてください」

 

 実は、人類のために働くと設定された上級機械ゴーレムが、なぜ少女を治療せずに放置していたのか気になっていた。

 その理由が、ようやく判明したな。

 

 家畜として扱っている人間に、自分たちのパーツを使わせたくなかったんだ。

 

 半機械ゴーレム化してしまったら、自らの神秘性は薄れる上に、反乱が起きるきっかけになるかもしれん。その考え自体はわかるが、人類が安全に、そして永遠に繁栄できるよう管理する一方で、自らの方針にあわない人間は斬り捨てているのだ。

 

 歪んだ存在になりやがったな。

 アイツらだって似たような存在なのにな。

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