アイドルクロージング!   作:ひょうたんふくろう

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45 お説教

 

「……申し開きがあるなら、聞いてあげるけれど?」

 

 赤、青、黄色の娘と、そして黒いシャツを着ているユリが姫野の目の前で正座をして俯いている。四人ともがやっちまったと背中で語っており、そしてある意味元凶であるユウは、なんとも居た堪れない気持ちでその様子を見守らざるを得なかった。

 

「おまけに理由がアホらしすぎてもう……怒ればいいのやら情けなくなるやら」

 

 わざとらしくため息をついて、姫野は四人を再びねめつける。こうしてみると、プロデューサーというよりかは教師みたいだなあと、ユウはぼんやりとそう思った。

 

 ──あの後。どうしたものかとユウが固まっている間に、騒ぎを聞きつけた姫野がやってきた。というか、待たせていたはずのユウがいないことに気付いて探しに来た、のほうが正しいだろう。姫野のその行動はとても自然なことであり、そしてまた、一瞬ですべてを悟った姫野がお説教モードに入ったのも、ごくごく自然で当然のことであった。

 

「まずユリ」

 

「は、はい……」

 

「ユウくんは物じゃないんだから……もっと言えば、あなたの物でもないでしょうに」

 

「う……お、仰る通りです……。まだ私のものじゃないです……」

 

「…………自分の指導力の無さに泣きそうだわ。いえ、ここまで言わせるユウくんの凄さを褒めるべきかしら」

 

「ノーコメントでお願いします」

 

 ややこしいことになる前に、ユウは自ら先手を打っておく。少なくとも今この場においては、ユウは自らの保身を第一優先とすることを心に決めていた。

 

「次にホタルとマリナ」

 

 びく、と黄色い娘と赤い娘体を震わせる。ちなみに、黄色いほうがホタルで赤いほうがマリナであった。

 

「勝手にお客さんを連れ出さないこと。あなたたちのことでしょうから、無理やり相席して無理やり引っ張ってきたんでしょ……違う?」

 

「お、仰る通りでございます……」

 

「言い訳のしようもありません……」

 

「あなたたちレベルの娘に迫られたら、断れる子はいないってわかっているでしょう? もう少し、自分たちのことをちゃんと顧みること」

 

 まぁ、今回はそういう意味じゃ問題ない子だったんだけど──と、姫野は小さく呟く。実際問題として、ユウがなされるがままになったのは、相手がアイドルだったからではなく、単純に押しがめちゃくちゃ強くて下手に拒むとヤバそうだと思ったからってだけだ。

 

「それからミチル」

 

 青い娘の喉からひぅ、と小さな悲鳴が漏れるのを、ユウの鋭敏な耳は確かに聞き取った。

 

「巻き込まれたのは同情するわ。けど、止めようともしなかったのも問題よ。最終的に一緒になってる以上、あなたもどこかで悪ふざけする気持ちがあったってことなんだから。いつものあなたなら、栞子に伝言しておくとか……もっとやりようがあったでしょう?」

 

「は、はい……確かに、面白そうだって思っちゃいました……」

 

 結局のところ、三人が三人ともユウ()遊ぼうという考えがあった。これくらい大丈夫だろう、むしろファンサービスとして極上の物だろうという自惚れがあった。だからこそ、本来であればかなりの問題行動のはずなのに、おふざけで済まされるだろうと心の中では思ってしまっていたのだ。

 

「最後に四人とも」

 

「「えっ」」

 

 これで全部終わりだろうと思っていた四人に告げられた、まさかのおかわり。ホッと一息ついたところに入れられた不意打ちに、四人ともが声を漏らした。

 

 姫野は眉間に思いっきり皺を寄せて、多分に私情も混じったそれを叩きつけた。

 

「もっと男の子との距離感を考えなさい! あなたたちがアイドルでしょう!? ウチはそういうの禁止してないけどね! 生半可な覚悟で火傷しちゃいました、すっぱ抜かれちゃいました──じゃ済まされないのよ!?」

 

「「うっ……」」

 

「あなたたちが本気ならいいの! 文句は言わない! けれど──それを抜きにしても、女の子が初対面の男の子に対する態度として相応しいものじゃないでしょう!」

 

「わ、わたし初対面じゃないもん……」

 

「何か言った?」

 

「ごめんなさい」

 

 おっかない。正直言ってめちゃくちゃにおっかない。姫野の声は張りが合って体に響くし、そのうえその声に凄まじい感情が上乗せされている。ただ居合わせているだけの──関係のないユウにさえこうもビリビリと伝わってくるのだから、真正面からそれを聞いている四人からは、もっと迫力があるように思えることだろう。

 

「全く……前科が無いからって油断してたわ……。やっぱり適度に男の子と触れ合わせるのも必要なのかしら……」

 

「ま、まあまあ姫野さん……。別に俺も気にしてないですし、悪い気分じゃなかったので……」

 

「ユウくんがそう言うなら……」

 

 さりげなく。ユウでさえ意識できないほどにさりげなく。

 

 姫野は、ユウのすぐ傍らに近寄って。

 

「──なんて言うと思った? 次はあなたのお説教よ?」

 

「いってぇ!?」

 

 一切の遠慮も躊躇いもせず、姫野はユウの尻を盛大に引っぱたいた。

 

「うわっ……良い音……」

 

「き、聞こえた……? いま、ふぉんって空を切る音が……」

 

「おお……打った姫野さんの方が痛がってる……。本気でやらなきゃこうはならんよ……」

 

「姫野さん……! ずるい……!」

 

 若干一名、トチ狂ったことを言っているのはおいておくとして。まさか齢十七にして、トップアイドルたちの目の前で妙齢のおねーさんにケツを叩かれるとはいったい誰が思ったことだろう。さすがのユウもそんなこと予想できるはずも無いし、そしてとても女性に叩かれたとは思えないくらいに尻にじんじんとしつこい痛みが残っている。

 

「な、何するんですか……俺、ここの所属じゃないっすよ」

 

「いーえ? ウチに雇われているって意味じゃユウくんもここの所属よ?」

 

「……プロデューサーの指導対象じゃないのでは?」

 

「年上から年下へのお説教ですけど?」

 

 女の人にユウが口喧嘩で勝てるはずもない。ユリにだって勝てないのに、そのボスである姫野が相手であればもう万に一つもチャンスはない。

 

 そして悲しいかな、助けてくれ──というユウのアイコンタクトは通じない。いや、通じたのかもしれないが、ユリはさっと目を逸らしたし、ヘタに巻き込まれては堪らないとばかりに、他の三人もそれぞれ明後日の方向を向いていた。

 

「ウチのトップアイドルを三人も侍らせておきながら、ちーっとも楽しそうにしないってのはどういうことよ?」

 

「……楽しそうにして良かったんですか?」

 

「ユリという仲の良い女の子がいるのに他のオンナにうつつを抜かすなんて、最低よね。私、浮気性の男ってこの世で一番嫌いなの」

 

「そうだそうだ! もっと言っちゃって姫野さん!」

 

「ユリ」

 

「ごめんなさい」

 

 つまるところ、どうあがいてもユウが糾弾されることは避け得ないのである。姫野は押しの強い二人に簡単に流されてしまったことにも、三人も侍らせて楽しそうにしていないことにも、そしてユリがいながら他の女を見ていたことにも──私情が混じっていることは理解しつつも、とにかくユウには一言言わずには気が済まなかったのだ。

 

「なんという理不尽……」

 

「そうよ、ここはそういう業界なの。そしてそれ以上に、女ってのは理不尽なの。……もう一回だけ言うけど、私って不誠実で浮気性な男って大っ嫌いなのよね」

 

「……」

 

「ユウくんがそんな人間じゃないことを、強く祈っているわ」

 

「なあマリナ、なんか姫野さんって……」

 

「昔、元カレといろいろあったって噂が」

 

 ぎろりと睨みつけられて、ホタルとマリナは竦みあがった。

 

「あ、あのー……」

 

 タイミングとしては、今しかないと踏んだのだろう。比較的軽傷な──この中では一番罪の軽いミチルは、何とかこの場を納めるべく話題を切り替えにかかった。

 

「結局、咲島くんはどういった方なのでしょう? その、まさか本当にユーリちゃんの良いヒトだったりする、んですか……?」

 

「……ふむ」

 

 ユリからして見れは、間違いなく良い人。良い人というか、良い人でありたいと思っている。いつからそうだったかはわからないが、既にユーリがユウにほれ込んでいるのは間違いない。さすがにそれが見抜けないほど姫野は耄碌していないし、そうでなくとも……だいぶポンコツなお花畑になりつつあるユリを見れば、誰でもそう時間をかけずに見抜くことができるだろう。

 

 じゃあ、ユウはユリのことをどう思っているか。さすがにユリとの付き合いとは比べるべくも無いが、それでも所詮は男子高校生だ。女心よりははるかに単純で、百戦錬磨で経験に満ち満ちている姫野からすれば、ユウの心なんて丸裸みたいなものである。

 

 問題なのは……姫野がユウの気持ちを理解できていたとしても、ユウ自身がその気持ちに気づいていない、あるいは言語化できていないことだろう。

 

 ただの女友達なら、こうも気にかけたりはしない。仲の良い友達ってだけで、四階から飛び降りて──凶器を持ったイカレ野郎の前に飛び出たりはしない。その実力を持ち合わせていても、そうやって実際に行動するというのはなかなかできないものだ。

 

 で、あれば。

 

 それはきっと、自分自身で気づくというのが正しい順序というものなのだろう。

 

「ユリ。いいえ、ユーリ。どういう関係か、自分で説明しなさい」

 

「ミチルちゃんの言う通り、良いヒトです♪」

 

「おうコラ」

 

 ──これもう、ユウくんじゃ太刀打ちできないんじゃないかしら。

 

 思っていた以上に押しが強くて強かであるという、トップアイドルの新しい一面を垣間見て。姫野は、これからの教育方針を少し変えることを決意した。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

「──こんなところかしら。ユリがユウくんをここまで気に入ってるのは、文字通り命の恩人だからなの。ユウくんがここにいるのも、その実力を買って私が雇ったからね」

 

 お説教タイムも終わり、ようやく始まった自己紹介タイム。といっても専ら紹介されるのはユウの方で、他の四人はほぼ聞き役だ。そもそもここはアイドル事務所だし、有名なアイドルに自己紹介なんて今更必要無い。ユウのことだけが姫野の口から語られることとなったのも、自然な流れだろう。

 

「え……ホントに、この人が……!? マジで四階から飛び降りたの……!?」

 

「まあ、結果的には……飛び降りたって言っても、飾りとかにぶら下がりながらですので」

 

「い、いやいや……それ全然言い訳になってないよ……!」

 

 三人とも、まずは驚いた。未だに世間じゃ正体不明とされている謎の人物が、まさかこんな何処にでもいる高校生だとは想像していなかったのだろう。ついでに言えば、そんな謎の人物と既に事務所が接触していることにも驚いて、そればかりか旧知の間柄のようにユリとユウが接していることにも、同じ学校に通っていることにも驚いた。

 

「まさか、同じ高校生だったなんて……。私、非番の自衛官って説を信じてましたよ……」

 

「というか姫野さん。今まで私たちにだって秘密にしてたのに、いったいどうして今になって教えてくれたんだい? てっきり捜索中だから教えたくともわからないもんだと思っていたのに……」

 

「あら、ホタル。妙なことを気にするのね。あなたはその手のゴシップ、興味無いほうだと思っていたけれど」

 

「ゴシップには興味ないさ。ゴシップにはね。だけど──」

 

 実にアイドルらしい、魅力あふれる笑みを浮かべて。心の底からの感謝をその笑顔に乗せて、ホタルはユウに語り掛けた。

 

「大事な友達を助けてくれた、最高の恩人に礼を言うのは当然だろう? ……本当に、本当にありがとう」

 

「あ、いえ……」

 

 改めてそんな風にお礼を言われると、ユウとしてもなんだか背中が痒くなってきてしまう。既にあれから時間も経っており、そして感謝してくるのが本人ではない別の人だ。自分ではそこまで大したことはしていないと思っているのに──というかむしろ、賠償問題とかでヒヤヒヤしてさえいるのに、こうも真っすぐ感謝の気持ちを伝えられては、言葉にも詰まるというものである。

 

「……で、姫野さん。理由は聞かせてくれるのかな? ボディガードとして雇った後も、私たちに秘密にしていたんだ。それを今になって教えるってことは、なにかしらあるんだろう?」

 

「……教えるというか、あなたたちのせいで教えざるを得ない状況になったってことは忘れないようにね」

 

「うぐ」

 

 ふう、と一息ついてから、姫野はゆっくりと話し出した。

 

「一言で言うと──必要性が出てきたからよ」

 

「必要性ぇ?」

 

 小さく首をかしげて問い尋ねたのはマリナだ。さきほどホタルが言った通り、今まではユウがユリのボディガードであることは同じ事務所の所属である彼女らにすら秘密で、それで何の問題も起きていなかったのである。その事実を踏まえると、その「必要性」とやらが何やらのっぴきならないようなものに聞こえてしまうのも、ある意味では自然なことなのだろう。

 

「ま……まさか、私達にもボディガードが必要な事態になったとか……?」

 

 わかりやすく体を震わせたのはミチルである。年頃の娘ならば──それも、アイドルというある意味では狙われやすい仕事をしているのだから、そういう危機意識を持つのもしょうがない、むしろ良い傾向であると、ユウはぼんやりとそう思った。

 

「いいえ、そういう意味じゃないわ。さすがにアイドル全員に専属ボディガードが必要になるほど、あんなのが蔓延っているとは思いたくないし……。もっと単純に、これから本格的に顔を合わせる機会が増えるからってだけよ。元々ね、今日は顔合わせのつもりで連れてきたんだもの」

 

「そうなんすか? 初めて聞いたんですけど」

 

「そりゃそうよ、だって初めて言ったんだもの」

 

「なんでまた、そんな……」

 

 にこりと笑って、姫野はどこかの誰かに言い聞かせるように言った。

 

「だってあなた、他のアイドルと顔合わせするから来て……って言ったら、嫌な顔するでしょ? そんなの興味ない、ボディガード(しごと)と関係ないならバックレてもいいやって考えるでしょ?」

 

「……」

 

「うわァ……露骨に顔を逸らしたぞ、咲島くん」

 

「なんだろう、マジにプライドが傷ついたというか……この、悔しい気持ちは」

 

「あともう一つ……この娘たちと会わせるっていったら、すごく不機嫌になりそうな娘がいるから」

 

「……誰のことですかね、それ」

 

「さぁね。自分で考えるのも勉強よ」

 

 赤、青、黄の娘がじいっとある一人を見つめている。姫野でも、ユウでもない誰かだ。一方で見つめられている本人と言えば、顔を若干赤らめながらも、満更でもなさそうに身をくねらせてもじもじしていた。

 

「まぁ、顔合わせってのはわかりましたよ。この仕事をする以上、遅かれ早かれそうなっていただろうし。こっちとしても、事務所内の知り合いが三人しかいないってのは若干気まずくもありましたから」

 

 姫野、ユリ、桜木。この事務所内でユウの存在を知っているのはこの三人だけで、それ以外の人間からしてみればユウはただの男子高校生でしかなかった。今まではたまたま──あるいは姫野の取り計らいで他の関係者と出会うことは無かったが、そうでもなければユウはアイドル事務所の中のカフェに定期的にカツサンドを食べにくる謎の不審者という誹りを受けていたことだろう。

 

「で、わざわざこのタイミングでこの三人に紹介したってことは。まさか、この前チラッと言っていた……」

 

「え……ユウくん、何か言われてたの?」

 

「ああ……いや、その」

 

 ほかのアイドルのボディガードも頼みたい。ずいぶん前に、雑談とはいえ姫野はそんな言葉を口にしている。現状ユウが姫野に求められている能力はそれくらいしかなく、そしてまた、それは誰でもすぐに推察できることなのに、絶望しきった表情をしたユリをみると……その簡単で仮定の事実を口にすることにユウはとんでもない罪悪感を覚えてしまった。

 

「やぁねえ、ユウくん。さっき言ったじゃない、ボディガードを雇うような事態じゃないって。そうじゃあなくて……ユーリの復帰ライブの話よ」

 

「……えっ!?」

 

「今度のこの娘たちの合同ライブ……そこで、ユーリの復帰のステージを設けたわ。単独ライブはまだちょっと不安だから、最後にサプライズ的にちょこっと顔見せするイメージね」

 

 合同ライブ。ユウには難しいことはよくわからないが、同じ事務所のアイドル──あくまでそれぞれ単独で活動しているアイドルたちが、事務所というグループの一員として執り行うイベントらしい。元々この三人は同期のため一つのアイドルユニットとして扱われることも多く、事実として三人で歌う持ち歌もあったりするらしいのだが、ともかくそんなイベントにユーリを飛び入り参加させるとのことだった。

 

「今回は事前の告知はしないわ。もちろん、建前上はサプライズだから、だけれども……」

 

「実際は変に騒がれたりするのを防ぐため、ですね。もし前みたいなアホな輩がいたとしても、そもそも事前に告知がされていないなら現れるはずもない」

 

「そういうこと……本来のメインであるあなたたちには悪いと思っているけれど、これが最もベターだと事務所が判断したことだから」

 

「なんだい、水臭い」

 

 意外にも。【一アイドルの復帰のための前座にされた】に等しい扱いをされたというのに、ホタルは朗らかに笑って言った。

 

「そんなの気にするようなタマじゃあないさ。むしろ、大切な友人の大事な復帰ライブなのだから──それにふさわしいくらい、盛り上げてみせるよ」

 

「そうそう! それに、集まってくれるお客さんはユーリじゃなくて私達目当てでしょう? そんなお客さんたちがもっと喜んでくれるんだから……ありがたいくらいだって!」

 

 ホタルに続けて、マリナも元気いっぱいに笑う。ユーリが霞むくらいに盛り上げてやるんだから、と隣にいる友人の肩を軽く小突いて、挑戦的な笑みさえ浮かべていた。

 

「うふふ……ユーリちゃんとのライブも久しぶり、だもんね。また一緒に活動できるなんて、ワクワクするな」

 

 ミチルもまた、ゆったりと笑ってユーリの手を握る。その表情を見れば、その言葉は心からのものだと誰もがそう断定できることだろう。この三人娘は本当に、本心からユーリの復帰を祝っているし、そのためならどんなことでもやってみせようという気概が見て取れた。

 

「ありがと、みんなぁ……!」

 

「……なんか、アイドル同士でもちゃんと友情ってあるんですね。こう、裏ではもっと競争心バリバリでギスギスしてるもんだと思ってました」

 

「アイドルである前に、一人の女の子だもの。友達を大事に思うのに不思議はないわ。……尤も、ユウくんのそのイメージも間違ってはいないけれど。うちの場合、競争心がギスギスになるんじゃなくて……お互いに切磋琢磨し合う関係になってるってだけ」

 

「なんかいいですね、そういうの」

 

「……もしかして、羨ましいの?」

 

 手を取り合ってきゃあきゃあと笑いあう四人を見て。ユウは、特に何も考えることなく姫野の質問に答えた。

 

「……ええ、少しだけ。俺にはそういうの──概念すらなかったので」

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