カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
カゲノウスさんはうちの店の従業員に脅迫をしていたとのこと。
「殺害よりも脅迫の方が重いと考えるなんておかしな人ですねえ」
「不謹慎ですよ」
「そうですね。ごめんなさい」
今日は凄く暇です。近くに強い決闘者もいませんし、処刑される前に暇に殺されそうですわ。
財布を持ちました。
「よし。街を散歩しつつパック開封しに行きますか」
「要らないカードはくださいね」
「勿論ですわ。ついてきてくださいまし」
メイドさんとともに高級店のあるエリアへと向かいましたわ。
カードショップから薄汚い服の男の子が叩き出されているところを見かけました。
「な、なんで。古戦場のゼイバルトはこんなに安くないもん。返して、返してよ。ウチの家宝なんだよ」
「お前みたいな薄汚いヤツが持っているということはどうせコピーだろ。精巧なコピーとして見れば妥当な値段だと何度も言っているだろう」
この世界は他人のカードを盗むことが出来ません。特定のカードが欲しくなった場合、欲しいカードを使用してカードの柄をコピーする必要があるのです。
勿論コピーカードの見た目はオリジナルとは違います。そしていわゆる
「お待ちなさい。服装で判断するのはよろしくありませんよ」
「お嬢様ですか」
「それはそれとして私はレアカードの精巧なコピーが大好きなのですわ。是非一度見せてくれまんか?」
古戦場のゼイバルトのようなレアカードの精巧なコピーは需要が高い。素人目には誤魔化すことも出来るので見栄もはれますし、保管庫にある本物の古戦場のゼイバルトから目を逸らすこともできますからね。
薄汚い服の男の子を叩き出した人は慌てました。
「奥にしまいましたので、少々時間がかかりますがよろしいですか?」
「そこの男の子に綺麗な服をお願いします。そうそう。今来ている服を捨てないようにお願い致しますね。ここの人そういうところありますから」
メイドさんと薄汚い服の男の子が消えました。
薄汚い服の男の子とメイドさんが戻ってきました。
「おおー。見違えるようにきれいになっていますね」
プライムディスティニーでこんな感じの見た目のキャラを見たことがありますね……ラッキーパンチでしたか。
プライムディスティニー内では成長した姿ですので、名乗ってくれないとわかりませんね。
「なんで俺なんかのためにそこまでやってくれるんだよ」
「ドレスコードを満たしていない人が近くにいますと入れなくなる可能性がありますからね。ところでお名前を教えて欲しいのですが」
「アンドリューだ」
アンドリュー、平民、おそらく光落ち幼なじみ枠のアンドリューですね。借金返済のために、不本意ながらソウコ・メッセルに従う攻略対象でしたっけ。
見た目が痩せてないので、おそらく財政難が改善されていることでしょう。
「そうですか。いいお名前ですね。お父さまによろしくお願いいたします」
「お、おう。よろしく」
奇妙な縁ですね。意図せず恩を売る形になってしまいました。
カードショップの中に入って、叩きだした人に案内してもらいました。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
古戦場のゼイバルトのコピーカードを見せてもらいました。
私の持っている本物の古戦場のゼイバルトを出しましたわ。
「本物の絵柄は一つしかありません。またコピーカードは絵柄を完全にコピーできません。これとすべてが共通するならば本物でしょう」
「ムムム……その古戦場のゼイバルトは本物のようですね。では再びお預かりします」
「ちゃんと鑑定してくださいね」
鑑定には時間がかかるということですのでアンドリューと出かけることにしましたわ。
アンドリューは心配そうにしている。
「あ、あんた高いカードをあっさり預けて大丈夫なのかよ」
「大丈夫ですよ。カードショップは公営の施設であり国家の力の象徴でもあるので警備もしっかりしていますし、カードショップの店員のような高い地位をむざむざ捨てる真似を働くとは考えにくいですからね」
「そういうもんか」
そもそもカードは合意の上でなければ譲渡出来無いため、盗んだりすることはできません。盗めるならカード盗賊たちも正規の手段でカードを手に入れたりしませんからね。
店員さんが戻って来まして、私に古戦場のゼイバルトを返却いたしました。
「鑑定の結果本物だと判明しました。先程は申し訳ありませんでした」
店員さんは深々と謝罪します。
「お客様を疑ってしまい申し訳ございでした。まさか新たに古戦場のゼイバルトが現れるなんて夢にも思わず。お詫びに買取価格を割り増しさせていただきます。それでよろしいですか?」
「よくわかんないけどそれでいいよ」
出現しないレアカードは掘り尽くした鉱山の宝石のようなもの。だんだん価値は上がるのでお金で済めば安いですね。
まあアンドリューが喜んでいる以上ソレを言うのは野暮というものです。
「あんた今日はありがとう。本当に感謝している」
「気にしないでください。あっそうだ。ちょうど荷物持ちが欲しかったところなんですよ。荷物持ちになってくれませんか? なってくれると凄く助かるんですよね」
「その程度ならいくらでもやるよ」
アンドリューはルートに入ると恩返しだの、俺はお前に相応しくないだの、色々と面倒くさくなり、好感度が溜まりやすいけどハッピーエンドが難しいという変な感じになるのです。面倒にならない為に早めに貸し借りをなくしておきましょうね。
色々とカードショップで購入いたしまして、結果的に大荷物になりましたわ。
「うくく」
「大丈夫ですの?」
「こ、このくらいなんともない」
素人目から見てもかなりふらついていますね。見栄でしょうか。
休みましょう。
「左様ですか。それでは島公園で休みましょうね。このへんで休めるところとなりますと、そこくらいしかございませんから」
「その年でデートとはフシダラですね。お嬢様」
「そんなわけ無いじゃないですか。私が疲れたので休もうと思っただけです」
島公園は湖上の人工の島の上に作られた公園で、『プライムディスティニー』ではデートスポットの一つですわ。これは誤解されても仕方がありませんね。
橋を渡って公園に入りましたわ。
「きれいで素敵なところだ。アンジーも連れていきたかったな」
「妹さんですか?」
「ああ。3歳なんだけど可愛くてさ。今日は高級店エリアに行って金作って帰るだけですぐ終わる予定だったから連れてかなかったんだけどさ。チクショーミスった」
「まあお嬢様のワガママは予測できないのでして当たり前のミスですよね」
メイドさんに特殊ハサミを渡されました。
特殊ハサミで全てのカードパックの封を切りましたわ。
「余ったカードあげますよ。御所望のものがあればお申し付けくださいね」
「「えっ!?」なんでそこまでやるんだよ。お前ちょっと不自然な程にお人好しだぞ。わかった。俺の借金を増やしてなんかするつもりだな」
「要らないカードを持っていても仕方がないので、あげるだけです。お金にしてもいいし、そのまんまそれでデッキを組んでもいいですよ」
「贅沢なやつだな。俺なんて金のためにカードを求めてるってのに要らねえのか」
古戦場のゼイバルトみたいに出現しなくなっても20年は価値が変わりませんしね。
パックを開封しますか。
「開封!」
パックからカードを出しました。
そして数分後
むむむ。ハズレ箱ですか。
「どうなっているのですかねコレ。あまりぱっとしないカードばかりじゃないですか」
「私のデッキにも使えなさそうなカードばかりです」
「紫婦人なんかがあったら一気に防御関連が充実するのですが、それもないですものね」
使えそうなのは幻のツチノコだけですね。地味な回復効果付きなんですよコレ。あ、ハナビキャノンもありました。
残り1パックですが、もう希望も何もありませんね。
「レア度の割に弱いカードばかり出るのは嫌がらせか何かでしょうか」
無心でパックを開封しました。
おっ。
「超レアカード…サメ喰いイワシの群れ…まさかこの様なところで出るとは。こんなところではなくて、もう少しムーディなところで出したかったです」
「ソイツのなにが強いの?」
「手札の数だけ攻撃力とライフが上がります。それでいてコストも少なめです。そしてここ2年出現を確認されていません」
サメ喰いイワシの群れは特化させたロマン構築が強いんですよね。しかも手札の確保が容易なトピア・クアのカードですからね。
それに『プライムディスティニー』ではトピア・クアを使うキャラクターに渡せば取り敢えず好感度と火力を確保出来る神カードなのですよ。
「ゼイバルトと比べれば対してレアでもねーな」
「それと比べれば殆どのカードに貴重性が無くなりますよ」
一番の当たりカードかもしれませんが、私はこんなカード36枚も持っているので要らないです。
取り敢えず全てのユナイツカードのカードを40枚ずつ纏めました。
「どのユナイツカードに適正があるかなんですよね。誰にでも一つ以上の適正はあるのでデッキが使えないということはありませんが、適正がなくて使いたいのが使えない…ということは良くあるのですよ」
因みにカードの神に選ばれた人は全てのユナイツカードに適正を持っています。羨ましいですね。
体力が回復したので船に乗りました。
「取り敢えずこのトピア・クアってのにしてみるか。おっ。なんか吸い付くような感じ」
「適正があると吸い付くような感じがするそうですよ」
いきなり正解を引きましたか。
全部のユナイツカードを触って、適正があったのはトピア・クアだけだったそうです。
「カードは今から言うことをこなせばあげますよ。処分するのも保管するのもお金がかかるのでお好きになさってください」
「やっぱりか。タダってわけじゃねえよな」
「パックを全てカードショップに返却してくださいまし。勿論お代は全て私に返してくださいね」
パックの開封跡を押し付けました。パックは特殊な合金で出来ているため、特殊製法で作り直せばまたカードを生成出来ます。故に開封した跡のパックをカードショップに返却するとカード代の2割が返ってくるのです。
アンドリューは開封した跡のパックを全て持ってから、島公園を去りました。
「少しの間暇になりますわね。待っている間決闘でもしませんこと?」
「せっかくですからここにあるカードを使いましょう。雑に組んだデッキなんて普段使う機会ありませんし」
「ナイスアイディアですわ」
デッキをある程度形にしてから互いにユナイツカードを見せましたわ。
そしてターンはメイドさんの9ターン目まで飛ばします。
「ライフは互いに残り1…ですが貴女のライフと手札はそれぞれ1でモンスターも存在しません。対して私の手札は4枚もありますし、モンスターもたくさんいます。この状況を逆転出来ますかねぇ」
「逆転される方が面白いと思っているお顔でございますね。ドロー。チャージ。コスト4でワームレセプションを発動し、2枚ドローします。コスト2でエルフのベッドを発動します」
草と木で出来たベッドが現れました。
4 魔法 ワームレセプション 属性:インセクト
効果:2枚ドローする
2 魔法 エルフのベッド 属性:フェアリー
効果:設置。自分の場のスタントリックを持つモンスター一体を攻撃済み状態にできる
「そしてコスト3でエルフアーチャーを召喚いたしまして、エルフのベッドの効果でエルフアーチャーを攻撃済み状態にします。エルフアーチャーの効果でお嬢様に1ダメージです」
エルフアーチャーはベッドで寝ながら矢を放ち、私に命中させましたわ。
ソウコ:ライフ1→0
モンスターと設置魔法が消えました。
かなりギリギリの決闘でしたわ。
「対戦ありがとうございました。ちょうどアンドリューも戻って来たようですね」
カードを整えましたわ。
アンドリューは息を切らしながらお金を渡して来ました。
「ありがとうございます。これどうぞ」
「俺もあんたたちみてぇに強くなれるかな…」
「無理ですわね。貴方は他を模倣するよりも己の良さを活かす方が強いタイプですから」
実際『プライムディスティニー』のアンドリューは、下手なコピーデッキよりも自分で作ったであろう初期デッキの方が強いんですよね。
私個人としましては決闘相手は強ければ強いほどいいんですよね。
「この恩は一生忘れねえ。これ使って借金返すよ」
「気にしなくていいですわ。要らないカードをその辺の人間に押し付けただけですもの」
アンドリューは去った。これから精進して強くなってくれるとありがたいですね。