カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
私は鬼コーチです。
「おらそこトム、レイナ、なにへたばってるんですか。素振りせんかいおら!」
「いつもとちがーう」
砂地に竹刀を叩きつけました。
突如レイナさんが帰るまでに強化合宿をすることになりました。トムから強くしてくれという要望がありましたからね。
「マッハドロー覚えてくださいよ。ドローの速度がマッハになってドローで体が壊れても、再生するから無傷になるんですよ」
「ドローをマッハにしてなんのいみがあるの?」
「アンジーさんいい質問ですね。マッハドローの速度に目を慣らすことで、一時的に思考を加速して視界をスローにできます。つまりその分体感的に考える時間が増えるんですね。因みに私はマッハドローできます」
「な〜る~ほ〜ど〜」
私はマッハドローの素振りをしました。おっ。アンジーさんが遅くなりましたね。
考える時間が長ければプレイミスを防ぐこともできますし、思いもよらない逆転方法を導けるかもしれません。
というわけで熱中症対策しながらマッハドローの練習させているのです。
「パラソルで寝転びながら竹刀振って厳しくしてるとか、あの人たちから見れば殺意が湧きますよね」
「それでいいんです。憎しみや怒りも辛さや苦しさを誤魔化す興奮剤になります。そして実力の上がったレイナさんたちが私と戦うことになれば、強敵と戦えるということでしょう。WIN-WINなのです」
「へんないきかただね」
「ですよね。でも以前は怖かったのでマシになっているのですよ」
マッハドローは覚えておいた方がいい小ワザなのですが案外みんな覚えないんですよね。
そして炎天下でマッハドローの練習をさせることにより、再生力が上がって決闘中に多少体が傷ついてもなんとかなるのです。
「私からすればカード持ってるのにマッハドローの練習をしないほうが変な生き方ですけどね」
「マッハドローはモノに出来るまでがキツイので誰もやりたくないんですよ」
レイナさんはカードの戦術書読みながら練習しているので、なおさら辛いでしょうね。
プライベートビーチなので誰も人が来ませんし、思い切って練習が出来るのでは無いでしょうか。
「マッハドローはライターが無いときに火種にもなるので非常に便利なのです」
「おおー。おにぎりが焼きおにぎりになった」
「マッハドローを覚えればいつでもほかほかおにぎりが食べられます」
いきなり爆発音がして砂が舞い上がりました。
砂が落ちきると、腕が筋肉質な褐色肌の女性がいた。
「ヒシノ、アーム。アレハヲスンアヲセ。…ヒシノロリラニネアンガーサンダーレヘアテウィ」
「アンガーサンダー…聞いたことがあります。嘗てこの世界を滅亡にまで追い込んだ七邪神の一柱だと」
邪神、『プライムディスティニー』では特定のキャラと共に来ると現れるやりこみ要素ですね。カードもデッキも強いですが倒すと好感度の上がるカードがドロップします。設定上7人いますが、ゲームには5人しか出てきませんね。
邪神アームはトムに石を投げました。
「ヌウェワ」
トムはマッハドローで石を叩き落しました。マッハドローは便利ですね。
成金趣味丸出しのセンスない建物が私の後ろに控えています。
「そう言えば、お父様がここを開発するとき邪神の祠を壊してました。まあ直ぐに新しくて派手なのを作ったらしいのですが…ほぼ確実にそれが原因ですね」
「なんてことをしてくれるんですか」
「そんなことよりもあの邪神アームは王子様を殺そうとしています」
アンドリューも生贄呼ばわりしてますし、相当まずいですわね。逃げ切れるわけでもないので、この状況割りと詰みですの。
アンジーさんは感心したように拍手しています。
「すごい。あれわかるんだね」
「カードの勉強しているので邪神語はよく分かります」
文法自体は日本語と同じですので楽に覚えられるんですよね。
邪神の方々とコネが欲しかったんですよね。逆に言えばピンチはチャンスポジティブにいきましょうね。あははは。
「
「ニンゲンヒシノホウタ」
「お嬢様は決闘をドクターストップされているはずでは」
「ノアチデュエルワミ」
互いにユナイツカードを見せました。
なんやかんやありアームの3ターン目ですね。私のほうが出だしは良さげですが、逆転される可能性もありますわね。
「ヒシハターン。ドロー。チャージ。コスト2ベビードルフィンタスワ。ヨヲツコスト1ドリルサザエタスワ。ターンエンド」
アームのユナイツカードはトピア・クア。幸いにも神秘のマリンスノーがありませんね。
私の4ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト5で忍法 回天の術を発動してこら能面の舞姫で攻撃し、ターンエンドです」
前のターンに舞姫出したのが効いてますね。
アーム:ライフ10→8
アームの4ターン目ですわ。
「ヒシノターン。ドロー。チャージ。コスト3ヨティスのマトウダイタスワ。コスト1サハギンシールドタスワ」
2 モンスター サハギンシールド 属性:マーフォーク
効果:相手より手札が多いならこのモンスターは以下の効果を得る
・誘導
・出現:このカードを攻撃済み状態にする。このカードは攻撃可能状態にならない
攻撃力:0 防御力:3 ライフ:1
「ターンエンド」
サハギンシールド…厄介な壁ですよね。
私の5ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト5で鬼武者を召喚します。鬼武者でサハギンシールドに攻撃した後プレイヤーに攻撃してターンエンドです」
あっさり行き過ぎで逆に怖いですね。邪神がこんなに弱いはずありませんもの。
アームの5ターン目ですわ。
「ヒシノターン。ドロー。チャージ。コスト5海底邪神剣クスヨハ」
5 武装 海底邪神剣 属性:マーフォーク
効果:手札の数1枚につき攻撃力が1上がる
攻撃力:0 防御力:0
「防御力上がりませんよね。手札事故ですか?」
「ターンエンド」
アームは手札のカードを露骨にチラつかせました。ここまで怪しいと逆に何もなさそうですね。アタックしましょう。
私の6ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。鬼武者で止めですわ」
「アクションストライク。ドローガード。サハギンシールド」
「あれフェイクじゃなくてマジだったんですね。罠は過剰にアピールすれば罠だと思われない心理を利用しましたか」
私のデッキからカードが2枚出てきて、アームの盾となったあと私の手札に加わりました。
5 魔法 ドローガード 属性:マーフォーク
効果:アクションストライク。ダメージを受けるかわりに相手に2枚までドローさせる
「案外しぶといですね。能面の舞姫でプレイヤーに攻撃します」
「アクションストライク。マーメイドバブル」
5 魔法 マーメイドバブル 属性:マーフォーク
効果:アクションストライク。自分の墓地からコスト3以下の属性:マーフォークのモンスターを場に出して1枚ドローする
この時場に出すモンスターはマーフォーク以外の属性を持たないモンスターでなければならない。
「ターンエンド。邪神は伊達ではありませんか。しかしこうでなくては味気がないです」
味気ないのは嫌です。
アームの6ターン目ですわ。
「ヒシノターン。ドロー。チャージ。コスト5サハギンスクランブル。コスト1誘惑の真珠タスワ」
バランスボールサイズの真珠が2枚のカードを私に渡しました。
5 魔法 サハギンスクランブル 属性:マーフォーク
効果:3枚ドローして発動する。相手は2枚までドロー出来る。
2 モンスター 誘惑の真珠 属性:魚
効果:自分の場のモンスターが相手によって破壊されたとき互いに1枚ドローする
攻撃力:0 防御力:1 ライフ:1
「ターンエンド」
「打つ手なしですか。勝負は時の運といいますので、こういうことがあってもおかしくありません」
1枚ドローさせて終わるしょっぱい布陣…手札事故起こしてますねこれは。
私の7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で忍法 サオトキキの術を発動します」
4 魔法 忍法 サオトキキの術 属性:ニンジャ
効果:デッキの上から5枚を見て一枚を手札に加える。その後このカードをコストゾーンに置く。
「妖刀 ムラマサを手札に加えまして、鬼武者でサハギンシールドと誘惑の真珠に攻撃します。そして能面の舞姫でプレイヤーに攻撃して今度こそ止めです」
「アクションストライク。ドローガード」
「なかなかしぶといですね。攻撃もしませんし、こんな塩試合終わらせとうございますわ。ターンエンド」
遅延戦術は普通嫌われますわよ。
アームの7ターン目です。
「ヒシノターン。ドロー。チャージ。…コスト7邪神海竜タスワ」
7 モンスター 邪神海竜 属性:海竜
効果:出現:互いの手札を全てデッキに戻し、それぞれ7枚ずつドローする
攻撃力:7 防御力:0 ライフ:7
「ありがとうございます。これで手札が安定しました」
手札にはマスターニンジャと空蝉の術が来ました。これで次のターン止め行けますね。
それにしても普通に攻撃力7の武装はキツイです。
「テフダ5枚コスト0サハギンスラッシャータスワ」
3 モンスター サハギンスラッシャー 属性:マーフォーク
効果:手札が5枚以上ならこのカードのコストは0になる
攻撃力:2 防御力:0 ライフ:1
「海底邪神剣テスプレイヤー攻撃」
「アクションストライク。忍法 空蝉の術。ワンジャがいるから使えますよ」
「テフダ5枚コスト0サハギンチェンジ」
5 魔法 サハギンチェンジ 属性:マーフォーク
効果:手札が5枚以上ならこのカードのコストは0になる。相手が魔法を発動した場合、相手のデッキの上から5枚をめくる
そうしたらその中の魔法1枚を選び、発動したカードの効果を選んだカードと同じにする。
あっ。識痛の呪術が捲れたらまずいですね。
「1枚目、獣遁 ワンジャ。2枚目、クノイチ。3枚目、幻のツチノコ。4枚目、忍法 サオトサキの術」
「ドキドキのごまいめだねー」
「5枚目…捲りますっ。あっ」
私の心臓はこれまでにないほど昂ぶっております。
識痛の呪術が出ました。
「5枚目」
「わぎゃん!」
ソウコライフ:10→0
モンスターと武装が消えた。
「なんというタイミングの悪さですか。5枚目で識痛の呪術が出ていなければ勝てていましたのに。これは精進しなければなりませんね」
「タタスウィハセヘレスタスウェ」
「ただの運勝ちでも勝ちは勝ちですよ。まあ運で捲くられるのも熱くて嫌いではありませんし」
悪役に対してカード一枚で奇跡の逆転…まさしく主人公みたいでいいと思いますよ。
惜しむらくはそれをやったのが裏ボスというところですが。
「トンキハノロリラニロロキ。アンガーサンダーレヘアテウィテフウィヘスワ」
「そうですか。アンドリューが生贄にならずに済んでよかったですよ」
邪神アームが私をキラキラした目で見ていますね。
ソウコ・メッセルは『プライムディスティニー』では邪神の生贄ではなかったはずなのですが。
「もしかして好き放題やったから運命が変わったのかもしれませんね。それともお父様が社を壊したこと憎んでます?」
「マスウェロヲトラヲツナロ」
「気にしてないならよかったです。ところで何の用件でございましょうか」
代わりにお前を害するとかなんとか言われたら流石に無理ですよ。
邪神アームは私にあごクイしました。
「ホケニヘスマヲロ」
「お前が欲しいだなんて大胆ですね」
「あーっ。ダメですよ。それはダメです。婚約者が許しませんよ」
「そういうことです。私には婚約者がいるので無理なのです。そんなに欲しいなら私が死ぬ寸前に助ければいいと思いますよ。案外すぐですし」
邪神アームは考え込んでいるような仕草をしました。
邪神アームはメイドさんに耳打ちしました。
「ほうほう。私の家の庭に貴女を祀る神殿を作ればここからワープ出来るのですか。邪神って便利ですね。でも邪神信仰していると思われるのはまずいですよ。お嬢様は成金の子供なのでこれ以上社交界で立場悪くなるのはキツイんです」
「邪神を祀るは祀るでも被害を封じるなら大丈夫だと思いますよ…ねっ。トム。トムは王子駅だからそこらへんどうだか分かりますでしょう?」
「サンドアートの国では問題ないです」
邪神アームは満足したかのように去っていった。
『プライムディスティニー』本編でも邪神は良い決闘すれば素直に去るところがあるので、案外対処は楽です。
「マッハドローは便利ですがあってもどうにもならないときがあるので、基本はやはり知識とデッキとプレイングですね」
「マッハドローおぼえるくだりまるまるいらないよ〜」
「そう言わないでくださいよ」
アンジーさんは冷たいのでした。
邪神語翻訳
「我はアーム。1の邪神。我の生贄とアンガーサンダーに近い者」「頃す」
「人間真似した」「早く決闘しろ」「我のターン。(中略)出す。ターンエンド」
「ただの運勝ちだろ」「今日は生贄いいよ。アンガーサンダーに近い者も見逃す」「ボロいし気にしてない」
「お前が欲しい」