カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい   作:黒点大くん

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17 邪神としては弱く

 室内で雷に打たれたという怪事件を耳に入れました。

「それで被害者は男性の叫び声を聞いてから、カードをバラまいた状態で倒れたということですね」

 落ちているカードはミラージュやヨティス等マジカルランドのカードばかりですね。

 

 邪神 アンガーボルトの仕業ですね。

「気絶こそしているものの体は無傷なんです。ところでなぜメッセル財閥のお嬢様がこのようなところに?」

「高級品持っているのに子供の目につくところに置いているのっておかしいじゃないですか」

 本当は雷に打たれたのに無傷で、撃たれる直前に男性の叫び声を聞くという現象に心当たりがあったからなんですけどね。

 

 1、2,3の順番で来るなんて邪神も律儀ですわ。

「この現象の正体は邪神アンガーボルトが生贄を求めたからです」

「邪神に詳しい人がいうと説得力が違いますね」

「それで被害者の名前は?」

「ト・クセイレイ男爵です。まあよくいる貧乏貴族です」

「カネトルスさんの部下ですね。ありがとうございます」

 余計奇妙です。

 

 でもおかしいですね。

「邪神が生贄にする法則性に当てはまらないんですよね」

「なぜ法則性を理解しているのですか?」

「よく勉強していますから。それにお金持ちなので入る情報も多いのです」

 六の邪神と七の邪神という例外はありますが、地球語で名前に対応した数字が入っていると邪神の生贄になるのですよね。

 

 ラウィラニ家なんかそこら辺露骨です。ラウィラニは邪神語で二の贄なので、法則性を理解してやってそうと言いますかなんと言いますか。

「適切ではあるがカードを持っていない生贄が見つかった時邪神はカードを渡すので一見法則性に当てはまっているように見えますが、今回の被害者は適切な生贄ではありません」

 これは何らかの罠……かもしれませんね。

 

 このままここにいるのは皆さんを巻き込むので危険ですわ。

「準男爵の適合しているユナイツカードを教えてください」

「適合しているユナイツカードはフォレスターです」

「ありがとうございました」

 私は現場から去りました。

 

 路地裏に行きますと目の前に雷が落ちてきました。

「ケケケケケ」

 いつの間にかにたにたと不気味に笑う黒猫やカラスに取り囲まれていますね。出入り口も岩でふさがれますし。

 

 黒猫やカラスはさび付いたロボットのような動きをして灰になりました。

「アンガーボルトではありませんね。名前はとっくに出ているのに結構焦らすじゃないですか」

 こんな真似が出来るのは四の邪神 アブゾーブだけですね。

 

 武者鎧を着た髭面イケオジが現れました。

「この見た目は五の邪神 ワイドレイムのそれです。まさかアブゾーブがワイドレイムの姿とアンガーボルトの見た目を吸収したのでは」

 六の邪神と七の邪神という例外はありますが、各邪神には人柱につき一つの能力があります。(アームの腕が太い、ドッペルゲンガーの姿をコピーする等)

 

 アブゾーブは名前通り決闘で完膚なきまでに倒した相手のすべてを吸収して使えるのです。

「しかし同格の存在にそんなことできるとは思えないんですよね。アブゾーブは邪神の中でも決闘の腕は最弱。同期は分かりませんが、二人して私を騙そうとしているんですね」

 という設定があるのです。まあ『プライムディスティニー』本編でも一番弱いので、半ば事実なんですけどね。

 

 偽アブゾーブは青筋を立てています。

「いい顔してるね。聞かなかったことにしてあげるからボクのコレクションに加えてあげようか」

「アブゾーブでしたかごめんなさい。それにしても邪神様が選んでくださるなんて光栄でございますね。光栄ではありますが辞退させていただきます」

 アブゾーブは邪神で唯一人間語を話すという特徴があります。やはりアブゾーブでしたか。

 

 アブゾーブは青いチャイナ服の中性的な見た目になりました。

「この姿がボクの本当の姿」

「偽物じゃなかったんですね。ところでなぜアンガーボルトとワイドレイムの力を使えているのですか? 最弱の邪神である貴女が、他の邪神を倒せるとは思えないのですが。煽っているわけではなくて本当に疑問なのですがなぜそのようなことを?」

 アブゾーブはユナイツカードを取り出します。

 

 出入り口もふさがれていますし逃げられません。

「いろいろ言ってすみませんでした。どうせ逃げられないと思いまして煽らせていただきました」

「ニンゲンヌスネストヘス……ヌウェワ」

 決闘が開始されました。言い過ぎましたねこれは。

 

 アブゾーブの3ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト3ZPANG 瀬唄の異鳥翠タスワ。サーチ、ZPANG 黄金象」

「ZPANG……ライフと攻撃力が統一されたモンスターを中心にしたテーマですね」

 金の指輪をつけて緑色の着物を着た長いひげのおじいさんが現れました。

 

 3 モンスター ZPANG 背歌の異鳥翠 属性:ニンジャ

   効果:出現:攻撃力とライフが同じ数値でかつ攻撃力が2ではないモンスターをデッキから手札に加える

      攻撃力:1 防御力:2 ライフ:1

 

 でもおかしいですね。アブゾーブの適合ユナイツカードはマジカルランドなので属性ニンジャのZPANGは使えないはずなのですが……あやしいですわね。しかもZPANG自体中ボスのミエハール子爵の使用テーマなので邪神の使うものではないですね。

 

 ミエハール子爵はカネトルスさんの幼馴染であり友人……カネトルスさんのぶかが襲われたことと言い何かありますね。

「瀬唄の異鳥翠プレイヤーアタック」

 ソウコ:ライフ10→9

 

 私の3ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。コスト2でワンジャ、コスト1でクノイチを召喚してターンエンドです」

 盤面は順調ですね。

 

 アブゾーブの4ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト4忍法サオトサキの術。ターンエンド」

 私の4ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。コスト3で能面の舞姫を召喚いたしますわ。能面の舞姫で相手プレイヤーに攻撃いたします」

「アクションストライク。忍法 空蝉の術」

「ターンエンド」

 旨い事躱されましたわね。

 

 アブゾーブの5ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト2ZPANG 黄金犀、コスト3ZPANG 黄金象タスワ。ターンエンド」

 金の犀と象が現れました。

 

 2 モンスター ZPANG 黄金犀 属性:ニンジャ

   効果:攻撃力とライフが同じ数値のモンスターの召喚コストを1減らす。

      下記の効果は1ターンに1度発動できる。

      ・ZPANGモンスターが場に出たら2枚ドローする。

      攻撃力:1 防御力:0 ライフ:1

 

 4 モンスター ZPANG 黄金象 属性:ニンジャ

   効果:攻撃力とライフが同じ数値のモンスターの防御力は元々の攻撃力分上がる

      攻撃力:1 防御力:3 ライフ:1

 

「ZPANGフルアタック」

「ここまで露骨ですと絶対に何かがありますね」

 ソウコ:ライフ9→6

 

 私の5ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。コスト5で私の愛のカード 鬼武者を召喚します。鬼武者で全てのモンスターに攻撃します」

「めんどくさ。アクションストライク。ZPANG 触星の徐杏」

 金のネックレスを首にかけたお坊さんが現れて手札に戻ります。

 

 4 モンスター ZPANG 触星の徐杏 属性:ニンジャ

   効果:ZPANG 触星の徐杏の効果は1ターンに1度発動できる。

      自分の場に攻撃力とライフが同じ数値のモンスターがいる場合手札のこのカードはアクションストライクを得る

      出現:このカードと攻撃している相手モンスター1体を手札に戻す。         

      攻撃力:1 防御力:3 ライフ:1

 

「む。鬼武者もいつの間にか消えていますね。能面の舞姫でZPANG 黄金犀に攻撃してターンエンドです」

 難しい状況ですね。まあこれほどの実力者でなければ私が困りますからね。

 

 アブゾーブの6ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト6LostCityZPANG発動」

 辺り一面が黄金に染まりました。

 

 6 魔法 LostCityZPANG 属性:ニンジャ

   効果:設置。攻撃力とライフが同じ数値のモンスターは攻撃されない。そして相手のカードの効果を受けない。

 

「正しく黄金の耐性。ターンエンド」

「黄金は平等に利益をもたらします。ところで何でいま攻撃しなかったんですか」

「お前ごとき舐めプしても倒せる」

 甘く見られましたね。

 

 私の6ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。コスト4忍法サオトサキの術発動です。コスト3で妖刀ムラマサを武装してプレイヤーに攻撃して、ターンエンドです」

 アブゾーブ:ライフ10→7

 

 アブゾーブの7ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。コスト5鬼武者タスワ」

「そう言えば鬼武者も攻撃力とライフが同じ数値でしたね……。もしかして鬼武者でピッタリライフを削りたかったから攻撃しなかったんですか?」

 敵にすると威圧感が半端ないですね。唯一の欠点が解消されたモンスターは怖いですよ。

「よくわかったな。鬼武者、オールモンスターアタック」

 幻のツチノコに刀が振り下ろされます。

 

 ワンジャでなくて良かったですわ。

「アクションストライク。識痛の呪術」

 幻のツチノコがバラバラになる。

「ワンジャアタック」

「アクションストライク。忍法誘惑の術。LostCityZPANGの効果によりクノイチは攻撃されないため、攻撃は中断されます」

 クノイチは金色となり、鬼武者の攻撃を弾きました。

 

 LostCityZPANGは相手のモンスターにも攻撃されない効果を与えますからね。それにLostCityZPANGは相手のカードではありますが、効果受けない処理と受ける処理がループして効果耐性も付与されますし。

「テキストの書き方からは分かりませんが誘惑の術自体はプレイヤーに与える効果ですからね」

「ターンエンド」

 旨い事利用できて良かったです。

 

 私の7ターン目ですわ。

「ドロー。チャージ。鬼武者と妖刀ムラマサでプレイヤーに攻撃します」

「ぐぇええ」

 アブゾーブ:ライフ7→0

 

 アブゾーブが老け顔のわし鼻でくたびれた黄土色のスーツ姿の男性になりました。

「よくもだましてくれましたね。邪神がこんなにあっさり倒れるわけないじゃないですか」

「うるさい。庶民のガキが!」

「友情を利用して幼馴染にお金を借り、暴力で踏み倒そうとするミエハール子爵よりはマシだと思いますよ」

 ミエハール子爵は明らかに怒っています。

 

 ミエハール子爵が中ボスとなった経緯はミエハール子爵が何年もお金を返さないことにキレたカネトルスさんが主人公を倒せば借金チャラにするという温情によるものなんですよね。

 

 しかもミエハール子爵の借金の理由は自分が贅沢するためなのです。

「あなたが現場にマジカルランドのカードをばらまいたのは犯人をかく乱するため。おおかた借金取りにきたクセイレイ男爵を始末した証拠を消そうと思ったのでしょうね」

「庶民の癖に頭が回る……」

「しかしアンガーボルトやワイドレイムみたいなことがなぜできたのか分からないので、うぐぇ」

 私の手は自らを締め付けていました。

 

 なんですかこれ。

「あの男は呪術や催眠術で己の身を焼いただけだ。私は悪くない。お前が催眠術で幻を見て自らの首を絞めたところで、ただの怪事件なのだ」

「催眠術や呪術でここまでやれないですけどね。どんなトリックを使ったのですか?」

 催眠術や呪術でこんなことできるなら催眠術や呪術の先生はいないですよね。

 

 ミエハール子爵が倒れました。

「ボクがこいつに力を貸したから。邪神の加護さえあればこのくらいは楽勝だもんね」

 青いチャイナ服を着た中性的な人が現れました。

 

 青いチャイナ服を着た中性的な人が、倒れたミエハール子爵に座ります。

「ボクは四の邪神 アブゾーブ。コイツはニンゲンの限界を確かめるための実験道具」

 私が持っている『プライムディスティニー』本編の知識はこれからあまり当てに出来ないことを悟りました。

 

 しかしなんでこんなことを。

「それからボクを最弱の邪神と言ったことは気にしてないよ。事実だから」

「しっかり根に持っているじゃないですか。そんなことよりもなんでこんなことを……」

「最弱の地位から抜け出すためにはニンゲンを知ることが大切だと思ってるから」

 アブゾーブはさらに深く座ります。

 

 アブゾーブは立ち上がってミエハール子爵を蹴り転がしました。

「他のバカどもはそれをせずニンゲンを見下してるんだから話にならないよね。生贄にも手を出してないもん。2に至ってはちょうどいいのがいるのにね」

 本能的な恐怖が私の全身を走る。

 

 逃げたいけれど足がすくみます。

「今度こそマズいかもですね」

「お前は1とも知り合いみたいだしサンプルとしてはお前の方がいいか。実験道具は見張っててね」

 アブゾーブはユナイツカードを見せました。

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