カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
マナーの授業を軽々とこなす。
「それにしてもあのカードファイト……面白かったなぁ」
いけないいけない。また口角が上がってしまっている。
「自重自重。悪癖だ」
私がにやけたときの顔はトゥスルがドン引きするくらい怖い顔だからな。
しかしさっきからお屋敷が騒がしい気がする。
「何が起きたんだろう」
ドタドタという足音が部屋の扉の前で止まり、勢いよく扉が開いた。
「な、なんだぁ!?」
乱暴に扉を開けたのは右目を眼帯で隠した白髪で褐色肌のおじいさんだった。息も切れ切れで相当焦っている。
この人こそソウコ・メッセルのお父様 アグロ・メッセルである。歳をとるまで働いて財を成した時に漸く出来た子供だから滅茶苦茶甘やかしているという設定があるのだ。
「鼻血を出したと聞いたが、大丈夫か? どこか痛くないか? 怪我は」
「うざいです」
愛が押し付けられている。
愛はほしいけど、押し付けられると煩わしいんだなぁ。
「うざい……うざいだなんて。がっくり」
「この世が終わったみたいな落ち込み方をしないでくださいよ」
この人は娘のために暴走する節があるからねぇ。なまじ影響力があるから、暴走の被害が普通の人の比にならん。
普通に悪人だったソウコ・メッセルがこの人が生きてる間は罪を裁かれなかったからね。
「なにか我慢してないか。大丈夫か?」
「非常に贅沢で恵まれた環境にいながら、それと知らずに我慢をしていました」
お父様は何を言ってるのかわからんと言いたげな顔をする。
天を指差す。
「私は生まれ変わったソウコ・メッセル。あの一件で心機一転心の底から面白おかしく生きていくことを心掛けましたわ。ですので損害はなし。お父様の好きな投資というヤツですの」
「お、おお。そうか。大丈夫なのか。大丈夫なら良かった」
「心配してくださってありがとうございました」
「何にせよ無事なら良かった。お父さん仕事行くからね。本当に大丈夫? ねえ本当に」
「平気ですわよ」
心配してくださるのはありがたいんだけどねぇ。
お父様が去った。ボロが出なくてよかった。
「記憶が戻る前と同じ言葉遣いにしないと違和感だのなんだのがありそうだな」
一日二日でキャラが変わるわけないので、できるだけ口調は記憶戻す前と同じにしよう。
「それにしてもトゥスル王子は強かったなぁ。いい家庭教師を紹介したいなぁ」
部屋にメイドさんが入ってきた。
メイドさんは人里に現れたクマに近づくかのようにビクビクとしている。
「前までの私は癇癪持ちですぐ当たり散らしていましたが、今はそんなことありませんからね。怖がらないでください」
「ヒィッ。べ、別にお嬢様のことをかんしゃくモンスターだなんてお…思ったりし、していませんからね」
「我が儘だったのは認めますが、そこまで言わなくてもいいじゃないですか」
違和感を持たれない程度に態度を改めよう。悪印象を持たれるとあまり人とカードゲームできないからな。出来れば感想戦までしたいんすよ。でも印象悪いと最低限すらできない。
それは後で考えるとして、今はトゥスルの家庭教師が必要だ。
「そんなことよりもですね。強いカードファイターをご存知でしょうか。この家のメイドさんって確か全員貴族のお嬢様ですよね。トゥスル様に良い家庭教師を紹介したいんですよ」
「あ、愛というやつですね。お嬢様は愛を知ってここまで変わったのですか」
あ、アイ!? 愛ってあのアイ? 愛…
「あ、ある意味愛かもしれませんね」
「そういうことでしたら。二日くらいいただけますでしょうか」
二日後が楽しみだなぁ。
なんやかんやで面接まで進んだ。
「凄腕かつユナイツカードがマジカルランドの人のみ集めました」
イケメンショタと筋骨隆々な人とおばあさんの3人ですか。
…あのイケメンショタどっかで見たことありますね。
「ところでなぜトゥスル王子の家庭教師を他人が決めるんだか」
「内助の功というやつですね。私は一応トゥスル王子の婚約者ですから、トゥスル王子にはカードの腕前を上げてもらいたいのです」
結婚する前に死ぬから結婚はできないんですけどね。ブヘへへへ。
デッキを調整した。
「お優しいことで」
「実力テストです。かかってきてください」
デッキを構える。
あれこれあってニ人目とのカードゲームが終わった。
「筋肉さんとおばあさんは
ロックバーンは強いが、この世界だとロックバーンはマナーが悪いということになっている。そんなマナーが悪い人をやんごとない立場の人に紹介できるわけがない。
イケメンショタもロックバーンだったら今回の採用試験は失敗ですね。
「名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ミツド・レンジ」
ミツド・レンジ…どこかでチラッと見た気がします。
どこかで見たことあるということはプライムディスティニーの登場人物ですかね。
「ミツドさん試合開始ですわ」
互いにデッキを構えてからユナイツカードを公開して、ミツドさんの先攻になる。
互いに2ターン目までなにもせず、ミツドさんの3ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト2で魔法図書館の司書召喚。出現使ってプレイヤーに攻撃し、ターンエンド」
ソウコ:10→9
私の3ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト3で妖刀 ムラマサ武装。私もといムラマサで魔法図書館の司書を攻撃して破壊。1ドローしてターンエンド」
ミツドさんの4ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト3でホブゴブリンの製本所発動。ターンエンド」
3 魔法 ホブゴブリンの製本所 属性:使い魔
効果:設置
1ターンに1度だけ発動出来る
魔法使いモンスターが自分の場に召喚されたとき一枚ドローする。
説明:ホブゴブリンたちは魔導書を作るのにおおいそがし
私の4ターン目だ。
「ドロー。チャージ。コスト2で獣遁ワンジャを召喚します。ワンジャの効果でコストを1減らして、コスト2でイジャロコロガシを召喚」
笊と子牛サイズの柴犬が出てきた。
2 モンスター 獣遁ワンジャ 属性:ニンジャ
効果:モンスターの召喚コストを1減らす
攻撃力:0 防御力:2 ライフ:2
3 モンスター イジャロコロガシ 属性:アヤカシ
効果:出現:2枚ドローして、2枚手札から墓地に送る
説明:編み目が緩くて捨てられた笊
攻撃力:0 防御力:2 ライフ:3
「プレイヤーに攻撃してターンエンド」
ミツド:10→7
ミツドの5ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト5で磁力魔導師を召喚。1枚ドロー。獣遁ワンジャを攻撃して破壊。ターンエンド」
左右が赤と青で分かれたローブを着ていて方位磁石みたいな仮面を着けた人が出てきた。
5 モンスター 磁力魔導師 属性:魔法使い
効果:誘導(このカードが攻撃不能状態なら、相手はこのカードを攻撃しなければならない)
シフト(このカードが攻撃不能状態なら、モンスターの攻撃力と防御力を交換する)
説明:磁力は反発と引き寄せ合う力を併せ持つ
攻撃力:5 防御力:0 ライフ:5
「実質防御力5のモンスターですか」
「これが俺のエースモンスターですよ。ターンエンド」
磁力魔導師はロックバーンによく使われている。またですか。
私の5ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト5で忍法回天の術発動。イジャロコロガシで磁力魔導師に攻撃してターンエンドです」
5 魔法 忍法 回天の術 属性:ニンジャ
効果:設置
コストを2払って発動する
コストを払って墓地からコスト5以下のニンジャモンスターを召喚できる
説明:その術はニンジャをより厄介にした
ニンジャマスターのいない今攻撃強制は刺さりますね。
ミツドの6ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト4で予言者ヨティスを召喚。1枚ドロー」
4 モンスター 予言者ヨティス 属性:魔法使い
効果:出現:2枚ドローしてこのカードを破壊する
(ライフが0以下になったモンスターは破壊される)
攻撃力:0 防御力:2 ライフ:0
「ヨーチスの効果で2枚ドローして自壊。磁力魔導師でプレイヤーに攻撃。ターンエンド」
「これは少し…負けそうですね」
ソウコ:9→4
私の6ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト2で回天の術の効果発動。コスト2で獣遁ワンジャを召喚します。コスト1でクノイチを召喚です」
2 モンスター クノイチ 属性:ニンジャ
効果:出現:一枚ドローする
攻撃力:1 防御力:2 ライフ:1
よしっ引けた。なんとかなりましたね。
「ターンエンドです」
相手のデッキはおそらく
ミツドの7ターン目。
「ドロー。チャージ。磁力魔導師でプレイヤーに攻撃」
「アクションストライク」
「…獲物を前にした野生動物みたいな表情からしてなんかありますね」
ミツドさんは冷や汗を流す。
「忍法誘惑の術発動」
「ほーら。やっぱり逆転の切り札がありましたね」
4 魔法 忍法 誘惑の術 属性:ニンジャ
効果:自分の場に「クノイチ」がいればアクションストライクを得る
相手の攻撃先を「クノイチ」に変更する
クノイチがいないと実質使えないカード…引けてよかったですね。
「磁力魔導師でクノイチに攻撃。クノイチを破壊してターンエンド」
結構ギリギリですよコレ。
私の7ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト4でマスターニンジャを召喚します。マスターニンジャの効果により忍法 分身の術をサーチ。マスターニンジャで磁力魔導師に攻撃…する時にコスト2で分身の術 マスターニンジャに使います。マスターニンジャで磁力魔導師破壊」
「一撃でやられた」
「マスターニンジャでプレイヤーに攻撃です」
ミツド:7→2
「ムラマサでプレイヤーに攻撃です」
「コスト5でリアクション。ヘカテーの月魔術」
5 魔法 ヘカテーの月魔術 属性:魔法使い
効果:リアクション(コストを支払えば相手のターンにも使用できる)
2枚ドローして、プレイヤーの受けるダメージを2減らす
説明:賢者ヘカテーの遺した魔法の1つ。その魔術は痛みを和らげ知略をもたらす
リアクション…頭から抜けてました。プライムディスティニーだとリアクションはアクションストライクと違い、コストを払うのが弱いからという理由でオンラインじゃ誰も使ってないんですよね。
「読めませんでしたね。コストを使わなかったからリアクションがあるだろうというのは充分予想できたはずなのですが…」
「気にしないでください。カードパワー的にリアクションなんざ使えないですからね」
「ターンエンド」
まずいですね。このままじゃ押し負けますよ。
ミツドの8ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト4でソーサレスナイト召喚。1枚ドローして効果発動。コスト4でソーサリーナイト召喚。1枚ドローして墓地から予言の魔導書回収」
2 モンスター ソーサリーナイト 属性:魔法使い
効果:出現:墓地の魔導書カードを手札に加える
攻撃力:2 防御力:2 ライフ:2
「ソーサリーナイトとソーサレスナイトでプレイヤーに攻撃。これで終わりですよ」
「ソーサリーナイトの攻撃は甘んじて受けましょう。しかしソーサレスナイトの攻撃は通しません。アクションストライク。キリステゴメン」
3 魔法 キリステゴメン 属性:サムライ
効果:アクションストライク。自分の場のサムライカード1枚を選ぶ
そのカードよりコストの低い相手モンスターを1体破壊する
ビートダウンメタに入れてたのが効いたようですね。
「ソーサレスナイト破壊」
「ターンエンドです」
なんとかなりました。
私の8ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト4で忍法 サオトサキの術。そしてマスターニンジャでプレイヤーに攻撃です」
ミツド:1→0
2枚目の磁力魔導師か蘇生カード引かれてたら負けてた…。この人もまた強くなる。
「合格です」
紹介状を渡す。
「弟子と研鑽しあって互いが互いを強くしてくれることを心より願っていますよ」
「負けたのに…いいのですか?」
あっ! 今の言葉 攻略対象のミッディー・オレンジのセリフだ。本編前とはデッキタイプが違うから気が付かなかった。
今は茶髪セミロンだけど、短い黒髪にすればたしかにソックリだ。
「ミツドさんって本当はミッディーさんですよね」
「あっ。そうだった。自分の名前さえ忘れてた」
ミツド・レンジという名前はミッディーが初対面の時に主人公に名乗った名前だった。ミッディーのルート攻略してなかったから気付くのが遅くなった。