カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい   作:黒点大くん

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22 タンバイズ

 襲撃者から情報を洗いざらい話してもらいました。噓のつけない呪いをかけたので真実味のある情報が段違いに増えましたね。

「あっさり話してくれてよかったですね」

「それでは黒幕のところに行きましょうか」

「お嬢様はアームと大人しくしていてください」

 アームに干し肉の詰まった革袋を渡しました。

 

 お嬢様の顔が凄く行きたそうな顔をしていたので、念のためアームに監視させておきましょう。

「お嬢様が行くのは相手の思うつぼですから」

「そういうことなら仕方がないですわね」

 お嬢様は黒幕がカード強そうだから行きたがったのでしょう。なぜなら黒幕は第二王子 タンバイ様の実力派過激集団(非公式ファン) タンバイズ、実力は確かですから。

 

 私は襲撃者に案内してもらいました。

「ずいぶん簡単に信用してくれるんだな」

「いいえ信用していませんよ。お嬢様を連れて行かなかったのは、私一人ならあなた程度はどうとでもなるからです」

 噓をついていないにしろ信用できないところはありますし。

 

 襲撃者は笑う。

「随分と正直なんだな」

「お褒めいただきありがとうございます。しかしまだタンバイズの支部につかないんですかね」

「そうせかすな。裏切ったことがバレると犬質が危険だからな。見つからないように迂回しているんだ」

 そういうことでしたか。

 

 木の上から服が綺麗な人たちが落ちてきました。

「お前なんで第四王子の婚約者のメイドに手を貸しているんだ。婚約者を怪我させて心を折れって言っただろ。ペットの命が惜しくないのか」

「認めたくはないのですが……これは違うんです」

「何が違うんだ?」

「この人はお嬢様を一歩間違えれば死ぬような状況に陥れた上に、私もこんなところに連れて行ったのです。お父様は第四王子派の中でも有力なので、私をうまく使ってお父様を第二王子派にすれば大手柄ですから」

 こう言えば入れてくれるでしょう。手柄を立てたいのは誰でも同じですから。

 

 服の綺麗な人たちはニヤついています。

「大手柄を建てれば人質を開放するだろうと考えたわけだ」

「まあそうです。因みにこの人は来る途中に口の中を怪我して、喋れないので代理で発言しました」

「いいだろう。入れ」

 あっさり入れてもらえました。あの人たちが単純だったお陰で侵入できました。

 

 純粋かつ前向きな思考に助けられましたね。ここまでうまくいくと罠の可能性がありそうなので一応警戒もしましょう。

「よくもまああそこまでベラベラと嘘をつけるな。4の姉上を見るに弱いと嘘をつけるようになるのか?」

「そうなんです。よく分かりましたね。しかも人間は嘘をつくだけではなく、呪術で食事に惚れ薬を仕込み言うことを聞かせるのもいるとか」

「俺の恩人はそうでないことを祈るぜ」

 御主人様が1度それやられた事があるので、メッセル財閥のメイドの間では有名な手法なんですよね。かくいう私も使ってます。

 

 襲撃者と共に奥に入っていきました。

「洞窟みたいな外見に反して以外と設備がしっかりしていました。天然の湧き水もあり、蒸し風呂も厨房も最新設備で清掃が整っています」

「それがどうしたんだよ」

「こんなに手間もお金もかかる工事をひっそりできる人物がバックにいるということです。第二王子本人からも疎まれているタダの過激派という前提が崩れそうですね」

 徒歩で行けるぐらいの近場で工事をしているなら業者や音などの痕跡が漏れていてもおかしくないはずなのに、何の痕跡もありませんでしたからね。

 

 ……フォークとナイフとお皿を集め終わりました。考察はこれぐらいにしておきましょう。

「武器にすんのか。コソ泥だな」

「証拠品として使えないか一応持っておくだけです。武器にするには心元ありません。それに天に召します神もコソ泥くらい赦してくれますよ」

「俺が言えたことじゃないが神かどうか以前にニンゲンの法に反するだろ」

 タンバイズも公的機関に居場所を探られるとまずいので、盗難などに遭っても被害届を出せないと聞いたことがあります。

 

 あぶり出しの手紙を書いて伝書鳩に括りつけて解放した。

「これであとは人質を解放するだけですね」

「随分スムーズに行ったな。俺の行動は何だったんだ」

「恩人のペットを犬質にされては冷静に動けなくても仕方ありませんよ」

 冷静さを欠く……というのは恐ろしいものです。悪手しか取れない状態になりますからね。

 

 足音が聞こえますね。

「誰が来ます。この人から人質のいる部屋のことを聞き出しましょう」

「自然な流れで酷いことをやる」

 私は天井に張り付きました。

 

 厨房に人が入ってきました。

「お前あのお嬢様ぶっ殺せなかったんだって? そうかそんなにあの犬が大事じゃねえのか。大事じゃねえよな。所詮他人の犬だもんな」

「く……だが、かわりにあの屋敷のメイドをここに連れてきた。なんか分からねえけど、偉い貴族がてめーらの味方になるらしい。それでチャラに出来るかもしれないだろ」

 嘘のつけなくなる呪いは当人が嘘だと思っていないことはたとえ事実に反していても喋ることが出来ます。私の言ったことをそのまま真に受けて曖昧な言い方をしているので呪いにひっかからないんですね。

 

 人は舌打ちしました。

「そうか。それが嘘ってのは分かってて敢えてここにおびき寄せたんだ。喋らないのにどうやって情報知ったんだというツッコミどころがあるからな。犬の無事を保証したければあのメイドを出せ」

「お望み通り出て来ましたよ」

 降りながら、脚で力強く首を締めて気絶と意識がある状態の中間を保たせ続けます。

 

 無抵抗で物を聞くにはこれが一番ですね。

「人質はどこにいるんですか。言え、言いなさい」

「知る……か。死んでも……言わない」

「白を切るぐらいの仲間意識はあるんですね。無駄なことしないでくださいよ」

 更に痛くなるように首を絞める。

 

 更に人の目の前でナイフをちらつかせます。

「わかった。言う、言うから止めろ!」

「怪しいですねえ。嘘ついたらどうなるかわかりますよね。時間効率のために乗せながら犬質のいるところに案内してください」

 嘘のつけない呪いはかけられる側が抵抗すると、書いている途中に大幅にズレて失敗するのでこうして脅しをかけるほうが良い場合もあるんですね。

 

 乗せたまま案内してもらいました。

「何でそんなに手際がいいんだ。手合わせ願いたいな」

「メッセル財閥のメイドは諜報や戦闘の訓練をさせられていますから。私はその中でも優秀なので、お嬢様に直接仕えることができるんですね。手合わせはしません」

「お前みたいな強いニンゲンと手合わせできないとは残念だ」

 私を乗せた人が止まりました。

 

 立派な部屋に毛並みの整った茶毛のポメラニアンがぽつんと一匹。なんとも寂しい光景ですね。

「ぽめのすけ……無事だったか。飼い主のところに帰ろうぜ」

「わふ!」

 ポメラニアンことぽめのすけはワイドレイムに近づく。

 

 ぽめのすけの前に半透明な壁ができて、ぽめのすけが弾かれました。

「わっふん!」

「失敗は失敗だ。犬を解放するわけにはいかねーな」

「正論ですね。自分の命がかかっていても正しいことを貫けるなんて尊敬しますよ」

 私を乗せた人の懐から伝書鳩が出てきました。

 

 伝書鳩に細工が仕掛けられている様子はなさそうですね。

「確かに失敗したけど凄い大手柄になるかもしれねえんだから、酌量ぐらいはしてもいいんじゃねえか?」

「次失敗したら毒ガスをあの犬にぶち込むからな」

「おっとそれはライン越えです」

 人の首を絞めて気絶させました。

 

 襲撃者は舌打ちした。

「気絶させてどうすんだよ」

「壁を壊せばいいと思いますよ」

「そうかそうだな。1回壊し切る前に脅されてるから思いつかなかったぜ」

「そうですか」

 そうでもなければ大人しく他人に従わなさそうですしね。

 

 壁が壊れるとぽめのすけが出てきました。

「それにしても自分の飼っている犬の様子を見に来ないなんて薄情な飼い主ですね」

「まあそう言うな。ぽめのすけの飼い主はこの誘拐事件のせいでやる気とかそういうのが欠落してんだよ。世界が終わってもあそこまで絶望しないだろうなって思ったね」 

「そのような事情があったのですね」

 襲撃者はぽめのすけを抱きかかえます。

 

 私たちはそのまま部屋から出ていきました。

「なんでその犬が解放されているんだ」

「私達を敢えて内部に侵入させ、人質にしようと思った人間が一人しかいなかったからですよ。3人いれば流石に無理でした」 

「理由を説明しろって言ってるのに何ごちゃごちゃと抜かしているんだ」

「凄い後ろ盾はあっても協調性と頭数が欠けている、とストレートに言うのは酷いと思いまして回りくどい言い方をしたのですが」

 服の綺麗な人たちはユナイツカードを出してきましたね。

 

 そして私の7ターン目です。

「魔法の教科書で防御を固めているんだ。しかも生命力は5もある。それに引き換えお前の生命力は1。そんなんじゃ勝てない。次のターン魔法の雷を撃てば生命力を0に出来るから、勝利は確実だなぁ」

「ドロー。チャージ。賢者のバナナの木を発動しまして、コーチの効果でモンスターの効果を封じ、スカウトの効果で攻撃力を1上げます。コスト6でクロオビマスターを召喚し、効果発動。貫通を付与します。あなた達の後ろ盾について話してもらいますよ。私でプレイヤーに攻撃です」

 相手:生命力5→0

 

 モンスターが消えましたね。

「追い込まれたふりしたら油断してくれるなんてありがたいですね」

「そうか。全員の相手をしてもらおうかあ」

「うへえ」

 ユナイツカードを見せつけられました。

 

 次の決闘が始まり、決闘が終わると決闘が始まり、終わる頃には日も暮れていました。いつの間にか襲撃者も消えていますね。

「これ、お嬢様だったら、すっごいだらしない顔で、興奮していましたね。連れてこなくて、正解でした」

「この数を倒すとはなかなかやるじゃねえか」

「もう1か月はカードを見たくありませんね。では早速後ろ盾について聞きましょうか」

 一番強かった人の胸倉をつかんで起こします。

 

 手間かけさせますねえ。

「貴方たちに資金援助しているのはどなたですか?」

「なんのことだよ」

「ここにある設備、全員分のデッキ、バレないように工事をする等々膨大な資金がなければ出来ないことなんですよ。資金の手どころを吐きなさい! さもなくば痛い目を見ますよ」

 強かった人の右腕の関節を外して、噓の付けない呪いをかけた。

 

 右腕の関節を治して伝書鳩を呼び出す。

「言うことをメモして世間に公表するつもりかよ」

「早く情報を吐かないと困るのはそっちなんですよね。私の伝書鳩の報告で、愛国心のあるあなた達を反逆者として逮捕するように仕組めますので」

「命は惜しくないがタンバイ様が不利になるのは惜しい」

 タンバイズの面倒なところはだいたいの場合我欲よりも愛国心があることなんですよね。だから愛国心を煽ればちょろいもんですよ。

 

 強い人はペラペラと喋ってくれました。

「黒幕はシエンス・ニオジーンですか。ニオジーン社の若社長ですね。ご丁寧に領収書までついています」

「ニオジーン社はメッセル財閥によって潰れかけまでいったんだ。恨まれても仕方がないし、邪神をけしかけられても仕方がない」

「あなた達タンバイズのスポンサーになったんですね」

 どちらかと言うと第四王子側であるメッセル財閥を倒したいのは、タンバイズもニオジーン氏も同じですからね

 

 ニオジーン氏も今では御主人様と同じぐらいお金持ちですし、厄介ですね。

「解説ありがとうございます。寝ていてください」

 強い人がいきなり気絶しました。

 

 強い人の背後に老人がいました。

「私に気づかれず、いつの間に……ただものじゃありませんね」

「タンバイズの者じゃよ」

 この老人たたずまいに隙が一つもありませんね。戦えばただではすまないでしょう。

 

 老人は懐からユナイツカードを見せてしまいました。

「今日はもう遅い。続きはまた後日にして仕切り直しとしよう」

「仕切り直しは勘弁ですね」

 老人に向かって煙玉を投げて洞窟から出ました。

 

 すぐさまお嬢様の元に戻って、カード関連以外の今日のことを報告しました。

「全員肉体派で戦うのに手間取っていたわけですか。無事でよかったです」

「ありがとうございます。ところでアームはどこへ?」

「台所でご飯の催促しています。まあご飯にあまりお金かけないのでいくらお替りしても大丈夫と言ったのが効いたんでしょうね」

「そうですか。まあアームがここを気に入ってくれるのはメリットがデカいですね」

 腕っぷしもカードも強いので、御主人様もありがたがると思うんですよね。

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