カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
私は柄にもなくウズウズしていました。
「駄目ですよお嬢様。タンバイズと戦おうだなんて考えてもらっては困ります」
「分かっております。やむなく仕方ない状況でなければ戦おうだなんて思いませんから。本当に自ら危険に飛び込むのはしません」
「絶対にしないと思うのですが、自らやむなく仕方ない状況を起こさないでくださいませ」
「それは重々承知です」
まあ半分他人なのにアグロ・メッセルに心配かけるわけにもいかないのですよ。なんか申し訳ないですからね。
1回目は気持ち半分ぐらいにしか自戒出来ませんでしたが、2回目からはもうしないようにしたいなと思うようになったんですね。
「そんなことよりも疑問に思っていることがあるので質問いいですか?」
「何でしょうか」
「私とカード盗賊との戦いを黙認どころか推奨していたのはなぜですか?」
地味に気になってたんですよね。メイドさんは諜報役にしてソウコ・メッセルのボディカードですから危険な目に合わせるのはおかしいんですよね。
メイドさんは目を反らしました。
「あの連中はお金持ちを避ける習性があることは分かっていました。決闘を挑んでも出なさそうなので、強者と決闘することを諦めてくれると思ったからです。ああなるとは思いませんでした」
「まあそういうことなら仕方ありませんね。ワガママお嬢様の機嫌を損ねる訳にもいきませんから、おおっぴらに否定できなかったのは仕方がないと思います」
「すみません」
まあだいたい分かって良かったです。
もう一つ聞きたいことがあるのです。
「話は急に変わりますが、タンバイズの事件はシエンス・ニオジーン氏が黒幕だと思うんですよ」
「すごい急ですね。会話下手ですか? それにね証拠がないのに人を疑ってはいけませんよ」
「でも証拠があるんでしょう?」
「はっきり言うと証拠としては弱いんですよ。探っていてもそれらしい情報をゲット出来ないんです」
メイドさんに耳打ちしました。
メイドさんは干し肉を投げます。なんか変なにおいがしますね。
「その情報の筋は確かなんですか?」
「これで失敗したらカードを全部捨てても良いです」
「どこで手に入れたか言えないけど、ここまでするんだから信用しろと言うことですか?」
「乱暴に言うとそういうことです。話が早い従者がいると幸福ですね」
今吹き込んだのは『プライムディスティニー』本編の知識です。
『プライムディスティニー』本編でマイノネ王子のルートを一番早く迎えられる方法が、ニオジーン氏の情報を掴んで弱みを握り第二王子を蹴落とすことなんですよね。それの予備知識で私も覚えていたのです。
「取り敢えず諜報が上手い人に伝えておいてくださいね」
「わかりました」
メイドさんが消えます。
窓から侵入者が入って来ました。
「これだけ窓から出入りする人が多いなら、ドアでもつけましょうかね」
「「バ~~~カ。窓にドアつけても意味ないだろ。庶民は学がないなあ」」
「神格や上流階級の方々の行動を分析した結果なので学がないわけではないです」
侵入者はニオジーン氏の部下のヒトミとゴクウでした。この人たち本編じゃやたら強かったんですよね。
ヒトミとゴクウのコンビネーションは、光と影の如し。トリッキーなんです。
「貴方たちのような強者を仕向けてくださるなんて、ニオジーン氏も私の趣味をわかっていらっしゃる。お父さまと仲良くするためにまず娘の私からですか?」
「「ニオジーン様が下賤な庶民と仲良くするか!」」
「名犬のような忠実さですね」
この忠実さは凄いです。
レイナさんが部屋に入ってきました。
「でっかい音したけど、どうしたの?」
「ちょうどよかったです。レイナさん手を貸してください」
「よくわかんないけど、分かった。わかりました」
私たちがユナイツカードを構えますと、ヒトミとゴクウもユナイツカードを構えました。
そうです。今回のルールはタッグルールです。
「「変則ルールのやり方……マイナーだがあるにはある」」
「タッグルールは二人のプレイヤーが一つの場と墓地とコストゾーンと生命力を共有するルールですね。手札やデッキは盤面を左右するプレイヤーはターンごとに入れ替わり、それぞれのデッキを使うといった感じでしょうか」
「「カードのことに関しては勉強家と言われるだけのことはある」」
「よくわかりました!」
伝わってよかったです。
デッキを調節してからタッグファイトが始まりました。順番はヒトミ→レイナさん→ゴクウ→私ですね。
「タッグファイトはあまり知っている人がいないのでなんだかんだ楽しみですね」
「「生涯最後のタッグファイトになるだろう」」
無事ではすまないという意味なのでしょうが、希少性ゆえに無事であっても本当に生涯最後になりそうなんですよね。タッグファイト知ってる人あんまいないんです。
なんだかんだで私の後攻4ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で忍法サオトキキの術を発動してターンエンド」
ヒトミの5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3で働きアリの巣発動。ターンエンド」
レイナさんの5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でプロメテウス・プログラム召喚。ターンエンド」
アイギスでの軽減が効きましたね。聖殿もあるし何もかも困りません。
ゴクウの5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2で魔獣侵攻発動。コスト2で死毒蟲召喚。ターンエンド」
アイギスのおかげで攻めているのをやめているのでアイギスさまさまですね。
私の5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4でマスターニンジャ召喚。マスターニンジャの効果で分身の術をサーチします。マスターニンジャでプレイヤーに攻撃、コスト2で忍法分身の術、マスターニンジャに使います」
マスターニンジャが二人に増えました。
「よほどのことがない限り一撃で決まるワンキルコンボです」
久しぶりに決められてなんだかんだ気分がいいですね。
マスターニンジャの一撃目は雪の結晶の盾に防がれました。
「いきなり殺してきた……フロストシールド」
「マスターニンジャでプレイヤーに攻撃、ターンエンドです」
ヒトミ、ゴクウ:生命力10→5
ヒトミの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト6でフェイタルビースト召喚。魔獣侵攻の効果でペガサスを手札に加えてターンエンド」
赤い長爪で毛が漆黒な三メートルの獣が現れました。
7 モンスター フェイタルビースト 属性:ビースト
効果:自分の場のモンスターを2体破壊して攻撃出来る。オールアタック
説明:その爪は竜の王の鱗さえ切り裂く
攻撃力:7 防御力:6 ライフ:1
「フェイタルビースト……ステータスは間違いなく強いのですが2体倒さないと攻撃できない分安心できる」
「そうではありません。魔獣侵攻と働きアリの巣によってモンスターの補充は出来るのです」
「息ピッタリ、ですね」
フェイタルビーストは毎ターン使えるなら強いんですよね。そのフェイタルビーストを毎ターン使えるようにするためのコンビネーションなのです。
レイナさんの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3でアポカリプス・ワン発動。コスト4でアポカリプス・ツー発動。マスターニンジャでプレイヤーに攻撃」
「アクションストライク。ライオニックハウンド」
フェイタルビーストの咆哮に怯んでマスターニンジャが止まる。
4 魔法 ライオニックハウンド 属性:ビースト
効果:アクションストライク。
自分の場の属性:ビーストのモンスターを選ぶ。
このターン中選んだモンスターよりも攻撃力の低いモンスターは攻撃出来ない。
「……ターンエンド」
「やっぱり止められちゃいますよね」
止めなきゃお
ゴクウの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4でグラモグラ召喚。魔獣を手札に加えてコスト3で魔獣を召喚。魔獣とグラモグラでプレイヤーに攻撃」
「リアクション。ハイロゥ!」
「ハイロゥですか。貫通がないと、対処の難しいカードですね」
外が暗くなり、魔獣とグラモグラが宙で弾かれました。
ゴクウは舌打ちします。
「死毒蟲、とにかく攻撃。どんな手段を使ってるか知らんが無限に攻撃が防がれるわけがない」
「冷静ですね。普通なら焦りそうなものなのですが」
「ハイロゥが…」
死毒蟲の効果は効果が効かないモンスターにも効くんですよね。プレイヤーに効果耐性はないという隙をつく画期的なカードなのです。
フェイタルビーストはグラモグラと魔獣を糧にしました。
「フェイタルビーストでマスターニンジャに攻撃。破壊。ターンエンド」
フェイタルビーストはマスターニンジャの貫通に弱いのです。常に冷静ですね。
私の6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト1でクノイチを召喚。コスト5で忍法 回天の術発動。ターンエンドです」
設置魔法のあと2つ置けますね。
ヒトミの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でペガサス召喚。コスト3でグラモグラ召喚。グラモグラでプレイヤーに攻撃してターンエンド」
レイナ、ソウコ:生命力10→9
「倒しても倒しても次々と湧いてくるなんて面倒……ですね」
「一つのカードを活かすコンビネーション、勉強になるのでレイナさんはよく観察しておいてください」
「う、うん分かった」
珍しい経験は血肉としたとき絶大な滋養となるのです。
レイナさんの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でプロメテウス・プログラム召喚。コスト5でワルキューレの誘いを発動してターンエンド」
「噓だろ。こんなあっさり……」
「ペガサスが無ければ割と致命傷でしたね」
フェイタルビーストが光の粒子となって消えました。
ヒトミの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2と7で墓地からフェイタルビースト召喚。ユニコーンを手札に加えてターンエンド」
「うへえ」
「ステータスの高いカードが毎ターン蘇るのは精神的にキツそうですね。でも折れたらいけませんよ」
「? うん分かりました」
カードゲームはいかに相手に対して非道なプレイングを通せるかがカギなので、精神を折りにいくのは立派なプレイングなのです。
私の7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2と4でマスターニンジャを召喚。マスターニンジャでプレイヤーに攻撃です」
「アクションストライク。フロストシールドッッ!」
「コスト2で忍法分身の術をマスターニンジャに使用します。マスターニンジャでプレイヤーに攻撃して終わりです」
マスターニンジャは攻撃したと同時に爆炎になりました。
煙はフェイタルビーストの咆哮によって消えます。
「持っていて良かった。アクションストライク。ライオニックハウンド」
「やったな。これで次のターンも繋げる」
「誘惑の術をサーチしてクノイチでプレイヤーを攻撃してからターンエンドです」
マズいですねこれ。
ゴクウの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2と3でグラモグラ召喚。コスト5でユニコーン召喚ユニコーンでプレイヤーに攻撃」
「フェイタルビーストは諦めたということですね」
「ユニコーンとグラモグラを糧とし、フェイタルビーストでとどめ」
「アクションストライク。忍法誘惑の術です」
「ターンエンド」
レイナ、ソウコ:生命力9→5
レイナの7ターン目です。
「コスト8アバドンの使徒を召喚してそのままプレイヤーに攻撃」
「アクションストライク。ライオニックハウンド」
「スペルコンディション。百王の生誕。ライオニックハウンドの効果を無効化します」
ヒトミ、ゴクウ:生命力5→0
モンスターが消えます。
「「まさかカードの神に選ばれし者を味方に付けるとは。帰るぞ」」
ヒトミとゴクウは帰りました。
「いきなり来ていきなり変えるなんて忙しい人たちです」
私の理想はこのように優れて知識のある人間が気軽に訪れるような状況です。
そう思うと代えられてしまったのはかなり惜しいですね。
「パワーカードでゴリ押ししていなければ負けていたかもしれませんね」
「相手はほぼ同じデッキを二人で連携することでスムーズに攻められるようになる強いデッキですからね。テクニックが無ければパワーで何とかするしかないと。カードパワーも立派なタクティクスです」
「スリリングでしたね」
それにしてもニオジーン氏は私を倒すために頑張っているのですね。
しかし今回もわたしたちが頑張ったお陰でなんとかなりました。
「レイナさんありがとうございました。お陰で勝つことが出来ました」
「いやそんな」
「事実アイギスが無ければ負けていたと思います」
ニオジーン氏に一歩近づくことが出来た気がしますね。