カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
私はお父さまにも内緒でニオジーン氏を呼び出しました。
「ニオジーン氏から招待状を貰いましたね。要するにお前が来いということでしょうか」
「ですね。あとさりげなく二日後と言う急激な感じになってます。でも会うことに変わりはないので素直ですわ」
成り上がり者のガキに来いと言われてくるのは沽券にかかわるんでしょうね。
ニオジーン氏は『プライムディスティニー』本編では物腰柔らかな人でしたのに。
「変われば変わる、と言うことですかね」
「何を当たり前のことを」
「まあそのようなことよりも、アームさんについてきてくれるように頼んできて欲しいんです。ボディーカードとしてちょうどよさそうだし、そこまでいけばお父様も納得するでしょう。あと今回の事情を色々書いてくださいね」
「一旦話してみます」
メイドさんが鳩の脚に手紙を括りつけて放ちました。
家庭教師の方に勉強を教わっていると数時間後に手紙が帰ってきました。
「少々お待ちください」
手紙を開いてみます。
「長ったらしく書いてありますが、要するにいいよと言うことですね」
アームさまさまでございます。
二日が経過してニオジーン氏のいるところにたどり着きました。
「ニオジーン氏のいるところは地方都市なので弾丸スケジュールでしたね」
「ええ。忙しさに死に至るかと思いました。ですがアームのお陰で力仕事がなんとかなったので、幸いでしたね」
ニオジーン氏の邸宅は凄く大きかったです。
糸目で赤い長髪の青年男性が現れました。
「わたくしプレジデント・ニオジーンの部下のクサリト・ケールでございます」
「どうもこんにちは。私はソウコ・メッセルですわ。こちらの二人はサルゴ令嬢とアームさんです」
「華麗なお嬢様方ですね」
クサリト・ケールさんは私たちを案内されます。
無事にニオジーン氏の部屋にたどり着きました。
「しかしニオジーン氏がいらっしゃいませんね。人の事を招待した以上すっぽかすのは非常識極まりないのですが」
「おや、失礼私がシエンス・ニオジーンでございます」
「クサリト・ケールさんがニオジーン氏でしたのね。なぜわざわざ偽名を使うような真似を?」
「愚弄されたらそのまま話し合いをしない予定でしたのでね。何しろ相手はワガママ人間、慎重に人となりを見てみたかったのです」
本人の前でそんな事をズケズケいいますね。まあ分からないでもないし、気にしていないので評価については無視しましょう。
持参した株券を見せました。
「話し合いをしましょう」
「それならそうと言ってくれれば素直に応じましたのに」
「そうですか。25、14、12。これが株式全てを100とした場合我が一族の財閥の所有株式の割合です。お父様も12を自らの傀儡のような一族の人間に振り分けて渡していて1枚岩なので、余程のことがない限り合法的に一族を崩すことは出来ないのです」
『プライムディスティニー』本編みたいにお父様が裏工作等で社会的信用を失ったり死んだりしない限り安泰ですよ。何せ実質37%を所有してますからね。
しかし人に対して冷酷と言われているアグロ・メッセルも己の妻と娘には甘いという弱点があります。
「まあ財閥ってそういうものだと思いますよ」
「あなたはそれでも我が一族を操ることを諦めず、財閥の株式を19%持っています」
「違いますね。私を陥れたことは間違いありませんが、利益を考えると持っている方がいいという理由です」
建前ですね。
私が持っている株式の半分を出しました。
「これが7、お父様に届きますね」
「おお。とても素晴らしい」
「無論タダというわけにはいきませんよ」
「それは重々承知しております。してその条件とは」
私にとっては失敗したら死ぬ賭けと言うつもりでやっていきます。
ユナイツカードを出しました。
「あなたがユナイツカードで勝てば先程の株式を差し上げましょう。しかしあなたが負けたらタンバイズへの資金援助は止めて貰いますよ」
「タンバイズってあのテロリストのタンバイズか?」
「ええ」
「失礼、言葉が荒くなりましたね。まあ荒くなりましょうとも、非合法的な組織と関わり合いがあるとイチャモンをつけられてしまってはね」
「それはそうですわね。それに関しては謝罪いたします」
随分と演技派ですねぇ。なにもかも知ってそうなのにまるで何も知らなかったかのように振る舞っています。
私はわざと机に書類を落とします。
「あ、ごめんなさい。落としてしまいましたわ。すみませんね」
「いえ。こ……えっ」
「如何しましたか?」
「何でもありません……」
ニオジーン氏は青ざめました。
まあそれはそうですよね。タンバイズに資金提供していたことが一目で分かるような資料ですもんね。しかも捏造は一切していません。
「まあしらばっくれるならしらばっくれるで良いんですけどね。ノーリスクハイリターンでお父様を超えられる千載一遇…いや万載一遇のチャンスをむざむざ不意にするだけですから」
「お嬢様、全体的に口が悪うございますよ」
「すみませんでした」
「強引……まあ関わっていました。資金と人材をフルに活用したので仕事よりも辛かったですね」
ニオジーン氏にとっては、勝てばムカつくやつをボコせる代わりに負けても損はしないという、あまりにも都合良すぎる条件なので裏があると思いますよね。資金援助していたことを公表しなければいいだけですもの。
資金援助の噂が流れてもしらばっくれればいいので、ニオジーン氏にデメリットはありませんわ。
「それにしてもそんな損しかしないような提案をするなんて、そこまでして決闘したいのですね」
「ええ。タンバイズは強いと聞きますから」
「では私が相手しましょう」
互いのユナイツカードが反応しました。
ニオジーン氏の先攻4ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で蟲神召喚。働きアリの巣でドローしてターンエンド」
「来ましたね。ドラゴンキングに並ぶフォレスター2大最強カード」
白い蛹のような像が現れました。
4 モンスター 蟲神 属性:インセクト
効果:無敵(このカードは効果を受けない)
コストを2払って発動する。コストを払い墓地またはデッキから攻撃力3以下の属性:インセクトのモンスターを召喚出来る
説明:弱く儚いが蟲にとっては神にも等しい
攻撃力:0 防御力:0 ライフ:2
私の4ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5で忍法 回天の術を発動しまして、般若の舞姫で攻撃です」
「アクションストライク。スパイダーウェブ」
蟲神から蜘蛛の巣が発射されて般若の舞姫にまきつきました。
4 魔法 スパイダーウェブ 属性:インセクト
効果:自分の場に属性:インセクトのモンスターが存在する場合アクションストライクを得る。
攻撃を無効化して1枚ドローする
「ターンエンドです」
スパイダーウェブでしたか。
ニオジーン氏の5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2で蟲神の効果を発動。デッキからコスト3の働きバチ召喚。ターンエンド」
3 モンスター 働きバチ 属性:インセクト
効果:1ターンに1度属性:インセクトのモンスターが場に出た時プレイヤーの生命力を1回復する
攻撃力:0 防御力:1 ライフ:3
「働きバチですか。良いカードですよね」
「このカードのお陰で拾った決闘もいくつかありますからね。幸運の女神と言ったところでしょう」
働きバチはインセクトメインにするなら取り敢えず入れるカードですからね。
私の5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4でイジャロコロガシを召喚しまして、イジャロコロガシと般若の舞姫で攻撃ですわ」
「アクションストライク。シールドラゴン」
「…ターンエンドです」
墓地のマスターニンジャさえ出すことが出来れば…
ニオジーン氏の6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2を払いコスト2でアントを召喚。そしてアントでプレイヤーに攻撃してターンエンド」
ソウコ:生命力10→8
2 モンスター アント 属性:インセクト
効果:なし
攻撃力:2 防御力:0 ライフ:2
私の6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2を払いコスト5で墓地からマスターニンジャを召喚します」
「イジャロコロガシで落としておいたやつですね。手癖が悪うございます」
「お褒めに預かり光栄でございます。マスターニンジャでシールドラゴンに攻撃して破壊です。般若の舞姫でアントに攻撃して破壊します。空蝉の術を手札に加えてターンエンドです」
蟲神を戦闘破壊したかったですね。
ニオジーン氏の7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3で働きアリの巣を発動し、コスト2を払いコスト2で墓地からアントを召喚します。アントでプレイヤーに攻撃です」
「アクションストライク。豊痛の呪術」
4 魔法 豊痛の呪術 属性:アヤカシ
効果:アクションストライク
デッキの上から5枚を見てその中から1枚を手札に加える。その後このカードをコストゾーンに送って1枚ドロー
コストを支払わずにこのカードを使用したターン受けるダメージが倍になる。
「そして空蝉の術です。豊痛の呪術でクノイチを手札に加えます」
「たかが2ダメージなら倍になってもそんなでもありませんのに」
「インセクトが与えられる最高ダメージは4ですからね。大ダメージを防ぐ判断としては正しかったのではないでしょうか」
蟲神とはすごく相性の悪いタイラントドレイクを入れている訳ありませんし、高攻撃力のモンスターもいなさそうなので、判断は間違っていないはずです。
私の7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で忍法サオトサキの術を発動します。コスト3で妖刀 ムラマサを武装して、アントに攻撃です。戦闘破壊により1枚ドローします。マスターニンジャと般若の舞姫でプレイヤーに攻撃してターンエンドです」
「必死に貯めた生命力が…」
「まあ平気ですよ。後1回は耐えられると思いますので」
ニオジーン:生命力12→5
ニオジーン氏の8ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2と6を払い紫婦人を召喚し、紫婦人でプレイヤーに攻撃してターンエンドです。この強固な壁を超えられますかねぇ」
「お嬢様、マスターニンジャでも一撃で倒せませんよ」
それにしても、紫婦人の防御力の高さ……デッキによっては詰むこともあるんですよね。
私の8ターン目です。
「ドロー。チャージ。マスターニンジャで紫婦人に攻撃です」
「ふふふ。甘いですね。紫婦人は反撃するのです」
マスターニンジャは紫婦人を殴り、紫婦人に頭を掴まれて地面に叩きつけられたました。
「コスト2と5でマスターニンジャを召喚して紫婦人に攻撃です」
マスターニンジャと紫婦人は同時に攻撃し、消失します。
ムラマサと般若の舞姫でニオジーン氏に攻撃しました。
「まだ生命力は1残っていますよ。これは勝ちましたね」
「コスト2でクノイチを召喚してプレイヤーに攻撃です」
クノイチの刀がニオジーン氏を切りつけて、決闘が終わります。
アームにニオジーン氏を抑えさせました。
「ナイスです。干し肉あげますからね」
「ウオオオオ」
「メイドさん、ニオジーン氏の足の裏に、契約の呪いを刻んでくださいね。内容はタンバイズへの資金援助を止めさせるといったものです」
「承知しました」
メイドさんに呪いを刻ませます。いやぁ呪いって便利ですよね。
窓から木の杭が飛んできました。
「えっ!?」
「お嬢様、アームの後ろに下がってください」
メイドさんの言う通りにします。
窓から邪神アブゾーブと女の子が入ってきました。
「風向きのせいで丸太の狙いが狂ったみたいだねえ」
「いきなり入ってきて何の用なんですか」
「お前を殺しに来たんだよ。新たな力を見せてくれあげる」
「モテる女は辛いですねぇ」
冗談抜きでキツイのです。
アブゾーブはニオジーン氏に気がついたかのような顔をしました。
「なんだねキミは」
「このシエンス・ニオジーンを知らないとはたかが知れている」
「ニオジーンね……予定変更。先にそっちのニンゲンから倒させてもらうね」
「いきなりどうしたんですか。人を殺そうとした挙げ句いきなりターゲットを変えるなんて」
気まぐれにも程がありますよね。
アブゾーブとニオジーン氏はユナイツカードを構えます。
「よくわかりませんが、この状況はとてもラッキーです。この屋敷に人を皆避難させてから帰りましょう」
「アブゾーブの新たな力というのが気になりますね」
「安全に帰らないと今度という今度はお父様に怒られますよ」
「分かりました」
部屋から出てメイドさんとともに避難誘導をしました。先程派手に音を鳴らしてくれたお陰で案外スムーズに行けましたね。