カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
王子様から手紙が来ていました。
「麗しだの愛しいだのやたらと多い系の読んでいるだけで気恥ずかしくなる文章ですね。私がそんなものとは縁遠い人間だと分かってるのに、書かなきゃならんというのが政略結婚の辛いところです」
「そんなに自分を卑下しなくても良いと思いますよ」
「正直言ってトゥスル王子様に対して好感度が上がるようなことをした覚えがないので、卑下ではなくて客観視なんですよね」
私の欲望のために決闘の腕を上げさせるという暴挙はしましたが。今思えば自分でもワガママすぎると思いますよ。
そんなわけで寧ろ好感度が下がっていないとおかしいのです。
「左様でございますか。しかしお嬢様は将来の婚約者の決闘の腕を上げるのは内助の功ですよ。そこまでしておいて愛していないなんて、常識的に考えればありえないことなのですよ」
「建前的にもありなんですけど本音がカスすぎるといいますかなんといいますか」
「うわ、めんどくさ」
今日の私はなんか面倒くさい気がしますね。
どうしてこうなっているのでしょう。
「トゥスル王子様からの好意を素直に受け止められないんでしょうか。レイナさんが見たらどう思いますでしょうか」
「問題ありません、7人分のレジャー施設のチケットを渡したので見られることはありません」
「まともな受け答えも出来ていませんね」
まあ少しだけ嬉しいので、頭がふわふわしてるような、酔っているような感覚です。
愛なんてないと思っていましたが少しはあったようです。
「幸せそうだね。幸せの絶頂にいたまま殺すのが慈悲というもの、殺してあげる」
「また窓からですか。行儀の悪いこと」
窓から黒い角が生えた人が現れました。
黒い角が生えた人はユナイツカードを構えます。
「やっぱこれですね!」
「一瞬で呆けがなくなりました」
「ヘルズの憑き人が相手ですからね。なんてったって負けたら永遠に罰を受けるバッドエンドですから」
「確かに良い終わりを迎えられなさそうな雰囲気はしてるよね。よく言われるんだ」
ヘルズの憑き人はプライムディスティニー本編終盤の敵モブです。モブと言えども終盤の敵だから強いのです。呆けている場合ではないのです。
私はユナイツカードを見せました。
「サムライズですわ」
「ヘルズ……」
「ヘルズ イビルやガイストの他に、ヘブンズと同じでゴッズを入れられるユナイツカードですわね」
「よく勉強している、頭がいいね。でももう少し頭が良ければこんなことにはならなかったと思うよ」
プライムディスティニー本編では最終盤でしか見かけないようなカードなのに、なぜ本編開始前に出たのでしょう?
そうこう考えている内に相手の後攻4ターン目ですわね。
「ドロー。チャージ。コスト4
巨大な骨の両腕が1輪の巨大な花を持って異空間から出てきましたわ。
4 魔法
効果:設置
1ターンに1度発動できる。自分のモンスターを破壊して1枚ドローする
私の5ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト4で忍法 サオトキキの術です。マスターニンジャを加えてターンエンドします」
「遅いな。周回遅れというのはとても辛いものだよ」
「そうですか」
そういうタイプの方なのですね。
相手の5ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト3でスカルファントムを召喚。
紫のオーラに包まれて浮いている骸骨が現れてすぐに砕けました。
3 モンスター スカルファントム 属性:ガイスト
効果:出現:デッキの上から一枚をコストゾーンに置く
攻撃力:2 防御力:1 生命力:3
「コスト3でスクリームを召喚して攻撃。ターンエンド」
顔の9割が口な黒い長髪の女性の顔が現れました。
3 モンスター スクリーム 属性:ガイスト
効果:貫通
説明:嘆きの声はあらゆる防御を貫く
攻撃力:3 防御力:1 生命力:1
金切り音が頭の中でぐわんぐわんと反射する。
「うるさああああい」
「頭が金づちで叩かれたような感じですね。拷問に使えそうです」
確かにこれは拷問級ですね。
私の6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3で般若の舞姫を召喚します。コスト3で妖刀ムラマサを武装します。ムラマサでスクリームに攻撃して破壊1枚ドローします。般若の舞姫でプレイヤーに攻撃してターンエンドです」
「たかが2ダメージか」
ヘルズの憑き人:生命力10→8
相手の6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でイビルタイラント召喚」
下半身が紫色の煙と化している四つ腕の悪魔が現れました。四つ腕の悪魔の顔はヤギの角が生えた狼のようになる
5 モンスター イビルタイラント 属性:ガイスト、イビル
効果:このモンスターが場を離れた時「魔心像」となる
説明:嘆きの声はあらゆる防御を貫く
攻撃力:3 防御力:2 生命力:1
「イビルタイラントで攻撃」
「うっぐ。これ以上生命力が減るときついですね」
ソウコ:生命力:7→4
「
イビルタイラントは下半身が消滅し石像となる。
5 魔法 魔心像 属性:イビル
効果:設置と記されたカードの上に設置出来る
1ターンに1度コストを2払って発動できる。墓地からコスト5以下のモンスターを召喚できる
このカードはこのカードの下のカードの能力を得る
2 モンスター 怨霊モルグ 属性:ガイスト
効果:このカードは攻撃済み状態に出来る。スタントリック:次のターンの終了時まで誘導を得る
攻撃力:0 防御力:2 生命力:1
私の7ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト5でマスターニンジャを召喚して、忍法分身の術をサーチします。妖刀ムラマサでプレイヤーに攻撃します」
「この程度は受けます」
「マスターニンジャでプレイヤーに攻撃です」
「アクションストライク。纏わりつく亡霊」
4 魔法 纏わりつく亡霊 属性:ガイスト
効果:アクションストライク。
ターン終了時まで相手モンスター1体の攻撃力を0にする
マスターニンジャに亡霊がまとわりついて動きを阻害しました。
「般若の舞姫でプレイヤーに攻撃してターンエンドです」
ヘルズの憑き人:生命力8→3
相手の7ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト6でプロメテウス・プログラム召喚。コスト2で怨霊モルグを召喚して効果発動。ターンエンド」
「あれれ。何か消極的ですね」
「なにやら呆けていても勝てそうな感じですよね」
こんなにあっさり行くとは思えないのですが……
私の8ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト5で忍法回天の術を発動します。妖刀ムラマサでプレイヤーに攻撃です」
「アクションストライク。悪魔の取引」
4 魔法 悪魔の取引 属性:イビル
効果:アクションストライク。
ダメージを受ける代わりに相手プレイヤーを選ぶ。選ばれたプレイヤーはデッキから好きなカードを1枚選んでもよい
「左様ですか。では忍法訓練所を手札に加えてマスターニンジャでプレイヤーに攻撃です」
ヘルズの憑き人:生命力3→0
結構ギリギリですね。
「私が求めていたのはこういう互いに殴り合うような感じの決闘なんですよね。惚けてやっていたら惜しいことになっていましたね」
「そうかい。そんなに決闘がしたいのかい」
「できることなら一晩中やっていたいですね」
またいつの間にか決闘が始まっていました。薄暗くてジメジメしたところですね。
どうやら今は相手の9ターン目らしいですわ。
「え、なに、どういうことですの?」
「お嬢様が何もしなかったせいで一気に壊滅状態になったのです。やはり呆けていたんではないでしょうか」
「バカな、そんなはずはありません。最初から最後まで油断していないつもりでしたわ」
倒しても勝てないはずはありませんし、覚えていませんが確実に再戦したんでしょうね。
ヘルズの憑き人はシャカパチしましたわ。
「ドロー。チャージ。ククク……まだトドメはささない。ゆっくりじっくり弱火で焦がすつもりなのさ」
「スクリームで攻撃すれば倒せるのにあえてそれをしないとは、何かしらロマンコンボを決めて倒したいというところですかね」
「あ、う、うん。そうさそういうところなのさ。君のような凡人にも理解できるように頑張ったかいがあった」
この焦りようどこか引っ掛かりますね。
スカルファントムが蘇りましたわ。
「これであとコストを7使えるんだ。コスト5で墓地からスカルファントムを復活させて
「虫歯菌みたいな見た目してるのになかなか油断ならないカードですよね」
3 モンスター 串刺しデビル 属性:イビル
効果:出現:自分のデッキの上から2枚を墓地に送り、2枚ドローする
説明:地獄の悪魔の攻め手は世界一恐ろしい
攻撃力:3 防御力:1 生命力:2
「串刺しデビルでプレイヤーに攻撃するよ、消えろおおお」
「うっっっぐ」
私の胴体を串刺しデビルのフォークが貫いた。
ソウコ:生命力2→0
私の決闘は終わりませんでした。
「そういうことですか……」
「キミは今無限に罰を受ける、無限懲罰界にいる。これは神によって定められた罰が永遠に執行される罰だ」
「いわゆるヘルズの憑き人に敗北した後のバッドエンドですね。しかし私は負けたわけではないのですが。それにいつでも出ることが出来ますし、特に何もありませんね」
それに無限に決闘が出来るのは罰ではなくご褒美と言うのですが。
ヘルズの憑き人はニヤついた。
「負けたね」
「一回勝ったので引き分け扱いでチャラに出来ませんかね。因みに罰が決闘のことならチャラにしなくても良いです」
「罰の内容は身体的外傷と再生の永続的な繰り返しの幻覚」
「無限に決闘が始まるわけのは罰ではないということ……先ほどと言うことが違いますね」
では出ますか。
闘気を纏わせたマッハドローを行いました。
「これをすれば無限懲罰界の空間が裂けて出口が開きます」
「できるわけないよね。無限懲罰界は別の世界ですから」
「ちゃちな催眠術です。無限懲罰界のことは風景でしか知らないから、無限懲罰界では一つの罰しか与えることが出来ないということも知らないということですね」
空間に穴が開きました。
開いた穴を開いて世界に戻ります。
「お嬢様、意識が戻りましたね」
「この催眠術が破られたことはなかったのに……」
「あまり物も知らずに余計なことを発現したからですよ。大抵のヘルズの憑き人は元々ただの人間であることが多いので、無限懲罰界のことを理解していない節がありますね」
まさに鉄砲玉にふさわしい人材なのです。
ヘルズの憑き人は舌打ちをしました。
「君は確かトゥスル王子様から手紙を貰っていたっけ。確か麗しの姫君だの愛しいソウコ様だの綺麗な花だの飾り気が多くて気恥ずかしくなる内容だったっけ。要約すれば令嬢ソウコを愛しているって内容」
「何でそんなことを知っているんですか」
「その文章書いたの私だから。よく見れば筆跡が違うけど、分からないだろうから内容を暗唱してあげるね」
ヘルズの憑き人は内容をそっくりそのまま暗唱しました。差出人と言うのは事実なんでしょうね。
そういうことでしたか。
「私のことが好きなんですか。でも素直に思いを伝えられないから王子様のフリをしたということなんですね。それにしたって限度がありますけど」
「油断させるためだよ。あのように呆けていたからね。でもダメだった。結果はこの通りだよ」
「そういうことでしたか」
これも全て私をハメるための罠でしたか。
私は世間ではトゥスル王子のことが好きと言うことになっていますし、催眠術にも弱いですからね。
「とことん私のことを研究してメタっているようですね。これが決闘だったら好ましいと思うのですが」
メイドさんはヘルズの憑き人を拘束していました。
ヘルズの憑き人は大きく膨らむ。
「爆発する前兆ですね」
「ヘルズの憑き人は闇のカードの神の力によってヘルズが使えるようになった存在。闇のカードの神の役に立たないと分かれば、末路は一つしかありません」
ヘルズの憑き人は口から闇の闘気の濁流を吐き出して部屋を埋め尽くします。
窓から闇の闘気が抜けきると1枚の黒いカードとマジカルランドのカードがありました。
「役に立たないということが分かれば切り捨てられるというのは人間社会の縮図のようですね」
「無限懲罰界に送られるんです。不死身になる慈悲なのか無限に苦しむ無慈悲なのか悩ましいですね」
メイドさんの顔は青ざめました。