カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい   作:黒点大くん

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 何事もなく平穏に12歳を迎えました。とうとう『プライムディスティニー』の舞台の学園に入学するのです。

「学園とはいっても予習復習は出来ているので、学ぶことなんて何もないんですよね。最低限授業に出てテストで点を取れば卒業できるので放任主義と言いますかなんと言いますか」

「そうは言いますけどもその最低限というのが難しそうで不安です」

 レイナさんは恐怖と緊張で顔面蒼白にしていました。

 

 レイナさんはなにか言いづらそうにしていますね。

「先程からなにやら不満そうですがどうかしましたか?」

「……それにその……アンドリューもいませんし心細いというのが」

「いないのは仕方ありませんよ。馬車に轢かれて重症なので入学試験を受けられなかったのですから。1ヶ月遅れで入学出来るのでまだ同時に卒業出来る可能性はありますから」

 あの学園露骨に平民差別しますから、平民だけは厳しい入学試験もあるのです。平民だけは最低限のハードルが高いんですよね。

 

 私はレイナさんに手作りサンドウィッチを渡しました。

「レイナさんとは同じ平民同士……頑張りましょうね……それ食べていいですよ」

「うん、じゃなくてはい。しかしソウコお嬢様が平民と言うのはなんか少し欺瞞ですね」

 私とレイナさんは馬車で登校することになりました。

 

 揺れてひっくり返ったあと、炸裂音がしました。

「な、なに、なんなの!?」

「恐らく爆破の呪いがかかったものを踏んでしまったのだと思われます。結構スリリングですよね」

「言ってる場合じゃないと思うんですが!」

「大丈夫です。ヘルズの力をぶち込まれたり部屋を爆破されるよりかはインパクトに欠けていますから。それに中の人は安全になる仕組みがありますからね」

 私達は馬車から出ました。

 

 メイドさんを護衛につけたほうが良かったですかね……。

「御者さんが優れた護衛だとセメタリアド伯爵様から聞いていたのですが、このザマですか。いつの間にか消えてますね」

「なにがどういうことなんですか???」

「よくあるんですよ、最近。食べ物に針を入れられたり、タンスの服に毒薬が入れられたりするのが。地味だし何度もやられているので慣れていますが。邪神のすることに比べれば大したことないですよ」

 私だけじゃなくてレイナさんを危険な目に遭わせるのは好感が持てない。

 

 私たちの前に粗野な服装の男たちが現れました。

「どいてください。尤も大けがしたかったらどかなくてもよいのですが……」

「ギャヒャヒャアッ! 女だぜぁ! 数年たてば上玉にならぁ!」

「あなた達暗殺のプロですよね。動きや呼吸が盗賊みたいな素人じゃありませんもの。おおかた第四王子のフィアンセを消す依頼を受け、依頼者の痕跡を隠すための変装をしたというところでしょうか」

 男たちの一人が一瞬なぜ分かったと言いたげな顔になりました。

 

 手を叩いてメイドさんを呼びます。

「何言ってんのか分かんねぇぜヒャハァー」

「そこの後ろの方にいる人、催眠術使う人でしょう。数年前にも同じような事をやられたので覚えているんですよね」

「お嬢様、馬の首が折れているので馬車が使い物になりません」

「左様ですか。ではこの人たちを馬の代わりに致しましょう。スケジュールに余裕を持たせておいて良かったですね」

 ユナイツカードを懐から出しました。

 

 決闘が終わりまして男たちを馬の代わりにすることができました。

「しかし危険な目に遭っているのなら早めに言ってほしかったです。なんというか友達として少し寂しいと言いますか」

「友人だから巻き込みたくないと言ったこともあるでしょう。別に、決して、良い決闘を独占したかったとかそういう訳ではないんですよ」

 ありのまま本心を言っただけですが、こういう言い方をすれば私が私欲のためにやったと思い込んでくれるでしょう。

 

 数十人もいれば馬力も沢山あるらしく、一日で街にたどり着きました。

「人をうまく使えるようになる呪いって便利ですよね」

「あくどい。まだ若干ヘルズの闇的な何かが残っているんですかね……」

「私は元からこんな感じですが。それに友人を酷い目に遭わせるような人間に対する扱いとしては優しいと思われます」

 男たちを刑務所に連行した後馬を補充します。

 

 しかしあれですね。今まで陰湿な真似をしてきたのに大胆になりましたね。それほどまでに私が目障りになったということですか。

「黒幕の捜索は私の方でしておきますので、お嬢様とご友人様は快適な学園生活をお送りくださいませ」

「メイドさんありがとうございます。縁もゆかりもない私にもこんなに良くしてくださって」

「いえいえ私にとっても見知った顔なので無下にするのも良心がいたみますから」

 いずれ私が死んで王子の婚約者の後釜になるから権力闘争に慣れさせておくべきか、友人としてそういうものを見せないべきか未だに迷っているんですよね。

 

 そのまま学園に着きました。距離自体はそんなでもないのですが、行き方が決まっているんで時間が凄いかかりました。

「行き方が決まってるから余計な寄り道しなければならないって面倒ですね」

「そういうプロセスそのものが生徒として認められる為の条件の一つなのです。各生徒ごとに割り当てられた道で行くのですよね。心配しないでください。レイナさんと私のプロセスは同じなので問題ありません」

 入学試験の時に説明されたはずなんですが……寝ていたんですかね。

 

 でもよかったです。平民だから愚弄されるかと思いましたが、あそこの人垣のおかげで人が来ていませんね。

「あそこの人垣の中心カッコイイ人がいる……はわわ」

「お~い戻ってきてくださ~い。魅了の催眠術にかかっているんですかね」

「はっ。一瞬意識が向こう側に行っていましたね」

 人垣の中心を見ると高身長イケメンがいました……ドゥイ・ラウィラニですね。

 

 あの人の家は邪教弾圧してるのに邪教信仰しているダブスタなので好感が持てません。

「あの人女性ですよ。家の決まりで男性と言うことになっているので、あまりその事実は言いふらさないようにしましょうね」

「噓ですよね……私の初恋が……」

「マジですよ。噓をつく意味がありませんからね。それに恋のライバルを減らしたければもっとやり方がありますし」

「言われてみれば体のラインが少し女性的な気がします」

 しかし身近過ぎて意識されないアンドリューもかわいそうですね。

 

 こっちを向いてきました。うげ、気が付かれましたね。

「これはこれはソウコ嬢ではありませんか。隣のレディは一体どのようなご関係で?」

「友人のレイナさんです。レイナさん、この人はドゥイ・ラウィラニさんです。凄く偉い人です」

「7年後のことも考えればソウコ嬢の方が偉いと思いますよ」

 妙に物腰が柔らかいですね。てっきり今度会ったらぶち倒されるものかと思っていたので良かったです。

 

 いや殺意がヒリヒリと刺さってきていますね。相当恨まれているので関わらないようにしましょう。

「しかし知り合いがいるなんて心強いですね。これからも肝心な時は頼りにしますよ」

「平民如きがラウィラニ様に近づかないでくださる」

「そこまで言われてしまったらそうしなければなりませんね。なにせお金だけはありますが、立場は弱いのですから」

 レイナさんと一緒に離れました。

 

 どうやら同室ではなかったようなので、レイナさんとは少しの間お別れです。

「あ、ラウィラニさんですね。同室だったんですか」

「先日一人行方不明になってしまってソウコ嬢が割り当てられたと言うわけですね」

「そうなんですね」

「人気過ぎる私と同室になりたがる人はたくさん居るはずで倍率も高そうなのに、なぜ来たばかりのソウコ嬢が同室になれたのか疑問で仕方がないはずですよね。両者の同意があれば部屋を変わることが出来るシステムがあるのにコレはおかしいと薄々感じているのでは?」

 この人水面に写った自分に見惚れていそうですわ。

 

 聞いて聞いてと言いたげな顔をしていますね。

「この部屋は毎年誰かが行方不明になっている上に撤去しようにも事故が起こるのですよ。だから人もあまり募集しにこないのです。今年は人が多いので私はたまたま余っていた貴女の部屋に入れられただけですよね。そういった理由を存じているので質問しなかったのです」

「凄い情報通……お父上の血ですね」

 露骨に落ち込んでいましたよ。

 

 そういえばこの部屋での消失事件の噂を聞くことが『プライムディスティニー』本編でのドゥイ・ラウィラニのフラグでしたっけ。確かギャグ描写だと思われていた隣の黒装束の男が、本当は幽霊で消失事件の犯人という感じでしたっけ……話が逸れましたね。

「話が早いというのはよいことです」

「はいそうですね」

 物腰柔らかなのがよけいに怖いです。

 

 深夜煩い音で目が覚めました。

「隣のベッドからゴソゴソ音が聞こえますね。何しているんでしょうか。弱みになるかもしれないから見ておきましょうね」

「んっくっ」

「変な声が出ていますね。一応見てましょうね」

 凄い弱みを握れるかもしれませんね。

 

 布団をめくりあげるとイチゴジャムとパンとスプーンを出していました。状況から見るにイチゴジャムの瓶を開けているところですね。

「何してるんですか」

「家が厳しかったので夜食を作って食べることも出来なかったんです。だから一度こういうのをやってみたくてつい……」

 なるほど。寝ぼけているんですね。

 

 壁に頭をぶつけたら痛かったのでこれは現実ですか。

「イメージが崩れると困りますので、このことは内緒にして欲しいのですが」

「よろしければ夜食の作り方について教えて差し上げましょうか?」

「そうですか。よろしくお願いします」

 案外人間味があって愉快な人だったんですね。こういう所を『プライムディスティニー』本編で見せて欲し……いやアレはアレで王子様系として完成しているから違った魅力というやつですね。

 

 そうしてなんのかんのあり3日後です。

「今日は学園の説明をするだけの日でよかったですねぇ。昨日は徹夜しましたから」

「ええ疲れましたね。一晩中人には言えないことをしましたから」

「誤解を招く言い方は良くないですよ」

 あっ。レイナさんですね。何かが結びついたような顔をしていますね。

 

 レイナさんは顔を赤らめて廊下を速歩きしました。焦っていても走らないのは偉いと思います。

「レイナさんに誤解されましたね。何もかも語弊のある言い方をしたあの人のせいです」

「あっ首筋にイチゴジャムつけっぱなしでした」

「とてもマズい。レイナさんは純粋でいい人ではあるのですが、思いこみの激しいタイプなんですよね」

 やることなすこと殆ど善意ではあるんですけどね。

 

 周りに人が大勢集まっていました。

「あの人たち凄いフケツなんです。具体的には同室どうしでよろしくやっていたんです。一晩中人には言えないことをしたって言っていました。あと首筋に口紅の跡があります」

「あの子思い込みが激しいとかそういうタイプじゃないですよ。よくあんなのと友人関係築けていましたね」

「欠点がなければ良い人ですから」

 観衆がざわついていますね。

 

 証拠が沢山あるのが思い込みを増幅していましたね。

「怒らないでくださいね。婚前交渉するわけないじゃないですか。そんなことしたら王様とお父様に酷い目にあわされます!」

「認めたくはないけど証拠があるから合っているのかもという空気が漂っていますね。ユーモアのつもりで誤解を招く言い方をしたせいで、死にかけるなんて思いませんでした」

 口は禍の元という奴ですか。

 

 あっ観衆の中にトゥスル王子様もいますね。女性ばかりの生け垣で珍しいことですこと。

「誤解です。この人の首筋のはジャムですから」

「……ヘルズの力を後ろなり全方向なりに解放するなり何なりするなら今のうちですよ」

「そうですか」

 レイナさんがヘルズの力を薦めるのはなにかありますね。新たなトラウマを作りたくないといった感じな雰囲気です。

 

 後ろに向かって肘鉄しますとなにかに当たりました。振り返ると黒い装束の男がいました。

「お嬢様ごめんなさい。気がついていないフリをしないと死なすとその後ろの人に言われていたものですから」

「この人……いつからそこに……。この完璧な私が気がつけなかった」

「催眠術で同室の人に見えないようになっていたみたいですね」

「それとなく追い払わせるために協力してもらった結果このような形と。ラウィラニさんのためならと頑張る女性たちはたくさんいますから」

 男は消えました。分かっていたのになんで見えなかったんですか。

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