カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
ドローの素振りを1時間で百回行いました。
「怪我が治ってないのですから、大人しくしてください」
「怪我なんて治してる暇があったら、ドローの素振りをやったほうがいいです」
「お言葉ですがドローの素振りをして怪我が治る〜なんてのは迷信ですよ」
医学的にドローの素振りに治療効果があるとが認められるのは、ソウコ・メッセルが15歳になってからである。流石に右腕でするのは無理なのでまだマシな方の左腕でドローの素振りをし続ける。
勢いよく扉が開いた。またお父様か。
「全身火傷してるじゃないか。わしのかわいいソウコをこんな酷い目に合わせおって。合わせたやつは許せない」
「裏山で焼き芋でもしようと思ったら火が強すぎてこうなりましたの」
お父様が犯人を探したら、あの盗賊団は確実に殺される。リベンジされる前に死なれては困るので、嘘をつくしかない。
お父様に肩を掴まれる。
「なぜ、調理担当に、頼まなかったんだ。危ないじゃないか」
「ちょっとしたわがままですの。焼き芋は自分で焼いた方が美味しいと聞きまして」
「次からは止めなさい。怪我をするからね。なぜ誰も止めなかったんだ」
「お嬢様は…素直に言って聞くような人ではありませんので」
愛を感じる。愛を感じるだけに前世という不純物があるのが申し訳なく思う。お父様の愛するソウコと私は違うから。
ドローの素振りの速度を上げたので、左腕が完治した。
「さっきからなにドローの素振りをしているんだ。止めなさい。傷口が広がるだろう」
「ドローをすると怪我が治るのです。火傷を負っていた左腕もほらこの通り」
左腕の包帯を取ると、怪我一つない左腕があった。
お父様は困惑を隠せないでいる。
「そ、そうか。それなら良かった。今度は怪我しないように芋を焼くんだぞ」
「承知しました」
お父様が出ていった。
6日後…トゥスル王子が来た。
「こんな見苦しい姿で申し訳ございません」
「思ったより元気そうで良かったです。何しろ本当はケガしてないんじゃないかと一瞬思ったほどで。……忙しく様子を見ることが出来ず申し訳ございませんでした」
「忙しいのなら仕方ありませんわ。何と言っても王族ですものね」
プライムディスティニーでは素振り治療は50%で一週間で大怪我や虫歯や五月病等の病気を治せる上に体力を大幅回復する効果があった。ゲーム時間で3年は使えないということを除けば欠点がない。
効能により、左腕に軽いやけどがある程度になっている。
「これも素振り治療の効能ですわ」
「え、あれ生存者バイアスじゃなかったんですか?」
「左腕の火傷も決闘を行えば治るはずです。早速いたしましょうか」
素振りごときで怪我が治るなら、決闘でも治らなければおかしいのに決闘じゃ治らないだろという風潮があり、民間治療の域を出なかったのです。
決闘で怪我が治らないというのにせがんだ理由は私がただ決闘したいだけ。
「お医者様から暫くは決闘を控えておくように言われているのです」
「そうですか。リベンジはしばらく先になりそうですね」
「しかし決闘させないというのもゴネそうなので、代わりの者を」
「随分と用意がいいですわね。決闘好きになったのはつい最近のことですのに」
「決闘中に気絶しても決闘を好きでいられる人間は元から決闘が好きな人だけですよ」
それはそうですね。
トゥスル王子は手を鳴らす。
天井からメガネをかけた銀髪の10代後半の少年が出て来た。
「若き天才プロフェッサー ウィドー・マリッジです」
「ウィドー・マリッジですって!?」
ウィドー・マリッジ……プライムディスティニーでは攻略対象であり、主人公の通う学園の教師でありながら、主人公に邪神の封印を解かせる見下げ果てた人間ですね。
主人公から見れば強いカードを貰うフラグだけど、そういうのを抜きにすれば邪悪なのに一切制裁されないので、あまり好感がないんですよね。
「いいでしょう。決闘しましょう。相手にとって不足はありません」
「……メカントリー」
メカントリーはフォレスターとは対照的で属性が一つしかないユナイツカードですね。
ウィドー・マリッジの先攻だ。
「ドロー。チャージ。コスト2でフェアリー・ホログラムを発動。ターンエンド」
30cmの鉄の箱から祈りの妖精のホログラムが現れた。
2 魔法 フェアリー・ホログラム 属性:メカニカル
効果:設置。モンスターの召喚コストを1減らす
説明:機械の箱から現れるのは祈りの妖精の幻
私はワンジャを召喚してターンを終えたので、ウィドー・マリッジの3ターン目。
「ドロー。チャージ。コスト3で半永久機関を発動。ターンエンド」
ハンマーの付いた水車が現れた。
3 魔法 半永久機関 属性:メカニカル
効果:設置。モンスターが召喚されたら1枚ドローする
説明:一見無限のようだが欠陥があった
半永久機関だのフェアリー・ホログラムだのこの人は本気を出していませんね……。この人は若き天才プロフェッサーである前から、モンスターを使わないテーマを使っているという公式設定がありますの。それに接待するときには本気出さないという設定もありますからね。
本気を出されないのは少々癪に障りますが、今は気にせず私の3ターン目ですわ。
「ドロー。チャージ。コスト2でイジャロコロガシ召喚ですわ。2枚ドローして2枚墓地送りします。今墓地に送られた
5 モンスター
効果:我流転生(このカードが墓地に送られたらこのカードを場に出す。
コストを支払わずに場に出たこのカードは相手ターン開始時に破壊される)
攻撃力:4 防御力:0 ライフ:4
やはり
「
ウィドー・マリッジ:ライフ10→6
ウィドー・マリッジの4ターン目ですね。
「ドロー。チャージ。コスト3でヨティス・プログラム発動。3枚ドローしてターンエンド」
4 モンスター ヨティス・プログラム 属性:メカニカル
効果:出現:2枚ドローしてこのカードを破壊する
攻撃力:0 防御力:2 ライフ:2
私は4ターン目に能面の舞姫を召喚して攻撃させてからターンエンドしましたので、ウィドー・マリッジの5ターン目ですわ。
「あわわ。追い込まれた。ドロー。チャージ」
余裕そうな表情していますね。白々しい人だ。
「コスト5でライオットデストロイアーマー武装」
ウィドー・マリッジはライオットシールドと警棒を装備した。
5 武装 ライオットデストロイアーマー 属性:メカニカル
効果:シフト
説明:この装備には2万ボルトも流れている
攻撃力:5 防御力:0
「ライオットデストロイアーマーでプレイヤーに攻撃」
ソウコ:ライフ10→5
私の5ターン目ですわね。
「私のデッキって攻撃力に欠けるんですよね……。何と言っても
「いきなり如何いたしましたか?」
「私の切り札を引ければいいなぁっていう
ウィドー・マリッジは手札に手を近づける。
そして手を下ろす。
「……ございませんね」
なんかありそうですね。わざと負けてやったみたいな雰囲気があって頭に来るのですが。
そんなことさせないですよ。
「わざと負けるようなことしていいんですか? そんなことしたら私の全力の駄々こねを見ることになりますよ」
「それを脅しの道具に使うとは。計算と違う。適当にやってわざと負けようと思ったのに」
小声で言ってもね。
ウィドー・マリッジは雑にカードを使う。
「アクションストライク。スタンガン」
3 魔法 スタンガン 属性:メカニカル
効果:アクションストライク。このターン中相手モンスター1体の攻撃力を0にする。
やっぱりありましたね。
「ごめんなさいね。私個人の思想としましては、決闘は全力でぶつかり合うものなんですね。だからトゥスル王子には謝ります。あの時は全力ではなかったです。申し訳ございませんでした」
「主義に反してまで決闘のやり方を教えてくれたのですね」
「すまないと思わないでください。恩を着せるつもりはありませんからね。コスト2で忍法具 煙玉発動」
2 魔法 忍法具 煙玉 属性:ニンジャ
効果:場のニンジャモンスター一体を選んで発動する。
選んだモンスターはそのターン効果を受けない
マスターニンジャは白い花火玉を地面に叩きつけた。
「マスターニンジャを選びます」
「対抗への対抗策があるくせに対抗を催促したのですか」
「不快にさせるようなことをしてどうもすみませんでした。しかし本気の貴方と決闘したいという個人的なワガママですわ。マスターニンジャでプレイヤーに攻撃」
「理由までワガママそのものですね」
ウィドー・マリッジ:ライフ4→0
モンスターが消える。
「…デッキを間違えた」
「次からはデッキを間違えないようにしてくださいね」
ウィニー・マリッジは自分だけのテーマを作った。ウィニーの作ったカードはウィニーのみが持つカードであるため、この場で本気デッキを再現したデッキで戦うことが出来ない。非常に残念なことです。
怪我人をこれ以上怪我させるわけにはいかないという理由で手加減したならまだわかる。だがしかし適当にやってわざと負けるのが目的なのが気に食わない。
「次はいつお相手できますか?」
「研究次第です。研究はわからない事だらけなので相当長引くと思われます」
この人のこの言葉は一般語に訳すと「やるわけねーだろ」となるんですね。
若き天才プロフェッサーの時間を取らせるわけにはいかないので脅し文句になりうる。
「研究ですか。私がスポンサーになってもいいですよ。お小遣いはあまり使わないので、沢山ありますの」
このお屋敷にはカードがいっぱいあるから構築済みデッキやパックを買う必要もない。よってお金はあまり使わない。
「取り敢えずどれだけのお金が必要でしょうか」
ウィドー・マリッジと諸々の相談を行い、研究室まで送らせた。
王子はばつの悪そうな顔をした。
「もしかして私に何か言っていないことでもあるのでございますか?」
「ええ。マイノネお兄様が解放されました」
「うげ。そうなんですのね」
一瞬驚きましたよ。
王家の三男マイノネ第三王子。冤罪によって謹慎されていたのだが、ルートによっては主人公に開放される。しかしハーレムルートにならないと主人公と一緒に邪神に殺されてしまうという特徴もあるため、お前だけ作風違うとよく言われてる隠しキャラですね。その上デッキも陰湿だから少しトラウマ気味。
けど主人公が命懸けで頑張らないと解放されないはずなんだけど。
「冤罪であることが証明されたんですね。よかったよかった」
「いえ。冤罪ではなくて。保護観察処分です。解放の手続きで忙しかったのです」
「お疲れ様でした」
いろいろ大変なんですねぇ。子供に諸々の手続きやらせるとか人手不足かなにか。
トゥスル王子は目をそらす。
「ここからが非常に言いにくいのですが、貴女との決闘によりカード使いの盗賊の知名度が上がり、各地の盗賊が影響された為戦力が少しでも欲しくなったのです。マイノネお兄様みたいに強い人を遊ばせるのも勿体無いですし」
「わあ」
ガッツリ私のせいじゃないですか。早くなんとかしないと本編がめちゃめちゃになりそうですね。
早く怪我治して手っ取り早くリベンジしなければ。
「早く行かなければ、勝ち逃げされてしまいますね。あ、そうだ。よろしければこれどうぞ」
王子からカードを渡された。
「鬼武者ですか。ありがとうございます」
鬼武者はサムライズのカードの中で最も火力が高い。そのため非常にありがたい。
鬼武者をデッキに入れた。
「これでリベンジいたします。いやぁ火力不足でちょうど困っていたんですよね。マスターニンジャ素引きに賭けるのは些か安定しないので」
「これでリベンジしてください。応援していますからね」
トゥスル王子は去った。お見舞いのついでに休憩していたのでしょうね。
メイドはメガネを押し上げる。
「これからは慎重に行動してくださいね。何しろお嬢様の行動一つで何もかも変わってしまうこともあるのですから」
「はい」
今回王子に迷惑がかかったのは全体的に私のせいだ。自重しつつやりたい放題しよう。