カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい   作:黒点大くん

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  郊外の空に穴が開いているのが見えました。

「あの穴何なんでしょうね」

 穴の下に誰かがいるのが見えますね。

 

 望遠鏡を覗くと眼だけが赤く光ったシルエットが私を見つめてきました。

「こっちを向いた……いやあり得ません。あの距離で見えるわけがありません」

「もう夜ですよ」

「私は空の穴が気になって夜しか眠れないのです」

 ラウィラニさんはコイツは何を言っているんだと言いたげな目で私を見てきました。

 

 寝室に眼だけが赤く光ったシルエットが現れました。

「なんなんですかあなた」

「個人的な恨みはないが恩人がお前のことを憎んでいるんだ。狭い狭いカードの中から解放してくださったあのお方がな」

「こんなことできそうな人、私はアブゾーブしか心当たりがありませんわね」

 凄いマッチポンプですわ。自分が封印しておいて恩を着せるなんてやることが下衆ですわね。

 

 ラウィラニさんは音叉を鳴らしました。

「うぐっ」

「今まで私と貴女が食べていた夜食のジャムパンは秘伝の無毒化の呪いと特定の音波に反応して無毒化を解除する呪いが二重にかかっていたんですよ。私の領地はその毒が多い地域からなのか生まれついてその毒に耐性があるので一方的に私が有利なのです」

 知らない設定ですね。

 

 しかしさきほどからお腹も痛くて気分が悪いです

「胃の中を調べられたら貴女が犯人になりますよ」

「この人がいるじゃないですか。不審死はこの人が原因ということにしますから。毒も司法解剖では検出されないタイプですしね」

 ラウィラニさんはシルエットを拘束しました。

 

 シルエットは困惑しているご様子。そりゃまあそうでしょうね。

「人間如きにしてやられたということか?」

「そういうことになりますね。でも復讐する手間が省けたからいいでしょう」

「そうかな……そうかも」

 チョロい奴ですね。復讐は己の手で成し遂げてこそ意味があると偉い人も言っていました。

 

 しかし毒のせいで吐き気もしますし脚に力が入らないですね。

「貴女はそこの魔物によってそのまま怪死を遂げるのです」

「えっ」

「まさかこんなことが……」

 口の中に変なモノを突っ込まれました。

 

 この風味は揚げたバターですね。

「なんか元気になりましたね。単にお腹が空いていただけみたいです。あれーなんか体が軽いですね。一体コレはどういうことなのでしょうか」

「死亡確認 よし! 就寝! おやすみなさい」

 脚元を見ようとしたら脚がなく、私が倒れていました。

 

 シルエットも拘束されたまま状況を飲み込めていませんね。

「ぐわっ」

「蘇っただと、ゾンビだゾンビ。縄で縛られてさえいなければワープ能力を使えたというのに」

「この体に封印されていたもう一つの力の残り滓が大雑把に体を動かしているだけだよ」

 ヘルズの力ですか。流石聖女様直伝なだけはありますね。

 

 私は体にとりつきなおそうとしたら弾かれました。

「ようやくこの体を好き勝手使えるようになったんだ〜か〜ら〜素直に返してあげな〜い♥」

「なんなんだコイツいきなり肌面積減らしたりして。人間を食べる趣味なんてないぞ」

「はあ? 外野はうるさいからカードに戻っててね♥私の体は決闘で勝てば返してあげるよ」

 ヘルズの私はシルエットを闇で包んで吸収してからデッキを構えました。決闘するしかないようですね。

 

 渡されたデッキを掴んで決闘が始まり、私の後攻3ターン目です。

「ところで毒は大丈夫なのでしょうか。体内に毒は残留しているのでしょう?」

「あれ短時間だけ胃腸の消化能力をほぼ0にする呪いだからね」

 知らない設定だと思ったら本当にデマだったなんて。

 

 ……しかし人体の機能のみで相手を倒すなんて意外と効率的ですね。

「あのジャム自体は消化を促進する食べ物だから消化に無駄な栄養を使って餓死しかけたところに揚げバターでリフィーディング現象でトドメを刺されたわけ」

「だから司法解剖に怯えなかったんですね」

 死ぬ間際の人にすら事実とは全く異なる嘘を吐くなんて慎重で狡猾ですわ。

 

 闇の私は得意そうな顔をしていますね。

「ヘルズパワーで分かった。ヘルズパワー凄い。解呪も出来たしね」

「でも闘気の方が応用が効きますわ」

 冤罪をなすりつけられそうな侵入者がいるから何があっても悪者にされなさそうなシチュエーションでもありますね。

 

 疑問が解消したので本題に入りましょう。

「コスト3で妖刀ムラマサ武装。そしてそのままムラマサでプレイヤーに攻撃」

「そのまま受けるよ」

「ターンエンド」

 何を企んでいるのでしょう。

 

 闇の私の4ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト4でvanitas(ヴァニタス)発動。ターンエンド」

 もしかしてわざと負けようとしているのでは……いやありませんね。私は相手の事情を察して手加減が出来る人間ではありませんから。

 

 私の4ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト4でサオトサキの術発動します。効果でマスターニンジャを手札に加えて妖刀ムラマサでプレイヤーに攻撃します」

 闇のソウコ:生命力7→4

 

 闇の私の5ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト2でオルトロスを召喚。コストを1減らしてコスト2でスカルファントムを召喚。スカルファントムの出現を発動してコスト2でスクリーム召喚♥vanitas(ヴァニタス)の効果でスカルファントムを破壊して一枚ドローするね。スクリームでプレイヤーに攻撃」

「甘んじて受けましょう」

 ソウコ:生命力10→7

 

 私の5ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト5でマスターニンジャを召喚します。マスターニンジャで攻撃してトドメ……今回やけにあっさりでしたね」

「なに勝手終わらせようとしてるの♥アクションストライク。時の悪魔」

 ターンが終わりました。してやられましたね。

 

 闇の私の6ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト5で幽鬼武者召喚。スクリームでマスターニンジャに攻撃。そして幽鬼武者でマスターニンジャに攻撃して破壊。幽鬼武者でプレイヤーに攻撃しちゃう♥この攻撃を最後にターンをおしまいにするよ♥」

「これで私の生命力も1ですか」

 ソウコ:生命力7→1

 

 私の6ターン目です。

「ドロー。チャージ。コスト6で鬼武者召喚。妖刀ムラマサで幽鬼武者に攻撃。そして鬼武者で幽鬼武者を攻撃して破壊。そしてそのまま全てのモンスターを切り刻みます」

「中々やるじゃん♥お次は私を掻っ切るのかな?」

「よくわかりましたね。鬼武者でプレイヤーに攻撃します」

 これで終わりですね。

 

 鬼武者の刀に悍ましい幽霊が纏わりついていました。

「ざぁ~んねぇん♥アクションストライク。まとわりつく亡霊」

「下手な使い方ですね。最初からそうしていれば追い詰められずにすみましたのに。ターンエンド」

「だってピンチからの逆転をへし折るのって楽しいもんね」

 前のターンマスターニンジャ出さずに今のターンに煙玉サーチしてから殴れば勝てたという人もいますが、それじゃ面白くありませんから。

 

 闇の私の7ターン目です。

「生きるか死ぬかの瀬戸際で面白さを重視するなんて……軽蔑しちゃうね♥ドロー。チャージ。コスト7でサキュバスマスター召……喚♥そしてサキュバスマスターでプレイヤーに攻撃!」

「アクションストライク 藁人形の呪術。これで私は次のターンまで生存します」

「そう来ちゃったかぁ……ターンエンド」

 危なかったですね。

 

 私の7ターン目です。

「ドロー。チャージ。幽鬼武者でプレイヤーに攻撃します」

「時の悪魔持ってるけどぉ使わないであげちゃ~う♥だって私優しいからぁ~♥」

「ああそういうことですか。私が死ねばあなたの原動力も補充できないので、死にたくなければ貴女は負けないといけないんですよね。気が付かなければ幸せでしたわ」

 闇のソウコ:生命力4→0

 

 いつの間にか元の体に戻っていました。体内のシルエットを出します。

「俺は何をすればいいんだ。復讐とか?」

「死んでもなんか生き返ったから何をしたらいいかわかりませんよね。取り敢えずお腹空いたので食べ物を持ってきてください」

「わかったよ」

 私は吞気に寝ているラウィラニさんを音叉で複数回殴りつけます。

 

 シルエットは食べ物を持ってきました。

「白湯ですか。言わなくてもこんなことが出来るなんてなかなか有能ですね」

「別にそんな……えへへ」

「素直なのは良いことですよ。少なくともそこのイケメンアホ女よりも何倍もマシです」

 シルエットを体内に戻します。

 

 ラウィラニさんが起きるまでご飯を食べて待機しました。

「なんで生きているんですか。きちんと殺したはず」

「凄い音叉と呪いですね。良いプレゼントでしたよ。使われたくなかったら言うことを聴いてくださいね」

 音叉を2回ほど鳴らしました。おや顔が青ざめましたね。コレで本物だと悟ったわけですね。

 

 ラウィラニさんは悔しそうな顔をしています。

「もしもというときは爆発する装置も仕掛けてありますから取られても安全なのです。いやぁどんな言うことを聞かせるか楽しみですねえ」

「くっ。屈辱です」

「やられたことを考えれば屈辱程度で手を打つなんて聖女過ぎます」

 ……聖女は自画自賛にしてもキツいですね。

 

 周りから羨望と憎しみの視線をバリバリに感じます。

「周りが騒がしいですわね。ラウィラニさんに首輪を付けて散歩をしているだけですのに。校則に反していないからなんの問題もありませんが何に対してそんなに文句を言いたいのでしょうか?」

「わかっている癖に」

 ラウィラニさんの首輪を勢いよく引きました。

 

 苦しそうに咳をするラウィラニさんに犬耳カチューシャを付けてあげます。

「ラウィラニさん犬の鳴き声はワンですよね」

「……ワン」

「なんで人間なのに下手くそな犬の真似してるんですか。ユーモアがある人ですねえ」

 おほほほ。凄く気分が良いですわ。こんなに気分が良いのは復讐が出来たからですわね〜。

 

 その悔しそうな顔、やっぱり顔がいいからそそりますね。目覚めてしまいそうです。

「あっトゥスル第四王子様、これはその……ラウィラニさんがね、今朝いきなりこんなことをやってくれと土下座して頼んで来てですね。理解はできませんが屈辱に興奮する人のようで」

「うん……わかっていますよ。ただそういう友人をどうすれば作れるのか分からないと言いますか」

「王子様相手だと気後れしない人が貴重ですものね」

 ラウィラニさんは恥ずかしそうな顔をしていますね。ひどい目にあったのでこのぐらいの仕返しは甘んじて受けるべきですね。

 

 突如空間に穴が空きました。

「あっあれは俺が開けた穴だ。命の恩人にこんな感じの穴を開けておいてくれと言われただけで、詳しくは知らない」

「右手からなんか変なものが出てますよ」

「体内で魔物を子飼いにするのは便利ですね」

 早霧のミストニアのカードがいきなり目の前に現れました。

 

 早霧のミストニアは穴に入り、もう一度出るとカードが白い手袋と人型の靄になりました。

「ミストニア様! 再! 完全復活だ!」

「どうやらあれはカードに封印された魔物を解放する穴のようですね。避難誘導と報告お願いします。私とコレは対処をします」

 私はリードを思い切り引っ張ります。ラウィラニさん実力者ですから大丈夫ですよ。

 

 穴がいくつも空いて避難民のカードから幾つものモンスターや魔法が出ています。このままでは危険ですね。なんとか封印しなければ。

「相変わらずこんなことをしているのか。カードに取り憑かれた人間というのは怖いね」

「左様ですね。何を考えているか理解し難いです」

「何かを考えているわけがない。恐らく何も考えてはいないと思う」

 イツとアブゾーブが現れました。態々オットー先輩を取り巻きにしていた人の姿で来るなんて趣味の悪いお方です。

 

 私はそんなことにあまり気を配らず早霧のミストニアを倒しました。

「どうやら倒せばカードに戻るようですね。鬼武者……お願いいたします」

 穴に鬼武者のカードをいれると実体化しました。ちゃんと出来たようですね。

 

 イツは自らの主に対してのラウィラニさんの背後からの奇襲を防ぎました。

「どうやら僕の解放した魔物がキミの中にいるらしい。この恩知らずが死んでしまえ」

「すまない。凄い力で無理やり操られているから逃げられないんだ」

「アブゾーブ様、私があの裏切り者を始末します。しかしその前にあの見目麗しい邪教徒を決闘で倒す許可をください」

「許可はあげよう。でも勝手に死ぬんじゃないよ。お前はボクの最高の研究対象なんだから」

 イツは自らの主にそんな露悪的な言い方をしてと呟きます。どうやらイツはアブゾーブに洗脳されているらしいですね。

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