カードゲームもできる乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、そんなことよりデュエルがしたい 作:黒点大くん
レイナさんの話を聞きました。病室でじっとしているのもたいくつですからね。
「リキヤ・ソルテッド……リキヤ・ソルテッドですか。もうそんな時期なのですね」
「そんな時期ってどういうことですか?」
「リキヤ・ソルテッドは特定の日に噴水公園に現れる変質決闘者です。一部では季節の風物詩として扱っている人もいるとかいないとか」
リキヤ・ソルテッドは別に倒さなくてもよいからかゲーム内最強のAIとデッキを持たされているんですよね。報酬もモブよりもしょっぱいし。
まあレイナさんが決闘した以上現れないでしょうね。
「強い決闘者の話題を聞いたのにあまり嬉しそうじゃありませんね」
「それを聞いたところで今すぐに戦えるという訳ではありませんから。それにリキヤ・ソルテッドに勝ったら私が最強であると証明されてしまうんですよ」
「勝つ前提ですか」
やる前に心構えで負けてたら勝てるものも勝てませんからね。弱気になるのは戦った後で良いんです。
レイナさんが呆れた顔をしていますね。
「最強であるということは同格以上がいないということになって寂しいですから」
「そうですか」
「渋くて薄情な対応です。何回も聞いているから反応が渋いのですかね」
私、会話のネタが少なさすぎてヤバいですわよ。
空気が暗くなっています。話題を変えた方がよさげですか。
「それにしてもレイナさんのノートを写していて気が付いたのですが、レイナさんのノートって要点が分かりやすくて覚えやすいですね。今の今まで分かっていなかったのですがレイナさんって教師も向いているんじゃないでしょうか」
「そうですか。改めて言われると照れますねえ」
良い友人を持ちましたね。これもう私の欠点性格だけでしょう。
なんか殺気を感じますね。レイナさんを巻き込まないようにそれとなく出て行ってもらいましょう。
「あ、慣れあい過ぎましたね。いい加減に出て行ってくださいね。ノートは返しますから」
「またですか」
計画性があるようでなかった幼き頃の自分が憎いですね。
病室が爆発しました。
「そういうことだったんだね。また闇落ち癖が出たのかと」
「ただの偶然ですが。というか闇落ち癖ってなんですか。最初から最後まで私は闇ですが」
「自覚しているんなら性格を治せよ。お前よく性格悪いって言われてるからな」
「これでも性格が劇的に良くなった方なんですよ」
窓から覆面を付けたマントの人が現れました。
この人は恐らくアブゾーブの部下ですね。
「もうこのパターンもいい加減飽き飽きしましたね」
「悪く思うなよメッセルのクソガキ。お前を殺せば借金がチャラになるんだ」
「チャラっていうかちゃらんぽらんですね。世の中そんなに甘かないですよ」
レイナさんはデッキケースに手を近づけています。
しまった。違いましたか。
「2年前貴方みたいに借金を踏み倒す為に私を抹殺しようとした人がいたんです。どうやらその人は私のお父さまの部下に借金していて、なにをどう思ったのか私を抹殺してお父様の部下を脅迫すれば借金を消せると考えたそうなんですね。こういうパターンは珍しいから二度と現れないと高を括っていました」
油断はダメですね。
レイナさんは怒っていますね。
「そんなことがあったのに何で言わなかったんですか」
「レイナさんに相談してどうにかなることじゃありませんから」
普通なら身代金を要求すればいいって考えますが、貧すれば鈍するという奴ですね。
マントの人は私の首を締めて持ち上げました。
「隣の奴を起こそうとしても無駄だぞ。お前の病院食に混ぜる睡眠薬をうっかりそいつに盛ってしまったからな。確かにお前の病院食に混ぜたはずなのだがな」
「うっかりミスなんて良くあることですわ。次からは気をつけましょうね」
借金を背負ってしまった理由が良く分かりますね。
マントの人はデッキを構えました。
「借金しているのにデッキを買っているんですね」
「ソウコお嬢様は存じ上げないと思われますが、最近カードに投資して破産する人が増えているんですよ」
……前に聞いていたとしてもあまりにも荒唐無稽過ぎて速攻で忘れていると思います。真実味が無さすぎますからね。
お金は計画的に使って欲しいですね。しかしながら量が増えたのは喜ばしいことなので複雑です。
「カジュアルにカードを買う人が増えるのは嬉しいのですが、借金してまでカードを買ってほしくないですね」
「貴族以外カードを変えないという価値観が見直され、第二のゼイバルトを目当てにカードを買ってお手軽にお金を稼ごうというブームが起きているんです」
「ゼイバルトは出た当初はただのカスレアだから即効性もなくお手軽に稼げませんね」
レイナさんとマントの人の決闘が始まります。
レイナさんの4ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3でプリンシパリティズ召喚。1枚ドローしてターンエンド」
あまり動いていないですね。手札事故ですか。
マントの人の4ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4で賢しきエルフ召喚。エルフのベッドの効果で賢きエルフのスタントリック発動。2枚ドローしてターンエンド」
「前のターンに祈りの妖精を出しておいたのがここで効いてますね」
お相手さんは理想的なムーブですね。
5 モンスター 賢しきエルフ 属性:フェアリー
効果:スタントリック:2枚ドローする
攻撃力:0 防御力:0 ライフ:1
レイナさんは5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト2でハイロゥストライク発動。そしてコスト1で翼の使徒を召喚し2枚ドローしてターンエンド」
「堅実な手札加速ですね。まず手札が重要ですからレイナさんは勝機に近づきましたね」
このままスムーズにいくと良いのですが先ほど手札事故を起こしていましたからね。
マントの人の5ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト1でスパークルフェアリー召喚。コスト2でエルフアーチャー召喚。スパークルフェアリーの効果で1枚ドローし、エルフのベッドの効果で相手に1ダメージ。ターンエンド」
「」
エルフの放った光の矢がレイナに刺さります。
レイナ:生命力10→9
レイナさんの6ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でプロメテウス・プログラム召喚。プリンシパリティズで攻撃してターンエンド」
「いつもと違って準備が遅いですわね。それにハイロゥストライクも発動タイミングを間違えています。リキヤ・ソルテッドに負けたことで焦りが生じてプレイミスをしたのでしょうか」
ハイロゥストライクは相手が6コスト以上使える状況じゃないとあまり意味がありませんが、レイナさんは焦って意味のないタイミングで使ってしまいました。
マントの人:生命力10→9
それとも何か考えているのでしょうか。
「相手の場には2体のエルフアーチャーですか。これでシルフの風なんかあったら目も当てられません。シルフの風でエルフアーチャーを戻されて1ターンに2回バーンダメージを食らうコンボ……私も一回それにやられていますからね」
「適当にカードを集めてこんなコンボが出来るとは」
この襲撃者将来性ありですね。
そうこうしているうちにレイナさんの7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト5でウルティメイト発動。プリンシパリティズでプレイヤーに攻撃してターンエンド」
「ただの手札交換ですか」
もしかしてマントの人に配慮しているんじゃないでしょうか。
5 魔法 ウルティメイト 属性:ゴッド
効果:自分のデッキから好きなカードを1枚墓地に送る。
マントの人の7ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト3でシルフの風発動。エルフアーチャー1体を手札に戻す。そしてコスト2でエルフアーチャー召喚。ベッドで2体のエルフアーチャーを攻撃済みにして矢を放つ! ベッドで賢しきエルフを攻撃済みにしてターンエンド」
どこぞの教皇と違ってプレイングとデッキが効率よいですねえ。
借金する人が増えれば凄腕の人が増えるというのは複雑ですね。
「手札加速を忘れずチマチマとダメージを与えている堅実なプレイングですね。貴族に腕を売り込めばそれなりに儲けられるかもしれませんのに」
ロックバーンはマナー的に悪いですがただのバーンはそんなにマナーが悪くないので問題ないですね。
レイナ:生命力8→6
レイナさんの8ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト7で天将エルデウス召喚。効果で墓地の伝説の剣を召喚。エルデウスと伝説の剣でトドメ!」
「ここから防ぐ手段はない……ことはない。フロストシールド、エルデウスの攻撃を無効化する」
「残念。一気に逆転ワンショットキルをやってみたかったのになぁ。ターンエンド」
マントの人:生命力8→4
マントの人の8ターン目です。
「ドロー。チャージ。コスト4でエルフアーチャーを2体召喚。ベッドの効果で4体同時に矢を放つ! 穿てアロークラウドブラスト」
「いやあああ」
「賢しきエルフを攻撃済み状態にしてターンエンド」
矢の量が段違いですね。一つ一つが光っているから眩しいです。
レイナ:生命力6→2
レイナさんの9ターン目です。
「ここで引けなきゃ私の負けですね」
「どうしてそうプレッシャーのかかることを……そういうことか。ドロー、チャージ。コスト5でカリス発動。エルデウスでプレイヤーに攻撃」
「学ばない奴だな。フロストシールド発動」
巨大な雪の結晶がエルデウスの前に立ち塞がりました。
そして巨大な雪の結晶が溶けて、エルデウスを阻むものは無くなります。
「コスト5で魔法カード百王の生誕 フロストシールドの効果を無効化する」
「無効化されたエルデウスの攻撃がそのまま通りますね」
マントの人:生命力4→0
辛勝ですね。
「よくよく考えてみればバーンがメインになるスタントリックでハイロゥを後生大事に持っていても無駄ですね。ちゃんとレイナさんは成長していました」
「ありがとう。あ、そうだ。カーテンでこの人を縛ります」
カーテンを使って鮮やかに拘束しましたね。手先が器用です。
マントの人の覆面を剥ぐと看護師さんが出てきました。
「看護師さんだったのか。道理で病院食に睡眠薬を混ぜられるはずだ。上手いことやりましたねえ」
「おバカなブームで破産して自棄を起こしている人が近くにいたなんて恐ろしいですね。それにしても何故カードでお金を稼ごうと思ったのですか?」
どんな物事にも大抵理由はありますからね。
看護師さんは観念したかのように力を失いました。
「婚約している相手がいたんだ。その人との結婚資金を貯めるためにお金が欲しかった。偶然カードへの投資ブームを知り、失敗して借金したということ」
「その婚約者さんの特徴を教えてもらえませんか?」
特徴を教えてもらったところ有名な結婚詐欺師と特徴が一致しますね。
高価なカードは結婚詐欺師が管理していたため、二日前全財産ごとカードを持っていかれたそうです。
「救いのない話ですね。貴方の婚約者さんは結婚詐欺師である可能性が高いです」
「そんな……まさか」
「でも安心してください。都合のいいことにその結婚詐欺師は我が財閥が追っていたのです」
詐欺のマニュアルを作成させて広めることで善行し好感度を稼いでから警察に引き渡そうと考えていたのです。
レイナさんは驚いていますね。
「通報しないのですか?」
「今回の被害者が私だけな以上私が無罪と言ったら無罪なのです。私は嫌な思いしていませんからね。寧ろレイナさんも腕が上がってハッピーハッピーですよ」
「あの、アンドリューは」
この国だと犯罪はよほどのことがなければ訴えない限り犯罪じゃないんですよね。
だから私が言っていることはそんなに倫理観が破綻しているという訳でもないんですね。
「アンドリューさんはこの人のおかげでぐっすり眠れているので被害者じゃないですね」
「おお……うん……」
自己中心さに引いていますね。
嫌ってくれると私と本気で決闘してくれますからちょっとだけ好感度を下げておきましょうね。
「普通に凄腕なので私の手に届くところに置いていつでも決闘できるようにしておきたいと思うことの何が悪いんですかね。この人犯罪者でも何でもないのにひどい扱いですよ」
全くもうです。
後日 私が退院した日に結婚詐欺師を確保できました。良かったですね。
「寝ていてもハプニングに巻き込まれるなんて私もとんだトラブルメーカーですね」
「俺が寝ている間にそんなことがあったのか」
アンドリューさんに変な目で見られています。こんなことなら真実を明け透けに言わなければ良かったです。